『働く母親はよい母親でありたい。企業側も有能な人材を確保しておきたい。両者のニーズがマッチするのが、パート・タイム・ジョブである』というのが、上記sourceのエッセンスである。
上記sourceで紹介されている調査によれば、10年前に較べ、働く母親としての理想像に変化が生じている。現代のアメリカ人女性にも、専業母親願望は意外と強いものがあるようだ。
理想の働き方 1997年 ⇒ 2007年 フルタイム 32% ⇒ 21% パートタイム 48% ⇒ 60% 専業母親 20% ⇒ 19%
これはわが国でも同様であると思う。次の2つの図表は、今年9月6日に開催された、第4回「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議「基本分科会」に提出された資料(資料2-1)からの抜粋である。こうやってみると、わが国でも専業母親願望がかなり強いことが分かる。ところが、今、政府やマスコミは、仕事と育児の両立が難しいので辞めたという24%の層に、一所懸命焦点を当てている。その倍以上の母親が、専業母親を望んで仕事を辞めているのである。
ここで政策ターゲットを間違えると、アメリカの後を追うだけのことになってしまう。上の意識調査が今でも正しいとすれば、「出産⇒育児⇒パートタイム⇒フルタイム」の道を理想と考えている女性が多いのではないかと思われ、そうした道を歩む女性への支援策に重点を置くべきなのではないだろうか。企業も同様であろう。
ワーク・ライフ・バランスは、家庭毎に求める姿が異なる。すべてを一つの枠組で論じることは危険ではあるが、どこに国民の理想があるのかという点は、常に念頭に置くべきであろう。
上記sourceは、Clinton医療改革提案(「Topics2007年9月18日 Clinton提案」参照)に対して、主に日刊紙に掲載された評価等である。概ね好意的であるとみてよい。
以下、興味を持った部分の抜粋。
- Washington Post 論説
- 他の民主党候補と内容が似ている、という点が最大の要素である。
- 最も興味深いのは、企業が提供する保険プランに関して、高額所得者に税制措置に制限を設けた点である。
- David Brooks (New York Times)
- 1993年時点からは大きく前進した。
- 内容的には、『革新的であり、革命的ではない。』
- 共和党候補の提案よりはよい。
Opening Seasonが近づくに連れ、アメリカ国民の医療保険に対する関心は高まっていく。そうした中で、Wal-Martがようやく大胆な医療保険改善策を打ち出した。
同社は、MD州に"Wal-Mart法案"を可決され、一躍アメリカ社会のヒール役に仕立て上げられてしまった(「Topics2005年5月20日 Marylandの医療改革法案」参照)。その後、同社は汚名を挽回すべく、医療保険に修正を加えてきた(「Topics2006年2月27日(1) 小出しにするWal-Mart」参照)(「Topics2006年9月28日 Wal-Martが医療プランを変更」参照)。しかし、保険プランへの加入が思うように進まず、汚名挽回には至っていない。
今回の改善策の特徴は、次の通り。具体的な組み合わせ例が上記sourceにいくつか掲載されているので、参照されたい。
- 従業員は、50種類以上のプランの組み合わせ(保険料、免責額等)から選択できるようになる。
- 家族も含め、加入者一人当たり$100〜$500ドルの加入ボーナスが給付される。
- 保険料の最低額を$5/Mに引き下げる。
- $4の自己負担で、2400種類のジェネリックを購入できる。
- 病院診療の免責額は廃止。
現在、Wal-Mart従業員130万人のうち、約半数が既に同社提供の医療保険プランに加入しているが、40%はMedicaid、配偶者の医療保険等別のプランに加入している。そして、残り10%が無保険状態にある。企業側としては、こうした事態をかなり改善できるのではないか、と自己評価しているし、医療保険の専門家も「大きな改善が期待できる」と評している(New York Times)。
清水の舞台から飛び降りた改善策が効を奏すかどうか、注目しておきたい。
いよいよ、本命、Clinton上院議員の医療保険改革提案が、17日公表された。以下、そのポイント(上記詳細版に基づき9/19修正)。これを読んでの感想をいくつか。
- FEHBPの一部として、新たなプラン("Health Choices Menu")を創設する。国民は、現在加入している保険プランへの加入を継続してもよいし、この新たなプランへ加入してもよい。プラン内容は、連邦議会議員が享受しているものと同じレベルのものとする。
- 全州、全市場において、公正な保険市場ルールを定める。そこでは、保険加入・更新を拒否されたり、年齢、性別、職業に応じて不当に高い保険料を求められたりすることはない。また、保険会社が過剰な利益を得ることも認めない。
- 保険加入可能な環境においては、個人の保険加入を義務付ける。勤労世帯には、還付可能な税額控除制度を設ける。その際、保険料負担が所得の一定割合を超えることのないよう設計する。
- 大企業には、保険プランの提供または医療費拠出を期待する。また、中小企業には、保険プラン提供を促進するための税額控除を認める。
- Medicaid、CHIPを拡充する。
- ベビーブーマーの大量退職に対応して、退職者医療プラン用の税額控除制度(再保険制度)を設け、急増した退職者医療費用の一部を補填する。
- 必要となる財源($110B)の半分以上($56B)は、医療の効率化、近代化により捻出する。その他は、$250,000以上の所得層の所得税増税、医療費控除の制限などにより捻出する($54B)。
- 連邦レベルでの単一保険提案からは相当乖離した提案となった。よく言えば、現実的な提案か。これで前クリントン大統領時代の提案という亡霊からは訣別できるかもしれない。
- FEHBPを活用して選択肢を拡大するという、共和党のお株を奪うような提案は、Clinton議員の茶目っ気を感じさせてよいのではないか。同じFEHBPを活用するというObama提案では、企業からの保険提供がない場合に限られており、スタンスの差を感じさせる。
- また、個人の保険加入義務付けを示唆したことにより、ここでもObama提案との差を明らかにした(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)。
- 保険プール構想を盛り込まないことで、皆保険からは少し距離ができてしまうものの、複雑な制度設計や財源が必要とならない。これもObama提案、Edwards提案との違いとなる(「Topics2007年2月7日 Edwardsの皆保険提案」参照)。
- 上記のような違いはあるものの、民主党の主な候補者の医療保険改革は、ほぼ歩調が揃っている。つまり、共和党との対立軸について、大きな意見の相違がないということがわかる。
American Community Survey (ACS) は、楽しみにしている統計調査である。アメリカの社会構造を少し垣間見る事ができるからである。以下、ポイントのみ。
- 高齢者の就業率
高齢者(65〜74歳)の就業率は、全国で23.2%(2006年) ← 19.6%(2000年)
- Non-English Speakers
5歳以上で家庭で英語以外の言語を話している人の割合は、全国で19.7%(2006年) ← 17.9%(2000年)
都市別にみると、Los Angelesは53.4%にものぼる。
- 夫婦子供のいる家庭
夫婦と18歳以下の子供がいる家庭の割合は、全国で21.6%(2006年) ← 23.5%(2000年)
上記sourseによれば、UAWのRon Gettelfinger会長が、「基本的にはVEBA設立に合意したい」と、UAWの交渉チームに語ったそうだ。彼は、以前はVEBA設立に対して冷ややかだったことを考えると、交渉に前進があったものと思われる。
ただし、具体的な妥結地点はまだまだ見えておらず、拠出規模についても開きがあるようだ。
Gettelfinger会長が前向きの姿勢を見せている背景には、やはり他の労働条件、賃金や医療保険などで大幅な譲歩を迫られることへの懸念があるとみられている(「Topics2007年9月5日(1) UAW交渉経過」参照)。
また、Gettelfinger会長は、VEBA設立の条件として、医療コストの高騰や運用益の見込み違いで基金不足に陥った場合に、Big3の追加拠出を要求しているようで、これに対してBig3の一部が猛反発していると報じられている。かつて、CaterpillarとのVEBAで基金が枯渇して失敗しているためと思われる(「Topics2007年9月5日(1) UAW交渉経過」参照)。
まだまだ暑い夏が続いているようだ。最後にいつもの株価動向。 ⇒ GM Ford
DC投資プランのデフォルトに関する話題が続いている(「Topics2007年9月8日 アメリカ人も会社依存」、「Topics2007年9月10日 PPAの最大の影響」参照)が、議論を整理したコラムがあったので、まとめておきたい。
- DCプランへの強制加入を決めた場合、どの投資プランをデフォルトに設定するか、企業側にとっては大きな悩みである。
- なぜなら、大部分の従業員は資産配分を変更することをせず、デフォルトのプランのままにしているため、仮に不適切な投資プランをデフォルトに設定したとなると、後で受託者責任を追及する訴訟が起きる可能性があるからだ。
- PPA2006では、労働省が適切と判断した投資プランをデフォルトに設定しておけば、DCプランへの強制加入は受託者責任を追及されない、というセーフ・ハーバー・ルールを設定した。
- PPA2006に基づいて労働省が示した投資プランは、次の3プランであり、それぞれのプランへの評価は次の通り。
投資プラン 主な特徴 賛成意見 反対意見 Balanced Funds
- 株式投資と債券投資の割合を固定
- 一般的には株60vs債券40
- 一定期間毎に配分を見直して固定割合を維持
- 加入者にわかりやすい
- 実績がある
- コストは80〜100basisだが、資産の厚みがあれば引き下げやすい
- すべての加入者に同じ割合で当てはめるのは不適切
- 特に、若年者はリスクに対する耐性が高い
- Callanの調査では、DC投資プランのデフォルトに設定されている割合は18%のみ
- 投資対象は、予め呈示されている商品に限定されている場合が多く、分散投資が進まない
Lifecycle Funds/
Target-date Funds
- 引退する年齢を設定
- その設定に合わせて自動的に投資資産を見直し
- 一般的に、若年時には積極投資、壮年時には保守的投資
- Callanの調査では、71%の企業がデフォルトに採用しようとしている
- 加入者にわかりやすい
- 加入者個人が投資資産を見直すことはほとんどないため、リターンを確保するためには必要
- 新しい手法のため実績がなく、評価が困難
- 投資資産の選択肢が狭い
- コストが80〜100basisかかる
- 中高年期のポートフォリオが保守的過ぎる
- 従業員自身の自主性、計画性が失われる
Managed Accounts
- 加入者個人が各々ポートフォリオを設定する
- 従業員の年齢、所得その他様々な要素を考慮したポートフォリオを設定することができる
- 投資商品の選択について企業の責任を軽減することができる
- 運用管理費に加え、20〜150basisのコストがかかる
- このプランを選択する加入者はほとんどいない
- DCプラン以外に金融資産を持つ者にとってのみメリットがある
- 他方、次のプランは従来デフォルトに設定されることが多かったが、今回のセーフ・ハーバー・ルールから外された。
投資プラン 主な特徴 賛成意見 反対意見 Stable-value Funds
- 予め設定された利回りを保証
- ファンドの運用益が予め設定された利回りを下回った場合には保険会社がその分を補填
- 上回った場合にはその分を保険会社に支払う
- 利回りの最低保証がなされ、元本を失うことはない
- 受託者責任を追及する訴訟も起きない
- これまでは多くのDCプランで、デフォルトに設定されてきた
- 退職時に必要となる十分なリターンが得られない
- 投資先の変更をほとんどしない従業員の場合、これを選択してしまうのは長期的には不利益
- 上記労働省が示した3つの投資プランは、あくまでもセーフ・ハーバーであり、その他の投資プランをデフォルトに設定するだけの充分な理由があれば、そうすることは充分可能である。ただし、なぜその投資プランを選択したのか、理由と選択過程について説明する膨大な文書を残しておく必要がある。
AARPがErie事件で最高裁に上告する方針を決定したとのことである(「Topics2007年6月14日(2) Erie事件ようやく収束か?」参照)。AARPはあくまでも粘るつもりのようであるが、これは『終局の始まり』という上記sourceのコメントが的確と思われる。
CA州議会は、10日、医療保険改革法案(AB 8(修正版))を上院、下院とも仮可決した。
上記sourceは、9月6日時点でのAB 8(修正版)の概要である(念のため、オリジナルはここ)。その主なポイントは、次の通り。これに対して、シュワ知事は、拒否権を発動する意向であることを表明するとともに、州議会の特別会期を設け、改革法案のさらなる詰めを行いたいと述べた(Press Release)。
企業の責務
- "Pay or Play" - 給与の7.5%を従業員の医療関係に支出するか、同額を基金に拠出する。拠出企業の従業員は、Cal-CHIPP(後掲)を通じて保険に加入する。
- Section 125プラン(カフェテリア・プラン)を設定する(「Topics2006年10月26日 カフェテリア・プランと医療保険」参照)。
中小企業の扱い
- 自営業者を除き、"Pay or Play"ルールを適用する。
自営業者の扱い
- 個人保険市場の改革を通じて、加入率を高める。
州民の責務
- 基金に拠出した企業の従業員は、Cal-CHIPP(後掲)を通じて保険に加入する。
- FPL300%以下の従業員について、保険料は家計所得の5%を超えないようにする。
公的プログラムの拡充
- "Healthy Families"プランの加入要件を緩和する。
- Medi-CalとHealthy Familiesの加入要件を統一化し、加入手続きを簡素化する。
- 公的プログラムとCal-CHIPP(後掲)の両方の加入要件を満たす場合には、Cal-CHIPP(後掲)を通じて公的プログラムに加入する。
保険市場改革
- 2010年までに、「加入保証」を徹底するとともに、個人保険市場では地域設定保険料を利用することを義務付ける。
- 保険料収入の85%を償還財源とする。
- 個人保険加入のために"California Cooperative Health Insurance Purchasing Program (Cal-CHIPP)"(保険プール)を創設し、個人の医療保険加入のための交渉、購入を行う。
- Cal-CHIPPは、少なくとも3パターンのプランを用意する。
費用見込みと財源
- 全体で$8.3Bが必要
- 財源は、企業の拠出、従業員の拠出、州財源、連邦政府財源。
施行時期
- 2008年7月 - 公的プログラムの拡充。85%償還ルールの適用
- 2009年1月 - Cal-CHIPP創設
- 2009年10月 - "Pay or Play"ルールの適用
- 2010年1月 - 保険市場改革実施
保険加入者数
- AB 8により、340万人増。
今後、争点となりそうなのは、次の3点と報じられている(Los Angeles Times)。特別会期はシュワ知事、州議会のパフォーマンスに過ぎない、とのコメントもあるようだが、シュワ知事は医療保険改革を2期目の最優先課題に掲げており(「Topics2006年12月26日(2) シュワ知事の最優先課題」参照)、彼自身の夢(「Topics2006年12月5日 シュワ知事の決意」参照)のためにも、本気で動くのではないかと思う。
- 医療機関への課税:シュワ知事の要請を受けて、California Hospital Associationは合意している。
- 州売上税の引き上げ:これは経済界が提案している。
- 企業拠出7.5%の引き下げ:シュワ知事は、7.5%は高すぎると主張している。