11月20日 MA型皆保険は効果小 Source : Pay-or-Play Health Insurance Mandates : Lessons from California (Public Policy Institute of California)

以前、皆保険制度導入のための選択肢として、3つのパターンがあることを紹介した(「Topics2006年11月6日(1) 加州無保険者対策の選択肢」参照)。そこで示された3つの選択肢とは、
  1. Basic Individual Mandate
    個人に医療保険プランへの加入を義務付ける。企業の保険プラン提供は義務付けない。

  2. Pay-or-Play Plus(MA型)
    企業に医療保険プランの提供を義務付ける。提供しない場合には、特別拠出を求める。

  3. All-Consumer Choice Exchange(ACE)(CA型)
    州単一の医療保険を提供する。
である。

上記sourceは、そのうちのb. Pay-or-Play型は、無保険者をなくすという政策目的から見ると、効果が小さいと結論付けている。何よりも、企業の労働コストが上昇することにより、失業が増えてしまうのがマイナスだ、と結論付けている。

そうなると、a.の個人への義務付けは、それ単独では選択しにくくなり、結局は、c.の単一保険制度しかなくなる。どうも、加州での議論の流れは、単一保険に傾いているように思われる。

11月17日(1) Pelosi女史に平手打ち Source : Democrats Pick Hoyer Over Murtha (Washington Post)

Pelosi女史(次期下院議長)が、平手打ちを喰らった。それも、民主党に。

16日、下院民主党のリーダーシップ選挙が行われた。次期下院民主党院内総務に、Pelosi女史が強力に支持していたRep. John P. Murtha (Pa.)を抑えて、Rep. Steny H. Hoyer (Md.)が選出された。それも"149vs86"の圧倒的多数で。

上記sourceを読むと、Murtha議員の敗因は、次の3点。
  1. イラク戦争に対するスタンスが、Pelosi女史と同じく強硬。
  2. Pelosi女史を支えるためなら、個人の意見とは異なっても、何でもすると宣言していた。
  3. スキャンダルの種がかなりありそう。
一方のHoyer議員は、Pelosi女史の強硬姿勢に対して距離を置いており、イラク戦争に一定の理解を示している。Pelosi女史もMD州出身なのだが、イラク戦争を巡って、両者は厳しく対立している。こうした組み合わせを民主党議員が敢えて選択したのも、民主党中道派を惹きつけておくための知恵、ということが言えよう。つまり、強烈なリベラル志向のPelosi女史に独走させない、という意思表明という訳だ。

このリーダーシップの組み合わせは、今後の民主党の政策提案に、足枷を嵌めることになりそうだ。

ところで、上記の149対86の票数なのだが、合計すると235票となる。New York Timesでも、Financial Timesでも、同じ数字が報道されており、間違いではなさそうだ。では、下院の民主党議席数が235になったのかというと、そうでもないようだ。

New York Timesの下院選挙結果ページによれば、現時点で、民主党231、共和党198、未確定6となっている。その未確定の6選挙区の現状を見てみると、 であり、優勢となっている選挙区の候補者を含めているわけでもない。何か別の基準で選挙権を持つ人が含まれているのだろう。そのあたり、詳しい方があれば、教えてください。

11月17日(2) ビッグ3との懇談会 Source : President Bush Meets with CEOs of U.S. Automobile Manufacturers (The White House)

既に報じられているように、アメリカの自動車会社3社のCEOが、揃ってBush大統領と面会、懇談した。懇談内容は、上記sourceに示されているが、個別テーマとしては、@医療コスト、A外国産原油への依存、BAPECの市場開放、であったとのことである。

ビッグ3から、自動車産業の医療コストを何とかしてくれ、というような陳情があったかどうかはわからないが、当websiteとして気になるのは、Bush大統領の次の発言である。
"I assured these leaders that the government is addressing rising health care costs through a variety of initiatives that I think over time are going to make a significant difference in not only their cost, but the cost to the U.S. taxpayer, as well."
ただのリップサービスで、いつまで待っても具体策は出てこないのかもしれない。ただ、中間選挙で民主党が勝利し、これから医療問題で攻めてくることはわかっているので、ひょっとしたらひょっとして、何か驚くような提案が行われるのかもしれない。おそらくは、来年の一般教書演説あたりになるのだろう。期待してみたい。

11月16日 Corporate Wives' Club Source : The Corporate Wives' Club (Financial Times)

ゆめゆめ、『会社妻クラブ』などと訳してはいけない。"Corporate Wife"という言葉は、この人が最初に流行らせたようだ。間違っていたら、誰か教えてください。

こんな記事もネットから拾ってきたのだが、前述の女史の言葉にあるように、"Corporate Wife"とは、"Fortune 500のCEOの妻達"、最近の日本語では、「勝ち犬」というのが、一番イメージが合っているようだ。

上記sourceを読んでいて、感じたことを4点。
  1. 最初に描かれた状況の中に、Long Islnadにある別荘で開かれる「会社主催のBBQ大会」というのが出てくる。さすがにアメリカらしいな、と思う反面、今時、東京の会社で、「会社主催の運動会」や「会社主催のハイキング」をやっている企業は少ないだろう。

  2. トップ企業のCEO達が求める理想的な妻とは、要するに私設秘書という感じがする。従順で、面倒くさいことは全部やってくれる。それでいながら、自分が家に居る時は、気分よくしてくれる。そんな人間関係は、上下関係がはっきりしているか、金銭供与契約がなければ成り立たないのではないだろうか。そうしたことを考えると、ジャック・ウェルチの元奥が、莫大な手切れ金を要求していたのも頷けるような気がする(「Topics2002年10月31日 Executive達のseverance pay」参照)。

  3. キャリアを独力で築き上げてきた女性達が、corporate wivesとして夫の転勤、転職に振り回されていくことに、苦悩しているようだ。Corporate wifeとして最後まで勝ち抜くのか、離婚して一定の手切れ金をもらって自分のキャリアに戻っていくのか。彼女達なりに悩みは尽きないようだ。

  4. それでも、上記sourceで紹介されている夫妻の姿を思い浮かべると、救われたような気分になる。
今日は、ボージョレー・ヌーボの解禁日である。「普通の妻」と飲むことにするか。

11月15日 労組の政策要望 Source : Organized Labor Pushes Pro-Worker Agenda (AP)

上記sourceは、内容がテンコ盛りなのだが、情報を分類してみると、次の3点になる。 気付きを2点。

  1. 一度分裂した、AFL-CIOとChange to Winが、選挙戦で協力関係を結んでいたというのは、画期的だ。逆に言えば、それだけ、労組側に危機感が高まっていた証でもある。

  2. Miller議員は、Employee Benefitsに関しては、企業側に厳しく、しかも、かなり原理原則論を展開する議員、という印象を持っている(「Topics2003年3月12日(1) Pension Security Act」参照)。そのMiller議員が委員長に就任して、同委員会が、民主vs共和の激突の場となるかどうか、注目していきたい。

11月14日 新連邦議会前哨戦:Medicare処方薬 
Source : Bush Administration Says It Opposes Democrats' Plan To Allow Government To Negotiate Medicare Drug Prices (Kaisernetwork)

早くも民主党連邦議会がジャブを繰り出した。Rep. Nancy Pelosi (D-Calif.)(新下院議長就任予定)が、新下院スタート後100時間以内に、連邦政府がMedicareの処方薬の価格交渉を行えるよう、立法措置を取りたいと表明した。

2003年Medicare改革法で、連邦政府は、Medicare処方薬の価格交渉、好ましい処方薬のリスト作成を禁止された。Part Dを導入するとともに、市場原理をより強めるという観点で行われた改革であったからだ。いわば、Bush政権の信念が盛り込まれた制度改正であった。

新下院を掌握した民主党としては、国民生活に身近なMedicare処方薬で、そのBush政権の改正を問題にしようという訳である。上記sourceにもある通り、HHS長官や製薬会社は、こぞって反対しており、Bush大統領が署名できるような法案があがってくる可能性も小さいと思われる。メディアも、具体的な施策が見えてこないということで、単なるキャンペーンとしての政策提案には否定的である。さらに、学者も、「処方薬の中で政府が交渉力を持てる、つまり代替品が容易に入手可能な処方薬は少ない」として、民主党提案に疑問を呈している。

しかし、民主党としては、法案を成立させることはできないにしても、これから2年間、連邦議会という場において、処方薬の価格は高すぎる、というキャンペーンを張り続けられるのは有効、との判断があり得る。すべては2008年選挙に向かっているのである。