1月9日 Obama vs. 労組 
Source :Unions Oppose Possible Health Insurance Tax (New York Times)
Obama大統領が上院法案に盛り込まれている"Cadillac Plans"課税を強く支持したことに、労組が強く反発している(「Topics2010年1月7日 両院協議開始」参照)。今のままでは、組合員の4分の1が課税対象になると見られているからである。労組は、今年中間選挙を迎える下院議員達に、上院法案の"Cadillac Plans"課税を削除するか、課税対象をより絞るように、圧力をかけている。

一方、件のNelson上院議員は、ここでも下院法案の高額所得者課税に反対しており、"Cadillac Plans"課税を削除して高額所得者課税に切り換えるという財源問題となった場合に、上院で可決される見通しが立たなくなる。

そもそも労組は、賃上げが難しい時期には、ベネフィット、特に医療保険を手厚くする、ということで成果を勝ち取ってきた経緯があるため、その保険プランはかなり恵まれたものとなっている。それに課税がなされた場合、医療保険プランの内容が見直され、窓口負担や免責額が高まる可能性が高い。それでは、この厳しい経済状況の中で、組合員の不平は高まるばかりである。

労組は、Obama大統領誕生に大きく貢献したのに、こんなことでは『裏切られた』という気持ちしか残らないであろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月8日 田舎芝居 
Source :Nelson to Fight for All States (New York Times)
自分の選出州にだけメリットのあるような取り引きを行なったために、Nelson上院議員は一斉砲火を浴びている。また、他州は自分の州も厳しいと同様の扱いを求めている。

こうした状況に耐えかねて、Nelson上院議員は、『すべての州がネブラスカと同じように負担を免れるよう、闘っていく』と宣言したのである。そんなことをすれば連邦政府の財政負担は大幅に増え、新たな財源措置を講じる必要が出てくる。ほとんど実現性のない、みせかけの宣言である。こんな田舎芝居を打たなければならない状況に追い込まれたNelson上院議員は、今後も地元州から尊敬を集めることができるのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月7日 両院協議開始 
Source :Pelosi: Democrats are 'very close' to health care deal after Obama meeting (USA Today)
6日、Obama大統領は、Pelosi下院議長、下院関係4委員長を招き、医療保険改革法案の統合について意見交換を行った。上院での議論再開を来週に控え、通常とは異なる形で両院協議が開始された。

Pelosi下院議長は、集中した議論の結果、結論に達するまでそれほど時間はかからない、と楽観的な見通しを示した一方で、「公的プラン」の取り扱いについては、何も語らなかったという。

また、Obama大統領は、下院幹部との会合で、"Cadillac Plans"への課税を導入するよう、強く求めたそうである(New York Times)。これは上院案には含まれているものの、労働組合が強く反発していることを受けて、下院法案には含まれていない。

やはり、Obama大統領は上院法案をベースにしようとしているようだ。しかし、下院民主党も失うことができるのは、たったの2票である(「Topics2009年11月8日(3) 下院法案可決」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月6日(1) 両院協議は異例の形式に 
Source :Democrats may bypass formal bill process on healthcare (Los Angeles Times)
通常、上下両院で異なる法案が可決された場合、両院から関係委員長などが選出されて両院協議会を立ち上げ、法案の一本化を図る。しかし、医療改革法案に関しては、正式な協議会は立ち上げない方向のようである。

その理由として、上記sourceでは、次の3点が挙げられている。
  1. 共和党の議事進行妨害を最小限にとどめる

  2. 法案審議のスケジュールが大幅に遅れており、早期可決を目指す

  3. 上院、下院の民主党議員が反対に回ることを極力防ぐ
当websiteでも何度か指摘している通り、上記2.と3.は密接に関連している。法案審議が長引けば長引くほど、中間選挙が近づいてくる。そうなると、選挙民受けを狙った政策要望、投票行動が激しくなっていく。そうなると、収拾がつかなくなる。

また、政治力学的には、上院案になるべく大きな修正が加わらないようにする必要もある。なにせ、上院法案は、"House of Cards"と呼ばれている(BusinessWeek)。カードを一枚でも抜いたり足したりしたら崩れてしまうほど危い、という訳である。

これではまったくの密室協議になってしまいかねない。Obama大統領を支持していた一般国民は、果たしてこうした政策決定プロセスを評価するのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月6日(2) 民主党政権への苛立ち 
Source :Swing states may be on the move (Los Angeles Times)
今、Obama政権が取り組もうとしている政策課題は、 と、いずれも当websiteではお馴染みのイシューである。

Obama政権としては、2008年11月の選挙で発行した手形を落とすためには当然の政治活動である。しかし、これが民主党支持層を分断しかねないという。なぜなら、一般国民や保守系・中間派の民主党支持層は、今最も切望している政策は「雇用増のための政策」だからである。失業率が10%にも達している中、就職ができなければ、他の政策が達成されても意味がない、と考える国民が多数存在するのは当たり前である。

その雇用対策が効果を現さない中、雇用よりも優先度の低い政策に力を入れるObama政権に対し、「一体何をやっているのか」と苛立っているのである。上記sourceでは、そうした苛立ちが、今年の中間選挙で中間層を民主党不支持に動かすのではないか、とみている。さらに、財政赤字の急速な拡大についても、中間層には懸念が広がっている。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「中間選挙(2010年)」、「無保険者対策/連邦レベル」、「移民/外国人労働者」、「労働組合

1月4日 特別扱いの見直し 
Source :In Reconciling Health Bill for All, Revisiting Provisions for a Few (New York Times)
上院法案審議の土壇場で挿入された『特別扱い』の例として紹介されている項目である。これらは、投票において60票を確保するために、あちこちで取り引きした結果である。しかし、Reid院内総務は、『上院法案は妥協による芸術である』と、まったく意に介していない。

上記sourceでは、最初の『建設業における"Pay-or-Play"ルールの厳格化』についてレポートしている。そのポイントは次の通り。
  1. 上院法案では、従業員50人未満の企業については、"Pay-or-Play"ルールの適用が免除されることになっている。

  2. ただし、建設業だけは、従業員5人未満の企業のみが適用免除となっている。

  3. これは、建設業関係の労働組合の要請を受けて、Jeff Merkley上院議員(D-OR)が押し込んだ項目である。

  4. 「建設業では従業員20人未満の企業が90%を占める。加えて、医療保険プランを提供しようとすると、報酬の12.5〜20%相当の費用が必要となる。本則通りであれば、建設業ではほとんど医療保険プランは提供されないことになる」というのが、その理由である。

  5. これに対し、住宅建設業協会(National Association of Home Builders)と全米商工会議所は、反論している。

  6. 著しい住宅不況と高い失業率(19.4%)の中で、不当にコスト増を強いられれば、さらに雇用を減らさざるを得なくなる、というのが理由である。

  7. 建設業労働組合は、"Cadillac Plans"課税には反対している。
余計な話だが、最後の7点目はおかしな話である。90%もの企業が医療保険プランを提供できない、と主張している一方で、高額プランを享受している組合員は守るということである。

このように、上院法案は、かなり無謀な特別扱い項目が多数含まれており、所謂「筋悪」である。もしかしたら、下院案の方が、3委員会で練ったものを合体したことから、「筋好」なのかもしれない。しかし、政治的には上院案を優先せざるを得ないという現実も重い。

一体、一般国民にとって『医療保険改革』とは何なのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月3日 個人加入義務にも批判 
Source :Opponents of a health insurance mandate mobilize (Los Angeles Times)
医療保険改革法案の柱の一つである、個人に保険加入義務を課すことが、各方面から批判を浴びている。 もちろん、改革推進派は、Medicaidの拡充、低中所得者層への補助金が用意されており、MA州でも加入義務を課すことで飛躍的に未加入率が低下していることを指摘している。

上下両院協議がこれから始まるという段階で、これほど基本的なところでまだまだ議論の集約ができていないことが露呈している。Obama大統領、連邦議会民主党幹部の舵取りは厳しい局面を迎えている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「移民/外国人労働者

1月2日 労働市場の潮流 
Source :Overlooked Trends of the Decade (Human Resource Executive Online)
上記sourceでは、この10年間のアメリカ労働市場における潮流をまとめている。まさに、当websiteとして注目している視点である。ポイントは次の通り。
  1. 仕事の概念

    1. インターネットの発達で、働き方が大きく変わった。机と電話だけですることはなくなった。従業員だけで仕事をすることはなくなった。机に座っている時間だけで評価することはできなくなった。

    2. 解雇するのに、直接面会する必要もなくなった。Eメールで充分だ。

    3. 仕事の概念が変わったために、従業員の評価方法も変わった。また、『人事管理』の考え方も変わった。

    4. 安全管理に関する法律も、在宅勤務に適用できなくなっている。

  2. 労働法適用範囲の限定

    1. 最高裁において、労働法適用の一般化よりも個別化が進んでいる。

    2. 一方で、法による社会規制も相当に増えた。Americans with Disabilities Act、Family and Medical Leave Act等々。

  3. 従業員の関与

    1. 労使関係はどんどん希薄になっており、かつてのように厚くなることはないと思われる。

    2. 一方で、業務遂行のためには信頼関係が重要になっており、人事部門は、従業員の仕事への関与に焦点を当てるようになっている。


  4. ワークライフバランス

    1. 働くことを一番に考えたくない労働者が増えている。

    2. 半分以上の上級管理職が昇進よりも生活を重視しているし、女性の場合はその傾向が顕著である。

    3. また、8割以上の父親が、フレックスタイムの導入に好意的であり、仕事を家に持ち帰ることは子供との親子関係に影響すると考えている。

    4. 若い世代になればなるほど、こうした傾向は強まる。

  5. ベネフィット改革

    1. 年金や医療プランは大きく変化している。その背景にあるのは、コスト削減だけではなく、健康管理やライフスタイルの誘導である。

    2. 企業側は、ベネフィットや報酬を統合化していき、従業員をトータルで評価しようとしている。

    3. 一方で、ボーナスのような柔軟な形態の報酬に重点を移している。

  6. 人事のブランド化

    1. 90年代後半以降、人材の採用はマーケティングであるとの考え方が強くなっている。

    2. これに伴い、CEO達は、人材採用、引き留め策を重視するようになってきた。

    3. 終身雇用はますますなくなりつつあるために、事業の継続性に対する懸念が高まっている。

    4. 内部での人材育成か、外部からの登用か、どちらを重視すべきかはまだまだ議論が続いている。
アメリカの労働市場はダイナミックに変化を遂げている。当websiteもしっかりと追いついていきたいと思う。

※ 参考テーマ「労働市場