Wal-Mart、Intel、British Petroleumといった大企業が、従業員の医療情報のIT化を推進するという。約10社が同様のプランを採用する予定であり、来週にも正式発表があるそうだ。このIT化の時代に、保険者またはプラン・スポンサーとしては当然の行為だろう。政府機関の主導で、こうした動きが徐々に広がっていくことが期待されている。
IT化推進のプラン概要は、次の通り。
- プランのシステムは、The Centers for Disease Control and Prevention (CDC)が提供する。 CDCは、HHS傘下の一機関である。つまり、公的機関である。
- プラン遂行の目的は、従業員の医療情報(Electronic Health Records, EHRs)を医療機関、薬剤師、医師との間で共有することにある。
- プラン参加企業は、1社あたり$1.5Mを拠出する。
- 従業員のEHRsを、従業員、保険会社に、質、費用の両面から評価させるとともに、医療過誤、重複検査、管理費の抑制に役立たせる。
- 医師側も、個々の患者毎に、診療行為の選択がしやすくなる。
- 企業側は、医療機関の利用を促進するようインセンティブを用意する。従業員の利用は任意だが、企業側としては従業員がEHRsを利用する医療機関を選択するよう期待している。
(1) 情報化推進体制の整備と情報化グランドデザインの策定(厚生労働省)しかし、もうすぐ冬というのに、厚生労働省からは、グランドデザインについて何の音沙汰もない。まさに、『画餅』とは、このことを言うのだろう。
医療・健康・介護・福祉分野の全般にわたるIT 政策を統括する体制のもと、2006 年 夏までに医療・健康分野における情報化のグランドデザインについて一定の整理を行う。 更に、有識者の専門的知見を活用し、関係省庁との連携を図りながら検討を進め、医 療・健康・介護・福祉分野の横断的な情報化のグランドデザインを2006 年度末までに策 定する。
当website用の選挙結果解説である。中間選挙の結果、人事関連の政策課題がどのように動くか、また、その鍵を握る議員は誰か、ということで、まとめられている。
全体の傾向については、既に触れたものばかりなので、ここでは、キーパーソンとその主張をまとめておく。
下 院
役 職 議 員 名 主 な 主 張 下院議長 Nancy Pelosi (D-CA)
- 高所得層の所得税増税
- 国内雇用を減少させるような税制の是正
- 「Topics2006年11月6日(3) 女性が握る連邦議会?」参照
Joint Committee on Taxation
委員長Charles Rangel (D-NY)
- 国内雇用を減少させるような税制の是正
- HSAsの拡充反対
Committee on Ways and Means
委員長Pete Stark (D-CA)
- Medicare for All(皆保険制度)
- Medicare Part Dの改善
- 「Topics2006年11月28日(2) 民主党 医療政策で不統一」参照
Committee on Energy and Commerce
委員長John Dingell (D-MI)
- Medicare for All(HR 4683)
Committee on Government Reform
委員長Henry Waxman (D-CA)
- Medicare Part Dの改善
- Medicare処方薬の価格交渉権の賦与
- Medicare for All
Committee on Education and the Workforce
委員長George Miller (D-CA)
- PPA反対(生温いという意味で)
- CBプランへの移行反対
- 独立していないアドバイザーの投資アドバイス反対
- 「Topics2006年11月15日 労組の政策要望」参照
Committee on Financial Services
委員長Barney Frank (D-MA)
- The Protection Against Executive Compensation Abuse Act (HR 4291)
- 経営幹部上位5名の総報酬について株主投票を求める
- 経営幹部の"golden parachute"について、個別に株主投票を求める
上 院
役 職 議 員 名 主 な 主 張 院内総務 Harry Reid (D-NV)
- 共和党との協調路線
Committee on Finance
委員長Max Baucus (D-MT)
- 共和党との協調路線
- 「Topics2006年11月28日(2) 民主党 医療政策で不統一」参照
Committee on Health, Education, Labor and Pensions
委員長Edward Kennedy (D-MA)
- 企業に医療保険プランの提供義務付け
- Medicare Part Dの改善
- Medicare for All(S 2229)
- PPAの推進者
- 最低賃金の引き上げ
こうして見ると、労働関係のキーパーソンは、加州、MA州出身議員に集中しているようだ。いずれも、当websiteでは、医療保険の皆保険化を中心に、おなじみの州である。
また、民主党内の『下院の理想派 vs 上院の現実派(協調路線)』という構図も見えてくる。
中間選挙での大勝利を受けて、Pelosi女史がMedicareの処方薬価格の抑制を打ち出した(「Topics2006年11月14日 新連邦議会前哨戦:Medicare処方薬」参照)が、民主党内は、全然固まっていないようだ。
上記sourceによれば、Medicare処方薬価格の抑制策として、民主党は固まった案を持っておらず、単に連邦政府の価格交渉を禁じていた条項をはずすだけ、というものから、独立した連邦政府の制度を創設して強力な価格交渉力を持たせる、というものまで、幅広いアイディアが語られている。
次の下院Committee on Ways and Meansの委員長就任が見込まれている、Pete Stark (D-Calif.) 議員は、連邦政府が独立した処方薬給付と価格交渉を行い、民間プランとも競合するような制度を望んでいる。他方、次の上院Committee on Financeの委員長就任が見込まれている、Max Baucus (D-Mont.) 議員は、こうしたアイディアに冷たい視線を送っており、辛うじてヒアリングの設定は認める、といった程度である。
イラク戦争というシングル・イッシューで選挙に勝つと、その後の政策議論がバラバラになってしまう。こうした状況や、人事紛争(「Topics2006年11月21日 Pelosi vs Harman」参照)を見ていると、まだまだ民主党政権は遠いのかな、と感じてしまう。
上記sourceは、2005年12月以降、DBプランの大きな変更を公表した企業のリストである。以前、いくつかの企業発表は、フォローしていたが、とても多くて追いかけられなかった(「Topics2006年8月24日(3) PPAへの最初の反応」、「Topics2006年8月29日 DuPontも・・・」、「Topics2006年9月29日(2) NCRもDB凍結」参照)。やはり、アメリカの情報は、便利なのである。
企業名のところには、当該企業のプレスリリース等にリンクが張られているので、変更内容を確認できる。管理人からのコメントは特にない。DBプラン凍結、廃止に関するPRCのレポートや解説にもリンクが張られているので、ご参考まで。
イギリス金融市場で、死亡率に関連するデリバティブが扱われることになりそうだとの観測記事である。ここで注目したいのは、次の2点。そういえば、排出権取引も、欧州で活発になりつつあるという。
- 退職給付会計基準の厳格化により、ボラティリティの高くなった確定給付型企業年金だが、その変動リスクを、市場(商品)を通じて軽減しようという試みである。証券会社、保険会社が乗り気になっているのはよくわかるが、いよいよ、年金プランのtrusteesが関心を持ち始めているという。そういう商品の取引が現実となれば、少なくとも長寿化リスクへの対応は可能となる。
- デリバティブ市場は、アメリカではなくイギリスで開始される見込みとのことである。上記sourceでも指摘している通り、そこには、"principle-base"と"rule-base"の争いがある。イギリスは、規制のあり方として"principle-base"を採用しており、アメリカは"rule-base"である。訴訟社会であるアメリカでは、"rule-base"となるのは致し方ないのかもしれないが、そのことが、アメリカ(金融)市場の競争力を殺いでいる可能性があり、財務長官もまさにその点を指摘している(「Topics2006年11月22日(1) Principle-base会計基準へ」参照)。新しい商品が生み出される、新しい市場が形成されるための基盤としては、"principle-base"ということであろう。
ここまで書いていて、今年3月に訪日された、イギリスFRC(Financial Reporting Council)のChief Executive、Mr. Paul V. Boyleの言葉を思い出した。『FRCは、企業の内部統制についても管轄しているが、そのアプローチは、極めてシンプルである。アメリカのSO法のようなアプローチは、非効率である。日本もそちらに向かっているのではないかと懸念している。』まさしく、アメリカは、軌道修正を図りつつある。そのような時期に、日本は、SO法ほどではないにしろ、内部統制ルールを定め、企業に適用しようとしている。この方向性とタイミングが、世界の流れと合っているのだろうか。
思えば、国際会計基準(IFRS)を動かしているのは、イギリス人。ロンドン証券市場を欧州随一のマーケットにしているのも、イギリス人。強固な"rule-base"を貫いてきたアメリカをして、自らの方向に振り向かせようとしているのも、イギリス人。
会計基準というルール・メーキングにより、世界の金融市場の方向付けをし、その中で競争力を保持しているのは、やはりイギリスということなのだろうか。
Medicaid改革委員会(通称"Medicaid Commission")が、今月17日、提言をほぼまとめ終わったようである。正式な最終報告は年末になるものとみられるが、上記sourcesからポイントをまとめてみると、次の通り。早速、民主党や高齢者団体、シンクタンクなどからは、福祉の切捨てにつながるとして、反発が出ている。
- 給付内容と受給資格に関する州政府の裁量権を拡大する。
- 介護施設入居者、障害者などを含め、Medicaid受給者を包括プランに加入させる権限を、州政府に賦与する。
- MedicaidとMedicareの連携を図る。現在、Medicaid受給者は5000万人だが、主に、介護施設費用はMedicaid、医療機関への支払いはMedicareとなっており、たいていの場合、医療情報は共有されていない。Medicaid受給者のうちMedicare受給者は13%だが、その人々に要する費用は、Medicaid全体の40%を占めている。
- 介護費用に関する個人の責任をもっと高めるべき。現在、介護施設入居者は160万人で、その費用の3分の2をMedicaidが負担している。今後、ベビーブーマーが高齢化してくると、その費用だけでMedicaidがパンクする可能性が高い。
- 介護サービスの提供を、施設から在宅、地域サービスに転換していくべき。
それにしても、Medicaid対象者が5000万人とはすごい。そのうち13%がMedicare対象者ということは、650万人が65歳以上とういことになり、4350万人が65歳未満ということになる。アメリカ国民の16%が貧困が原因でMedicaidに加入している。さらにその外側に無保険者が4600万人いることになる。この辺りのカウントは整合性に問題があるかもしれないが、『1億人近くの国民が、自力では保険に加入できない状況にある』という理解で、ほぼ間違いないものと思われる。
新任財務長官のスピーチであり、日本でもかなり報道されているので、ご承知の向きも多いと思う。当websiteとしての注目ポイントは次の通り。こうしたダイナミズムを、日本の大臣(政治家)にも持って欲しいものである。
- Sarbanes-Oxley法そのものは見直さないものの、§404の施行については、コスト・ベネフィットの観点から、大幅に見直すべきとしている。これで、財務省、SEC、PCAOBの見解が一致したことになり、見直しが早急に進むものと思われる。
- IFRS採用企業のアメリカ国内での上場コストに触れたうえで、会計基準をprinciple-baseに変更していくべきとの方向性を明確にしている。明らかにEUとの間のコンバージェンス、相互承認を意識していることに加え、変化の激しい経済事象に関する規制はprinciple-baseが望ましい、とまで表明している。Rule-baseでは、会計スキャンダルは根絶できないし、経済取引の変化についていけないとまで言っており、"Enron事件→SO法"という対応への反省から、180度の方針転換を図っているものと思われる。
Source元はKaisernetworkと表記しているが、元ネタはWall Street Journalである。同報道によれば、FDA改革第一弾の内容について、FDAと製薬団体との間で仮合意が成立したとのことである。そのポイントは次の通り。こうしたルール改正には、HHS(厚生省)と議会の承認が必要である。民主党支配の議会に突かれる前に、改革案を提示したということなのだろうが、
- FDAが行うTVコマーシャルの事前審査に要する費用のために、一本毎に$40,000〜$50,000を製薬企業が拠出する。目標総額は、年額$6M。
- 上記プログラム開始初年度については、基金創設のために倍額を拠出する。
- 新薬審査のための新たな拠出金を求める。新拠出金の総額は$300Mで、従来の拠出金の3分の1に相当する。(つまり、拠出金の33%増額。)
- 新拠出金のうち、$30Mは、新薬上市後の副作用の調査など、新薬の安全に関連する事項に使用する。
- FDAは、申請後2ヶ月半以内に、新薬の承認を行う。
- これら規則の発効日は、2007年10月1日。
という、そもそも論には対応できていない(「Topics2006年10月10日 FDAへの業務改善勧告」参照)。却って議会で総攻撃を受ける火種となる可能性がある。
- 製薬会社の拠出金でFDAの経費を賄うことが適切なのか
- 拠出金を増やすかわりに新薬承認の期間を早めるというのは、従来の発想と同じであり、新薬の安全性確保につながるのか
アメリカの労働市場は、来年も逼迫状態が続くという。失業率は、現状の4.4%から若干上がって4.6%になるものの、労働市場への参入が減るために、需給関係はタイトになるという見通しだ。そのおかげで、賃金上昇率は2.8%、物価上昇率も2.6%に上昇する。連銀もその流れを警戒しているようだ。
同じ失業率4%台でも、日本では、こういう連関は見られない。労働市場の階層化が進み過ぎてしまい、流動性が高まっていないということなのだろうか。
またまた、民主党内で、人事を巡って一悶着ありそうだ。下院議長に内定しているPelosi女史が、Jane Harman議員のIntelligence委員会の委員長就任に強く反対しているらしい。Harman議員は、現在も同委員会のranking memberで、外交問題で中道派であり、民主党内部では「委員長に適任」との評判があるにもかかわらず、である。しかも、二人とも同じ加州選出で、かつては仲が良かったというから、ややこしい。
先のMurtha議員の場合(「Topics2006年11月17日(1) Pelosi女史に平手打ち」参照)と同様、中間選挙における民主党の勝利は、「イラク戦争に反対する国民の声」によるもの、との信念が、Pelosi女史を突き動かしているのだろう。
しかし、ここでさらに同じ人事の失敗を繰り返せば、お飾りの下院議長として祭り上げられ、下院をリードすることはできなくなるだろう。信念と現実をうまく組み合わせなければ政治は動かない。民主党にとっても重要な岐路となろう。