4月8日(3) ストック・オプションの価値計測手法 Source : Models for FAS 123(R): Lattice vs. Black-Scholes (Chicago Consulting Actuaries, LLC)

「Topics2005年4月3日(2) ストック・オプションの価値」で、ストック・オプションの価値計測の手法について、柔軟性が示されたことを記した。上記sourceは、一般に使われているという計測手法について、数学的意味合いではなく、その前提条件からくる問題点について、解説したものである。

これによれば、日本でもよく利用されていると言われるBlack-Scholes formulaは、短期の価値計測に関する前提は妥当と思われる。しかし、5年、10年という長期についても同様の前提を置いており、その妥当性は疑わしい。

こうなってくると、何のための費用化なのかを再度確認しておく必要があるのではないだろうか。

4月8日(2) 自動車業界のレガシーコストが顕在化 
Source : Auto Pensions Next Big PBGC Bomb? (Plansponsor)Impact of Rising Health Costs on Automaker GM (kaisernetwork)

アメリカの自動車業界の雇用ベネフィットが、危うくなっている。企業年金プランの方では、鉄鋼、航空会社に次いで、自動車関連会社のPBGC行きが相次ぐのではないかとの予想が出ている。特に、注目されているのが、Delphiという企業である。ここは、GMの部品会社だが、Chapter 11申請が噂されている。仮に倒産ということになると、同社の企業年金プランの積立不足は$5.1Bに達すると見られている。この他にも、既に倒産申請を行ったところもあり、次々とPBGCのお世話になる可能性がある。

他方、GMの収益が2期連続のマイナスとなり、GMの工場労働者を対象とした医療保険プランの見直しが必至の情勢となっている。特に、工場労働者の自己負担金額は極端に少なく、UALとの交渉が行われるようである。

自動車という産業は、将来性が高いといわれているが、その担い手が不変でいられるとは限らない。常に国際的なコスト競争を仕掛けていく必要がある。

4月8日(1) アメリカ企業年金の歴史 Source : The U.S. Retirement Income System (EBRI)

「Topics2005年3月4日(1) 401(k)プランの歴史」の企業年金全体版で、法制、プラン・タイプ、統計数字をコンパクトにまとめたものである。ご参考まで。

4月7日 巨額の離職手当パッケージ Source : The New Executive Bonanza: Retirement (New York Times)

巨額の離職手当が問題視されていることは、ずいぶん昔に当websiteでも取り上げたことがある(「Topics2002年6月7日 企業トップの離職手当て」参照)。上記sourceでは、The Corporate Libraryという独立の調査機関が大企業500社の株主提案書(2004年)から調べ上げた離職手当(契約)の内容を、紹介している。その概要は次の通り。
これらのような巨額の離職手当パッケージに対する主な批判は次の通り。
  1. 一般の従業員の年金は、規模が縮小されるか、自己責任の部分が多くなっている(確定拠出型)。これに対して、経営幹部への手当が手厚すぎるのではないか。

  2. 報酬の後払い的な位置付けになっている。しかも、業績等に連動していない。

アメリカ大企業のCEOは、就任時には"Golden Hello"(「Topics2005年4月3日(1) Pay without Performance - HP」参照)、離職時には"Retirement Payment"または"Golden Parachute"(「Topics2005年2月10日 HPのCEO解任」参照)という巨額の報酬を受け取っており、しかも、両方とも業績とはほとんど連動していないとされている。「業績に応じた報酬」という概念は、どこにいってしまったのだろうか。

4月4日(2) 医師への評価:アメとムチ

供給サイドからの医療費抑制策にはインセンティブが必要、と述べたばかりだが、まさにそうしたインセンティブを重視した抑制策が発表された。それも、アメとムチの両方が。

まずは、アメの方。CareFirstという医療保険プラン会社が、"Bridges to Excellence"という活動に参加することを表明した(Business Insurance)。

Bridges to Excellenceでは、ITを利用して患者の安全性を高めるとともに、診療の標準化を推進しており、National Committee for Quality Assurance (NCQA)の基準を満たした医師には、患者一人当たり$50のインセンティブ・ボーナスが提供される。

次にムチの方。UnitedHealthCareは、パフォーマンスが良好な医師をリスト・アップし、それらの医師にかかった患者(被保険者)に、金銭的インセンティブを提供するという計画を公表した(Kaisernetwork)。UnitedHealthCareに登録されている医師の中の約25%がこのリストに登録されるという。UHCとしては、この約4分の1の医師に、被保険者を集中させることで、効率化を高めようということのようだ。

逆にこのリストからもれた医師は、たまったものではない。当然のことながら、医師の団体は、このようなリスト・アップは不当だと抗議している。

なお、UnitedHealthCareの親会社であるUnitedHealth Groupも、上記のBridges to Excellenceに参加している。

4月4日(1) AARPの勝訴 Source : Judge Blocks Rule Allowing Companies to Cut Benefits When Retirees Reach Medicare Age (New York Times)

退職者医療制度に関する年齢差別禁止法適用の是非を巡り、EEOCは65歳での給付減額を可能とするルールを公表し、この4月にも施行したいとの意向を持っていた(「Topics2005年2月16日 Erie事件は依然未決着」参照)。これに対して、EEOCルールは差別にあたるとして、AARPが訴訟を起こしていたが、3月30日、フィラデルフィアの連邦地方裁判所の判事Anita B. Brodyは、AARPの主張を認め、EEOCルールは違法との判断を下した。

この判決に対して、EEOCはすぐに控訴するとの意向を表明している。また、経営者サイドの団体であるAmerican Benefits Councilなどは、退職者医療保険プランの提供がますます減少してしまうとの懸念を表明している。


4月3日(2) ストック・オプションの価値 Source : SEC’s Office of the Chief Accountant and Division of Corporation Finance Release Staff Accounting Bulletin 107 (SEC)

SECから、ストック・オプションの費用化について、解釈集が発行された。ここで、注目されるのは、ストック・オプション付与時の価値をいかにして計測するかであるが、解釈集では、特定の計測手法を推薦するわけではないとしている。

一般的には、ブラック・ショールズ・モデルがよく利用されているようだが、決してこれに特定するわけではないという。

計測手法を特定しないと言う事で、柔軟な対応、例えば簡便な手法も認めるという姿勢を示しているともいえる。しかし、一方で、費用化を義務化したにもかかわらず、計測手法が特定されないのであれば、比較可能性を担保する事ができないという、問題が発生しかねない。

まさにこうした点を捉えて、費用化反対論者は、「何のための費用化なのかわからない」と、反発を強めており、今年6月15日の施行をさらに延ばすよう、求めていく姿勢を示している(Washington Post)。

4月3日(1) Pay without Performance - HP Source : HP Giving Hurd $20 Million 'Golden Hello'

HPネタは、まだ止められなかった。HPの新CEOであるHurd氏に対して、HPから2000万ドル相当の報酬が支払われるとのことである。

その内訳は次の通り。
サイニング・ボーナス$2M
引越し手当(現金)$2.75M
ストック・オプション$6.9M
HP株(restricted stock)$8M
1年間の全額家賃負担-
4年間の住宅ローン利子負担-
家財道具等の輸送費全額負担-
Hurd氏が保有するNCR株850,184について、
株価が下落した場合、
下落率20%まではHPが保証する。
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年間報酬$1.4M
年間ボーナス$2.8M〜8.4M
長期インセンティブボ^ナス年間$4.2M〜12.6M
しかも、2005年後半、2006年前半の業績は、どんなものでも目標は達成されたものとみなす、ということになっている。つまりは、これから1年余りは、業績と関係なく、報酬が保証されることになる。このように、当初は大目に見ないとCEOを連れて来れないのであろうか。HPの取締役会は、本当にこれでCEO指名という責任を果たしたと言えるのだろうか。