1月9日 UAL労使合意は棄却 Source : Pilots' Deal With United Thrown Out (Washington Post)

破産裁判所は、7日、UAL年金プランに関する労使合意を棄却する判断を示した。

パイロット組合は、新たな労使合意に至るのは難しいとのコメントを公表した。他方、PBGCは、即時廃止、PBGCへの引き取りを、裁判所に申請している。パイロットの受給額とPBGCの財政負担が天秤にかけられ、後者が優先される可能性が高くなったことになる。

本来、PBGCは、年金受給者の受給額を確保するための組織、制度であったはずだが、このケースでは、結果的にではあるが、PBGCは、パイロットの受給額をなるべく少額にとどめるように行動していることになる。

こうした矛盾した結果が生じてしまうのは、やはり支払保証制度そのものに問題があるといえよう。

1月7日 航空会社スト回避 Source : United and US Airways reach key labour deals (Financial Times)

Chapter 11に入っている2つの航空会社、UALとUS Airwaysは、ともに再建のためには労働コストの大幅削減、特に年金プラン等のレガシーコストの削減が重要課題となっている。

両社の労組は、ストに訴えてでも、報酬削減を阻止しようとの構えであったが、結局、労使合意に至ったようである。UALは、既に紹介した通り、パイロット年金の廃止で合意(「Topics2004年12月22日 UAL年金廃止で労使合意」参照)し、US Airwaysも年金プランを廃止するとのことである。アメリカ航空業界の低価格競争はとどまることを知らず、そうした現実の前に、労組の抵抗も空しく終わったということだろう。

PBGCは、UALの労使合意に反発しているが、さらに悪いことに、両社の行動が他の航空会社に飛び火しそうである。Continental航空は、「2月28日までに$500Mの労働コスト削減ができなければ、Chapter 11を申請せざるを得ない」と述べているそうだ。PBGCが恐れていた、航空業界レガシーコストのドミノ倒しが起きそうな状況である。

こうした事態に対応し、PBGCの財政危機を救済するための制度改正が予定されており、来週にもその概要が明らかにされるとの報道がある (New York Times)。

考えられる方策は、

@可変保険料の色彩を強める
A積立ルールを強化する
B従業員への情報開示を強化する

などが考えられる。もちろん、いずれも一長一短があり、すぐさまPBGCの財政健全化に結びつくかというと、そうではなく、むしろ時間がかかると思われる。そうした改正案が検討されている最中にも、上述のようなContinentalなどは、さっさとChapter 11に入りかねない。時間の勝負となりつつある。

1月6日 CFOの10大関心事 Source : FEI CEO's 2005 Top 10 Financial Reporting Issues (FEI)

上記sourceは、FEIが2005年の重要課題として列挙した10項目である。

着目して欲しいのは、第1位のストック・オプション費用計上と、第2位の内部統制情報の開示の関係である。「どちらも"SO"である」というのはさておいて、日本でも報じられているように、アメリカのSO法404条に基づく内部統制情報の開示は、コストと手間が半端ではない(「Topics2004年5月28日 SO法がもたらしたコスト」参照)。これを回避するために、公開をやめることを検討している企業も多いと言われている。

そのように大騒ぎされているSO法よりも、財務担当役員にとって重要な課題が、ストック・オプションに関する費用計上の義務化なのである(「Topics2004年12月17日(1) ストック・オプション会計決定」参照)。どれだけインパクトがあるのか、また多くの企業が影響を被るのかがおわかりいただけるのではないかと思う。今年6月以降の財務報告で費用計上されれば、収益が大きく減殺され、株式市場にもインパクトを与えることが予想されるのである。

1月3日(2) NLRBの保守化 Source : Labor Board's Critics See a Bias Against Workers (New York Times)

National Labor Relation Board (NLRB) という行政組織がある。1935年に成立したワグナー法に基づき設置された機関で、労働組合の結成の可否や、不当労働行為の判定等を行う(拙稿「US Labor Market and Employee Benefit(2002/4/30)」参照)。当初は、労働組合の活動を支援する方向性を持っていたものの、戦後の労働紛争の嵐の中、逆に労働組合の規制を主に行っているとの印象が強い。

上記sourceは、そうした傾向がますます強くなり、保守化の一途をたどっているのではないか、との懸念を表明している。その象徴が、ボードメンバーの指名が、共和党主導で行われている、というものである。そのボードメンバーは任期5年で、本来5名だが、現在は3人しかおらず、残る2名の指名がどうなるか、注目されているため、こうした報道が行われているものと思われる。最近のボードメンバーは、次の通り。

役 職氏 名政党指名者任 期
ChairmanRobert J. BattistaRPresident Bush2002.12.17〜2007.12.16
memberWilma B. LiebmanD@President Clinton
APresident Bush
@1997.11.14〜2002.12.16
A2002.12.17〜2006.8.27
memberPeter C. SchaumberRPresident Bush2002.5.10〜2005.8.27
ex-memberDennis P. WalshD@President Clinton
APresident Bush
@2000.12.30〜2001.12.20
A2002.12.17〜2004.12.16
ex-memberRonald E. MeisburgRPresident Bush2004.1.12〜2004.12.8

確かに、Bush政権の息がかかったメンバーが多く、今後もそうした傾向は強まるだろう。ただ、管理人としては、上記sourceの中で、"the board's conservative tilt would hurt unions, but less so than the conservative tilt of the federal judiciary, which he said was increasingly unfriendly to labor"という、ジョージワシントン大学の労働法教授Charles Craverの発言に注目したい。まさに、その保守化を強めつつあるという法曹界のトップ、司法長官に、Bush大統領は、ヒスパニックの星Al Gonzalesを指名している(「Topics2004年11月11日(2) 初のヒスパニック閣僚」参照)。当初は、上院での承認もスムーズに進むのではないかと見られていたが、イラク軍捕虜への対応を巡り、厳しい査問が行われるとの見通しも示されており、なかなか簡単には進みそうもない。問題は、司法長官就任後の彼の言動であり、当websiteで示したように、Bush政権の意向を体現する方向が露骨に示されれば、反発も強まるだろう。

1月3日(1) PBGC先手を打つ (補足) Source : U.S. Asks Bankruptcy Court to Deny United Pension Plan (New York Times)

「Topics2004年12月31日 PBGC先手を打つ」で示した通り、PBGCは、即刻UALのパイロット年金プランを引き継ぐ旨を表明し、そのための申請をシカゴの破産裁判所に対して行った。これで、正式にパイロット年金プランを巡る裁判所の判断が示されるのを待つことになる。