11月20日 微修正?:AL州移民法 
Source :In Alabama, Calls for Revamping Immigration Law (New York Times)
全米一厳しいというAlabama州移民法について、州議会では、修正が必要という考えが広まっているという。背景は次の通り。
  1. 農家を中心に、人手不足が厳しくなっている。

  2. 州政府との取引や事業免許には身分証明が必要、とされているが、その範囲が曖昧になっている。

  3. 州政府機関側でも、あまり真剣に取り組んでいない。
こうした事態を背景に、州議会議員達は、『副作用』を取り除くために『微修正』が必要、と言いたいが、それが簡単ではないらしい。州民の間で、同州移民法の人気が高いからだ。ちょっとでも修正して不法移民が居住できるような環境につながることを許さない雰囲気がある。

これまで同法を推進してきた共和党州議会議員達、そしてBentley州知事は、どのような対応をしていくのだろうか。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

11月19日 HHSの雇用創出策 
Source :HHS accelerates grants to create health care jobs (GovExec.com)
14日、HHSは、独自の雇用創出策を公表した。 この施策にどれだけの雇用創出効果があるのかはよくわからない。画期的な、というと、普通はICTを利活用するものだろうから、人手をかけないようにすることが多い。そうした中で、雇用も拡大できるようなイノベーションがどれほどあるのだろうか。まあ、選考結果を楽しみにしておきたい。

ところで、当websiteとしては、このような施策をHHSが打ち出した背景に関心を持つ。考えられる要素は次のようなところか。
  1. アメリカの雇用環境はなかなか改善しない。失業率は9%で高止まりしている。それどころか、欧州債務危機が、
    • 欧州経済の減速 ⇒ アメリカの輸出減
    • アメリカ金融機関の格下げ ⇒ 信用収縮 ⇒ アメリカ実体経済の減速
    という2つのルートで影響をもたらしつつあり、ますます厳しい見通しとなっている。

  2. アメリカ大統領選まで1年を切り、Obama大統領は、高い失業率の中で現役大統領として戦わなければならなくなる。

  3. 大統領が提案した雇用拡大戦略は連邦議会で承認されず、個別施策による切り売りをせざるを得なくなっている。

  4. 両院特別委員会で検討されている財政赤字削減策では、Medicare、Medicaidなどの公的医療プランに手をつけざるを得ないと思われる。これにより、これまで雇用創出のエンジンであった医療・介護分野で雇用拡大にストップがかかってしまいかねない。そこで、予めインセンティブ用意しておく必要がある。(「Topics2011年8月19日(1) 雇用拡大策メニュー」参照)。
こうした背景を考えると、今回HHSが打ち出した施策は、苦し紛れという印象を持たざるを得ない。

※ 参考テーマ「労働市場

11月18日 連邦最高裁の審理課題 
Source :Supreme Court to Hear Case Challenging Health Law (New York Times)
14日、連邦最高裁は、医療保険改革法の合憲性について審理することを決定し、その旨公表した。通常のスケジュールによれば、来年3月までに双方の主張を支持する弁論が行われ、6月末には結審することとなる。まさに、大統領選挙の真っ只中である。

上記sourceは、連邦最高裁が審理する際の検討課題として、次の4点を挙げている。
  1. 医療保険改革法で「個人の保険プラン購入義務」を規定したことが、連邦議会の権限範囲を超えていないか

  2. 仮に連邦議会の越権行為と認定された場合、「個人の保険プラン購入義務」規定を削除するだけでよいのか、それとも医療保険改革法全体が無効となるのか

  3. Medicaid加入資格の拡充策は適正か(「アメリカ医療保険改革法案比較」参照)

  4. 保険プラン購入義務に伴うペナルティが執行される2015年まで、購入義務に対する訴訟を起こせないかどうか("Anti-Injunction Act")。
このような法律論を離れて、ちょっと皮肉っぽい記事も一日遅れで掲載されている(New York Times)。
  1. もともとObama大統領は、医療保険の購入義務化には反対であった。大統領選挙期間中は、子供の加入義務化だけを訴えていた。(むしろ、購入義務化を訴えていたのは、Clinton候補の方だった。「Topics2007年9月18日 Clinton提案」参照)。

  2. 保険プラン購入義務化は、不人気政策である。3月のKaiser Family Foundationが実施した世論調査によれば、
    • 保険会社が既往症を理由に保険加入を拒否することを禁じる規定は残すべき ⇒ 74%
    • 保険プラン購入義務規程は残すべき ⇒ 27%
    となっている。

  3. 大統領選で医療政策が争点となるとすれば、それは医療保険改革法の是非ではなく、Medicareだろう。
いずれにしても、大統領選まで1年を切っている。どんな判決が出るのか、全米中が注目していくことになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

11月17日 PBGCが抱える大穴 
Source :PBGC Reports Record $26 Billion Deficit for 2011 (PBGC)
PBGCの2011年度の債務超過額が明らかになった。
債務超過額2010年度2011年度
単独事業主プラン$21.6B$23.3B
複数事業主プラン$1.4B$2.8B
合   計$23.0B$26.1B
この債務超過額は、PBGC設立以来(37年)の最高額だそうだ。

こうした事態に対し、PBGCに保険料決定権を渡すようなことになると大変なことになる、との危機感を強めている企業・団体は、決してそのような法案を可決しないよう、議会に要請している(Pittsburgh Post-Gazette)。ただでさえ、DBプランの凍結が相次いでいる上に、保険料が大幅に引き上げられてしまえば、
『保険料引き上げ ⇒ プラン加入者の減少 ⇒ 保険料収入の減少 ⇒ 債務超過額の拡大 ⇒ 保険料の引き上げ』
という負のスパイラルに陥ることは間違いないだろう。

かといって、税金でPBGCを救済することはあるまい。DBプランは、企業が任意で設立しているからだ。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

11月15日 PBGCの持続可能性 
Source :PBGC: $24 billion deficit in single-employer program by 2020 (Pensions Investments)
10日、PBGCが将来の財政予測を公表した(IMMEDIATE RELEASE)。 このような状況で、PBGC自身が保険料を決定できるようになれば、企業負担がどうなるか、明らかである(「Topics2011年6月14日 PBGCに保険料決定権(2)」参照)。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

11月14日 MedicaidをCDプラン化:KS州 
Source :Kansas Announces Sweeping Medicaid Restructuring (Kaiser Health News)
Brownbackカンザス州知事は、8日、MedicaidをCDプラン化し、加入者全員をmanaged-care planに移すとともに、診療報酬を加入者一人当たりで固定することを提案した。

同知事によれば、これにより、Medicaid支出の毎年の伸び率を1%ポイント抑制することができるという。州議会が可決すれば、2012年11月から加入を開始することになる。

この案は、何人かの州知事、一部の共和党連邦議会議員が提案している、Medicaidに関する連邦支出の包括払い方式に通じるものがある(「Topics2011年4月22日 Medicaid:連邦包括払い」参照)。連邦からの支出も一人当たりいくら、それを預かった州政府から医療機関への支払いも一人当たりいくら、という具合である。

確かに、出来高払いよりは歳出のコントロールは容易になるだろう。しかし、よほど入念に医療提供サービスのネットワーク化を仕込まないと、加入者のアクセスは大幅に制限されることになりかねない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「CDプラン

11月13日 Chapter 9の効能 
Source :Bankruptcy Rarely Offers Easy Answer for Counties (New York Times)
9日、Alabama州のJefferson CountyがChapter 9を申請した(BankruptcyData.com)。自治体としての負債規模は、アメリカ史上最大とのことである。直接のきっかけは、下水道工事を巡る不正な経理と汚職が原因だそうだ。

実は、他にも自治体が破産申請を行なう例が続いており、アメリカの自治体財政が厳しいものとなっていることがわかる。

さて、上記sourceでは、Chapter 9は、民間企業が申請するChapter 11とは異なり、自治体の急速な再建を導くものではないことを説いている。挙げられている諸理由は次の通り。
  1. Chapter 9では、破産裁判官が自治体のガバナンスに介入する権限を厳しく制限している。

  2. 破綻した自治体は、必ずしも破産裁判所の支出許可を得る必要はない。

  3. 破産裁判所は、自治体の予算、税制、行政サービスをコントロールする権限を持っていない。

  4. 債権者も、Chapter 11の場合に較べると、その権限は限られる。

  5. 債権者は、自治体の固定資産を売却して債務返済に充てさせることもできない。

  6. 自治体が新たな債券を発行しようとしても、住民が反対すればそれもできない。
もちろん、自治体の破産により、住民の基本的サービスが著しく損なわれたり、返済のために過重な負担を求められたりすることを回避するのが狙いであろうが、こと「再建」という見地からは、破産裁判所、債権者の権限が大きく制約されていると、スピード感を伴わないものとなってしまう。

こうしたところも、金融危機後のバランス調整の一現象として捉えておくべきだろう。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

11月12日 失業率と求人数 
Source :High US joblessness puzzles economists (Financial Times)
9月の求人数が340万人となり、最近2年間で最も高い数字となった。一方、失業率は依然として9%台で高止まりしている。求人も求職も多いのに、労働市場は活性化していない。

上記sourceでは、その原因と考えられる要素を3つ挙げている。
  1. 求人と求職の間に"mismatch"が存在する。もしこれが本当なら、労働市場の停滞は長引くことになる。求められる技術の習得には時間がかかるからだ。

  2. 企業側が求人を出していても、どれだけ真剣に求人しているか、が問題である。本当に有能な人材が見当たれば採用することにしているのではないか("fishing")。

  3. 求職者の方も、どれだけ真剣に職を探しているか、が問題である。長期間失業中で、いくら就職活動をしても不採用が続くと、真剣度は低下する。
さらに、アメリカ経済のみならず、欧州経済の不透明感が急速に高まっていることから、いくら企業業績が改善しても雇用までは回ってこない可能性が高いとも述べている。

上に挙げられた3点は、いずれも労働市場の改善が当分見込めないことを示唆していると思う。多少の失業率の改善はあっても、労働市場全体が明るくなるのにはかなり時間がかかりそうである。こうした影響は、若年層に大きな歪みをもたらすことになろう。

※ 参考テーマ「労働市場

11月11日 Ohio州民投票のメッセージ 
Source :Ohio Turns Back a Law Limiting Unions’ Rights (New York Times)
8日、各州で州民投票が行われた。ちょうど1年後、アメリカ大統領選挙が行われる。

Ohio州の州民投票は、1年後の大統領選挙、連邦議会選挙への示唆を含む結果となった。ポイントは2点。
  1. 州政府職員労働組合の交渉権限の制約 ⇒ No ⇒ 民主党

  2. 医療保険改革法の医療保険加入義務の免除 ⇒ Yes ⇒ 共和党
まさに、Swing Stateの面目躍如というところである。

※ 参考テーマ「労働組合」、「無保険者対策/連邦レベル