2月10日 WA州:7番目の同性婚認可州 
Source :Washington state lawmakers pass gay marriage bil (Los Angeles Times)
8日、WA州議会下院は、同性婚法案(SB 6239)を可決した。投票結果は55 vs 43で、共和党からは2人が賛成に、民主党からは3人が反対に回った。

上院は既に先週可決しているので、同法案はすぐに州知事のところに送付された。州知事は、従前から署名することを公言している(→2月13日に署名。これで、WA州は、同性婚を認める7番目の州となるはずである。
同性婚の法的ステータス
州 法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
New York
Washington
California○→×(→○)*
Rhode Island
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Delaware
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
「7番目の州となるはずである」とわざわざ書くのには理由がある。同法の施行は、州知事署名から90日後、ということになっているが、その間に反対派がもくろむ州民投票について、必要な署名が集まれば、11月の州民投票までお預けとなる。

CA州のPropositon 8と同じような道筋を辿ることになるかもしれないが、WA州は、CA州と同じく第9控訴裁判所の所管である。

上記sourceによれば、その他の州でも同性婚法案を巡る動きが活発になっている。
New Jersey同性婚法案について、来週にも採決が行われる予定
Maine同性婚法案について、11月の州民投票にかけられる見込み
North Carolina同性婚禁止を求める法案について、5月に州民投票が行われる
Minnesota同性婚禁止を求める法案について、11月に州民投票が行われる
そして、昨日紹介したSantorumの政権公約のトップが「同性婚反対」である。何やらキナ臭いものを感じる。

※ 参考テーマ「同性カップル

2月9日 Santorumの政権公約 
Source :Rick Santorum for President | Republican Presidential Candidate
7日の予備選で、Santorum氏が3連勝した。慌てて、同氏のキャンペーンサイトから、当websiteにおける関心課題についての主張を拾っておく。 文字通り、保守色を強く出して、Romney候補との差別化を図っていることは明白である。

※ 参考テーマ「大統領選(2012年)

2月8日 Proposition 8に違憲判決 
Sources :Prop. 8: Gay-marriage ban unconstitutional, court rules (Los Angeles Times)
Gay marriage: U.S. Supreme Court may not hear Prop. 8 appea (Los Angeles Times)
7日、連邦第9控訴裁判所の小法廷は、同性婚の禁止を求めたCA州民投票(Proposition 8)は違憲である、との判決を下した。賛成/反対意見は、2対1。ただし、この判決をもって、すぐに同性婚が認められることにはならないようなので、いつもの表は次の通り。。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
New York
California○→×(→○)*
Rhode Island
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Washington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Delaware
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
さて、この判決を受けての今後の動きについてだが、アメリカの司法制度、法律に関する知識があまりないため、上記sourcesからの受け売りを自分なりの考えでまとめてみる。従って、専門家の見地からすると間違っているところもあるかもしれないので、予めお断りしておく。

もちろん、同性婚反対派は、訴訟を継続するとしているが、その際、2つの選択肢が残されている。
  1. 連邦第9控訴裁判所の大法廷(全11人の判事による審理)の開催を求める。
  2. 連邦最高裁に上告する。
i.の選択肢は、どちらの判決が出たとしても、棄却された方は、さらに上級の裁判所、即ち連邦最高裁に上告することになるので、ある意味、時間稼ぎにしかならない。

では、Aの選択肢についてはどうなのか。どうも上記sourcesの情報によれば、連邦最高裁は上告を棄却する方の可能性が高いのではないかと思われる。その理由は次の通り。
  1. そもそも連邦最高裁は、毎年、上告の1%しか受け付けていない。今年は既に医療保険改革法の「個人加入義務」(「Topics2011年11月18日 連邦最高裁の審理課題」参照)やAZ州の不法移民規制法(「Topics2011年12月13日(1) 連邦最高裁:AZ州移民法を審判」参照)について審理することが決まっており、これだけ大きなイシューを三つ同時並行で審理することには無理がある。

  2. 現在の連邦最高裁判事の傾向は、一般的に次のように言われている。

    • 保守派
      Chief Justice John G. Roberts Jr.
      Antonin Scalia
      Clarence Thomas
      Samuel A. Alito Jr.

    • 中道派
      Anthony M. Kennedy

    • リベラル派
      Ruth Bader Ginsburg
      Stephen G. Breyer
      Sonia Sotomayor
      Elena Kagan

    つまり、単純に考えれば、中道派のKennedy判事が鍵を握っているという構図となる。

  3. 今回の小法廷判決は、『同性愛者というマイノリティだけを取り出してその権利を奪う措置は、憲法違反である』という論法を取っている。これは、かつて、コロラド州民投票が同性愛者の権利を制限することに賛成した事件について、Kennedy判事が違憲であると判断した論法と同じである。

  4. また、『連邦憲法のもとで同性婚を認めるべき』との積極的な判断を示していない点も同じである。

  5. さらに、『今回の判決は、CA州におけるProposition 8に関する判決であり、連邦全体の問題ではない』と、判決の効力が及ぶ範囲をCA州に限定している。
つまり、第9控訴裁判所は、Kennedy判事に対して、『連邦最高裁で取り上げるまでもないですよ』というメッセージを送っているのである。仮に、この推測が正しいものであれば、Proposition 8支持派が連邦最高裁に上告したとしても、鍵を握るKennedy判事の判断により、連邦最高裁は上告を棄却する可能性が高くなっていることになる。

CA州が同性婚を認める州に復帰する日は近いのかもしれない。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「司法

2月7日 A.A. vs PBGC 
Source :PBGC opposes termination of American Airlines pension plans (Business Insurance)
いよいよ、American Airlines (A.A.)とPBGCの間のつばぜり合いが始まった。

先週、A.A.は、破産裁判所に対して年金プランの終結を求める旨を明らかにした。これに対し、PBGCは、「その根拠がわからない、年金プランを放棄するのは認められない」と反論している。

PBGCの主張が通って、年金プランを維持することとなった例もあるそうだが、破産裁判所では、企業の再生がメインテーマになるため、経営側の主張を認める傾向にある。PBGCとしては、今後は、次のようなラインで主張をしていくものと考えられる。
A.A.は企業年金プランを継続すべき
 ↓
(破産裁判所が年金プラン放棄を認めた場合)
積立不足をできる限り縮小させるため、A.A.の資産を可能な限りPBGCに拠出するよう求める。
ここでは、他の債権者との資産の奪い合いになる。
 ↓
(積立不足を含めて引き取った後)
PBGCの財政状況はさらに悪化するため、連邦政府には何らかの改善策を講じてもらいたい。
そこで、注目されるのが、年金プランの積立不足である。これは以前にも紹介した、PBGCの試算である(「Topics2011年12月1日 AMR:Chapter 11申請」参照)。
資 産給付債務不足額
A.A.年金プランの財政状況$8.3B$18.5B▲$10.2B
PBGCに移管された場合$8.3B$17.0B▲$8.7B
この▲$8.7Bが重いのである。PBGCにとってこれまで最大の不足額は、2005年のUnited Airlinesの▲$7.4Bである。これを優に超えてしまう損失が生じる。しかも、それは、今ある$26Bの債務超過に乗ってくるのである。ただでさえ持続可能性に?が5つもつくような状態なのだから、PBGCにとっては死活問題である。

そこで、連邦政府に何とかしもらいたい、ということになるのである。その対策として、上記sourceは次の3つを列記している。
  1. PBGC保険料の引き上げ
  2. PBGCによる給付保証額の引き下げ
  3. 税財源の投入
いずれもハードルが高い対策である。

持続可能性は極めて低く、DBプランの凍結・廃止が相次いでいる中で、もう支払保証制度を廃止することも選択肢に入れるべきではないだろうか。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

2月6日 Exchange:厳しいタイムライン 
Source :States Under Pressure As Health Law Deadlines Approach (Kaiser Health News)
2010年3月の医療保険改革法案が成立した時は、本格実施はまだまだ先、という印象を持っていた。しかし、今の時点からみると、かなり厳しいスケジュールに見えてくる。
Exchange施行までのタイムライン
2012年2月
6月?個人加入義務について連邦最高裁判決
11月大統領選/連邦議会選挙
2013年1月州政府によるExchnage創設・運営の承認(HHS)
保険プラン(保険料等)の承認申請(保険会社⇒州政府)
10月Open enrollment開始
2014年1月Exchange 施行
Exchangeを創設する州政府や、そこに保険プランを提供する保険会社からみれば、実質的な準備期間は1年足らずしか残されていないのである。

一方、Exchange創設に必要な規制、ルールはほとんど示されていないらしい。例えば、 などである。特に、低所得の要件は、exchangeに入るのか、Medicaidに入るのかで、財政負担が大きく異なってくることから、連邦政府と州政府の間で押し付け合いになる可能性が高い。上記sourceによると、こうのような状況について、専門家は"No rule, no concept"と評している。

一方、州政府の準備の方も遅々として進んでいない。NCSLの分析によれば、次のような状況となっている。
州知事、州議会両院とも民主党が押さえている州は、比較的順調にexchange創設のための法制化が進んでいるが、そのような州は10に過ぎない。その他はまだまだである。特に、共和党が押さえている州は、どうしても6月の連邦最高裁の判決を見てから、ということになってしまう。しかし、そこで「合憲」と判断されてしまったら、準備は全然間に合わないだろう。

綱渡りのようなタイムラインが待っているのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月5日 薄日が続く労働市場 
Source :Burst of jobs helps lower unemployment rate (Los Angeles Times)
労働市場ではようやく薄日の射す日々が続いている。 『薄日』と表現せざるを得ないのは、企業の雇用意欲が今ひとつ盛り上がらないためである。当面の雇用については、パート、一時雇用などで対応したいとの意向がまだまだ強い(New York Times)。これを数字の面から示すのが、いつものグラフである。
失業率そのものは0.2%ポイント低下したものの、不本意ながらパートタイマーとして就職した者や労働市場からやむなく退出した者も加えた『実感失業率』は15.1%と0.1%ポイントしか低下していない。失業率と『実感失業率』の差(=不本意ながらパートタイマーとして就職した者等)が逆に広がっているのである。

※ 参考テーマ「労働市場

2月4日 Doc Fixの財源 
Source :War Savings May Be Key To Long-Term 'Doc Fix' Deal (Kaiser Health News)
1日、年金保険料引き下げ継続と"Doc Fix"継続に関する両院協議会が再開された(「Topics2011年12月27日 両院協議会メンバーのミッション」参照)。期限は今月一杯であり、協議が整わなければ、3月からMedicare償還額は27%削減される。

上記sourceでは、この両院協議会の議論のうち、Doc Fixに関する論点について述べている。その中で、両院協議会の両党の有力メンバーから出されている意見をまとめると、次の2点になる。
  1. SGR(Medicare Sustainable Growth Rate)はもう止めにしたい。それも一気に止めるのではなく、徐々に止めていく方法を考えたい。

  2. "Doc Fix"を継続するための財源として、戦争終結(Iraq, Afghanistan)によって浮いた歳出を回せないか。
もちろん、この2点について、「有力メンバー」が示唆しているだけであり、両党の連邦議会議員の多数が賛成するかどうかは疑問である。両点とも、財政健全化を最優先に考える議員達にとっては、とんでもないということだろう。奇しくもBernanke FRB議長は、2日の議会証言において、長期金利の上昇への懸念を表明し、連邦政府の財政赤字拡大に警鐘を鳴らしている。

今月は、再び両院協議会、上下両院と、Obama大統領を交えた激しい論争が行われることになろう。

※ 参考テーマ「Medicare

2月3日 報酬プランの外注 
Source :A Changing Benefits Landscape (Prudential)
上記sourceによれば、年金、医療保険などのベネフィット・プランについて、管理・運営を外部の組織に委託している割合が急増している。
特に、年金プランについては増加幅が大きく、遂に半数を超えてしまっている。運営を外部に任せておきながら、経営幹部が"Fiduciary duty"だけを負い続けるということが、長続きするのだろうか。また、プランスポーンサーである企業が破綻した際、真っ先に年金プランを切り離すことが頭に浮かぶことは、むしろ自然なのではないか。

こうしたベネフィット・プランの基本的な構造、責任体制から考えていかないと、"Fiduciary"のあるべき姿には到達できないのではないだろうか。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「医療保険プラン」、「受託者責任

2月2日(1) Kodak従業員が訴訟 
Source :Kodak Employee Sues Company Directors Over Stock (New York Times)
ご承知の通り、KodakはChapter 11による再建を目指している。そのKodakの役員を相手に、同社従業員が訴訟を起こしている。この従業員は、"Kodak Employees Savings and Investment Plan"と"Kodak Employee Stock Ownership Plan"に加入していた。
Kodak従業員による訴訟の概要
訴訟の相手
  • CEO
  • 取締役
  • 年金プラン理事長
  • 年金プラン事務局長
訴訟の理由
  • 経営責任者、年金プラン責任者は、破綻に向かっていることを知っていながら同社の株式を従業員に売り続けた。
  • 経営責任者、年金プラン責任者は、同社の財政状況に関する完全な情報を従業員に提供しなかった。
デジャヴである。何度こういった事態を繰り返すのだろうか。"Fiduciary"とは何か。アメリカ社会にとって永遠の課題になりそうである。

ところで、同じ頃、"What is a fiduciary?"というコラムを拾った。これを読んで面白い発見が2つあった。
  1. "Fiduciary duty"は、そもそも"Magna Carta"から来ているそうだ。そこでは、"estateはすべて受益者のために使う"ことを王が約束している。

  2. 投資アドバイザーに関して、英語の"advisers"とは、顧客の利益を最優先する法的責務を負う。一方、"advisors"は、自社の利益を最優先にしながら、顧客に対して適切な選択肢を提供する。
※ 参考テーマ「受託者責任

2月2日(2) IN州:"Right to Work" 
Source :Indiana Governor Signs a Law Creating a ‘Right to Work’ State (New York Times)
1日、Indiana州議会上院は、28 vs 22で、"Right to Work"法案(HB 1001)を可決した(「Topics2012年1月27日 "Right to Work" State」参照)。同法案は、即日州知事に送付され、州知事は署名を行った。同法は即日発効となり、Indiana州は、正式に、23番目の"Right-to-Work State"となった。

※ 参考テーマ「労働組合

2月2日(3) WA州:同性婚法案可決 
Source :Washington State Senate Passes Gay Marriage Bill (New York Times)
1日、Washington州議会上院は、28 vs 21で、同性婚法案(SB 6239)を可決した。同法案はすぐに下院に送付された。来週にも下院で投票が行われ、州知事に回付される見込みである(「Topics2012年1月20日 同性婚法案:WA州」参照)。下院、州知事とも既に支持を表明していることから、WA州が7番目の同性婚認可州となる日が近づいている。

※ 参考テーマ「同性カップル

2月1日 保険会社絶滅の予想 
Source :The End of Health Insurance Companies (New York Times)
上記sourceの筆者達は、2020年までに今の保険会社は絶滅し、代わって"Accountable Care Organizations" (ACO)が活躍しているのではないか、と予想している。

その理由として、次のような事項を列記している。
  1. 既に多くの保険会社が保険者としての機能を果たさなくなってきている。

    1. (65歳未満の)アメリカ国民の6割は、勤務先が提供する"self-insured"型の保険プランに加入している(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」参照)。この"self-insured"型の保険プランでは、保険給付に伴うリスクは企業が負っており、保険会社は請求・償還事務を行うだけである。

    2. 個人・小規模グループ市場では、保険会社らしきことはしているが、リスクの取り方は限定的である。それは健康状態によって保険料を変えたり、不健康な人の加入を拒否しようとしたりするからである。

  2. 今の償還方式が出来高払いであるために、過剰診療となったり、不適切な医療措置が採られたりする。しかし、ACOでは、加入者を健康に保ち、診療を受けなくて済むようにすることで、医療機関の利益が膨らむ。

  3. 医療機関側の償還請求に伴う事務コストが大幅に削減できる。

  4. HMOと似たところもあるが、HMOは加入者と遠く離れた存在であるのに対し、ACOは加入者の近隣に存在する医療機関で構成するネットワークである。

  5. 既存の保険プランを選択する際には、保険料負担、窓口負担とその年間上限額、免責額などを比較しなければならない。ACOの場合、加入者はプライマリードクターとそれにつながるチーム医療機関を選択することになり、適正な競争市場が成立する。
大手の保険会社の中には、既にこうした時代の流れを感じ取って、ACOへの移行を模索する企業も出てきているそうだ。既存の保険会社が加入者のエージェントとしての役割を果たしてきていれば、こうしたビジネスモデルの変更は必要なかったであろう。だって、加入者が望む医療機関ネットワークを構築して保険プランを提供すれば、ACOと同じ機能を提供できていたはずだからである。

※ 参考テーマ「医療保険プラン