Source : | Cuts to Anthem's rate hikes are not for everyone (Los Angeles Times) |
結構ややこしい話である。CA州の個人保険市場で、同じ保険会社(Anthem Blue Cross)の保険料の引き上げ率が大きく異なりかねない状況になっている。それも、保険監督官庁が異なるという理由だけで。保険加入者にとっては、自分が加入している保険プランがどちらの官庁に監督されているのかわからない。それどころか、保険会社でさえ、どちらの監督下にあるべきなのか、説明ができないという。
Anthem 個人保険プラン 監督官庁 State Insurance Commissioner Department of Managed Health Care 加入者数 約60万人 150,983人 保険料引上率 16.4% → 9.1% 平均16%程度 免責額・自己負担 据え置き 引き上げ
医療保険改革法を施行していく中、こうした現場レベルまで目配りができるのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「医療保険プラン」
Source : | CBO Outlines 'Key Features' Of Ryan Budget Proposal: 'Substantial' Changes To Medicare, Medicaid (Kaiser Health News) |
アメリカでは財政赤字削減策が大きな政策課題となっている。そうした中、連邦議会下院のRyan予算委員長が長期にわたる財政赤字削減策を提案した。上記sourceでは、その中でも当websiteが関心を持つ"Medicare"、"Medicaid"、医療保険改革法の分野について提案概要をまとめている。
ただし、提案そのものがかなりラフは骨子程度のものとなっており、まだまだ議論すべき余地がたくさん残されていることは認識しておくべきだろう。ずいぶんと思いきった提案であり、また、詳細が示されていないため、賛成も反対も印象論でしか語れまい。また、これらの提案が、現実に法案として上院で審議されるようになるまでは、様々な議論が必要となろう。
- Medicare
- 2022年から、Medicareの加入資格年齢を引き上げるとともに、保険料補助の制度に転換する。
- 2022年から、毎年加入資格年齢を2ヵ月ずつ引き上げ、2033年に67歳とする。
- 2022年以降に65歳になる国民については、現行のMedicareには加入せず、民間保険プラン購入を補助するための保険料補助を受け取る資格を与える。
- 保険料補助受給権を賦与された者は、新設される"Medicare exchange"で販売されている民間の保険プランを購入する。
- これらの民間保険プランの基準はOPMで定める。また、保険プラン内では、同年齢の加入者の保険料は同一とする
- 保険料補助は、直接保険プランに支払われる。
- 保険料補助は、加入者の健康状況により異なる。また、保険プラン間で、加入者の健康状況に応じたリスク調整を行う。
- 加入者一人当たりの保険料補助の平均額は$8,000とする。これは現行制度の2022年時のMedicare負担額と同額である。その後は、都市部の物価上昇率(CPI-U)で補助額を引き上げる。
- また、保険料補助は、加入者の所得に応じて異なる。
所得階層 保険料補助率 上位2% 30% 上位2〜8% 50% 残り92% 100% - 2022年より、低所得者向けに医療貯蓄勘定(Medical Savings Account, MSA)を設ける。
- 従来のMedicare加入者には、新制度への移行を選択できるようにする。
- Medicaid
- 2013年より、連邦政府負担分を包括払いとして州政府に配分する。
- 2022年より、連邦政府負担分を一定割合で削減する。
- 制度設計に関する州政府の裁量権を拡大する。
- 医療保険改革法
- 保険加入義務を廃止する。
- "Exchange"の創設とそれに伴う補助金制度を見送る。
- Medicaid加入対象者の拡大をやめる。
- 医療保険プランを提供する小規模事業者への税額控除を見送る。
そうした中で、関連記事を読んでいて初めてわかったことは、このMedicare保険料補助という抜本改革案は、1995年にHenry AaronとRobert Reischauerが最初に提案したということである(Kaiser Health News)。 両者とも、昔からの民主党系学者の大御所である。その大御所のアイディアを下院共和党が取り込んでの提案というのは、政治的には面白いところがある。
その他の関連記事は次の通り。 ※ 参考テーマ「Medicare」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | State Health Care Reform Update - 04/04/11 (CCH) |
上記sourceでは、医療保険改革法の施行に伴い、各州レベルでどういった対応が進んでいるのか、という簡単なレポートが紹介されている。その中で、当websiteとして関心を有している事項についてまとめておく。最初のMLRの規制緩和については、またしても例外措置、特例措置が取られようとしている、との印象である。連邦全体で皆保険制度を導入しようとしている中で、例外措置はできるだけ少ない方が望ましい。
- 償還割合規制(Medical Loss Ratio, MLR)の緩和
保険プランのMLRについては、医療保険改革法で定められ(「Topics2010年4月29日 償還割合規制は不発か?」参照)、昨年11月にその適用のための基準が固まり(「Topics2010年10月23日 償還割合規制固まる」参照)、本年1月1日から施行されている。
大規模保険プランの場合にはMLRを85%以上、個人保険プランなどの小規模保険プランの場合には80%以上とすることになっているが、個人保険市場が不安定化する、選択肢が減少するなどの弊害が見込まれる場合には、一定の手続きを踏んだ上で、州政府が規制緩和を申請することができる。
CMSの資料(4月5日現在)では、その申請状況が公開されている。ポイントは次の通り。
州 名 MLR 80%→ 連邦政府取扱状況 Maine 65% 決 定 New Hampshire 70% 3/24までパブコメ募集 Nevada 72% 審 査 中 Kentucky 65%(2011)→70%(2012)→75%(2013) 審 査 中 Florida 65%(HMOは70%) 審 査 中 Georgia 65%(2011)→70%(2012)→75%(2013) 審 査 中 North Dakota 65%(2011)→70%(2012)→75%(2013) 審 査 中 Iowa 60%(2011)→70%(2012)→75%(2013) 審 査 中 Lousiana 70%(2011)→75%(2012) 審 査 中 - WI州の試み
州政府職員の保険を、Exchangeを通じて購入することが可能かどうか、検討を始めている。
また、WI州については、州政府職員労働組合の交渉権限を制約したうえで、上記のようなコスト削減を行おうという考えであろう。本当に厳しい州政府である。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | The Great American Ponzi Scheme (BusinessWeek) |
上記sourceでは、本当に地方政府年金は必要なのか、との問いを発している。そして、その答えは次の2点に集約されている。確かにこれだけ制度変更ができれば、首長や議員達は悩むこともなくなるだろう。
- 公的サービスの従事者にはキャリアが必要であり、そうした職場にとって、年金プランは、職員をつなぎとめておくためには最も有効な手段である。
- ただし、次のような制度変更が必要である。
- 自治体が保障するレベルはまともな引退後の生活が可能となる水準にとどめ、それ以上の給付については、自らDCで積み立てる。
- 支給開始年齢は、ブルーカラーの場合には60歳以降、ホワイトカラーの場合には65歳以降とする。
- 自治体は自由に制度変更できるようにする。
- 積立比率100%を達成するよう、連邦政府による誘導策を設ける。
なお、上記sourceのタイトルに含まれている"Ponzi Scheme"とは、Wikipediaによれば、「うまい儲け話だが、本当に儲けているのではなく、後からの出資を先に出資した投資家に回すだけなので、必ず破綻する」とされている。年金制度も、後世代から前世代への所得移転でしかないという意味では"Ponzi Scheme"というわけである。
もう一つ、上記sourceに付随していた図表がわかりやすい。自治体の年金プランで、積立比率のワースト10を、州、市別に掲載している。これを見ると、州ではIllinois州、市ではChicago市が深刻な状況に陥っているのではないかと思われる。シカゴはイリノイ州最大の都市であり、これは単なる偶然の一致ではなく、何か因果関係があるのではないだろうか。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Key Events Leading to the Termination of the Delphi Defined Benefit Plans (GAO) |
Delphiの年金プランについては、GMの破綻も絡まって複雑な経緯を辿ってきた。当websiteでも一部は紹介してきたが、先ごろGAOがその経緯についてレポートをまとめた。
これで一区切り、と思った矢先、PBGCが保有していた新生Delphiの株式を同社が買い戻すという(PBGC Press Release)。これによるDelphi退職者の年金額への影響はまだ不明ということだ。いつまでも尾を引く問題である。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」
Source : | Confusion Over Policy on Married Gay Immigrants (New York Times) |
当websiteの懸念通り、連邦司法省が公表したDOMA対応の変更が、現場に混乱をもたらしている(「Topics2011年2月24日(1) DOMA順守を放棄」参照)。
3月28日(月)、移民に対してグリーンカードを発行するCitizenship and Immigration Services(USCIS)は、同性カップルのケースについて決定を遅らせると公表した。同性婚推進派は、この決定を同性婚認知に向けた連邦政府の動きではないかと期待した。異性婚のカップルであれば、アメリカ国民と結婚した外国人の配偶者にはグリーンカドが賦与されるが、DOMAにより、同性婚のカップルにはグリーンカードの賦与が禁止されている。この扱いが変更されるのではないか、と期待されたのである。
ところが、翌29日(火)、同性カップルの扱いについてまったく変更はない、と明言したのである。
上記sourceで紹介されている例は、アメリカ人の男性とベネズエラ人の男性がCT州で同性婚のライセンスを取得し、ベネズエラ人の男性が、USCISにグリーンカードを申請していた。この申請が却下されると、一定の期間経過後に出国しなければならなくなるというのである。CT州で婚姻を認められながら、市民権は得られないということになるのである。
この同性婚カップルは、司法省がDOMAを遵守しないといっていることから、裁判所に訴えれば勝つことができるかもしれないが、それにはまた途方もない時間がかかってしまい、その間に国外退去の命令が下るかもしれない。同性婚の法的位置付けがちぐはぐになっていることが、夫婦という社会の最小単位を不安定にしている。
※ 参考テーマ「同性カップル」