9日、フィオリーナCEOの辞任が発表された。事実上の更迭である。
当websiteでは、HPによるCompaq買収に関する委任状取り付け合戦の時から、注目してきた。その出発点は、Compaq買収のメリットはないのではないか、というものであった(「Topics 2002年2月27日 1%の株主達」参照)。今回の解任劇で、その回答が出たということだろう。
解任の理由は、ずばり、PC部門の収益が上がらないことにある。伝統的に強みを持っているプリンター部門の収益に依存する割合がまったく変わらず、Compaq買収のメリットが見られない。また、PC関連でも、ハイ・エンドを狙ってきたIBMには当然かなわないし、安売りの対抗馬であったはずのDELLとも水をあけられている。こんなチャートを見せられれば、誰しもHPの戦略に疑問を持つだろう。従って、『HPにとって経営戦略上の次の一手は、「PC部門の分離・売却」ではないか』との推測が出ている。当然だろう。
さて、暫定CEOは決定したものの、本格的な次期CEO探しはこれからである。下記のような記事を読むと、なんと、MCIのCEO、Michael Capellasの名前があがっている。Capellas氏はHPによる買収時のCompaqのCEO(「Topics 2002年11月15日(2) Compaq→HP→WorldCom」参照)であり、HPのCEOに抜擢されるとなると、彼の初仕事がPC部門の売却という、なんとも皮肉なストーリーが生まれることになる。ただし、Capellas氏については、巨額の離職手当を巡って、HP株主から批判を受けた経緯もある(「Topics 2003年4月9日(2) HPのGolden Parachutes」参照)。また、巨額の離職手当てを払ってお払い箱にした経営者を再びCEOに据えるというのは、取締役会としても説明が苦しいだろう。
最後に、当websiteにふさわしい情報として、フィオリーナ氏には、総額$21.1Mの離職手当てが支払われる。これは先に述べたCapellas氏への離職手当ての約1.5倍に相当する(「Topics 2003年4月9日(2) HPのGolden Parachutes」参照)。何とかフィオリーナ氏の面子だけは保ってあげたということだろうが、彼女への次のオファーがあるかどうか、難しいところである。
関連記事:Financial Times、Washington Post、BusinessWeek、Reuters、Wharton School
2月7日、2006年予算教書が発表された。その中に、企業年金に関する制度改正提案が行われている。その内容は、1月に労働省が提示した基本路線(「Topics2005年1月11日 DBプランの延命策」参照)にそったものとなっている。
改正提案の概要は次の通り。
- 給付債務の割引率
- 給付債務の割引率を統一する。
(「Topics2004年10月22日(3) 年金会計疑惑」参照)- 期間対応の社債yield curveを用いて、給付債務を計算する。(下記参考資料を参照)
(「Topics2004年5月19日 企業年金の新法案」参照)
- 年金資産の積立基準
企業の財務の健全性が低下した場合には、積立基準を厳格化する。
(「Topics2004年10月13日(2) PBGCによる改革提案 」参照)
- 格付けが投資適格相当(Baa以上) → 継続基準(平均勤続年数と一時金との選択を想定)
- ジャンク債相当(期間が5年未満) → 継続基準と解散基準
- ジャンク債相当(期間が5年以上) → 解散基準(即時退職かつ一時金受給を想定)
積立不足割合 | (解散基準) | (継続基準) | |
一時金給付 利子の付与 | |||
一時金給付 利子の付与 | 一時金給付 | ||
一時金給付 利子の付与 | 一時金給付 利子の付与 役員対象年金への拠出 | 一時金給付 |
上院Finance Committeeの委員長Chuck Grassley(R)と、ranking memberのMax Baucus(D)が、共同でNESTEG法案を再提出した。
実は、この法案は、昨年もFinance Committeeに提案、審議され、満場一致で可決されたものの、本会議で審議されることなく廃案となってしまっていた(「Topics2004年5月19日 企業年金の新法案」参照)。両者は、今年こそこの法案を通すと息巻いている。
要約しかないので、完全に同一なのかどうかは確認できないが、大所はそのまま引き継いでいると思われる。
問題は、White Houseや労働省との間で調整済みかどうかである。Bush大統領、Chao長官は、年頭に企業年金改革を行う旨を既に宣言しており(「Topics2005年1月11日 DBプランの延命策」参照)、その目指す方向とNESTEG法案が同じかどうかが鍵となる。要約を読んだ感じでは、少なくともPBGC保険料については、逆の方向を向いていると思われる。
先週の委員会投票(「Topics2005年1月27日(2) ゴンザレス司法長官の承認」参照)に続き、本会議でも、党派色の強い投票結果となった。賛成60、反対36で、共和党からの反対は1、民主党からの賛成は6しかなかった。Bushチーム、共和党からは期待されていたが、前途多難を予感させる結果となった。昨日の一般教書演説でも、伝統的結婚形態の保持について、あまり力が入っていなかったような気がする。
2日、アメリカ大統領一般教書演説が行われた。予想通り、公的年金改革に大きなウェイトが置かれた演説となった。当websiteの関心事項で、一般教書演説で政策課題として挙げられた事項について、触れられた順にピックアップしておく。
- 財政赤字
2009年までに財政赤字を半減させる。
- 職業教育・訓練
職業訓練システムの改革とコミュニティ・カレッジの強化により、職業教育・訓練の対象となる労働者を20万人増加させる。また、Pell Grantsのプログラムを強化する。(「Topics2005年1月17日 教育支援の効率化」参照)
- 医療保険対策
低所得層を対象とした税額控除制度、医療情報の電子化、小規模企業向けのグループ保険の普及、HSAの拡大、医療過誤訴訟の改革、等。
- 移民政策
期間限定の外国人労働者を認める。
- 公的年金改革
- 退職者または退職に近い層には影響を及ぼさない。改革はゆっくりとしたスピードで行う。若い層が十分に備える時間を設ける。
- 個人勘定を設ける。勘定の残高は、子供、孫に相続できるようにする。
- 投資対象は、社債・株式の保守的な組み合わせに限定する。
- 個人勘定からの一時金による全額引き出しは認めない。公的年金への付加金として、長期間にかけて給付を認める。
- 個人勘定への拠出限度は、ゆっくり引き上げ、最終的には報酬の4%とする。
- 結婚形態
伝統的な結婚形態を保持する。
上記sourceは、CBOが公表している、公的年金の将来見通しの改訂版である。最新の将来見通しは、2004年6月に公表されている。
主な指標の改訂は、次の通り。
2004年6月見通し 改訂版 給付総額が年金保険料収入を上回る年 2019年 2020年 基金残高がなくなる年 2052年 2052年 基金がなくなった後の給付削減率 20%(2053年) 22%(2053年)
アメリカの見通しでいいのは、世代別、というか生まれた年によって、給付がどうなるか、代替率がどうなるか、まで示されている点である。これがなければ、本当の改革の姿なんか議論できないはずである。
「Topics2005年1月20日 NY州の医療再保険プラン」で、州レベルでの無保険者対策として、再保険制度があることを紹介した。NY州以外の再保険プランもあり、それらを総括した資料が見つかったので、全訳のうえ、「考察・コメント」に掲載した。
以下は、その結論部分の抜粋である。どの州でも、再保険プログラムが、州民全員の保険加入という難題を解決する魔法の杖となるとは考えられない。しかし、いくつかの課題を同時に解決することで、州レベルの再保険プログラムが、保険加入の安定、拡張を実現する有効な戦略となりうる。特に、補助金を出す場合、再保険プログラムは保険料の高騰をある程度抑制することができる。保険料が高騰すれば、低所得労働者には保険が購入できなくなったり、小企業は保険プランを提供できなくなってしまう。また、再保険プログラムにより、自営業者、個人の保険加入も改善させることができる。
ただし、再保険プログラムの設計は、慎重に行うべきである。マーケット全体をカバーするような再保険プログラムの場合、保険料が高く、保険会社の参加が少なければ、加入人数は極めて少なくなる。民間保険に補助を出すような再保険プログラムを利用している州では、再保険により参加保険会社の間でリスク分散できるようになるものの、民間保険会社における逆選択を回避することはできない。従って、そのようなプログラムを検討する州は、再保険プログラムと市場の規制のバランスを図り、逆選択の可能性を念頭に置きながら加入資格要件を定める必要がある。
先月19日、上院銀行委員会の今年の重要課題が公表された。上記sourceは、そのプレス・リリースである。この文面を見てもわかるように、上院銀行委員長は、Sen. Richard C. Shelby (R-Ala.)が留任となっている。従って、当然のことながら、重要課題にストック・オプション会計は、挙げられていないのである(「Topics2004年10月14日(1) ストック・オプション費用化を半年延期」参照)。費用化計上阻止を目論むグループにとっては、かなり苦しい状況となったことになる。