7月31日 連邦レベルの皆保険提案 Source : Stark offers universal health insurance plan (San Francisco Chronicle)

Rep. Pete Stark (D-CA 13) が、連邦レベルでの皆保険制度(“AmeriCare Health Care Act”)の導入を目指した法案(HR 5886)を提出した。Stark下院議員は、Committee on Ways and MeansSubcommittee on Healthのranking memberであり、今秋の中間選挙で民主党が多数党になれば、医療に関するリーダーになり得る存在である。そのような重鎮からの提案だけに、注目が集まるところである。ちなみに、法案支持者は33人にのぼっているが、クリントン上院議員は支持者には含まれていない。

AmeriCare法案の主旨ならびに概要

AmeriCare法案のポイントは、次の通り。
  1. 加入資格
    1. 全米居住者に対して、皆保険加入権を賦与する。特に、24歳以下の子供、妊婦、低所得者(FPL300%未満)に配慮する。施行日は、2010年1月1日。

    2. 子供の誕生時に自動的に加入する仕組みを開発する。適切な医療保険加入者については、適用除外の選択を認める。加入者は、"AmeriCare Card"を受領する。加入者資格は、個人、カップル、未婚個人で子供あり、既婚カップルで子供あり、の4種とする。

  2. 保険給付
    1. 特別な加入資格者(24歳以下の子供、妊婦、低所得者(FPL200%未満))については、総合的な給付を保障する。費用負担(cost sharing)はなし。FLP200%〜300%の低所得者については、費用負担に対する補助金を出す。

    2. 一般加入資格者については、Medicare Part A&B、予防診療、薬物乱用治療、メンタルヘルスケア、処方薬などが給付対象となる。

    3. 費用負担
      1. 免責額:個人$350、家族$500
      2. 窓口負担:20%。ただし、個人$2,500、家族$4,000が上限。
      3. 保険料、免責額、窓口負担の合計額の上限:
        FPL所得に対する割合
        200%-300%5%
        300%-500%7.5%

  3. 保険給付
    1. 保険給付は、Medicareの給付率に、外来処方薬などを付加して拡張する。
    2. 運営費用として、保険料全額と州政府拠出金を、"AmeriCare Trust Fund"でプールする。

  4. 個人保険料
    1. 州ごとに、個人、カップル、家族の保険料を設定する。
    2. 低所得者、企業の従業員(事業主が拠出金を負担するため)については、低減する。
    3. 事業主が適切な保険プランを提供している場合には、個人でAmeriCare保険料を負担することはない。
    4. 保険料徴収は、ペイロール・タックスと同様の源泉徴収制度を導入する。最終調整も、確定申告で行う。
    5. 季節労働者、パート・タイマー、複数事業主と雇用関係を持つ従業員については、特別ルールを設定する。

  5. 事業主拠出
    1. AmeriCareで定めた保険料の8割相当を拠出するか、適切な保険プランを提供するよう義務付ける。
    2. 逆選択を防ぐための追加拠出義務を課すことも可能とする。
    3. 2010年1月1日からとする。ただし、従業員100人未満の事業主については、2012年1月1日からとする。
これに関する管理人の気付きは、次の通り。
  1. 法案支持者として、ALF-CIOConsumers Union、American Pediatrics Associationなどがあがっており、かなり対決色が強いものとなっている。

  2. クリントン上院議員が目指すような、公的医療保障プランの拡張という手法(「Topics2006年6月16日 Mrs. Clintonの政治信条」参照)ではなく、MA皆保険法のように、様々なツールの組み合わせで、一気に皆保険を目指す手法を取っている。その中には、"Play or Pay"ルールが含まれており、ここが最大の争点になると思われる。

  3. 下院は既に事実上の閉会に近い状態であり、上記法案が真剣に議論される見込みはないものの、中間選挙を間近に控え、医療皆保険を政策論議の中心に持って来ようという民主党の意思が明確になった。

7月30日 年金改革法案はほぼ絶望 Source : Estate Tax, Wage Hike Teetering In Senate ; Time Running Out for Action (Washington Post)
上記sourceの副題にある通り、時間切れである。

29日、下院は、遺産税、最低賃金、年金改革について法案を可決したが、いずれも上院、ホワイト・ハウスとは何の合意もできていない、いわば形式的な法案可決を行ったのみである。下院は、これで夏休みに入り、あとは9月に15日間のスケジュールをこなして中間選挙となる。上院もあと数日で夏休みに入る。

この後、仮に年金改革法案の両院協議会の成案ができたとしても、下院がおらず、根回しも出来ない状況となろう。

7月28日 MA皆保険法 一歩前進 
Source : GOVERNOR ROMNEY ANNOUNCES FEDERAL APPROVAL FOR COMMONWEALTH’S HEALTHCARE REFORM PLAN (Press Release)

MA皆保険法では、保険加入促進策として、低所得者層の保険料への補助と、医療保障の対象となる子供の拡大を盛り込んでいる。いずれもMedicaidの財源を組み替えて、必要財源を捻出することとしている(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案 」の4.と5.を参照)。

これに対し、連邦政府でMedicaidを所掌しているCMSが、MA皆保険法を完全に承認した。無保険者対策の根幹に関わる部分だけに、MA皆保険法は、大きな前進を勝ち取ったといえよう。

7月27日 経営者報酬の開示強化案決定 Source : SEC Votes to Adopt Changes to Disclosure Requirements Concerning Executive Compensation and Related Matters (SEC)

26日、SECは、経営者報酬の開示強化案を全会一致で可決した。案は以前紹介した内容でほぼ変更がないようだ(「Topics2006年1月22日(2) 経営者報酬の開示強化案:概要」参照)。また、提出すべき具体的な内容の一覧については、この表が示されている。

FEIなどの経営者サイドの抵抗(「Topics2006年4月26日 報酬開示に関する経営者の本音」参照)も、むなしく散ったようである。

7月26日(1) WP紙が司法判断を支持 Source : Spare Goliath (Washington Post)

上記sourceは、Washington Post紙の論説である。『ゴリアテを見逃してやれ』とあるのだが、ここでのゴリアテ(Goliath)はWal-Mart、ダビデ(David)はMD州議会である。

連邦地方裁判所の「MD州Wal-Mart法はERISA違反」(「Topics2006年7月20日(3) MD州"Wal-Mart法案"敗訴 」参照)を受けて、MD州議会は法改正を検討しているようだが、そんなことはやめてしまえ、というのがWP紙の主張である。概要は次の通り。
  1. 当該企業の人気がない、とか、共和党に献金しているから政治的に守られている、という理由で、一つの企業だけを狙い撃ちにするのは、行政権限の濫用である。

  2. 法改正を試みたところで、医療コストの削減にはつながらない。

  3. 全米平均と比べてみて、Wal-Martの従業員のMedicaid利用率は、わずかに高いだけである。また、MD州内のその他の企業も、Wal-Martと同様、医療ベネフィットを抑制している。

  4. MD州には80万人の無保険者が存在しているが、そのほとんどはWal-Martの従業員ではない。

  5. MA州は、医療費抑制に対して責任を持って対応しようとしており、大企業頼みの方策に頼ろうとはしていない。MD州も、大企業そうすべきではない。
注目したいのは、最後の項目である。 WP紙は、Washington, D.C.ならびにその周辺地域を基盤としている。当然、MD州のほとんどの家庭がWP紙を読んでおり、当該地域での影響力は大きい。そのWPが、MD州Wal-Mart法を明確に否定し、MA皆保険法(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)を支持したことになる。

今度は、Boston GlobeかNew York Timesから、両法への評価を聞いてみたいものである。

7月26日(2) PBGCのB/S改善 Source : 2005 Annual Report (PBGC)

2005年のPBGCの債務超過は$23.1Bで、前年の$23.5Bよりもわずかに改善した。これは、金利の上昇による債務の見積もりが減少したこと、投資収益が上がったことなどによる。つまり、金利上昇という外部要因によるところが大きい。

2005年にPBGCが引き受けた年金プラン(単独事業主型)は120で、それに関連して引き取った資産は$10.5B、給付債務は$21.2Bで、積立比率は5割ということであった。実質的な穴は、さらに拡大したというのが実態であろう。

7月21日(1) PBOで決定(2) Source : Action Alert 06-29 (FASB)

「Topics2006年7月14日 PBOで決定」で紹介したように、FASBは年金会計見直し第1フェーズで、退職給付債務の認識をPBOで行うことを決定した。その際の議事概要によると、次のように結論を示している。 何故に、殊更年金プランだけはPBOで認識しなければならないのか。その理由を聞きたいところである。

7月21日(2) 年金改革法案暫定合意 Source : Tentative deal reached on pension reform bill (Business Insurance)

上記sourceによれば、年金改革法案を審議している両院協議会のSen. Mickael B. Enzi (R-WY)議長は、「両院協議会で暫定合意に達した。木曜日に再度会合を開催して最終合意が得られれば、早くて来週には両院の投票にかけることができるだろう」と語ったらしい。

詳細は何も示されていないため、コメントはできないが、中間選挙が間近になっていることを考えれば、大甘な内容(規制強化はほどほど)にしておいて、stem cellに続いてBush大統領の2度目の拒否権行使、というのがシナリオではないだろうか。

ところで、先述のEnzi議長は、会計学士とのこと。日本でも会計士出身の国会議員が増えてきている。時代の要請なのでしょうね。