3月31日(1) 週4日制法案提出
Source :Workplace pilots look to provide ‘unignorable evidence’ in favor of 4-day workweeks (HR Dive)
非営利団体4 Day Week Globalが呼びかけていた週4日制のパイロット・プログラムは、好成果を挙げたようだ(「Topics2022年4月10日 CA州:週4日勤務法案」参照)。
  1. パイロットプログラムに参加した企業のうち、91%が週4日制の継続を計画している。また、4%が継続の方向で検討している。

  2. 参加企業の売上高は、前年同期に比べて35%増加した(管理人注:コロナ禍からの回復に伴う影響については不明)。

  3. また、雇用者数は増加し、無断欠勤回数は減った。
既に州レベルでは、週4日制の導入に向けて動きがある(「Topics2022年4月10日 CA州:週4日勤務法案」「Topics2023年3月10日 MD州議会週4日法案取り下げ」参照)。

連邦レベルでも、3月1日、連邦議会下院に"Thirty-Two Hour Workweek Act"(H.R.1332)が再提出された。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work

3月31日(2) 所得別企業プラン加入率
Source :Lower-Paid Workers Are Denying Employer Health Insurance and Workplace Benefits (PLANSPONSOR)
企業提供医療保険プランでも、プラン加入について所得格差が生じていることが判ってきた。 企業提供プランと言えども、低所得の従業員にとって、保険料負担、免責額負担、窓口自己負担が重くなってきている(「Topics2022年1月13日(3) 企業保険プランの負担感」「Topics2022年8月19日(2) 企業プラン企業負担6.5%増」参照)。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

3月30日 MS州:Medicaidが知事選争点
Source :‘We’re Going Away’: A State’s Choice to Forgo Medicaid Funds Is Killing Hospitals (New York Times)
New York Timesが、Medicaid拡充に関連する記事を2日続けて報じた(「Topics2023年3月29日 NC州:Medicaid拡充」参照)。今度はMississippi州(MS)である。

MS州はMedicaid拡充を実施していない10州のうちの一つである。

Status of State Medicaid Expansion Decisions: Interactive Map (Kaiser Family Foundation)
州知事、州議会上下両院ともに、共和党が占めている。頑なにMedicaid拡充策を拒否し続けてきたのだが、そのしわ寄せが各所に生じている。 このような状況の中、MS州民の意識調査では。
  1. 連邦政府から財源を受け取ってMedicaidを拡充すべき ⇒ 75%(共和党支持者の中では59%)

  2. 安定財源を確保して病院危機に対処すべき ⇒ 71%
となっている。

今年11月にはMS州知事選が行われる。Medicaid拡充の是非は、現職(R)と民主党候補(Brandon Presley)の間の争点の一つとなる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/MS州

3月29日 NC州:Medicaid拡充
Source :North Carolina Expands Medicaid After Republicans Abandon Their Opposition (New York Times)
3月27日、North Carolina州(NC)知事は、Medicaid対象者拡大のための州法案に署名した「Topics2023年3月4日 NC州Medicaid拡充へ」参照)。これでMedicaid拡大法案は成立したが、予算執行権限が認められたうえで、拡大執行となる。今年6月頃と見込まれている。対象拡大によりMedicaid加入資格者数は、60万人程度増えるとされている。

これで、Medicaid拡充措置を採っていない州は、10州だけとなった。次は、Alabama州が拡大するのではないかと注目されているそうだ。

Status of State Medicaid Expansion Decisions: Interactive Map (Kaiser Family Foundation)
そもそもMedicaid拡充策は、PPACAに盛り込まれていた(「Topics2010年3月31日(1) 医療保険改革法に署名」参照)。ところが、PPACAの合憲性が争われた2012年6月の連邦最高裁判決で、『Medicaid拡充は州政府の判断』とされた(「Topics2012年6月30日 医療保険改革法に合憲判決」参照)。

これに伴い、Medicaid拡充策の是非は、州政府に委ねられた(「Topics2012年12月4日 Medicaid拡充:州政府最大の課題」「Topics2012年12月12日(1) Medicaid拡充はFPL138%」参照)。そこで、PPACAに反対の立場であった共和党は、共和党が優位に立つ州政府において、Medicaid拡充策を忌避する方針を採ってきた(「Topics2012年7月4日 Medicaid拡充に慎重」参照)。

共和党は、トランプ大統領のもとでPPACA廃止に取り組んだが、2017年にその方針を断念した(「Topics2017年9月27日 再挑戦を断念」参照)。

連邦レベルでだめなら、州政府レベルで頑張ろうと、就業義務規定を付随させようとしてきた(「Topics2018年1月30日 Medicaid:就労義務規定の許容」参照)。しかし、司法に阻まれたり、バイデン大統領が就任したりして、この試みも閉ざされた(「Topics2021年12月26日 就業義務規定に終止符」参照)。

上記sourceは、「こうした流れを受けて、共和党のMedicaidへの抵抗運動が弱体化してきた」と報じている。政治信条としてもろ手を挙げて賛成、とまではできないが、Medicaid拡充は人気のある施策である以上、これに抵抗し続ければ、選挙でマイナス点になってしまう。そうした打算が共和党に広がっているようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/NC州

3月27日(1) 条件付き退職ベネフィット禁止
Source :NLRB says old severance agreements with nondisclosure clauses are void (HR Dive)
今年2月21日、NLRBは、『従業員の基本的権利を放棄することを条件に退職ベネフィット提供を契約することはできない』との判決を下した(McLaren Macomb)。この事案では、情報非公開を約束することを条件にした退職ベネフィットについて、争われていた。

さらに、3月22日、NLRB事務総長は、同事務局に対して『本件は遡及される』とのメモを配布した。

上記sourceは、こうしたNLRBの動きについて、訴訟が頻発する可能性は高いものの、企業人事部は過去に遡って退職ベネフィット契約の見直しを迫られることになる、と警告している。

バイデン政権では、企業を退職した元従業員の行動を元の雇い主が束縛することを認めない、との方向性を明示している(「Topics2023年1月9日 競業他社転職禁止の廃止案」参照)。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「解雇事情/失業対策

3月27日(2) 平均余命低下の原因
Source :'Live free and die'? The sad state of U.S. life expectancy (NPR)
昨年12月、アメリカ国民の平均余命が2年連続低下したことを紹介した(「Topics2022年12月25日(1) 平均余命76.4年」参照)。

さらに、今年に入って、2021年の妊産婦の死亡率(NPR)、未成年の死亡率が高まったことがわかった。

その理由として、過食、皆保険の欠如だけでなく、子供の貧困、人種差別、社会的孤立、未成年妊娠、過剰な薬物接種、エイズ、交通事故、暴力、銃撃などが挙げられている。

アメリカ社会の病理が、平均余命の短縮、死亡率の上昇につながっている。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

3月26日 ワクチン接種義務化差止判決
Source :The Federal Employee COVID Vaccine Mandate Remains Blocked, After Appeals Court Ruling (Government Executive)
3月23日、第5控訴裁判所大法廷は、2022年4月の同裁判所小法廷の判決を覆し、大統領令によって連邦政府職員にコロナ感染症対策ワクチンの接種を義務付けたことを無効とし、連邦政府による執行差し止めは有効であるとの判決を下した(「Topics2022年4月9日(1) 控訴裁:連邦職員接種義務化容認」参照)。

今後は、TX州連邦地方裁判所に差し戻され、そもそもの課題『大統領令による連邦政府職員へのコロナ感染症対策ワクチン接種の義務付け』は有効かどうかが、改めて判断される。連邦政府は、既にワクチン接種義務化を止めている(「Topics2022年8月18日(1) 連邦職員ワクチン接種義務化終結」参照)。加えて、バイデン政権は、2023年5月11日に、COVID緊急事態宣言を終結させる予定である(HHS)。

そうした環境の中で、再びパンデミックが起きることを想定して、ワクチン接種義務化が判断されることになる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

3月24日 AR州Tトイレ禁止法
Source :Arkansas bans trans people from school bathrooms corresponding to their gender identity (Los Angeles Times)
3月21日、Arkansas州(AR)知事は、トランスジェンダーが性自認に従ってトイレ、ロッカールームを利用することを禁じる法案に署名した。夏頃に執行される見込みである。

同様の法律は、Alabama州、Oklahoma州、Tennessee州で既に成立している(「Topics2022年2月25日(2) AL州:Tトイレ使用禁止法案」参照)。また、Idaho州、Iowa州でも、州知事の署名を待つばかりになっている。

トランスジェンダーのトイレ使用禁止は、2016年3月にNC州で立法化された(「Topics2016年3月30日 トイレ問題を巡る攻防」参照)。その後、1年間の大混乱の末、2017年4月に法的に撤回され(「Topics2017年4月3日 NC州トイレ法収束」参照)、2019年に実質的な決着をみた(「Topics2019年7月24日 NC州:トイレ使用決着?」参照)。

それが、近年になって、広がりを見せている。上記sourceによれば、17州で20~30の法案が提出されているそうだ。

AR州知事は、今月に入り、FL州同様の"Don't Say Gay"法案にも署名した(「Topics2022年3月11日(2) 'Don't Say Gay'法案」「Topics2022年4月11日 Don't Say Gay'法案の広がり」参照)。 さらにAR州議会で議論されている法案では、 といった内容が盛り込まれている。

※ 参考テーマ「LGBTQ

3月23日 インフレ抑制を優先
Source :The Fed raises interest rates again despite the stress hitting the banking system (NPR)
3月22日、FOMCは政策金利の0.25%引き上げを決定した(「Topics2023年2月2日(2) FRB依然として警戒」参照)。政策金利の幅は、4.75~5.00%となる(FOMC Statement)

形のうえでは、金融システム不安よりもインフレ抑制を優先したことになる(「Topics2023年3月15日 CPIは冷却せず」参照)。依然としてサービス部門のインフレが高水準となっていることに対する警戒心が強いようだ。

ただし、このタイミングで利上げを見送れば、高水準が続くインフレよりも金融システム不安の方が懸念されているのか、と更なる疑心暗鬼を呼ぶことになりかねない。利上げ幅を0.5%に拡大することも辞さないとしていた議長発言を踏まえれば、引き上げざるを得なかったのだろう。

一方で、前日の3月21日、イエレン財務長官は、『必要とあらば小規模銀行の預金も全額保護する』と発言し、金融システム不安は絶対に起こさないとの決意を表明した(NPR)この発言があったからこその政策金利引き上げであったのだろう。

もう一つ、今回のFOMCで2023年末の政策金利水準見込みが引き上げられなかったことも安心材料となっているだろう。前回と同様、中位数が5.1%となっているということは、政策金利は既に天井に近いということになる。
今回の政策金利引き上げで、消費、特にサービス関連消費が抑制され、労働需要が冷却に向かうのか。

※ 参考テーマ「労働市場

3月22日(1) Medicaid資格喪失
Source :Medicaid renewals are starting. Those who don't reenroll could get kicked off (NPR)
4月1日より、Medicaid加入の自動更新が廃止され、改めて加入資格の確認が行われる(「Topics2023年1月27日(3) Medicaid加入者大幅減の可能性」参照)。

上記sourceは、これにより、1,500~1,800万人がMedicaidから離脱する可能性があるとの推計を紹介している。そのうち、『700万人近くは手続き上の問題から加入資格を失ってしまうかもしれない』との推計も紹介されている。

"Unwinding the Medicaid Continuous Enrollment Provision: Projected Enrollment Effects and Policy Approaches" (ASPE)
そうした加入資格喪失が発生する理由としては、 などが挙げられている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般

3月22日(2) Self-Insuredプラン数増加
Source :Annual Report on Self-Insured Group Health Plans (EBSA, DOL)
上記sourceは、PPACAに基づいて、主に大企業が提供する"Self-insured Plan"について、実態を報告している(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」「Topics2010年3月26日 医療保険改革法の成立」参照)。
  1. 2019年から2020年にかけて、プラン数は増えている。
  2. 企業プラン全体も増えている。
  3. 一方、加入者数は1%の減少となっている。
※ 参考テーマ「医療保険プラン

3月21日 ESG投資反対決議に拒否権
Source :Biden has vetoed his first bill. Here's how that compares to other presidents (NPR)
3月20日、予想通り、バイデン大統領は、H.J.Res.30に対して拒否権を発動した(Message to the House of Representatives)。(「Topics2023年3月2日(2) ESG投資に議会反対決議」参照)

決議案は連邦議会下院に差し戻されたが、大統領拒否をひっくり返すだけの賛成票が集まる見込みはなく、このまま廃案になるだろう。

ところで、上記sourceは、バイデン大統領が初めて拒否権を発動したことに重点を置いて報道している。連邦議会多数が共和党となり、本来なら上院が防波堤になるはずである。ところが、今回の決議案を巡る動きは、課題によっては民主党議員が共和党提案に賛成する可能性を示唆している。大統領任期後半戦は、大統領にとって難しい局面となりそうだ。
※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「受託者責任」、「DB/DCプラン」、「政治/外交