12月8日(1) 会計基準の同等性評価は2年延期 Source : The use of non-EU accounting standards on EU stock markets is extended for two more years (EU)
EU議会の投票結果を受けて、欧州委員会は、6日、会計基準の同等性評価を、さらに2年延期する(2007.1.1→2009.1.1)との決定を行った。上記sourceは、そのプレス・リリースである。
これによると、次の3つ事項のどれかに該当すれば、調整表は求められない。
- IFRSに準拠した財務情報が掲載されている。
- カナダ基準、日本基準、アメリカ基準で作成された財務情報
- 次の3要件すべてに適合する第3国会計基準で作成された財務情報
- 会計基準を所管する当局がIFRSへのコンバージェンスを確約している。
- 2008年12月31日までにコンバージェンスに向けて大きく前進することを目標に定めた工程表を示している。
- 発行体が、上記2点について適合している旨を、充分な証拠をもって域内当局に示す。
上記の2.で、カナダは、上場企業については、既に独自基準を放棄することを決定している(「Topics2006年1月11日(2) カナダの会計基準」参照)。従って、同等性評価が2年延期になって、個別企業にとっては助かる部分もあるかもしれないが、むしろ、国内企業のIFRSへの転換が重要課題となる。
また、アメリカについては、調整表廃止に向けてEUと共同作業を行っており当然、というパラグラフが含まれている。当websiteとしては、お馴染みの流れであろう。
ところが、日本基準は、2年延期の対象になっているのに、その理由や背景の説明は行われていない。この辺り、世界ではどのような印象を持たれているのだろうか。
12月8日(2) 経営者報酬の開示強化
既にSECが決定している経営者の報酬に関する開示強化策(「Topics2006年7月27日 経営者報酬の開示強化案決定」参照)について、実務解説をした資料があったので、掲載しておく。いずれも、法律事務所(Gardner Carton & Douglas LLP)のレポートである。
The SEC's New Executive Compensation Rules :
Highlights of the New Rules
Compensation Discussion and Analysis
12月5日 シュワ知事の決意 Source : Health Care Reform a Priority for 2007 (California HealthCare Foundation)
いよいよ、シュワ知事のもとで、加州医療保険改革の議論が始まりそうである。先の中間選挙で、シュワ知事は圧勝しており、その人気を背景に、知事2期目の目玉政策として、医療保険改革に臨むことになる。
その際、シュワ知事が配慮しているのは、選挙結果とは対照的に、"bipartisan solution"であり、MA州の事例(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)を重視しているそうだ。
上記sourceでは、医療保険改革に臨む際のいくつかの視点をまとめている。ポイントは次の通り。
- 4人のアドバイザー
選挙前、体制を一掃するために、医療保険関係のアドバイザー4人を任命した。その内訳は、民主党系3人、共和党系1人となっており、bipartisanに向けた配慮が既に見られていた。
- Richard Figueroa (D)
- John Ramey (R)
- Herb Schultz (D)
- Daniel Zingale (D)
ここで、当websiteとしての注目は、最後のDaniel Zingale (D)である。彼は、California First LadyであるMaria Shriverの現役チーフスタッフである。Mariaは、言わずと知れたバリバリの民主党一家の出身(「Topics 2002年11月7日(2) Kennedy家とRepublican」参照)であり、医療政策で夫を支えるという構図は、クリントン上院議員を想起させる。
- コストの負担者は誰なのか
シュワ知事は、新たな増税は行わないと言っている。しかし、来年、加州財政は$2Bの赤字が見込まれている。無保険者すべてに医療保険を提供するためには、年間$20Bのコストがかかる。300万人をカバーするだけでも、$6Bかかるとされている。財政赤字が広がる中で、新たなコストをどう賄うのかが課題となる。
- どのようなタイプの医療保険か
様々なタイプが検討されており、シュワ知事は、一定の方向性を示してはいない。その中で、Home Depot型、MA州皆保険制度(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)などが、参考とされている。
他方、加州議会、SEIUなどは、シュワ知事に拒否権を発動されて日の目を見なかった加州皆医療保険法案(「Topics2006年9月10日 加州知事が拒否権発動」参照)を再提出しようという動きを見せている。
では、シュワ知事にとって、医療保険改革の向こう側に何があるのか。2期目を無事終えることができた暁には、シュワちゃんにとっての最終ドリーム、「上院議員への挑戦」ではないか、と見られている(「Topics2004年9月2日 シュワちゃんのDream」参照)。
現在の加州選出上院議員は、民主党が2人となっている。一人は、今年の中間選挙で選出されたDianne Feinstein。もう一人はBarbara Boxerで、2011年までの任期である。シュワ知事が2期目の任期を全うして上院選挙に出るとなれば、このBoxer議員との争いとなる。
また、加州選出下院議員については、53人中33人が民主党選出である。しかも、先日紹介したように、加州選出下院の民主党議員には、大物が多いのである(「Topics2006年11月21日 Pelosi vs Harman」、「Topics2006年11月28日(1) 新連邦議会のキーパーソン」参照)。
このように、シュワ知事は、2期目の医療改革も、その後の最終ドリームも、民主党支持者の多い加州の中で実現しなければならないのである。そう考えれば、冒頭に述べたように、シュワ知事には"bipartisan solution"がやはり不可欠なのである。
12月4日 DB/DC定義の議論開始 Source : Agenda for December 2006 IASB meeting (IAS PLUS)
IASBの12月会合(12-14日)で、いよいよ、DBとDCの定義付けについて、具体的な議論が開始される。同会議の10月会合では、自由討議が行われたようだ(「Topics2006年11月8日(1) DBとDCの定義」参照)が、12月会合では、ディスカッション・ペーパーが提出される予定だ。
おそらく、IASBスタッフがまとめたいくつかの選択肢について、議論が行われるのだろう。どういった選択肢が示されるのか、注目したいところである。
12月1日(1) クリスマス・ボーナスの変質 Source : The vanishing holiday bonus (The Christian Science Monitor)
いよいよ師走である。
アメリカでは、20年前くらいには、年末クリスマス・ボーナスの支給というのが一般的だったようだ。それは、年末のクリスマスを家族で楽しめるように、といったささやかなものから、かなりの大金をばら撒くものまで、様々であったようだ。
上記sourceによれば、このクリスマス・ボーナスは、いろいろな形に変わりつつあるらしい。その例を挙げてみると、次のようになる。
- まったくの廃止。事業年度末とクリスマスの重複を回避するために、事業年度をわざわざ12-11や、4-3に変えたりするところもある。
- 業績連動型に変形。クリスマス・ボーナスといえども、働きに応じて配ろうというもの。
- 業績連動型に近いかもしれないが、利益分配型に変形。予想以上にあがった利益分を、クリスマス・ボーナスとして従業員に分配してしまうもの。
- 一律のギフト・カードにしてしまう。
- 若い従業員の引き留め策として支給するもの。
アメリカ企業もいろいろと工夫しているようだ。日本は相変わらず、年末ボーナスという形で、金太郎飴のような支給方法を取っているようだが、もう少し、いろいろな形を試行してみてはどうなのだろうか。
12月1日(2) 休暇 vs サラリー Source : More vacation time comes at a price (Chicago Tribune)
「休暇の一週間延長を希望する場合には、サラリーを2%カットする」
最近、Xeroxで導入された制度で、2007年から実施される。実際、29,000人の従業員のうち、7%が休暇一週間延長を選択したそうである。
究極のカフェテリア・プランともいえるもので、より休暇を重視したい従業員にとっては、「買い」なのである。共働きの場合、通常の有給休暇や病気・介護休暇などを多く費消してしまい、バケーションにしても、子供の面倒にしても、より長い時を家族と過ごしたい人がいるということは、充分考えられる。そうした従業員のニーズに対して、企業側は、何のコストもかけずに応えることができるのである。
「買う」人がいれば、「売る」人もいる。妻が専業主婦の男性の場合、通常の有給休暇は、どうせ余らせてしまう。それならば、小遣い稼ぎ、401(k)拠出、医療費カバーなどの目的で、休暇を売ってしまおう、というインセンティブは充分に働くであろう。
最近公表された調査(11月7日時点)によれば、アメリカ人の仕事中毒は、かなり逝っちゃっている。
- 37%の従業員が、全部の休暇(vacation)を使い切っていない。
- 24%の従業員が、休暇をまったく使っていない。
- しかも、休暇を取得した従業員も、72%は、何らかの形で職場と連絡を取っている。
- うち39%は休暇中のほとんど毎日、20%が毎日、職場と連絡を取っている。
単純計算でいけば、完全オフの完全休暇をエンジョイしているのは、6人に1人しかいないということになる。こんな風であるからこそ、休暇の売買制度が従業員にとっても重要に思えるのであろう。本当にオフになりたいと思えば、休暇が少しでも長くなる方がいいし、どうせ充分なオフが取れないのなら、休暇を売ってしまえ、ということになる。
Mercer/IFEBPの調査によれば、
- 企業が休暇を買い取る制度を導入している企業は、10%弱
- 企業が休暇を売り渡す制度を導入している企業は、15%
- 5%が、買い取りも売り渡しも認めている
また、制度を既に導入した職場においては、概して2〜3対1の割合で、休暇取得を選択する場合が多いそうだ。
上記sourceで面白いと思ったことがある。Xeroxには、「女性社員にとって魅力ある職場にするための女性委員会」というのが設けられており、この2年間、ワーク・ライフ・バランスの改善策を検討してきた。検討対象となった制度は40種類にも及んだが、この「休暇延長とサラリーとの取引」が、推奨一番バッターとして導入されたというのである。
こういうものなら、日本でもすぐに入りそうな気がするが・・・。