2月20日 HSA復調 
Source :Health Savings Accounts and Health Reimbursement Arrangements: Assets, Account Balances, and Rollovers, 2006-2011 (EBRI)
HSAの残高総額、口座数とも2011年には大きく伸びたそうだ。また、口座ごとの平均残高も再び増加に転じた(「Topics2011年1月12日 HSAは増えたけれど」参照)。
保険料、自己負担の急増を反映した形となっている。

※ 参考テーマ「HSA

2月19日 MD州:同性婚法案下院可決 
Source :Same-sex marriage bill passes Maryland House of Delegates (Washington Post)
17日夜、Maryland州(MD)議会下院は、同性婚認可法案(HB 438)を可決した。上院の方は、昨年、同様の法案を可決した経緯がある(「Topics2011年2月24日(2) MD州上院で同性婚法案可決」参照)。また、MD州知事も、署名する意思があることを明言している。このため、MD州が8番目の同性婚認可州となる可能性が高い。
同性婚の法的ステータス
州 法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
New York
Washington
California○→×(→○)*
Rhode Island
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Delaware
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
もちろん、反対派は今年11月の州民投票にかけられるよう活動を活発化していくことになる。

※ 参考テーマ「同性カップル

2月18日 協議成立 
Source :Congress Acts to Extend Payroll Tax Cut and Jobless Aid (New York Times)
与野党の協議がまとまり、公的年金保険料負担の引き下げ等の懸案事項に決着がついた。17日、連邦議会上下両院はそれぞれ関連法案(HR 3630)を可決した。大統領も時を移さず署名することになる。

今回の措置の概要は次の通り(Los Angeles Times, Washington Post, New York Times)。 もちろん、保険料引き下げと"Doc Fix"については、2013年以降どうするのか、という問題は残されている。ただ、その前の11月に大統領選挙、連邦議会選挙が予定されており、それらの解決は、選挙後の課題となる。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare」、「解雇事情/失業対策

2月17日 NJ州議会:同性婚法案可決 
Source :NJ Assembly Passes Gay Marriage Bill (New York Times)
New Jersey(NY)の州議会は、13日に上院、17日に下院で、同性婚認可法案を可決した。投票結果はそれぞれ次の通り。
上 院
賛成反対
民主党222
共和党214
合 計2416
下 院
賛成反対
民主党424
共和党029
合 計4233
NJ州議会は、上下両院とも民主党が過半を握っており、当然の結果ではある。しかし、NJ州知事は共和党であり、拒否権発動を既に明言している。従って、同法案は成立には至らないものと思われる。(2月17日に、州知事が拒否権発動)
同性婚の法的ステータス
州 法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
New York
Washington
California○→×(→○)*
Rhode Island
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Delaware
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
※ 参考テーマ「同性カップル

2月16日 社会保障依存症? 
Source :Even Critics of Safety Net Increasingly Depend on It (New York Times)
上記sourceは、ちょっと長いが、アメリカの普通の人達がどのように考えているのかを垣間見ることができるので、じっくりお読みになることをお勧めする。

アメリカ社会における社会保障制度の役割がどんどん大きくなっている。次のNew York Times紙の資料をご覧いただければそれを実感できる。
Multimedia (New York Times)

Where Americans Most Depend on Government Benefits

More Americans Relying on Government Benefits
これほどまでに社会保障の存在感が高くなっていると、社会保障制度の持続可能性に懸念を持たざるを得ない。いくつか例を挙げると、 Romney候補は、『社会保障を提供する社会か、機会を提供する社会か』の選択をしなければならない、と述べているそうだが、公的年金、高齢者医療に関する給付を削減するのは、大変難しい。既にそれらがあることを前提に人生設計がなされているからだ。

もちろん、子孫に負担を残してはいけない、という思いはあるものの、目の前にいる高齢者の給付を切ることは、政治家には難しい。

※ 参考テーマ「社会保障全般

2月15日 ACOは普及するか? 
Source :Next Steps for ACOs (Health Policy Briefs)
今月1日の"Topics"で、Accountable Care Organizations" (ACO)が当websiteに初登場した(「Topics2012年2月1日 保険会社絶滅の予想」参照)。と思っていたところ、このACOに関する基礎的な情報が掲載されたコラムが公表された(上記source)。

そこで、上記sourceにそって、少し丁寧にACOのポイントをまとめておくこととする。
  1. これまでの変遷

    ほとんどの医療保険プランは、出来高払い方式("fee-for-service")を基本としている。この方式では、診療コストが高騰するとの批判があり、これまでにもいくつかの挑戦が試みられてきた。
    1970年代診療機関と保険会社の連携強化の動き保険加入者達が、受診機関を極めて限定されていることを嫌い、普及しなかった。
    1980〜90年代HMOs (Health maintenance organizations)診療内容とコストをコントロールしようとしたが、やはり加入者達がHMOの過干渉を嫌い、人気を失っていった。
    2007年〜ACOs (Accountable Care Organizations)独立した診療機関同士がバーチャルな連携を強化することで、連続的な診療を提供する試み。2007年にその構想が公表された。
  2. 医療の質の確保

    一定の医療の質を確保し、不必要な医療資源の費消を防ぐため、一定の基準を満たした診療機関に対しては金銭的な報奨を提供する。

    これまで、少なくとも8つの民間保険プランが、医療機関との"shared risk"取り決めにより、ACOs協定を結んでいる。一定のコスト基準を下回った場合、医療機関は報奨金を受け取ることができる。逆に、コスト基準を上回った場合には、ペナルティが課せられる。

    また、少なくとも27の民間保険プランが、医療機関との"shared savings"取り決めにより、ACOs協定を結んでいる。この場合、報奨金を受け取る方の取り決めはあるが、ペナルティは課せられない。

    さらに、いくつかの民間のACO取り決めでは、"partial capitation"を採用している。この仕組みの中では、加入者数による報酬と、診療による報酬が組み合されている。

  3. 連邦政府の取り組み

    2005〜2010年の間、Medicareにおいて、10の医療団体が参加する実験的プロジェクトが実施された。さらに、この実験を実践に結びつけるため、医療保険改革法では、MedicareがACOsを契約することを認めている。呼称は"Medicare Shared Savings Program"。また、CMSは、"Pioneer ACO model"という実証実験を2011年5月に開始している。

  4. Medicare ACOs とは

    典型的なMedicareでは、医療の質と意思決定は保険会社が監督する。一方、Medicare ACOs の場合には、意思決定は診療機関が行うが、報酬インセンティブを通じて自ら診療を律することが求められる。同時に、Medicare ACOs は、医療の質も(事後的に)監視する。Medicare ACOs が既存の保険プランと異なるのは、主に次の3点である。

    1. 診療報酬:出来高払い+加入者一人あたり医療費の予測値を下回った場合の報奨金

    2. 医療の質の監視:医療機関は、33項目にわたる質の基準をクリアしないと報奨金を受け取れない。

    3. ACO加入者は、診療機関を自由に選択できる。特定の診療機関に行くよう強制されることはない。

  5. ACOs が抱える課題

    これまでの実証実験から得られる課題は次の通り。

    1. 報奨金が少ない。これは、現在の医療保険プランでも無駄な診療・検査等は厳しくはねられていることによる。

    2. 医療の質の基準が適切かどうか。

    3. 独立した医療機関の判断が医療費の増加につながっていないか。

    4. 独禁法に違反しないか。

    5. 診療報酬はどのような体系が望ましいか。
確かに、ACOsを運営するためには、保険会社は必須ではないかもしれない。しかし、そのノウハウを有効に利用することも重要な気がする。いずれにしても、常にシステムに改良を加えようとする試みには敬意を表したい。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

2月14日 具体策に乏しい予算教書 
Source :The 2013 Budget (OMB)
『具体策に乏しい』とは、あくまでも、当websiteの関心事項について、である。以下、言及されている主な政策課題についてまとめておく。 最後の、企業年金プラン提供義務化は、ちょっと驚きである。こういう形で年金加入の義務化を図る考え方は、フランスでは採られているものの、アメリカではあまり見かけない。かなり社会主義的な匂いのする提案である。

※ 参考テーマ「一般教書演説

2月13日 ゲストワーカーの規制強化 
Source :Labor Dept. Issues New Rules for Guest Workers (New York Tiems)
10日、DOLは、ゲストワーカーに関する新たな規制を公表した。ゲストワーカーとは、季節性のある労働について短期間で海外から労働者を雇用する仕組みで、小規模企業、漁業・水産加工業、テーマ・パーク、ホテル業、造園業などで使用されている。Visaは、H-2Bとなる。

主な規制強化策は次の通り。 施行は、4月23日となっている。労働省は、不当な外国人雇用を制限し、アメリカ人の雇用を促進させる策、として主張しているが、雇い主側からすると、手続きが長期化し、アメリカ人の採用活動に関する判定が曖昧になりかねないとして、強く反発している。事実上、ゲストワーカーを呼び寄せることは難しくなりそうである。

ただし、農業関係だけは適用しない、としており、そこはある程度現実的な解となっているのかもしれない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

2月12日 個人加入義務が外れたら 
Source :Insurers, Employers Fear Impact if Only Individual Mandate Is Killed (AIS)
仮に、連邦最高裁が、医療保険改革法の重要な柱である『個人加入義務』が憲法違反と判断した場合、最高裁が『個人加入義務』だけを執行停止にするのか、医療保険改革法全体を執行停止にするのか、大きな分かれ目となる。

常識的には、医療保険改革法全体は既に執行されている部分もあり、全体を停止することは現実的ではないと思う。だからだろう、上記sourceでは、『個人加入義務』だけが外された場合、保険会社や企業は困ったことになる、という意見を紹介している。

まず、保険会社の場合、 などがそのまま残ってしまうと、保険料の高騰につながりかねないと懸念している。いずれも、加入義務に伴い保険加入者が増えることを前提とした規制で、加入者増がないままコスト増だけが実現してしまう可能性があるからだ。

一方、企業、特に中小企業の場合、『個人加入義務』だけが外され、保険プラン提供義務とそれに対する罰則(従業員50人以上の場合)だけが残ってしまうと、保険料負担が重くなり過ぎ、保険プラン提供は事実上できなくなり、ペナルティのみ支払うことになるという。

このように、連邦最高裁の判決は、いろいろなところに影響をもたらす可能性を秘めており、全国民が注目せざるを得ないのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月11日 CA州政府にダブルパンチ 
Sources :Federal officials reject California's plan to charge Medi-Cal co-payments (Sacramento Bee)
Judge Blocks 10% Medicaid Cut for Physicians in California (Medscape Medical News)
CA州政府は、低所得層を対象とした医療保険プランの見直しを進めようとしている。ところが、そうした動きを認めないとする決定が行われた。
  1. Medi-Calの加入者に窓口負担(自己負担)を求める ← 連邦政府(CMS)が認可せず

  2. Medicaid診療報酬の10%削減 ← 削減撤回を求める訴訟を連邦地方裁判所が認める
これらの見直し措置は、CA州政府の財政赤字削減策の一環なのであり、総体として財政赤字削減の必要性は誰もが認めている。ところが、こうやって、個別の分野、事象に降りていくと、反対が強くなり、その分野だけの理屈で要否が判断されてしまう。まさに『総論賛成、各論反対』の典型である。

現在の欧州債務危機を抱える国々、そしてわが国も、こうした現実に悩まされ続けている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州