Source : | Only Democrats are left on labor relations board (Government Executive) |
12月16日、National Labor Relations Board (NLRB)のボードメンバーであったBrian Hayes氏が任期満了で退任した。これで、年初には二人いた共和党系のボードメンバーが居なくなったことになる。
現在のメンバー構成は次の通り。さらに、上表の注(※)にも記したとおり、"recess appointment"によるメンバー二人については、今年中に上院の承認が得られなければ失効となる。おそらく、財政の崖対応で忙殺されている上院で、年内に承認を得るのは難しいだろう。そうなると、"recess appointment"を再び連発するしかなくなる。
役 職 氏 名 政 党 指名者 任 期 上院承認 Chairman Mark Gaston Pearce D President Obama 2010.4.7〜2013.8.27 ○ 指名のみ Sharon Block (D) President Obama 2012.1.4〜 × 指名のみ Richard Griffin (D) President Obama 2012.1.4〜 × 空 席 空 席 事務局長 Lafe Solomon - President Obama 2011.1.27〜 ×
※ 指名のみの2氏は、いずれも大統領による"recess appointment"であり、今年中に上院の承認が得られなければ、空席扱いとなる。
おまけに、Chairmanの任期は来年8月と、もうそこまで迫っているのである。
NLRBは、メンバーが3人でも定足数は満たしているとの見解を示しているそうだが、まともな仕事ができているとはとても言えまい。年初に『ボロボロのNLRB』と紹介したが、まさに崩壊寸前まで追い込まれている(「Topics2012年1月6日 ボロボロのNLRB」参照)。
しかも、労使紛争の調停役なのに、民主党メンバーのみになっていることで、その信頼性が大きく揺らぐことは避けられない。実際、連邦議会下院の行政府監督委員会は、今月13日、NLRBが行政機関としての役割を果たしていない、との報告書を公表している。そこでは、大きく3つの問題点を指摘している。もちろん、共和党が多数を握っている下院委員会の報告書だから、いくらかは割り引く必要がある。しかし、これだけ機能面で問題を抱えたままでは、労働組合にとっても困った事態となろう。
- NLRBが下した判決結果が労働組合側に有利になり過ぎている。実際、裁判所で覆されている例が2件もある。
- "Recess appointment"が行われている。(上述)
- 内部統制ができていない。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | FAQ: Grandfathered Health Plans (Kaiser Health News) |
PPACAの法案を通す際、Obama大統領、民主党は、『今入っている保険プランには変更をもたらさない。だから安心してもらいたい』とのメッセージを発出し続けた。上記sourceは、そのPPACA適用除外となる保険プランの実態について、概要を紹介している。加入者割合、企業割合ともに、大きく低下している。これは、先に示した適用除外要件の範囲を超えて、保険料・免責額・自己負担の引き上げが行われたためとみられる。今後もこの傾向が続けば、『保険プランの変更はなかった』と実感できる従業員は限られた人々になってしまうだろう。
- 「適用除外」の要件
「Topics2010年6月19日 「適用除外」の要件」参照。
- 強制適用条項
適用除外保険プランでも、PPACAの規定を強制適用させられるものもある。
- 生涯を通じた保険給付に上限を設けることは禁止、
- 26歳以下の被扶養者に加入資格を認める、等々。
- 「適用除外」保険プランへの加入状況
2011年 2012年 企業提供保険プラン加入者のうち、「適用除外」保険プラン加入者の割合 56% 48% 保険プランを提供している企業のうち、「適用除外」保険プランを提供している企業の割合 72% 58%
そうした事態を回避するための最大の鍵は、やはり「医療費上昇の抑制」となる。そうした意味でも、Obama政権は医療費抑制の具体策を講じていかなければならない。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Specialists: ACO Cost Center or Potential Partner in Efficiency? (AIS Health) |
試みが始まったばかりのACOでは、専門医は『コストセンター』と見られている。専門医は、特定の医療提供機関のネットワークには所属せず、出来高払い制度を維持している場合が多いためである。
いきなり脱線してしまうが、管理人の数少ない経験でも、それは実感できる。家内がアメリカで出産した際、MD州の病院に入院した。出産前の担当産婦人科医は、Dr. Seigelで、彼のクリニックで検診を受け、いざ出産という時に、Shady Grove Adventist Hospitalに入院した。
Dr. Seigelへの支払いは、検診から出産までが込みであったので、別払い。病院への支払いは、退院時にクレジット・カードで支払いで済み。それでもうお終いと思っていたら、3ヶ月後ぐらいに請求書が来てしまった。何かの間違いだろうとほったらかしておいたら、再請求書が来て、今度は、支払わないと裁判に訴えるという警告まで入っていた。
これはまずいと思ってよく読んでみると、麻酔医への支払いに関する請求書であった。すぐにチェックを送付して事なきをえたが、麻酔医も、産婦人科医と同様、専門医。支払いもまったく別建てということであったのだ。
現時点で、試みが始まっているMedicare Pioneer ACOでは、プライマリー・ケア医の育成、組織化に重点が置かれており、専門医のACOへの統合にはほとんど注目していない(「Topics2012年2月15日 ACOは普及するか?」参照)。従って、その診療報酬も出来高払いのままのところが大半である。
しかし、本格的なACOを地域社会で根付かせるためには、専門医をACOのネットワークに取り込む必要性があることは明らかだ。そこまで含めた患者へのケア、コスト抑制を図らなければ、医療費全体の効率化にはつながらない。そのためには、これまでになかった大きな課題を解決しなければならない。これは、今までの専門医の常識からはかけ離れている。専門医は専門の立場で判断して診療を提供してきたのが、プライマリー・ケア医の指示に基づいて診療を提供する形になるのである。上記sourceでは、これは専門医にとってもプライマリー・ケア医にとっても苦痛であろう、と評している。
- 専門医のパフォーマンスを評価し、それに基づいてプライマリー・ケア医が専門医に照会する。
- プライマリー・ケア医が専門医への照会や入院などについて、患者に直接指示する。
※ 参考テーマ「ACO」
Source : | Medicare Silver Bullets: What’s The Best Way To Control Costs? (Kaiser Health News) |
「Medicareのコストを抑制するために一つだけ手段を講じるとすれば、何をすればよいか?」
Kaiser Health Newsの質問に対して、Medicare、医療政策の専門家達は次のように答えている。まさに議論百出であり、専門家の間でも、意見の一致を図るのはなかなか難しい。ということで、最後のコメントが出てくるのだろう。
- チーム医療、医療機関の連携を推進するような診療報酬体系に置き換える。
- 患者に提供する選択肢を増やして競争を促すとともに、確定拠出的な保険料補助にし、政府の監督を強化する。
- 処方薬の価格を連邦レベルで一元化する、または連邦政府に交渉権を持たせる。
- 新たな予防医療の推進、健康増進策を講じる。
- 診療報酬の出来高払い制度を、7年間かけて段階的に廃止する。
- 出来高払い制度から包括払い制度に移行する。
- 医療の質と結果に基づいた診療報酬に改める。
- MedicareのPart A, B, Dを統合し、再保険分も含めてすべて保険料で賄う。その代わり、Medicareの悪用、医療技術適用の適正化を図る。
- Part Bの自己負担を、25〜30%に引き上げる。
- どの方策も確実ではないため、当面、PPACAに盛り込まれた改革の結果を待つ。
しかし、『当面待ち』という選択肢がある一方、MA州で提出されている法案のように、だから当面何でもやってみよう、というのもありだろう(「Topics2012年5月15日 Spaghetti approach:MA州」参照)。医療の世界は、試行錯誤が必要のようだ。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Survey: Feds have it good compared to private sector workers (GovExec.com) |
上記sourceは、Rusmussenが行なった連邦政府職員に関する世論調査の結果概要である。連邦政府職員の方が恵まれている、との認識が強いようだが、その割には労働組合に対して好意的なところが伺われる。アメリカ国民にとって、連邦政府職員は州政府や自治体職員よりも遠い存在だからかもしれない。
民間企業の従業員の方がよく働いている ⇒ 67% 連邦政府職員の方が雇用が確保されている ⇒ 67% 連邦政府職員の方が給料はいい ⇒ 51% 連邦政府職員の労働組合は好ましい ⇒ 51% 連邦政府職員の労働組合は好ましくない ⇒ 46% 連邦政府の雇用を増やすことは経済にとってよくない ⇒ 57% 連邦政府の雇用を増やすことは経済にとってよい ⇒ 33% 長期失業者は連邦政府が雇用すべきだ ⇒ 12%
※ 参考テーマ「労働市場」、「労働組合」
Source : | State Decisions For Creating Health Insurance Exchanges in 2014, as of December 14, 2012 (Kaiser Family Foundation) |
最終期限を迎え、結局、独自にExchangeを設立する州は、19州のみにとどまった。2014年のPPACA本格施行に向けて、Obama政権の苦労が続きそうである。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | Calpers Bankruptcy Strategy Pits Retirees Against All Others (Businessweek) San Bernardino's bankruptcy case becomes a battle of titans (San Bernardino County Sun) |
現在、CalPERSは、CA州内の破綻自治体2市との間で年金拠出金を巡って争っている(「Topics2012年10月31日 CalPERSの提訴続く」参照)。CalPERSの主張は次の通り。これに対し、Chapter 9の専門家は疑問を呈している。
- 自治体のCalPERSに対する年金拠出金は、行政債務である。
- また、州政府職員年金は、CA州憲法により保護されている。
- 従って、CalPERSが有する債権は、優先債権として扱われるべきである。
- 同時に、リスクを充分認識している機関投資家の債権よりも優先されるべきである。
自治体債券を保有する機関投資家は、当然、Chapter 9専門家と同様の意見を持っており、少なくとも「連邦」破産裁判所では、CA州の事情を優先させるわけにはいかない、と構えている。さらに、仮に破産裁判所でCalPERSの主張が認められた場合、機関投資家はリスク・プレミアムを要求し、自治体の債券発行コストは急騰することになろう。この瞬間、CA州の自治体の問題が全米の金融市場の問題に広がってしまうのである。
- Chapter 9の目的は、行政サービスを継続させることにある。
- CalPERSの主張通りに年金債務が優先的に支払われれば、自治体の再建は難しくなり、消滅させるしかなくなる。
- CalPERSの債権も、他の無担保債権と同列である。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | State Decisions For Creating Health Insurance Exchanges in 2014, as of December 13, 2012 (Kaiser Family Foundation) |
いよいよ、本日は、Exchange創設宣言の最終期限である。上記sourceでは、直近の情報を基に州立Exchangeを創設すると宣言した州を紹介している。依然として態度を保留しているのは、Florida州とUtah州の2州だけとなっている。
現時点で、State-based Exchangeを創設すると宣言したのは20州のみ。態度保留のFL州がState-based Exchangeを創設するとは思えないので、半数を割り込んだことは確実である。さて、連邦政府が所管したことのない州での保険市場を運営できるのかどうか。かなりの苦戦が予想される。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | Limits on Unions Pass in Michigan, Once a Mainstay (New York Times) |
11日、Michigan州議会は、労働組合費の支払いを雇用の条件とすることを禁止する法案を可決した。州知事も即刻署名し、同法案は成立した。
source : The National Right to Work Legal Defense Foundation
これにより、MI州は、Indiana州に続いて24番目の"Right to Work" Statesとなった(「Topics2012年1月27日 "Right to Work" State」参照)。法律上の施行日は、来年1月1日である。
しかし、同法案の提出が野党民主党の不意を突くものであり、審議時間も短かったため、民主党・労組は猛反発しており、訴訟や州民投票に持ち込まれる可能性が高い。従って、法の執行が定着するかどうかは不明だが、こうした動きがじわじわと広がっているという傾向は変わらない。
MI州といえば、最強労組UAW発祥の地(1935年)である。そこが"Right to Work" Statesに変わったということで、時代の流れを感じざるを得ない。
歴史やイデオロギーの議論は置いておくとして、背景には高い失業率がある。MI州の失業率は、リーマンショック後で最高14.2%まで上昇し、現時点でも9.1%と全米平均(7.7%)を大きく上回っている。
ただし、"Right to Work"法がどれだけ雇用創出に役立つかについては、賛否が分かれるところである(Washington Post)。というように、評価は定まっていない。それでも、労働組合の活動が制限的である州として投資を呼び込もうとする政治家たちの思惑が、"Right to Work" Statesを拡大させているのだろう。
- "Right to Work" Statesの平均的な労働者の所得は、同法のない州のそれよりも年間$1500低い。
- 個人所得でみて上位10州のうち、8州が"Right to Work" Statesである。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | KHN Changes How It Describes Medicaid Eligibility Level Under Health Law (Kaiser Health News) |
つい最近まで、PPACAにおけるMedicaid加入資格の拡充と財源については、次のように説明されてきた。ところが、突然、先週末あたりから、本件に関する報道で、加入資格の緩和を『FPL 138%以下』と表記され始めた。最初は、記載ミスだと思っていたところ、上記sourceを発見して驚いた次第である。おおよその流れは次の通り。
- 加入資格の緩和 : FPL 133%以下(2014年〜)
- 連邦政府負担:
- 2014〜2016年:新規加入者分の100%
- 2017年:95%
- 2018年:94%
- 2019年:93%
- 2020年〜:90%
なんと曖昧な法案決定なのか。日本であれば、とても許されない操作である。しかし、ここからは頭を切り替えて、『FPL 138%以下』と叩き込むしかない。
- PPACAには、加入資格緩和の上限値を金額で明記している。例えば、4人家族であれば年収$32,000以下、個人であれば年収$14,900以下。
- この金額は、FPLで138%に相当する。
- しかし、両院協議会で法案を協議している中で、既に上院で可決した法案の中にFPL133%と明記していたため、これを変更するとなると上院で再度議論しなければならなくなることをおそれて、5%の差異を無視してFPLは133%の表記を堅持した。
- しかし、実質的にはやはりFPL138%なので、最近になって報道各社はこの数字を使い始めた。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | HHS Tells States It Will Not Fund Partial Medicaid Expansion (Kaiser Health News) |
6月の連邦最高裁判決(「Topics2012年6月30日 医療保険改革法に合憲判決」参照)以降、州政府の間では、Medicaid加入資格に関する州政府の裁量性が高まったとして、加入資格の部分拡充(例えばFPL 100%)を認めてほしい、との要望が増えていた。
この要望に対して、10日、HHSが回答を示した。あくまでFPL 138%にまで加入資格を引き上げた場合のみ、新規加入者分の連邦負担を行うというのである。
- 部分拡充については、PPACAに基づく新規加入者分の連邦負担を行わない。
- 2017年以降、例外措置を認めることはあり得るが、その場合でも、FPL 138%以下について医療保障が実現していることが条件となる。
現時点での各州のMedicaid加入資格は、次のような分布になっている。また、平均的な加入資格とPPACAの拡充策の関係は次の図の通りである。
source : Kaiser Family Foundationこの決定に、多くの州知事が落胆している。特に、現在の加入資格が低く抑えられている州(南部に多い)では、着実に低所得者層の無保険者を減少させようとする試みは不可能となり、一気にFPL 138%まで引き上げるか、現状維持しかなくなる。加入資格を引き上げた後、連邦政府が負担割合の約束を守らなかった場合の財政リスクがより大きくなるからである。
source : Kaiser Family Foundation
注:もちろんFPL 138%である(「Topics2012年12月12日(1) Medicaid拡充はFPL138%」参照)。
HHSからすれば、既にFPL 100%以上にまで拡充している州(東部に多い)との不公平が生じてしまう、というのが理由になっている。しかし、財政の崖を目前にした連邦政府の方も、ここで一気にハードルを引き上げることで、Medicaid拡充に伴う負担を最小限に抑制したいとの思惑が働いているのではないだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | Partial Medicaid expansions won’t get full federal funding, administration tells states (Washington Post) |
State-basedのExchange設立に関する意思表明期日が迫ってくる中、前進と後退があった。
まず、前進は、state-basedのExchangeについて、6つの州の申請が認められた。右表では、欄が青色になっている州がそれである。いずれもExchange第一世代およびPPACA以前からExchangeを設立しているところである(「Topics2012年7月31日 "Exchange"第一世代」参照)。
一方、10日、意思表明をしていなかったTennessee州と、設立の方向で動いていたWest Virginia州が、state-basedのExchange設立を断念した旨表明した(Kaiser Health News)。同じKHNの記事では、14州+D.C.しか設立にコミットしていないと伝えており、右表では、20州が設立方向としているのがごそっと抜け落ちる可能性が高い。
このままではExchange設立は躓いた、との評価になりそうである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」