日本でもISSは、有名になりつつある。当websiteでも、HPの買収の際に、紹介したことがある(「Topics2002年3月11日(2) Pension Fundの投資行動」参照)。このような判断基準に基づくと、例えば、新たな経営陣が、就任当初、生産設備の減損評価、破棄などにより、業績を大きく悪化させ、その後に業績を急速に改善させるという手法は、取れなくなる。通常、新経営陣は、業績を大きく悪化させたところでストック・オプションを獲得し、業績改善とともに莫大な報酬を得る、ということをやってきたからだ。業績の改善と株式による報酬が連動するのはいいことなのだろうが、その報酬を大きくするために、かえって株主に不利益になりかねない経営手法が見られるのだろう。アメリカの株主偏重主義も、少しは見直され始めているのかもしれない。 3月5日(1) Erie事件の決着は今年9月 Source : EEOC to finalize retiree health benefit rules (Business Insurance)
ISSは、機関投資家の株主としての投票行動に大きな影響力を持つ企業として有名である。そのISSが、企業経営者の報酬制度、中でも株式による報酬制度に厳しい目を向け始めた。
上記sourceによれば、最近、ISSは、次のような方針変更を行ったという。
- 株主の承認なしにリプライシングを行った場合、株式による報酬制度に反対票を投じるよう推薦する。
- 次のような場合、業績と報酬が連動しているとはみなさず、株式による報酬制度に反対票を投じるよう推薦する。
- 業績が低下しているのに報酬が上昇している。
- 報酬の増分のうち半分以上が株式による報酬の増分による。
上記によれば、退職者医療と年齢差別禁止法に関する問題は、今年9月にも決着しそうだとの見通しである。
EEOCは、昨年7月に、解決案(「Topics2003年7月15日(2) 年齢差別禁止法と医療保険」参照)を提示しており、現在、寄せられたパブリック・コメントを精査中であり、9月には最終案を提示するとのことである。解決案は、Medicare対象者への給付を非対象者よりも少なくしている従来の退職者医療保険プランを合法と認定しようとしている。従って、このEEOCの提案が確定すれば、事業主側は、Erie事件を理由に退職者医療保険プランを縮小、廃止することはなくなると見られている。
カナダからの処方薬再輸入を促進する運動に、全米最大の高齢者代表団体であるAARPも参戦する。処方薬の高騰は、高齢者の生活を直撃する、という危機感からで、上記sourceには、いくつかの提案が掲げられているのだが、カナダからの再輸入は、そのトップに掲げられているのである。
その運動開始の第一弾は、PhRMA(Pharmaceutical Research and Manufacturers of America、米国研究製薬工業協会)へのレター攻撃となる模様だ(Reuters)。
製薬会社からみれば、高齢者は上顧客のはずであり、そこからの要請に対して、冷たい対応を取れば、企業イメージを損なうことにもなりかねない。
他方、AARPにも、事情がある。AARPは、昨年11月に成立したMedicare改革法を強力にサポートした(「Topics2003年11月17日(1) 共和党の踏ん張り」参照)。いや、AARPの確固たるサポートがあったお蔭で、Bush政権は、薄氷を踏むような投票に踏み切り、法案成立に漕ぎつけたのである。ところが、法案をサポートしたことに対して、一部の会員から「製薬会社を儲けさせるだけの法案に賛成した」との批判を受けたのだ(「Topics2003年12月2日 AARPの決断とその余波」参照)。
従って、AARPとしては、会員対策として、処方薬をカバーするMedicare改革に賛成したうえで、そのコストを下げる努力を明らかにする必要性があるのである。ここで、処方薬のコストが実質的に下がらなければ、製薬会社の丸儲けであり、AARPはそれに加担したとの批判がますます強まることになる。従って、AARPとしても必死の圧力をかけてくると思われる。
『Bush政権+製薬メーカー(供給サイド) vs. 州・高齢者(需要サイド)』という構図がはっきりしてきたわけであり、これを連邦議会がどう判断するのか、また11月の大統領選を控えて、White Houseがどう判断するのか、注目していきたい。
1日のtopicsで、上院でも政治課題となりそうだと書いたが、少し的外れだったようだ。
上記sourceによれば、上院のFinance Committee幹部は、McClellan FDA委員長のCMS長官就任について、今週中に委員会で可決し、来週にも上院で可決するとのスケジュールで合意した模様だ。これは、共和党、民主党両党の委員会幹部の間での合意のようなので、滞りなく進められることになるだろう。
他方、5人の超党派上院議員グループは、先進25カ国からの処方薬輸入を認めるとの主旨の法案(S 2137)を提出した(Kaiser Daily Health Policy Report)。その内容は、昨年7月に下院で可決された法案(HR 2427)と同内容であり、特に目新しいものはないようだ。しかも、同法案の提出方法は、2つの意味で異例である。
このように、上院幹部は軒並み同法案に反対の立場を取っているのである。
- 記者会見やセレモニーなどが一切ない。
- 本来なら、まずHealth, Education, Labor and Pensions Committee(HELP)に提出されるのが普通なのに、上院の平場に提出された。これは、HELP委員長であるJudd Gregg (R-N.H.)が、処方薬の輸入に反対しているためだ。さらに、Majority LeaderであるBill Frist (R-Tenn.)も法案に反対である。
従って、上院で処方薬の再輸入を促進しようとしているのは、一部の議員であり、しかも両党幹部の支持が得られていない、という状況ということになる。本件の主戦場は、やはり州レベルということになりそうだ。
フジテレビでは、「すごい火曜日」と呼んでいたが、民主党候補者選びは、これで大勢が決したようだ。例によって、出口調査結果のうち、政策課題に関する部分を列記する。
Ohio Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Taxes 12 5 38 48 7 Education 9 1 34 50 13 Health care/Medicare 17 3 32 53 11 War in Iraq 10 1 23 57 19 Terrorism/National security 4 1 35 53 8 Economy/Jobs 41 2 35 54 8 Connecticut Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Lieberman Sharpton Uncommitted Taxes 4 - - - - - - - Education 7 3 21 62 4 3 7 - Health care/Medicare 19 2 23 62 5 5 1 1 War in Iraq 20 6 12 69 8 1 3 - Terrorism/National security 6 1 19 67 4 4 - 4 Economy/Jobs 35 2 25 66 2 1 4 1 Maryland Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Sharpton Uncommitted Taxes 5 7 35 33 6 9 7 Education 15 3 28 56 2 8 3 Health care/Medicare 18 3 23 62 2 4 5 War in Iraq 15 4 21 64 5 2 3 Terrorism/National security 6 2 27 48 5 8 4 Economy/Jobs 32 2 28 59 2 4 2 Massachusetts Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Sharpton Uncommitted Taxes 5 - 34 62 - 2 - Education 7 - 14 83 1 1 1 Health care/Medicare 20 4 15 73 4 - 1 War in Iraq 16 7 10 69 10 3 - Terrorism/National security 6 3 12 70 3 - 4 Economy/Jobs 35 1 22 73 2 1 0 New York Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Sharpton Taxes 5 7 26 58 3 5 Education 8 4 12 61 3 18 Health care/Medicare 17 2 17 68 3 8 War in Iraq 17 3 16 61 13 5 Terrorism/National security 4 3 20 59 4 6 Economy/Jobs 37 2 26 59 3 9 Rhode Island Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Uncommitted Taxes 3 - - - - - Education 9 6 14 77 2 1 Health care/Medicare 20 5 20 72 1 1 War in Iraq 19 4 19 69 7 - Terrorism/National security 5 - - - - - Economy/Jobs 35 3 17 75 2 1 California Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Sharpton Taxes 10 7 29 51 2 2 Education 15 6 21 61 3 5 Health care/Medicare 15 3 19 68 3 2 War in Iraq 14 4 19 56 16 1 Terrorism/National security 4 2 19 50 3 4 Economy/Jobs 36 5 22 64 3 2 Georgia Category % Total Dean Edwards Kerry Kucinich Sharpton Taxes 5 2 46 43 - 8 Education 9 2 39 50 1 6 Health care/Medicare 17 3 34 56 1 4 War in Iraq 8 3 44 44 7 2 Terrorism/National security 5 - 50 21 6 9 Economy/Jobs 48 1 44 47 - 7 Vermont Category % Total Dean Kerry Kucinich Taxes 6 58 32 6 Education 8 63 27 4 Health care/Medicare 19 64 29 4 War in Iraq 21 69 24 4 Terrorism/National security 7 39 46 10 Economy/Jobs 30 50 40 3
さすがVermontだけあって、最後まで、Deanへの支持が多かったようだ。
また、前回の山場であった、2月3日の出口調査(「Topics2004年2月4日 Kerry氏優位」参照)と較べると、「経済/雇用」、「医療」の順に関心が高いことは変わりないが、「医療」の関心割合が目立って低下していることが窺われる。Medicare改革で関心が薄らいだのかどうか、早計に判断することは禁物だが、今後のBush vs. Kerryの中で、この医療への関心の低下が影響するかどうか、よく見ていく必要があると思う。
州・連邦議会レベルでは、カナダからの処方薬の再輸入を拡大すべきとの主張が盛り上がりを見せている(「Topics2004年2月26日(2) RX Summit」参照)。これに対して、連邦政府のFDAは、処方薬の輸入問題に関する研究会を設置し、1年程度をかけて検討するとの意向を発表した。この措置は、昨年12月に成立したMedicare改革法に盛り込まれていたものであり、特に目新しいものではない。
ところが、Bush政権は、この研究会のヘッドに、Mark B. McClellan, M.D., Ph.D., commissioner of HHS' FDAを指名したのだ。McClellan FDA長官は、一貫して、処方薬の輸入に反対してきた人物であり、その人物を研究会のヘッドに据えること自体、結論が見えている。再輸入促進派は、この見え透いた人事にすかさず反発しており、特に、上院の推進派議員は、超党派で結束して、McClellan FDA委員長のCMS長官(the administrator of the Center for Medicare and Medicaid Services)の就任に抵抗する考えのようだ(New York Times)。CMS長官人事に遅れが生じれば、Medicare改革でBush政権が目玉にしてきた処方薬割引カードの施行が遅れることも考えられる。
処方薬再輸入問題は、かなり高度な政治課題となってきたようだ。