Source : | In Florida, H.M.O.’s Would Treat Medicaid Patients (New York Times) |
FL州議会では、Medicaid制度の変更を検討している。上記sourceによれば、州議会下院が検討している案は次の通り。これらの移行に伴い、利用限度を設けたり、現在提供している給付を削減したりすることも検討されている。もちろん連邦政府の承認も必要だ。
- Medicaid加入者を、営利目的のHMO、または医療機関ネットワークに移行させる。
- 介護サービスをナーシング・ホームから在宅介護に移行させる。
こうした法制化に先駆けて、いくつかの郡でパイロットプログラムが施行されているが、これらの地域では、医療機関がMedicaidから撤退する動きが出ているという。償還額が低すぎてペイしないから、というのがその理由である。
州財政の改善を図るためには公的医療支出を抑制せざるを得ず、そうなると医療機関がいい顔をしない。あちらを立てればこちらが立たず、という状況に陥っている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
Source : | The Widening Gap (The PEW Center on the States) |
2009年度の州年金プラン、退職者医療保険プラン等に関する積立状況の推計が公表された。2008年秋のリーマンショックを受けて、当然、積立状況は悪化している。以下、レポートのポイント。
- 総括は次の表の通り。
退職後ベネフィット 資 産 給付債務 積立不足額 年金プラン $ 2,280B $ 2,940B $ 660B 退職者医療プラン等 $ 31B $ 635B $ 604B 合 計 $ 1,264B - 積立不足(両プラン合計)については、給付債務の割引率を変更すると次のように大きな額となる。
給付債務割引率 積立不足額 上記試算(8%) $ 1.26T 企業年金と同様の前提 $ 1.8T 30年物国債 $ 2.4T - 年金プランについては、総体で積立比率は78%と、2008年度の84%から大きく低下した。うち、100%を超えているのはNY州(101%)のみであり、最低はIL州の51%、WV州の56%である。なお、GAOは少なくとも80%を保つように推奨しているが、この水準を下回った州は全部で31州と、2008年度の22州から劇的に増えている。
- 退職者医療プラン等については、基本的に賦課方式になっており、そのための積立を行っているのは、AZ州、OR州のみである。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「GAS 45」
CA州政府・自治体の年金プランに対する世論調査が公表された。上記sourceからポイントとなるものを取り出してまとめてみる。これを見ると、リベラル派、労組関係者の間でも、かなりの割合が見直しに賛成していることがよくわかる。特に、職員本人の負担額の引き上げは非常に高い支持を得ている。
年金プラン見直しの選択肢 選択肢にそった見直しに賛成の割合(%) 合 計 リベラル(民主党) 労組関係者 保守(共和党) 年金給付額の上限設定 70 66 62 69 年金給付額の引き下げ(受給者、加入者とも) 50 50弱 45 受給開始年齢の引き上げ 52 50弱 50 自治体職員の拠出額引き上げ 68 71 70 DCプランへの移行 66 45
こうした点を軸に見直しの議論が進むだろうが、一方で医療保険の方の見直しもあり得る。医療保険でも自己負担の引き上げが検討項目に入ってくる可能性が高い。そのように、両方のプランで負担が増える案が出てきた時に、民主党支持者や労組関係者はどういう反応をするのだろうか。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Court Rejects Virginia’s Request to Speed Health Care Challenge (New York Times) |
医療保険改革法(PPACA)の個人保険加入義務に対して、VA州は独自に訴訟活動をしている。その一環として、同州は、連邦最高裁に対して、控訴裁判所の判断を待たずに最高裁としての判断を示せ、と要請していたが、25日、連邦最高裁は正式にこの要請を却下した。
内容面で最高裁が何かの判断を示したということはなく、これで、「控訴裁判所⇒最高裁」という通常の手順を踏んだ司法論争が行われることになったというだけである。しかし、どうせ最高裁の判断にまで行かなければ決着がつかないことはわかっており、それまでに時間がかなりかかるというのも容易に想像がつく。
こうなると、来年の大統領選の真っ最中に最高裁の司法判断が下されるという可能性も出てきた。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
Source : | Labor Board Case Against Boeing Points to Fights to Come (New York Times) |
昔、同じような表題をつけたことがある。ただし、方向性は逆になっているが(「Topics2005年1月3日(2) NLRBの保守化」参照)。
まずは、NLRBメンバーのプロフィールをまとめておく。このNLRBが経済界を苛立たせている。上記sourceに挙げられている最近のNLRBの動きをまとめておく。
役 職 氏 名 政 党 指名者 任 期 上院承認 Chairman Wilma B. Liebman D @President Clinton
A,BPresident Bush
2009.1.20に議長指名@1997.11.14〜2002.12.16
A2002.12.17〜2006.8.27
B2006.8.28〜2011.8.27
議長指名はPresident Obama○ member Craig Becker D President Obama 2010.4.5〜2011.12.31 × member Mark Gaston Pearce D President Obama 2010.4.7〜2013.8.27 ○ member Brian Hayes D President Obama 2010.6.29〜2012.12.16 ○ 指名のみ Terence F. Flynn - President Obama 2011.1.27〜 × 事務局長 Lafe Solomon - President Obama 2011.1.27〜 × 経済界は、Obama大統領の政治的課題をNLRBが代わって遂行している、と非難している。いずれにしても、雇用の場というのは、政権の期間よりは長く続くことが一般的であり、政権交代の度に雇用のルールが変わることは好ましいとは思えない。
- Boeing社が787旅客機の生産拠点をPuget Sound(WA州)からSouth Carolina州に移転したのを、ストに参加した労働者への懲罰として行った違法行為として認めず、生産拠点を元に戻すよう求めている。
- AZ、SC、SD、UT各州で、州憲法改正により、民間企業従業員の署名入りカードによる組合選択投票を禁じたことを違法と判断し、裁判に訴える意向を示している。
- 職場の労組結成を認めるかどうかの投票を電子投票で行うことを提案している。
- Bush大統領時代のNLRBの決定を悉く覆そうとしている。
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | Vt. Moves Toward Single-Payer System With Bill Dependent on Waivers in Reform Law (AIS Health) |
単一保険制度の導入を目指すVT州議会は、その第一歩となる法案(H.202)を審議中である。州議会下院は3月24日に可決し、現在は上院で審議中である。VT州議会は、上下両院とも民主党、州知事も民主党であり、この法案は時間さえ経てば成立するであろう。問題は、予てから指摘されているように、連邦政府から例外措置の認可を得られるかどうかである。
上記法案のポイントは次の3点。上記sourceでは、まだまだ解決すべき課題が残っているとして、列記している。
- 委員会の設置
- 委員は知事が指名する。
- 設置は今年7月。
- 委員会の権限
- 州の"Exchange"設立に関する決定
- 保険給付内容
- 償還払い制度
- 単一保険制度に向けた予算
- "Exchange"の制度骨子の策定
- "Exchange"は2014年から運営開始
- 参加できる保険者は一つに限定
- "Green Mountain Care"(=単一保険プラン)の骨格作り
多くの課題を抱えたままの第一歩のようである。
- 財源を事業主と従業員の"payroll tax"で調達する予定だが、今回の法案には含まれていない。
- 近接州に勤務している州民からどのように"payroll tax"を徴収するのか。
- NH州にある医療機関の顧客の40%がVT州民であり、それらの診療に関する償還をどのようにするのか。
- "Self-insured"の保険プランは連邦法n管轄となっており、それらを運用している事業主を免責にする規定が含まれていない。むしろ、そのような法案修正をVT州議会下院は否決してしまっている。
- 他州から来ている大学生(約2万人)をどう扱うのか。
- 民間保険市場は廃止するのかどうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/VT州」
Source : | Medicaid explained: How would block grants work? (Stateline) |
連邦議会下院予算委員長提案(「Topics2011年4月7日 下院予算委員長提案」参照)は、下院本会議で決議として可決された。これがこのまま上院で議論されるはずもなく、まして大統領は真っ向から反対している(「Topics2011年4月14日 中身の薄い大統領演説」参照)。従って、総論としての議論はこれまでだが、各論としての議論はこれからも話題になってくる。
その中で、当websiteとして興味を持っているのが、Medicaidに対する連邦政府の包括払い(英語では"block grants")の提案である。上記sourceは、そんな人にとってもやさしい解説をしてくれている。
要するに、これまでも何度か浮上しては消えている提案なのである。この古くて新しい提案に、Obama大統領はどのように対処していくのか、民主党は、財政健全化との整合性のとれた改革案が示せるのか。
- Medicaidコスト分担の現状
- Medicaidは、連邦政府と州政府が共同で実施する制度で、1966年に創設された。
- "Open-end"の給付プログラムで、受給資格さえあれば給付が保証されており、コストの上限は設けられていない。
- 連邦政府の負担は、基本的にはマッチング形式であり、その基準は所得の中位水準である。
- 平均すれば、連邦政府が57%分担している。所得の高い州では50:50の分担割合だが、最も所得の低い州については、85:15で連邦政府が分担している。
- 州政府は、制度設計にあたって、給付内容と受給資格について(連邦政府が定める)最低基準を満たさなければならない。
- 支出総額の現状と見通し
- 2009年、連邦政府の負担額は$216B。連邦政府支出全体の7%を占めた。
- 州政府全体では、Medicaid支出が22%を占め、教育支出よりも高い割合となっている。(右図参照⇒)
- 最近の10年間で連邦政府負担額は、年平均6%以上の伸びとなっている。今後10年間では年平均7%以上の伸びが予想されている。
- 共和党が提案している"block grant"になるとどうなるのか
- 2013年から、連邦政府負担額は一定の算式による定額となる。
- 2012年の各州に対する連邦政府負担額を基準にして、物価上昇率と人口増を考慮して、毎年約4%の増加率を掛けていく。
- 一方、州政府は、制度設計に関して裁量権を持つ。
- 医療保険改革法に定められたMedicaid受給資格の拡大措置を廃止する。
- なぜ共和党州知事は"block grant"への改革を求めるのか
- 最大の理由は「裁量権」である(「Topics2011年3月3日 Medicaidの裁量を要望」参照)。
- 金融危機後の経済対策において、それまで裁量権を有していたMedicaid加入者の縮小を禁止されてしまった。
- Medicaid加入者を縮減しなければMedicaidのコストを削減することができず、教育等他の財政支出が圧迫されてしまう。
- かつては州政府に裁量権があったのではないのか
- 州政府は、連邦政府の基準よりも緩やかな基準(給付内容、加入資格)を設けていた。
- Kaiser Family Foundationの推計によれば、Medicaid支出総額の75%が、こうした州政府の付加部分に回されていた。
- 制度設計も区々であり、ニューヨーク州、ミネソタ州などは基準が緩く、テキサス州、アラバマ州などは厳しいと見られていた。
- ただし、州政府が裁量権を行使するためには、連邦政府の認可を得なければならず、そのための手続き期間は1年以上必要となる。
- また、究極の選択肢として、Medicaidに参加しないという手法もあるが、1982年にアリゾナ州が参加したのを最後に、すべての州が参加している(「Topics2010年11月15日 Medicaidから脱退?」参照)。参加しなければ連邦政府負担分がなくなり、州財政はさらに厳しいものにならざるを得なくなる。
- 民主党は、"block grant"になるとどうなると主張しているのか
- 下院予算委員長提案直後、17人の民主党州知事は連邦議会に対して書簡を送付した。そこでは、
@州政府にコスト負担のしわ寄せが来る、
AMedicaidの普遍性が損なわれる、
B加入者を縮減せざるを得なくなる、といった懸念が示されている。- Obama大統領は、Medicaidは最も弱い立場に置かれた国民のための制度であり、現行制度を維持するとともに、効率性を高めるために州政府に裁量を与えるよう速やかに検討するとしている。
- これまでにも同様の提案があったのか
- 1981年、レーガン大統領(当時)が提案し、上院では可決されたものの、法案は成立しなかった。
- 1995年、議会共和党(Newt Gingrich下院議長)が、Medicaidと福祉政策について"block grant"を導入するよう提案し、法案は議会を通過したが、クリントン大統領(当時)は福祉政策のみ導入を認めた。
- 2003年、ブッシュ大統領(当時)が提案し、州知事会で制度設計の詳細を検討したものの、結論は得られなかった。
- 実現の可能性はあるのか
- この2年間はない。
- ただし、2012年の大統領選挙では、最大の争点の一つとなる可能性がある。
Medicaid、不法移民政策、同性婚と、連邦政府と州政府の役割分担を軸とする政策論争が活発になってきている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」