2月19日 グリーンスパン議長の発言

16日、Bush大統領は、遊説先で、公的年金改革について、次のように述べている(President Discusses Strengthening Social Security in New Hampshire)。
"Let's sit down at the table and discuss ways to permanently fix the system. I'm open-minded. And I think that's what you want from your President at this point -- not for me to prescribe the solution, because I don't get to write the law, but to call members forward, and say, we'll work with you; we'll look at all the different options, with the exception of the payroll tax increase."
最後のフレーズを巡り、12.4%という税率こそ上げないものの、課税対象となる上限(=cap)$90,000をさらに引き上げる、または廃止することも視野に入れているのではないか、との推測が出回っている(Washington Post)。財政赤字削減を進める中で、個人勘定創設に伴う移行コストを賄うには、制度上の負担も増やさざるを得ない面も出てくるため、そうした施策がないとはかぎらない。

なお、Bush大統領は、年金改革の「伝道師」となっており、上記のNHのような遊説は、11回目だそうだ。

その同じ日、上院銀行委員会で、グリーンスパンFRB議長が証言を行った。それに伴う質疑の中で、彼は、共和、民主両党に配慮しながらも、従来のスタンスを微妙に修正する発言を行った(New York Times)。
"If you're going to move to private accounts, which I approve of, I think you have to do it in a cautious, gradual way."
個人勘定創設のアイディアは容認するが、移行期間は充分にとるべきである、との発言である。グリーンスパン議長は、初めて個人勘定創設のアイディアが公表された際(1997年公的年金諮問会議レポート)、公的年金の資金が株式市場に入ってくることに反対、との意思表明を行っていた。その当時のことを考えれば、今回の議会証言で、自分は賛成である、と述べていることは、大転換である。

ただし、Bush大統領が提案しているように、4%までの拠出を認めるというのであれば、上限の引き上げスピードは、きわめて遅いものであるべきである、とも示唆している。これは、上記の推測と同様、移行に伴う財政負担が財政赤字解消の障害にならないようすべきだ、ということなのだろう。当然、移行に伴う財政負担の総額は変わらないが、移行スピードが遅くなれば、それだけ単年度の財政負担は小さくなる。

昔、日本の公的年金改革案を検討し、厚生年金を賦課方式から積立方式に組み替えるべきとの提言を行ったことがある。当時は、日本に確定拠出プランも入っていない状況であったので、個人勘定の創設という、部分的な積立方式導入は、検討対象外であった。議論の過程で、積立方式への移行スピードが議論となったことを覚えている。その際、私は、激変緩和を重視して、100年かける案を提示したが、経営トップの方々は、「意図はわかるが、100年かけるのは改革の名に値しない」と却下され、結果として40年かける試算をまとめた。

グリーンスパン議長がどの程度の期間を念頭に置かれているのかは不明だが、約3分の1の積立方式導入でさえ、相当な期間をかけるべきとする慎重さは、現実的な示唆ではないかと考える。

2月16日 Erie事件は依然未決着 Source : Court Blocks EEOC From Issuing Regs On Retiree Health Care Benefits (Spencer Benefits Reports)

Erie事件(拙稿「年齢差別禁止法と退職者医療保険 」(pdf)参照)の決着を図るため、EEOCは、当初の提案(「Topics 2004年3月5日(1) Erie事件の決着は今年9月」参照)通りの方針でいくことを決定し、最終ルールを公表するばかりとなっていた。しかし、AARPの提訴を受けた裁判所が、施行を60日間停止するよう命じたため、最低で2005年4月5日までは、施行できないこととなった。

関係者の多くは、EEOCのルールが決まらなければ、退職者医療を廃止する企業が続出すると懸念しており、AARPの抵抗は、あまり支持を得られていないようである。Erie事件の控訴審判決が示されたのが2000年8月であり、それから既に4年半が経過している。その間にも、退職者医療プランは、じわじわと減り続けており、訴訟リスクをなくすよう、早期の決着が望まれるところである。

なお、関係者のコメント、関係資料等は、この記事からリンクが張られている。

2月15日 Verizon-MCI Source : Verizon to Acquire MCI for $5.3 Billion in Equity and Cash (Verizon & MCI)

VerizonがMCIを買収することで決定した。両社とも、管理人のワシントン生活では、なじみの深い企業であった(VerizonMCI)。

Verizonの買収内容は、次の通りである。
  1. MCI株主に対し、MCI株1株あたり、Verizon株0.4062株を交付する。先週末(2月11日)の終値で換算すると、MCI株1株あたり$14.75、総額$4.795Bとなる。
  2. MCI株主に対し、MCI株1株あたり、現金$1.50を交付する。これは総額$488Mとなる。
  3. MCIからMCI株主に対して特別配当を行う。1株あたり$4.50で、総額$1.463Bとなる。
  4. 以上の総計で、MCI1株あたり$20.75、総額$6.746Bとなる。
この買収劇で、株が上がったのが、MCIのCEO、Michael Capellasである(New York Times)。破綻したWorldComのCEOを引き受け、コスト削減に大鉈をふるい、最後にVerizonに売却するところまでこぎつけたわけだ。さらに、MCI買収後のVerizonの経営陣には残らないとの見方が強い。

この結果、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。先日紹介したように、HPのフィオリーナCEOの後継者に、Cappellas氏の名前があがっている(「Topics 2005年2月10日 HPのCEO解任」参照)。前CompaqのCEOであったことがマイナス要因になり得るものの、タイミングとしても、彼の経営者としての評価としても、候補者としては十分の要件を備えることになる。野次馬的だが、注目していきたい。