12月31日 PBGC先手を打つ Source : PBGC to assume responsibility for pilots pension plan at UAL (PBGC)
UALのパイロット年金について、PBGCが先手を打った。
UALパイロット年金については、廃止することで労使合意が成立し、あとは破産裁判所の認定を待つという状況になっていた(「Topics2004年12月22日 UAL年金廃止で労使合意」参照)。しかし、そこにはいくつか条件がついており、その中で、「パイロット年金プランを、少なくとも2005年5月までは継続する」という条件は、PBGCとしては耐え難いものであったに違いない。廃止を半年延ばすことで、積立不足は拡大するし、受給権を付与される現役パイロットも増えてしまう。結果的に、PBGCの負担が増えてしまう。
こうした事態を回避するため、PBGCは先手を打ったとみられる。パイロット年金に限り、引き継ぐ旨を表明し、具体的な手続きに入るものとみられる。PBGCの意向表明も、UALの資産の配分に関連するため、破産裁判所の判断を待つ必要があるだろう。また、先の労使合意は、考慮される可能性はあるものの、最終的には、PBGCの意向が尊重されるものと考えられる。
おそらく、UALにとっても、早期にPBGCが引き取った方が、その他の条件についても反故にできるし、最終的な年金負担も小さくなるものと見られ、損得勘定では納得できるものだろう。
ちなみに、PBGCの推計では、パイロット年金の現状は次の通り。
- 給付債務は$5.7B
- 年金資産は$2.8B(積立率は49%)
- プランを引き継ぐ際のPBGCの負担は、$1.4B
- 廃止を半年待つことで、$140Mの追加負担が生じる
12月28日(3) すさまじい退職手当 Source : FEDERAL NATIONAL MORTGAGE ASSOCIATION FANNIE MAE filed this 8-K on 12/27/04 (Fannie Mae)
不正会計処理が発覚したFannie Maeで、ついに経営トップ2人が辞任に追い込まれた(12/21)。
ところが、2人が解雇ではなく、退職並びに辞任扱いとなっているため、その退職手当はすさまじいものとなることがわかった。上記sourceは、SECに対する報告書(Form 8-K)であり、そこに彼らに対する退職手当の内容が示されている。
- The retirement of Chairman and Chief Executive Officer Franklin D. Raines
- 2005年6月までのサラリー 月額$600,000
- 200万株のストック・オプション
- 月額$116,300の終身年金
- $8.7Mの一時金
- 医療・歯科の終身保険
- 生命保険
- その他
- The resignation of Vice Chairman and Chief Financial Officer J. Timothy Howard
- 2005年1月までのサラリー 月額$84,000
- ストック・オプション
- 月額$36,071の終身年金
- 退職者医療保険
- 生命保険
- その他
これらの退職手当は、Fannie Maeの監督官庁である、連邦住宅会社監督庁(The Office of Federal Housing Enterprise Oversight, OFHEO)の承認が必要である。OFHEOは、査定が済むまで一切の支払いをするな、との指示を出しているそうだ。
その存続自体が危ぶまれているところに、最高経営責任者にこれだけすさまじい退職手当を提供するというのは、どうも納得がいかない。
12月28日(2) Social Security Privatization; Pros and Cons
Bush大統領が、年金改革に着手すると宣言した直後から、年金改革、特に個人勘定創設に関する意見表明が続々と行われている。当Websiteですべてを拾うのは到底困難であるが、今日は、代表的な主張を掲載しておく。
傾向としてかなりはっきりしているのは、賛成派の提案は、どんどんディテールに入り込んでいき、具体的な政策提案になりつつある一方、反対派は、現状を変えることのデメリットを強調するものが多い、という点である(「Topics2004年12月20日 個人勘定導入のメリット・デメリット」参照)。
12月28日(1) トヨタが自前の薬局を設立 Source : Toyota finds a prescription for employees' medical needs
(The Arizona Republic)
米国トヨタが、従業員が必要とする処方薬を提供するために、自前の薬局を設立するとのことである。上記sourceによれば、その設立案ならびに効果は次の通り。
- 来年1月1日から稼動させる。目的は処方薬コストの上昇を抑えることにある。
- 一般の薬局で3回レフィルを受け取った後は、さらに投薬の継続が必要との診断書を提出したうえで、自前の薬局またはメール・オーダーで処方薬を入手する。
- 低価格処方薬、ジェネリック等は会社が全額負担。
- その他の高価格品、ブランド品は、最大20%の自己負担。
- 現在、一般薬局の利用が88%を占めているが、これを25%にまで縮小し、40%を自前薬局、残りの35%をメール・オーダーとすることを目標とする。
いきなり従業員負担を求めず、従業員との対話を重視しながらじわじわとコスト削減につなげる努力をするのが、いかにもトヨタ自動車らしいところである。
12月27日 シュワ知事のMedicaid改革提案 Source : State plan for Medi-Cal overhaul faces hurdles (the Contra Costa Times)
いよいよシュワ知事が、医療改革にも着手するらしい。前回の州民選挙で、前知事(民主党)が承認した医療改革案が否定された(「Topics2004年11月5日(1) 医療費の付回し」参照)こともあり、来年の予算案提出の中で、共和党知事らしい新たな提案を行うようだ。
具体的には、低所得者層を対象とした「Medi-Cal」の改革である。現在、Medi-Calの対象者は700万人、年間コストは連邦、州合わせて$30Bに達する。正式な提案は、来年1月10日の予算案の公表の中でされるが、大まかな概要は次の通りとなっているそうだ。
- 対象者の範囲の縮減
- 窓口自己負担の導入
- プラン対象の医療行為の縮小
ただし、Medicaidは、連邦政府が骨格を提示し、具体的な施策は州政府に任されているという関係上、連邦政府からの承認が必要となる。従って、シュワ知事が州議会を説得できたとしても、連邦政府からの承認がなければ、改革案は実現しない。しかし、先の大統領選の模様を思い出してみればわかる通り、シュワ知事は、Bush大統領を最大級の賛辞をもって応援した(「Topics2004年9月2日 シュワちゃんのDream」参照)。たとえ、加州の議席が獲得できなかったとしても、全米にシュワ知事の応援がもたらした効果は絶大であったはずである。そのシュワ知事提案を、連邦政府がゼロ回答するとは考えにくい。
シュワ知事は、財政再建を旗印に、年金に続いて医療制度にも手をつけようとしている(「Topics2004年12月1日(1) CalPERSトップ交代か?」参照)。しかも、民主党の本拠地カリフォルニア州で、である。Bushのみならず、共和党が次の大統領も狙うのであれば、加州の改革動向に、てこ入れしたくなるはずである。その成否が、Bushの年金改革にも関連してくる可能性も高い。
本当に加州の動向は目を離せなくなってきた。
12月22日 UAL年金廃止で労使合意 Source : Pilots' Union at United Makes Pension Deal (New York Times)
上記sourceによれば、United Airlinesとパイロット組合は、次のような条件で、パイロット年金プランの廃止に合意した模様だ。
- 現役パイロットが失うベネフィット分を、別途設けられている確定拠出型プランへの拠出に上乗せする。
- 現役パイロットに、$550Mの転換社債を供与する。株式への転換は、Chapter 11脱出後という条件付。
- パイロット年金プランを、少なくとも2005年5月までは継続する。
残酷なことに、既に退職した組合員への手当ては全くなしである。それも含め、このような労使合意に対して、PBGCはかんかんに怒っている(PBGC Press Release)。PBGCは、反対の動議を12月30日までに破産裁判所に提出する予定とのことである。いずれにしても、このような労使合意が認められるかどうかは、破産裁判所の判断にかかっている。
一方、同じくChapter 11にあるUS Airwaysは、コスト削減のために、現行の労使協定を破棄したいと訴えている(Washington Post)。破産裁判所は、来年1月6日には、その是非について判断を下す予定である。
両航空会社とも、徐々に正念場に近づきつつあるようだ。