1月31日 雇用増への支援策 
Source :Small Business Jobs and Wages Tax Cut (White House)
一般教書演説の翌日、Obama大統領は、雇用増を支援するための税制改正を提案した。概要は次の通り。
  1. 2010年の新規雇用者一人(ネットベース)につき、$5,000の税額控除を行う。税額控除総額は、一企業当たり$50万ドルを上限とする。

  2. 給与を増加させた場合、その増分に対する社会保険税(Social Security Tax)を返還する。社会保険税の課税ベースが増えた場合とするため、その課税上限額である$106,800より高い給与の増分は対象とならない。

  3. いずれも四半期ベースで施行する。非営利団体も対象となる。創業企業は、支援策の半額を受け取れる。

  4. 予算額は$33B。
1.と2.の規定により、大企業、高給取りの雇用や給与が改善されても、そのメリットはかなり限定されることになる。その意味で、この対策のターゲットは中小企業ということになる。

それでも、@税額控除であること、A雇用にしても給与にしてもあくまで増分が対象であること、とすることで、今後伸びる、または伸びようとしている企業でなければ恩恵を受けられない。

このような大統領提案に対し、連邦議会上院では、超党派で『失業者を雇用した場合に、その分の社会保険税を2010年の間免除する』という提案が行われている。また、リベラル派のシンクタンク"Economic Policy Institute"は、『給与支払いの増分について、2010年は15%、2011年は10%を返還する』との提案をしている(New York Times)。

いずれも、増分に対する支援策であることには変わらない。日本の雇用調整助成金は、雇用の維持を狙った施策であり、彼我の根本的な発想の違いを感じさせられる。日本の発想に近い考えを持っているのは、"National Federation of Independent Business"という、中小企業団体である。『雇用や給与を増やせる企業だけでなく、すべての企業に恩恵が及ぶようにしてもらいたい』とコメントしている。

※ 参考テーマ「労働市場

1月30日 中間所得層への支援 
Source :Fact Sheet : Supporting Middle Class Families (The White House)
先の一般教書演説に先立つ25日、Obama大統領同席のもと、"Task Force on the Middle Class"の提言概要が公表された。概要は次の通り。
  1. 現役世代家庭の負担軽減

    1. 子育て税額控除の倍増

      現行の"Child and Dependent Care Tax"では、子育てに支出した費用を、子供一人当たり$3,000を限度として、所得に応じた率(低額所得者35%→高額所得者20%)で税額控除できる仕組みになっている。この所得に応じた率を、$85,000以下の所得の家庭については、ほぼ倍にする。$115,000以下の家庭でも控除額が増加するようにする。

      例えば、所得$80,000で二人の子供を育てている家庭では、税額控除額が$1,200から$900増えて、$2,100になる。

      ただし、"refundable"ではない(New York Times)。

    2. 低額所得者の子育てを支援するための"Child Care Development Fund"への追加拠出($1.6B)を行う。同時に幼児教育の強化("The Early Learning Challenge Fund")も図る。

    3. 介護支援サービスの拡充を図る。

  2. 大学教育費用への支援

    1. 奨学金の返済額について、基礎的な生活費用の10%を上限とする。

    2. 公務員に就職して10年間、他に就職して20年間返済した後に残った残額は、すべて免除する。

    3. 各種奨学金制度を拡充する。

    4. 大学費用を支援するための新たな税額控除制度"American Opportunity Tax Credit"($2,500)を創設する。

  3. 自動加入IRAの推進

    1. 年金制度を提供していない企業に対して、自動加入IRAの創設を求める。従業員は加入を拒否する権利を有する。

    2. Saver's Creditを見直し、所得額$65,000以下の家庭について、最初の$1,000の拠出に対して50%の税額控除を提供する。この仕組みを$85,000の家庭にまで拡大する。しかも還付付きとする。

    3. 401(k)に関する規制をわかりやすくする。
最初の子育て税額控除だが、還付制度がないということで、本当の低所得者層には恩恵が及ばないことになる。税金を払っていない、または少額しか税金を払っていないからだ。まあ、中間所得層への支援策ということであれば、それも仕方ないかな、とも思われる。

金で支援するのは、決めてしまえば簡単なので、追い込まれた政権がよく使う業である。わが国でも、麻生政権で定額給付金が配られたことは記憶に新しい(?)ところである。本当のサポートは、社会システムを作り上げなければできないので、本気度はかなり疑わしい。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「教育

1月28日 雇用創出エンジンは企業 
Source :President Obama's State of the Union address
27日夜、Obama大統領の最初の一般教書演説が行われた。

今回の演説の肝は、次のフレーズに尽きるのではないだろうか。
"Now, the true engine of job creation in this country will always be America’s businesses.  But government can create the conditions necessary for businesses to expand and hire more workers."
このために、中小企業への補助金の拡充、全企業を対象とした設備投資減税、イノベーションの促進、エネルギー産業の振興、輸出倍増策(もしかしたら、これを受けて明日は円高に振れるかも)、教育振興を行うとしている。

以下、当websiteの関心事項について、コメントする。 どうも2008年の手形は落ちないようである。

※ 参考テーマ「一般教書演説」、「労働市場」、「無保険者対策/連邦レベル

1月27日(1) 医療保険改革は先送り? 
Source :Democrats Put Lower Priority on Health Bill (New York Times)
連邦議会民主党は、医療保険改革の抜本改革を先送りし、その優先度を低くすることを決めたようだ。共和党との妥協点を探るべき、との意見もあるが、これまで袖にしておきながら、どこまで理解を得られるのか、まったく未知数である。

そうこうしているうちに、11月の中間選挙がどんどん近付いてきて、結局は何もできない、という状況もだんだん現実味を帯びてきている。

民主党は、この15年の間に何も学ばなかったのか、と言いたくなるような状況である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月27日(2) EFCAも瀬戸際? 
Source :Employee Free Choice Act Supporters Press On Despite Longer Senate Odds (Workforce Management)
MA州の上院特別選挙で先行きが見通しづらくなったのは、医療保険改革ばかりではない。"Employee Free Choice Act(EFCA)"法案(H.R. 1409)も、成立するかどうかの瀬戸際に立たされている。当然、上院での60票がない中で、成立が厳しいばかりでなく、民主党上院議員達の間でも、なかなか推進力が生まれない課題である。

法案のスポンサーである労組は、中間選挙での不支持を脅し文句に、早急な審議、可決を迫っているが、MA州選挙の結果を受けて『超党派』での合意を優先すべきとの流れの中、なかなか強硬な議事進行は理解を得られないでいる。

Obama政権は、新たな政策課題に重点を移すという戦略のようだが、2008年の大統領選で乱発した手形が落ちない状況を無視するつもりなのだろうか。

※ 参考テーマ「労働組合

1月23日 下院議長も断念 
Source :Pelosi says House cannot pass Senate's health-care bill without changes (Washington Post)
Pelosi下院議長が、『現在の上院法案を丸呑みすることはできない』と明言した。理由として、 を指摘した。さらに、『上院法案が確定するまで一切動かない』と、責任を上院に求めた。

MA州の上院特別選挙の結果は、上院法案が招いた、と言わんばかりである。かなりの強気の発言だが、これまでの法案審議の過程を見れば、頷ける部分も多い。特に、下院法案は、3委員会で協議した結果をまとめているために、法案全体を通じての考え方が一貫している。また、民主党支持層への配慮も行き届いている(「Topics2010年1月4日 特別扱いの見直し」参照)。

Pelosi下院議長にしてみれば、自分たちの法案の方がしっかりしているのに、上院が妥協に妥協を重ね、"House of Cards"と呼ばれるような脆弱な法案を作り上げてきた、という批判の気持ちが強いのではないだろうか。

一方、上院民主党では、リベラル派を中心に、『何もしないでは済まされない』(Schumer(D-NY)上院議員)との積極姿勢を示す幹部がいるものの、Reid院内総務は、『焦ることはない。一年かけて議論してきたことをすべて今すぐに決断することはできない』としている。また、民主党中道派は、『超党派での合意が必要』と、ハードルを高めつつある。

こうした民主党内の分裂状況を横目に見ながら、上院共和党は、 と揺さぶりをかけている。

こうした状況で、来週27日(水)に、"State of the Union"が予定されている。果たしてOb ama大統領は、どのようなメッセージを発するのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月21日(1) MA州のメッセージ 
Source :Democrats Signal Willingness to Scale Back Health-Care Bill (BusinessWeek)
衝撃の一夜が明け、ワシントンは冷静さを取り戻しつつあるようだ。

今回の上院特別選挙におけるMA州民のメッセージは何だったのだろうか、と考え直してみた。それは、『皆保険制度を導入するなら超党派の合意でやれ』ということではないか。

既に皆保険を州レベルで実現しているMA州の制度改革にあって、今回の連邦議会法案にないもの、それは『超党派の合意』である。MA州が皆保険制度を導入した際にも紹介したと思うが、当時のMA州の政治勢力図は、州知事=共和党、州議会=民主党とねじれていた。しかし、当初から、知事と州議会は連携を密にしており、知事のパフォーマンス(=一応抵抗したというアリバイ作り)まで仕組まれていた。そもそも皆保険制度の提案者は、当時の州知事のブレーンといわれている。

ところが、今回の連邦議会における法案作りは、上院でこそ、途中まで超党派による議論が継続されていたものの、そこでの議論が重視されることなく、最終的には党派的対立を際立たせる形となってしまった。つまり、『超党派の合意』が欠落してしまったのである。

幸い、ワシントンの民主党幹部達は、このメッセージを正確に受け止めているようだ。上記sourceによれば、Obama大統領は、共和党が賛成できる改革項目を洗い出すよう、指示を出したといわれている。その中でも拘りを持っているのは、保険会社への規制、個人・中小企業への補助、コスト抑制策などである。

しかし、取りまとめにあたる大統領の基本スタンスが定まっていないそうだ。より積極的に議会に働きかけるのか、それともこれまで以上に"hands-off"(不干渉)アプローチを取るのか。

一方の共和党サイドは、保険会社への規制や中小企業への補助、さらには医療過誤訴訟の制限などについては協議に応じるつもり(New York Times)のようだが、これまで民主党が展開してきたような『全面改革』のような様相にはしないだろう。

これまでの経緯を踏まえれば、いくら議会民主党が『超党派でやろう』と呼びかけても、これまで袖にされていた共和党が、それでは、といってほいほいついてくるとは思えない。White Houseが不干渉の立場を取れば、時間ばかりが費やされ、改革の火種さえ消えかねないのではないだろうか。

当websiteでは、かねがね、Obama大統領が明確な方針を打ち出さないことが混乱を招いている、と指摘してきた。ここは、大統領の政治生命を保つ(つまり、レームダックに陥らない)ためには、積極的に共和党へのアプローチを展開すべきではないか、と考える。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/連邦レベル

1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン 
Source :Goodbye Executive Medical Reimbursement Plans? (CCH)
管理人も正確に理解していなかったのだが、企業が提供する医療保険プランには、大きく分けて2種類ある。

 Fully-Insured PlanSelf-Insured Plan
概 要企業が保険会社から保険プランを購入する。
(保険購入型)
企業自らが直接従業員に保険給付を行う。
(直接給付型)
リスク負担企業は従業員一人当たり保険料を保険会社に支払う。保険給付は保険会社が行い、保険給付に伴うリスクは保険会社が負う。企業自らが保険給付を行う。通常、保険会社等が給付を代行するが、保険給付に伴うリスクは企業が負う。想定以上の給付に備え、再保険を購入する。
特 徴従業員数、年齢構成、給付実績等を基に、一人当たり保険料を算定。保険料は毎年見直す。大企業では、役職毎に給付内容を変えて複数のプランを提供する。
企業規模中小企業に多い。従業員3〜199人規模の企業の従業員の88%が加入(2008年)。大企業に多い。従業員5,000人以上規模の企業の従業員の89%が加入(2008年)。
市場シェア保険プラン提供を受けている従業員の45%が加入。保険プラン提供を受けている従業員の55%が加入。
法規制州法。差別禁止対象は、年齢、性別、人種、障害。連邦法(ERISA)。高額報酬者に偏った給付を差別禁止の対象としている。

参考資料:"Health Plan Differences : Fully-Insured vs. Self-Insured"(EBRI)"Is Self-Funding or Fully Insured Right For Your Company?"(PhysiciansCare)
最後の法規制の違いにより、"Fully-Insured Plan"では、高額報酬者や、企業内の特定職種を対象とした医療保険プランを提供することができていた。ところが、昨年末に可決された医療保険改革上院法案では、"Fully-Insured Plan"のこうした偏った給付を禁止する規定が入っている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル