2月10日(1) DB/DCの定義議論 Source : Agenda for February 2007 IASB meeting (IAS Plus)

上記sourceによれば、IASBは2月20-22日の会合で、DB/DCの定義付けについて、議論を継続するとのことである。昨年12月のスタッフペーパーを受けた議論(「Topics2006年12月14日(1) DB/DCの概念-IASB」参照)が続くものとみられる。また、新たな勉強を強いられる事になるかもしれない。

2月10日(2) Washington州知事の皆保険提案 Source : Governor Gregoire Introduces "Healthy Washington Initiative"(News Release)

WA州のGregoire知事が、皆保険提案を行った。以下その概要。
  1. WA州の19-25歳の無保険者は29.8%に達する。保険会社に、企業または親が追加負担をすることにより、保険加入を継続できるよう、保険会社に求める。

  2. WA州は非正規雇用が多い。転職の際に医療保険プランがポータブルとなるよう、新たなコネクター組織を設ける。

  3. コスト抑制の観点から、再保険制度の見直す。

  4. Medicaidの対象拡大を検討する。
この州知事の提案を受け、州議会の両院(民主党多数)とも、関連法案を提出する予定である(Kaisernetwork)。

2月10日(3) ストで医療保険がなくなる? Source : Harley plans to stop paying health insurance benefits for striking workers (The York Dispatch)

Harley-Davidson社の労使協約の更改について調整がつかず、9日、組合がストライキに入った。

労使の対立が解消されない一つの理由が、医療保険に関する会社側提案である。組合員の負担増を求めているのである。

組合のスト突入に対して、HD社は"COBRA letter"を手渡した。COBRAとは、何らかの理由で退職した後も、企業が提供する医療保険プランに一定期間加入し続ける権利を言う。普通、"COBRA letter"は、企業が提供する医療保険プランに加入した際、こういう権利がありますよ、という通知のための書類である(サンプル)。

ところが、HD社が出した"COBRA letter"は、もう会社側は保険料を払いませんよ、という内容を強調したものらしい。COBRA適用期間中は、退職した従業員がすべての保険料を支払う。失効した労働協約のもとでは、従業員はまったく保険料を負担していなかった。つまり、HD社の従業員は、これまでまったく払ってこなかった医療保険料を100%負担することになるのである。

2月10日(4) MD州下院議会の皆保険法案 Source : Maryland Lawmakers Propose Cigarette Tax Increase To Fund Health Care Programs (Kaisernetwork)

先に、MD州知事の皆保険提案を紹介した際(「Topics2007年2月1日(1) MD州は仕切り直し」参照)、州下院議会有力メンバーがタバコ増税を中心とする提案を用意していると述べた。7日にその概要が明らかになった。
  1. タバコ税を一箱あたり$1増税する。これにより、年間$212Mの増収となる。

  2. Medicaidの対象者を、FPL40%から116%に引き上げる。

  3. Medicaidの対象となる子供を、FPL400%の家庭まで拡張する。FPL200%以上の家庭については、所得に応じて保険料を負担する。

  4. 従業員50人未満の企業が医療保険プランを提供する場合、助成金を給付する。予算額は$140M。

  5. 民間保険会社に対しては、25歳以下の成人が親の保険の加入者となることを認めさせる。

  6. 麻薬撲滅、禁煙運動に$40Mの助成金を用意する。

  7. 上記措置に$603Mが必要となる。タバコ増税、連邦政府助成金、他のプログラムの合理化などにより捻出する。

  8. これらの措置により、少なくとも25万人の無保険者がなくなる。
O'malley州知事、州議会上院は、タバコ税の増税には反対の意向を表明している。

2月10日(5) 民主党 vs FDA Source : Congress Likely To Approve FDA Prescription Drug Safety Reforms in 2007

予想通り、民主党のFDA攻撃が激化している。FDAが従来の方針をより拡張しようとしているためだ(「Topics2006年11月22日(2) FDA改革第一弾」参照)。民主党上院議員の提案は次の2つ。
  1. S. 467Chuck Grassley (R-Iowa) & Christopher Dodd (D-Conn.)
    FDA内部に独立組織を設け、既に市場に出ている製薬について安全性を確認させる。

  2. S. 484Edward Kennedy (D-Mass.) & Michael Enzi (R-Wyo.) (HELP委員会コンビ)
    FDAと製薬会社により、上市後3年間、新薬の副作用を監視するスキームを検討する。
当然のことながら、先の予算教書(「Topics2007年2月6日(1) 2008年度予算教書」参照)で、Bush大統領はFDAの動きをサポートしており、ここでも衝突は避けられないだろう。

2月8日 PBGC保険料改革 Source : PBGC could set variable premium under proposal (Business Insurance)

現行制度におけるPBGC保険料の概要は、ここに記されている通りである。 一方、先に紹介した大統領予算教書では、PBGCの可変保険料について、次の通り言及している(「Topics2007年2月6日(1) 2008年度予算教書」参照)。
"The 2008 Budget reflects the President's continued commitment to restoring the solvency of the pension system by proposing to adjust insurance premiums paid by under funded pensionplans."
まさにここで言及している可変保険料について、Bush政権は、具体的に次の2つの提案を行っている。
  1. 可変保険料の水準について、PBGCに決定権限を与える。ちなみに、現行制度(積立不足$1,000毎に$9)については、立法措置に拠っている(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)。

  2. 可変保険料の対象となる積立不足を計算する際、現行制度では、年金債務を受給権賦与分に限定しているが、これに加えて、受給権を賦与していない部分も含めることとする。
これらの措置によって、PBGCの財政再建に寄与するという。

しかし、PBGCのストックベースでの資産不足は$18.8B以上に達しているのに対し、保険料収入は、2006年で$1.5Bしかない。これを上記措置によって増やしたとしても、焼け石に水といった感触は否めない。

さらに、2007年には、伝統的なDBプランは凍結・廃止のラッシュとなることが見込まれており(「Topics2006年9月4日 2007年はDB凍結続出?」参照)(「Topics2006年11月28日(3) DBプラン変更企業」参照)、保険料のベースがそもそも縮小する。

PBGCの健全化への道程は険しい。

2月7日 Edwardsの皆保険提案 Source : Universal Health Care through Shared Responsibility (John Edwards)

やはり、ワシントンにおけるBush大統領の存在感は、既に相当程度落ちていると言わざるを得ない。

5日には、一般教書演説(「Topics2007年1月24日(1) 市場メカニズム vs 公的プログラム (一般教書演説)」参照)と並ぶほど注目されるべき予算教書(「Topics2007年2月6日(1) 2008年度予算教書」参照)が公表されたにもかかわらず、大統領選に名乗りを上げているJohn Edwards氏(元上院議員)が皆保険制度提案を行ない、よりによって共和党からもRudy Giuliani前NY市長が大統領選出馬表明を行うなど、大統領の政治日程は完全に無視されているという感じだ。

Edwards氏といえば、当websiteでは、かなりお馴染みの政治家である。ざっと確認できただけでも、これだけ取り上げている。 Kerry上院議員と組んで臨んだ2004年の大統領選で敗退し、上院議員も失職してしまったため、暫くはご無沙汰していた。久々の登場である。

まず、Edwards氏の皆保険提案の概要は、次の通り。 大統領選候補者の中で、連邦レベルでの皆保険提案は初めてである。民主党の大統領選候補であるClinton上院議員Obama上院議員は、いずれもEdwards提案にコメントしていないようだ。これまで、Clinton上院議員は、「子供の無保険対策が最優先」という立場から、「皆保険が重要」という主張に軸足を移しつつある(「Topics2006年12月20日 クリントン上院議員が皆保険制度に言及」参照)。一方のObama上院議員は、無保険者対策が重要、と述べるにとどまっており、具体的な優先課題、制度設計には言及していない(「Topics2007年1月17日(1) Obama上院議員の優先政策事項」参照)。

Edwards氏の提案により、両候補者の皆保険提案が触発されるのかどうか、注目したいところである。

ただ、最初に紹介したように、Edwards氏は医療過誤専門の弁護士で、いわば医療過誤で富と政治資金を稼いできたのである。したがって、医療政策に関するイメージは、あまりよくない。だが、前回の大統領選と違って、子供の無保険対策から一段レベルアップして、皆保険を提案したところに、Edwards氏の進歩があるとすれば、評価しなければいけないと思う。

2月6日(1) 2008年度予算教書 Source : HHS & DOL

5日、2008年度予算教書が公表された。上記sourceは、そのうち、厚生省と労働省の主な予算提案を抽出したものである。

軍事費関係は別にして、医療・年金、労働関係で行われている提案は、いずれも既に公表済みのものばかりであり、目を見張るような新たなものはないと思われる。Bush大統領にとって、2008年度予算教書は、実質的に政権最後の予算案である。それにしては、心なしか元気のない、迫力に欠けたものになっているような気がする。やはり、これから2年間、Bush大統領のレームダック、長い長い大統領選がアメリカの政治を支配することになるのだろうか。

2月6日(2) 報酬コストは3.2%増 Source : Compensation costs in private industry up 3.2 percent in 2006 (BLS)

2006年の民間部門における報酬全体、賃金、ベネフィットともに、3%強の増加となり、バランスの取れた伸びとなっている。これは、ベネフィットの部分で、医療保険料の伸びがかなり抑えられたことに加え、本人負担の部分が増えたこと、年金プランの確定拠出のウェイトが高まったことなどが理由と考えられる。

2月3日 最低賃金引上法案を巡る分裂 Source : Senate Adds Tax Breaks To Minimum Wage Bill (Washington Post)

上院で可決された修正最低賃金引上法案(「Topics2007年1月31日 最低賃金引上法可決」参照)を巡って、2つの分裂が生じているという。

一つは、連邦議会民主党。上院修正は、民主党主導で行われ、共和党の賛同も得て、圧倒的な多数で可決した。これに、下院民主党が怒っている。最低賃金を引き上げるだけの単純な法案だったのに、様々な税制措置を付随させたので、利害関係が複雑になった。そもそも、税制措置の提案権は、下院にあるはず、というわけである。Kennedy上院議員のPelosi下院議長への牽制球とも受け止められるだけに、下院民主党首脳部にとっては屈辱的とも映るのだろう。

もう一つは、経済界。中小規模の企業は、上院案により、最低賃金引上げのコストアップを解消できると見ている。加州などは、そもそも最低賃金が今年から$7.50/hに引き上げられているので、同州の中小企業は、まるまる税制優遇を享受できるわけである(Los Angeles Times)。これに対して、全米商工会議所などは、中小企業向け税制措置は時限的なものであり、いずれ廃止されてしまい、最低賃金引上げのインパクトだけが残るとして、懸念を表明している。

ところで、Bush大統領は上院修正案への強力なサポートを表明している。今後は、両院協議会で最終案を協議することになろうが、上院での圧倒的多数と大統領の強いサポートという組み合わせになれば、常識的に下院は上院案に賛成せざるを得ないと思うが。

2月2日 オークションで時価評価 Source : SEC Blesses Auction System for Options Valuation (PLANSPONSOR)

会計基準でストックオプションの時価評価が義務付けられて以来(「Topics2005年4月17日 ストック・オプション費用化 再延期決定」参照)、公正価値の算出方法について議論が行われている。理論上は、ブラック・ショールズ・モデルや二項モデルなどが提唱されている(「Topics2005年4月8日(3) ストック・オプションの価値計測手法」参照)。しかし、仮定に左右される部分が大きく、価値が高めに算出される傾向があるとの批判が出されるなど、評判はよろしくない。

かつて、CISCOがストック・オプションを売却することで時価評価にするという提案を行った(「Topics2005年5月16日 ストック・オプションの売却」参照)。SECは、この提案を却下した(「Topics2005年9月13日 ストック・オプションの市場価値計測」参照)ものの、理論計算ではない、実践的な手法は必要とのスタンスを示していた。

そして、上記sourceによると、Zions Bancorporation (NASDAQ:ZION)が、従業員に賦与したストック・オプションに似せた債券を、プロ投資家を対象とした公開オークションにかけることで、時価計測するという手法を提案し、このほどSECからお墨付きを得た、ということである。しかも、理論値の約半分ですんだというおまけ付である。

ここまででも、アメリカの金融テクノロジーはかなり進んでいるな、と思うのに、さらに驚くのは、Zionsは、この手法に特許権を設定し、他の企業にアドバイスすることをビジネスにすることを宣言しているのである(Zions Bancorporation Press Release)。規制強化をビジネス・チャンスに変えてしまう、このプロ根性は大したものである。

2月1日(1) MD州は仕切り直し Source : State of the State Address Governor Martin O'malley

Maryland州に住んでいたものだから、ついつい気になってしまう。

Maryland州知事Martin O'malleyが、就任後初の一般教書演説を行った。上記sourceは、その全文である。

MD州は、すったもんだした挙句、前知事の拒否権発動をひっくり返して、"Wal-Mart法案"を立法化(「Topics2006年1月13日 MD Wal-Mart法案に再挑戦」参照)したものの、司法から待ったをかけられ(「Topics2006年7月20日(3) MD州"Wal-Mart法案"敗訴」参照)、無保険者対策が頓挫していた。

先の中間選挙で、MD州知事は共和党から民主党に変わり、無保険者対策について、仕切り直しすることとなった。O'malley州知事が演説の中で提案した内容の概要は、次の通りである。 ちなみに、MD州議会の勢力図は、次の通り、圧倒的に民主党が優位な環境である。
 民主党共和党
上院3314
下院10437
ここで、注目されるのは、Hammem委員長である。知事も名指しで協力を依頼しているように、医療問題では最重要キーパーソンであり、Busch下院議長の信頼も厚い。そのHammen委員長は、既に独自の法案を用意していると報じられている(Washington Post)。

報道ベースでの法案概要は次の通り。
  1. たばこ一箱あたりのたばこ税を$1増税する。
  2. たばこ増税分は、低所得者層の保険加入促進と中小企業の保険提供の助成に利用する。
  3. FPLの4〜5倍の所得を得ている労働者については、企業が保険プランを提供していない場合には自ら保険プランを購入することを義務付ける。違反した場合、州所得税の所得控除を認めないなどのペナルティを科す。
  4. FPLの40%以下でなければMedicaidの対象にならないため、これを大幅に拡大する。
  5. 不法移民者については対策を講じない。
  6. これらの措置により、現在の無保険者の3分の1はカバーする。
なお、O'malley州知事は、たばこ税の増税に反対だそうである。

2月1日(2) "HR"の変質 Source : Inside the Minds of Your Employees (New York Times)

Employee benefitsに対する企業幹部と従業員の認識ギャップが広まりつつあるという。例えば、優秀な社員が転職していく理由として、医療保険プランが理由だと認識している企業幹部は一人もいないのに対して、実際に転職した優秀な社員の22%が医療保険が重要だと考えている。

また、医療保険料の高騰や会計基準の見直しにより、医療や年金、ストックオプションがコスト高になっているために、企業側はフレックスタイムや能力開発に関するベネフィットなどを提供しようとしているのに対し、従業員の方は、やはり報酬に拘っている。

こうした状況に対する解決策として、人事コンサルティング会社は、企業と従業員の間のコミュニケーションを深め、現在の従業員の満足度を高めるようなベネフィット体系を構築するように勧めているそうだ。そうした努力により、従業員の満足度も高まり、離職率も業界平均よりかなり低く抑えられたという事例も紹介されている。

こうした記事を読んでいるうちに、思い当たったのが、『"HR"の変質』という言葉である。もともと、"HR"は、Human Resourcesの略で、人事部の呼称として"Human Resources Department"が使われる場合が多い。しかし、これは、企業がhuman resourcesを使う、生産関数としての従業員、というイメージがまだまだ付きまとう。そこで、同じ"HR"でも、"Human Relations"とすれば、より水平的であり、従業員とのコミュニケーションを重視するというメッセージが込められるのではないか、と考えたのである。

"Human resources"から"human relations"への転換、というのはいかがでしょうか。