12月10日(2) バイパルティザン年金改革法案 Source : Legislators join forces on Social Security reform (Financial Times)

初めて共和党議員と民主党議員が共同提案者となった、年金改革法案が提出された。共同提案者は、Jim Kolbe下院議員(R)Allen Boyd下院議員(D) である。

また、その概要は、次の通り。
  1. 個人勘定への拠出割合は、$10,000までの所得の3%、$10,001〜$87,900の2%とする。
  2. 給付金額は長期間をかけて徐々に減額する。
  3. 低所得者層に対する給付は保護する。
  4. 課税対象所得の上限を、2008年までに$133,200に引き上げる。
Kolbe-Boyd法案は、上記4にある通り、増税を含んでいるため、White Houseの支持が得られるかどうかは不透明である。しかし、これから半年の間に、民主党議員も含めた複雑な駆け引きが繰り広げられるだろうことが、容易に想像できる。

12月10日(1) 処方薬再輸入議論は沈静化 Source : US Drug Importation Report Delayed, Thompson Says (Reuters)

処方薬再輸入議論は、どうも本格化しそうにない。昨年、Medicare改革法案を議論している際、法案成立の要件として、処方薬の再輸入に関するレポートをまとめることとなっていた(「Topics2004年3月1日 Bush政権は冷たい対応」参照)。タスクフォース設置当初は、かなりのハイペースで会合を重ねていた(「Topics2004年3月18日 トップ交代」参照)ものの、大統領選がヒートアップするに従って忘れ去られ、年末にいたっても、レポートの公表は準備されていないような状況となっている。

「Topics2004年11月11日(1) オンライン処方薬購入はわずか」でも書いたように、処方薬の再輸入問題は、政治の舞台から急速に消えつつあるようだ。

12月8日(2) CDHCプラン 8つのトレンド Source : Consumer-Driven Care: Eight Directions for 2005 (HealthLeaders)

CDHCプランとは、Consumer-Driven Health Care Planの略である。消費者、この場合は、被保険者(=患者)が、主体的に医療保険内容を組み合わせることが可能なプラン、ということである。かつては、被用者側の拠出額が定額の場合が多いことから、年金プランになぞらえて、確定拠出型医療保険プラン(DCHC, Defined Contribution Health Care Plan)とも呼ばれていた(「Topics2002年10月29日 医療保険の新顔 Consumer-Driven Health Care」参照)。

上記sourceは、そのCDHCの人気がますます高まると見ている。その最大の誘因は、来年から本格導入となる、HSAsであることは間違いない(「Topics2004年9月9日 HSAsの課題」参照)。このHSAsを背景に、2005年には、CDHCに8つのトレンドが顕著になると見ている。それらトレンドとは、次の通り。

  1. 連邦政府職員対象の医療保険プランで、CDHCのウェイトが高まる。仮に、CDHCが急速に普及すれば、国民皆保険構想は、ますます非現実的となる
  2. HMOプランやPPOからCDHCへのシフトが増える
  3. 被保険者の理解が進み、受容度が高まる
  4. 医者同士の連携が深まる
  5. 医療行為、医療コストに関する透明性が高まる
  6. Primary Care Physicians (PCP)の地位が低下する
  7. 診療の小売業化(ショッピング感覚)が進む
  8. EMR(Electronic Medical Record)化が進む

12月8日(1) 溜飲を下げたBusinessWeek Source : CalPERS: Getting Back To Business (Businessweek Online)

CalPERSのトップ交代(「Topics2004年12月1日(1) CalPERSトップ交代か?」参照)は、アメリカでは、驚きをもって報じられている。上記sourceは、「トップ交代は、CalPERSが本来の使命に戻って活動するよいチャンスだ」と評価している。

同誌では、経済界のCalPERS批判を受けて、「CalPERSの議決権行使は政治的色彩が強すぎる」との論調を張っていただけに、上記のようなコメントを掲載することで、溜飲を下げたことと思われる。昨年春、CalPERSが、2700もの企業の人事案件について賛成を留保したことで、経済界の反発はピークに達していた。

経済界の関係者は、これで一息ついたということなのかもしれないが、当websiteでは、「Topics2004年12月1日(1) CalPERSトップ交代か?」でも記した通り、今回のトップ解任は、もっと本質的な制度論に根ざすものとみているので、引き続き、同州の年金改革の動向を注視していきたい。

12月5日 年金改革のキーパーソン Source : Social Security reform mulled (The Washington Times)

上記sourceによれば、年金改革に伴い創設されるであろう個人勘定は、社会保険税率2〜4%の規模と見られている。個人勘定創設の初期段階としては、ほぼ妥当な線であろう。

それよりも、今後、White Houseを中心に、年金改革が議論されることになるが、その際、キーになりそうな人物が列記されているので、ここで整理しておきたい。

12月2日(3) ベネフィットにみる労使関係 Source : 2004 United States @Work: Redefining the Employer/Employee Relationship (AON)

上記sourceでは、独自のアンケート調査をもとに、ベネフィットに関して、労使関係を円滑に保ち、従業員のやる気を確保するための最善の手法は、「従業員に選択を与える」こととしている。その際、選択を与える方法として、カフェテリア・プランのようなやり方も当然あるのだが、最近のプラン設計は、『従業員の主体性』と『選択の責任』をより重視している。

そのようなプラン設計の典型例として、上記sourceでは、次の5プランを挙げている。 実は、2、5番目のプランは、どういう仕組みなのか、よくわからない。

いずれにしても、従業員の主体性と選択責任、というのは、日本の労使関係においても、今後、重要な課題となるだろう。様々な試みが行われているとはいえ、日本の被用者は、指示待ち族がほとんどであり、ベネフィットについても、いただけるもの、という意識が強い。このあたりを変えることができれば、日本の企業は、国際競争力を持つ「人財」を有することになるだろう。

12月2日(2) 年金トラスティの役割(UAL) Source : United's Pension Trustee Seeks Millions in Payments From Airline (NY Times)

UALの組合員が加入する年金プランについては、Independent Fiduciary Servicesがトラスティとなっている。このトラスティが、UALが年金拠出停止に対して抗議し、必要な拠出を行うよう、破産裁判所に申請した。最大$994M、最低でも$260Mを支払うべきとしている。

UAL側は、当然の経営判断と繰り返している。本件に関する破産裁判所のヒアリングは、12月17日に予定されている。

12月2日(1) 元議員の年金改革提案 Source : A New Index for Social Security (NY Times)

元下院予算委員長、現ニュース番組コメンテイターのJohn Kasich (R-OH)が、年金改革案として、次の2点を掲げている。

  1. 賃金スライドを物価スライドに変更する。

  2. 55歳以下の国民に、個人勘定を創設する。
2はともかく、1はずいぶんプリミティブな議論である。こうした議論を見ていると、アメリカの公的年金の切迫度は、まだまだという感想を持つ。

12月1日(2) 扶養家族の定義 Source : Benefit Implications of the New IRC Definition of "Dependent" (SEGAL)

10月4日、Working Families Tax Relief Act of 2004 (WFTRA)が成立し、11月18日、その関連の財務省通達(Treasury Notice 2004-79)が公表された。そこでは、扶養家族に関する定義が更新されており、税制適格「扶養家族(子供および親族)」が明確に定義された。その類型は、ここに詳しい。

上記sourceでは、定義の改定で、どのような影響があるのかを検証している。今回の新定義で特徴的なのは、扶養子供に年齢制限、居住要件が、また扶養親族に所得要件が加わったことである。

12月1日(1) CalPERSトップ交代か? Source : State Pension Chief Expects to Be Axed (LA Times)

上記sourceによれば、アメリカ最大の州政府年金基金であるCalPERSのトップ(Sean Harrigan会長)が、来年早々にも、交代になりそうとのことである。

交代を余儀なくされる理由として、Harrigan会長は、「ビジネス界からの圧力が原因」と示唆している。確かに、当websiteでも紹介している通り、CalPERSの最近の活動について、ビジネス界からの批判が強まっている。一つは、Safeway等のスーパーマーケットにおける長期ストライキである。従業員の医療保険負担を巡って、組合がストに突入し、これをCalPERSやAFL-CIOが全面支援する、という事態が発生した(「Topics2004年2月3日(2) カリフォルニアの医療保険法」参照)。もう一つは、CalPERSが投資先企業に対して、コーポレート・ガバナンスの強化を強硬に主張していることに、商工会議所等の経済界が猛反発している(「Topics2004年5月21日(2) CalPERS 38病院との契約見直し」参照)。こうした経済界からの圧力を受けて、共和党のシュワ知事がHarrigan会長を辞めさせようとしている、という訳である。

しかし、この言い訳は、かなりの牽強付会と思われる。上記sourceによれば、Harrigan会長の任期延長は、加州政府人事委員会の投票で拒否されたようだ。この人事委員会は、5人の委員で構成されており、各委員の任期は10年。しかも、この5人の中には、Harrigan CalPERS会長も委員として入っているのである。延長反対が3票であったと報道されているので、本人を除く延長賛成は一人しかいなかったことになる。従って、たった2年前に州知事に就任したシュワ知事が、たとえビジネス界の意向を受けてHarrigan会長を辞めさせたいと思っていたとしても、現実的には不可能な仕組みになっているのである。

ここは、もう少し別の理由があるように思われる。思いつくのは、次の3点。いずれもシュワ知事の意向が働いているものと思われる。
  1. 医療保険法(SB 2)が州民投票で反対多数となった(「Topics2004年11月5日(1) 医療費の付回し」参照。投票結果はここ)。Harrigan会長は、労組を結集して同法に賛成していたが、シュワ知事は反対であったと言われている。州民の意向で、同法が施行されないことが明確になったところで、けじめをつけさせるということが考えられる。

  2. 来年、CalPERSの医療保険プランから、17団体が離脱することとなった(「Topics2004年8月22日 CalPERSからの離脱」参照)。17もの自治体等が離脱するとの異常事態に加え、低価格であったプランまで廃止してしまったことに批判があると思われる。特に、後者については、CalPERSの財政状況を悪化させることになる。

  3. そして、最後に、年金本体の問題である。別の報道(Pasadena Star-News)によれば、Keith Richman州下院議員(R-Granada Hills)が、CalPERSの年金プランを確定給付型(DB)から確定拠出型(DC)に移行させるという法律案を提出する予定とのことである。シュワ知事もそれをサポートしているらしく、その法案成立のためには、Harrigan会長は邪魔な存在となる。
実は最後の3点目は、加州財政にとっては、大きな課題である。給付水準の改善が重ねられた結果、州政府職員が受け取る年金給付水準は、かなりの程度に達している。事例を挙げると、次のようになる。 このように高水準となった年金支給を支えるため、州政府は財政支出を余儀なくされており、現時点において、現役職員への報酬総額の15%相当を、年金基金に拠出している。今後、州職員の退出が増えてくれば、この財政負担はどんどん膨れ上がっていくことになり、他の財政支出を圧迫することになる。Richman議員ならびにシュワ知事は、こうした事態を回避するために、DC型のウェイトを高めていこうとしているようだ。

いよいよ、シュワ知事の政策実現が始まろうとしている。