Source : | Massachusetts Considering Single-Payer Healthcare System (Townhall.com) |
MA州議会は、単一保険制度の創設を検討している(S.579, H.1026)。両院とも、今月から公聴会を開いて意見聴取している。
MA州は、無保険者対策では独走状態にあり、コスト抑制策にも積極的である。しかしながら、PPACA施行後も無保険者はそれほど減少せず、20万人ほどの無保険者が残されている。また、医療費の抑制もなかなか成果が出ていない(「Topics2015年9月7日 MA州:医療費抑制策に黄信号」参照)。
そこで、「単一保険制度」を創設して、保険の運営主体を民間から州政府(両法案では"Massachusetts Health Care Trust")に移行させることを検討している(「Topics2016年1月28日 「単一保険制度」とは」参照)。「単一保険制度」は、VT州で導入が断念された(「Topics2014年12月20日 VT州:単一保険制度創設を断念」参照)ものの、今年の大統領選候補者選でサンダース氏が引継ぎ、今またMA州で議論されている。
MA州議会は、上下両院とも民主党が圧倒的多数を握っており、法案を可決すること自体はそれほど難しくない。法案成否の鍵を握るのは、Charlie Baker州知事ということになろう。
Baker州知事は、昨年1月に就任したばかりの共和党出身の知事である。ざっと経歴に目を通したところ、といった特徴がある。こうしてみると、民主党主導の法案に賛成(条件付?)することも充分にありうるのではないかと思える。
- 非営利医療機関のトップを勤めていた経験がある
- 父親は保守で共和党員、母親はリベラルで民主党員
- 政治活動の中では、社会問題はリベラル、財政は保守、というスタンス
- 州知事選の際、地元紙"Boston Globe"は、前任の民主党知事の遺産を受け継ぐのに適した人物と評し、20年来で初めて共和党候補者を推薦した
- 昨年11月の世論調査では、支持率が70%以上と高水準を保っている
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」
Source : | Anxiety over Transgender Women in Restrooms Persists (SHRM) |
North Carolina州(NC州)のCharlotte市は、自ら認識する性別に従ってトイレを利用することを認めた。
これに対してNC州は、3月23日、自治体がLGBTに配慮した差別禁止規則を独自に定めることを禁止する法律を成立させた。4月1日施行となる。
Charlotte市長は、「Indiana州などの法律よりも悪い。最悪のLGBT差別法だ」と反発している(「Topics2016年1月9日 公衆トイレ使用規制」参照)。
一方、連邦政府のOSHAやEEOCは、性的嗜好や性認識に基づく職場での差別を禁止しており、NC州法は明らかに反対方向を向いている。
上記sourceにあるように、トイレ問題は職場のLGBT対応では最も関心の高い課題である。それについて、連邦政府と一部の州政府で間逆の方向を向いた方針が示されると、企業内の対応は混乱する。
そして、この問題は対岸の火事では済まされない。2020年オリンピック・パラリンピックに向けて、日本でも熟考しなければならない問題だ。
※ 参考テーマ「LGBT」
Source : | Right-to-Work laws and income inequality (AEI) |
一般的に、Right-to-Work法(RTW)が所得格差を拡大していると言われている。しかし、上記sourceで紹介されている研究者の分析では、両者に直接的な関連はみられないと結論付けている。しかし、多くの州がRTW州になってしまえば、こうした分析も不要になってしまうのではないだろうか。
- 一般的に、労組結成と低水準の賃金との間には負の関係性があるとされている。このことを背景に、RTWが労組結成を抑制し、所得格差を拡大させるとの主張がある。
- 一方で、RTW州の方が、非RTW州よりも雇用増が大きいため、所得格差を緩和するとされている(「Topics2014年8月11日 所得増とRight-to-Work」参照)。
- そこで、RTWが直接所得格差を拡大するのかどうかを検証することを試みた。
- 所得情報は1964〜2013年の50年間分である。大事なのは、所得格差が拡大し始めたのが1980年代からである。
- RTW州は25州あるが、18州は1940年代、1950年代に法制化されている。また、Indiana, Michigan, Wisconsin各州が立法化したのは2012年以降である(「Topics2012年2月2日(2) IN州:"Right to Work"」、「Topics2016年12月13日 MIがRight to Work州に」、「Topics2015年3月11日 WIが25番目のRight to Work州に」参照)(State Right To Work Timeline - The National Right To Work Committee)。
- 従って、RTW法導入前後を比較してRTW法のインパクトを計測することができるのは、4州(Idaho, Louisiana, Oklahoma, Texas)のみである。
- この4州に関する分析によれば、RTW法が所得格差拡大にインパクトを与えているとは言えない。
- より多くのRTW州が出てくれば、その分析も進むであろう。
※ 参考テーマ「労働組合」、「労働市場」
Source : | Deal reached to boost California's minimum wage to $15, avoiding ballot box battle (LA Times) |
3月26日、California州知事、州議会民主党、労働組合の間で、最低賃金を$15/hに引き上げることで大筋合意が成立したそうだ。早ければ28日に州知事が公表する。(⇒3月28日州知事公表)
主な合意事項は次の通り。$15/hへの引き上げ方は、先に決定されたLA市の最低賃金と似ている(「Topics2015年5月24日 LAも$15へ」参照)。
- 2022年までに最低賃金を$15/hまで引き上げる。
現 在 $10.00/h 2017年1月 $10.50/h 2018年1月 $11.00/h 2019年1月 $12.00/h 2020年1月 $13.00/h 2021年1月 $14.00/h 2022年1月 $15.00/h 2023年〜 CPI上昇率で引き上げ - 従業員25人未満の企業は、一年遅れのスケジュール。
- 景気後退局面で州知事はスケジュールの一旦停止を命じることができる。
- 今年11月に行なわれる予定の州民投票を取り下げる。
この引き上げが成立すれば、州レベルでは初の$15/hとなる。
※ 参考テーマ「最低賃金」
Source : | Cadillac Tax Delay Is a Down Payment on Its Repeal (U.S. Chamber of Commerce) |
アメリカ経済界は、Cadillac Taxの実施2年延期では意味がなく、廃止すべきとの論調を徹底させている(「Topics2016年2月10日 Cadillac Tax修正提案」参照)。上記の全米商工会議所(USCC)の主張のポイントは次の通り。ただ、廃止になると、財源不足となり、財政赤字は広がってしまう。
- 実施が2年延期になった後も、企業側は提供プランの見直しを続けている。
- しかも、その変更内容は、従業員負担を増やしたり、給付内容を縮減する方向である。
- そのため、企業としては、Cadillac Taxが賦課されないよう、ゆっくりと時間をかけてプランを修正していく考えである。
Source: Employee Benefits News- Cadillac Taxの政策目的は、医療費を抑制することが目的であったはずだが、施行されて起こることは、従業員に不利になることばかりである。
- 国民も施行延期ではなく、廃止を望んでいる。
Source: Morning Consult
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Chicago’s Plan to Overhaul City Pensions Dashed by Top Court (Bloomberg Business) |
Chicago市の財政は、絶体絶命の危機に陥った。3月24日、IL州最高裁は、Chicago市の年金改革法に州憲法違反との判決を下した。これは、昨年7月の第二審判決を支持するものであり、同じく5月のIL州政府年金の違憲判決と整合的なものである(「Topics2015年7月28日 Chicago年金改革に違憲判決」参照)。
予想されていた結果といえばそれまでだが、Chicago市にとっては悪夢のような結果である。Rahm Emanuel市長は、「残念な結果であるが、引き続き職員年金の維持と、市民の公正な負担、市財政の健全化に取り組む」との冷静なメッセージを発表したものの、年金プランの積立不足額は、毎日$2.48Mずつ増加している。
金融市場の評価はネガティブに動いている。Moody'sの格付けは既に「投機的」である"Ba1"であり、この先、適切な対応策が採られなければさらに切り下げられる可能性があるとしている(「Topics2015年5月16日 Chicago vs Moody's」参照)。しかも、IL州法により、市が破産申請することができない。
破産処理ができないのであれば、給付債務が増えるのを放置するか、固定資産税などで増税するしかなくなる。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Health Care Spending Growth and Federal Policy (HHS) |
3月22日、HHSは、PPACA本格稼働初年度となる2014年、さらには2015年の医療費の動向について、分析結果を公表した。主なポイントは次の通り。いずれも一人当たりの指標で分析しているので目立たないのかもしれないが、アメリカ社会全体の医療費負担がPPACAを切っ掛けに大幅に増加したことは間違いない。
- 2014年、国民一人当たり医療費の伸び率は4.3%と穏やかな伸びとなった。 ただし、2010〜2013年はGDP伸び率とほぼ同じであったのに対して、2014年はそれを上回る伸びとなった。
- 医療保険制度別に一人当たり医療費の伸びを見ると、Medicareが2.4%、民間保険プランが2.9%、Medicaidに至っては△3.6%と、いずれも低い伸びにとどまっている。このことから、上記国民一人当たり医療費の伸び率が高まった主因は、無保険者が保険加入したことと考えられる。
- 2014年、Medicare及び民間保険プランにおいて、一人当たり処方薬費用の伸びが著しかった。
- これは、明らかにC型肝炎特効薬の出現によるものである(「Topics2015年8月20日 PBM:高額医薬品除外」参照)。
- 民間保険プランにおける加入者一人当たり医療費伸び率は、2014年上昇に転じている。これは、PPACAの規定により既往症による加入拒否の禁止、給付内容の最低ラインの設定などの規制強化が図られたことも、一因となっている。もちろん、大企業ががんばって医療費抑制策を講じていることも貢献しているだろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」、「医薬品」
Source : | Maine Community Health Options, the only profitable co-op in 2014, posts major losses (Healthcare Payer News) |
またまたConsumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"のバッドニュースである。CO-OPs初年となる2014年に黒字を計上したのは、Maine州のCommunity Health Options一つだけであった(「Topics2015年8月5日 CO-OPs初年度は散々」参照)。ところが、そのME州CO-OPが、2015年に$31Mの赤字を計上した。それだけでなく、2016年の見通しについても、$43Mの赤字を示した。PPACAの規定では保険料を1年間変更することはできないので、今から保険料収入を引き上げることはできない。
最も元気の良かったME州CO-OPが不調になったことから、CO-OPs自体の存続が問われることになる(「Topics2015年11月5日 CO-OP閉鎖は11に」参照)。ちなみに、23あったCO-OPsのうち、加入者募集をやめたところも含めて12が閉鎖状態となっているそうだ。
※ 参考テーマ「CO-OP」
Source : | California's pension debt puts it $175.1 billion in the red (Sacramento Bee) |
3月18日、CA州政府は2014-15年度の決算を公表した。収支見合いだったものが、決算では$175.1Bの赤字(債務超過額)となった。その主因は州政府職員に対する退職後給付である。2017-18年度になると、これに退職者医療プランの積立不足額がB/Sにオンされるため、州政府の債務額はさらに大きく膨らむ。ちなみに、2016-17年度予算では、退職者医療プランの積立不足額は$71.8Bとなっている。危機感としては薄いとしても、大きな債務がB/Sに乗ってくることで、それなりのインパクトはあるものと思われる(「Topics2016年3月15日 地方政府のOPEB」参照)。
主な赤字項目 債務額
(積立不足額)債務額($175.1B)
に占める割合年金プラン $89.9B 51.3% 州債券残高 $67.1B 38.3%
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「自治体退職者医療/GAS 45」
Source : | EEOC’s Massive Pay Data Form Won’t Help It Fight Discrimination (U.S. Chamber of Commerce) |
全米商工会議所(USCC)は、3月16日、EEOCが開いた公聴会で意見陳述し、男女間の賃金格差をなくすためにEEOCと労働省が提案している賃金データ徴収案に反対する意見を述べた(「Topics2016年2月1日 賃金男女格差是正策」参照)。その主な理由は次の通り。USCCの主張はもっともである。しかし、Obama大統領発のプロジェクトであり、経営者の強い反対を押し切って提案は施行されるのだろう。
- 膨大なデータを調査票に記入せざるを得ず、事務負担が過重である。
- それだけの事務負担を費やすにも拘わらず、収集されたデータに基づいて差別の有無を判別することはできない。
- そもそも従業員一人ひとりのバックグランドや職務が異なっており、単純に報酬が異なるかどうかで法的に差別があるかどうかを判別することはできない。
※ 参考テーマ「人事政策・労働法制」