9月16日 議会 vs Bush政権(医療) Source : Bush Administration Opposes Move to Delay Medicare Premium Increase (New York Times)
医療関係の施策をめぐって、議会とBush政権が議論を繰り広げている。
第1は、Medicare Part Bの保険料である。Bush政権は、法律通りに計算して、17%以上もの引き上げを提案している(「Topics2004年9月6日 Medicare保険料大幅引上げ」参照)。これに対し、民主党は、影響が大きすぎるとして、引き上げの凍結、もしくは上げ幅縮小を主張している。Bush政権は、引き上げを凍結しても、後年の引き上げ幅が大きくなるだけであると反論しているが、上げ幅が上げ幅なだけに、論議は激しくなっているようだ。
第2は、処方薬再輸入の問題である。上院Majority LeaderのBill Frist議員が、処方薬再輸入に関する法案の議論は遅らせる(「Topics2004年9月10日 処方薬再輸入法案は先送り」参照)、と発言したために、民主党議員達は激しく反発しているそうだ。
選挙が近くなり、国民の間で関心の高い医療問題がクローズアップされている。
9月15日(3) PBGCはあと15年 Source : PBGC: When Will the Cash Run Out? (COFFI)
PBGCに関する財政予測である。全米でも初めての試み、と銘打っているところを見ると、満を持して今のタイミングを待っていたと思われる。
さて、その中身だが、かなり衝撃的である。上記の推計によれば、標準ケースで2020年には年金の給付が不可能となる。さらに、今のタイミングで、航空会社が年金プランを廃止した場合のケース・スタディも公表している。ポイントは次の通り。
- 標準ケース → 年金給付停止は2020年
- Unitedが年金プランを廃止するケース → 年金給付停止は2019年
- United、American、Continental、Delta、Northwest、US Airwaysが年金プランを廃止するケース
→ 年金給付停止は2018年
いずれにしても、あと15年程度しかもたないのである。これでは、いくら支払保証しますといっても、受給者、加入者は安心できない。さらに、経営者からすれば、PBGC保険料は払うだけ無駄、ということになる。
ところで、上記sourceの発行元、COFFIというシンクタンクは、とてもユニークなところで、連邦政府の貸付事業、保険事業に関する情報提供、分析に特化している。こういったシンクタンクが政府事業の健全性をチェックしているところがなんとも羨ましいのである。
9月15日(2) 年金関連規制の強化 Source : PBGC Calls for Pension Protections (PBGC)
PBGCは、Chapter 11で再建中のUAL、US Airwaysの年金プランについて、両社が停止するなら、必要な保証、引取りを行うとの意思表明を行った。同時に、DB年金プランの規制を強化すべきであるとの意見も、改めて示した。
航空業界を中心に、企業年金、特にDB(確定給付型)プランが激しく揺さ振られているが、こうした状況に、政治も黙っていられない状況になってきた(Washington Post)。
同紙によれば、下院の教育・労働委員長John A. Boehner (R-Ohio)は、年金関連規制の強化を訴える予定と言う。今期中(今年末まで)に法案を提出、審議するのは難しいが、来期(2005-2006)には議論をしたいとの意向を持っているそうだ。Boehner議員の関心事項は、次の通り。
- 年金資産、受給金額の予見可能性強化
- 積立不足額の縮小
- 実力以上の高額給付を約束することを禁止
- 給付債務計算方法の厳密化
PBGC、議会が真剣にこの問題に取り組む体制を整えつつあり、来年には、具体的な動きに繋がっていく可能性が高まってきた。
なお、Boehner議員は、この関連で、米国商工会議所で講演を行う予定である。その講演録は、入手次第、当websiteに掲載する。
9月15日(1) US Airways清算で得する人は? Source : Sorting Out the Winners if US Airways Doesn't Survive(New York Times)
Chapter 11を申請したばかりの時点で、清算(Chapter 7)の話をするのも不謹慎ではあるが、これまで2回のChapter 11から復活した航空会社は1社しかないとなれば、清算の場合を想定した議論が始まってもおかしくはあるまい。
上記sourceでは、もし仮に、US Airwaysが清算となった場合、どういう人が得をするのか、をまとめている。そのポイントは次の通り。
- 賃金やベネフィットなど、報酬に関する譲歩を従業員組合から引き出せる。→航空業界全体、特に、Delta、Continental、Northwest
- 航空路線の過剰供給が解消される。→航空業界全体
- US Airwaysが保有する機材、ハブ空港機能を取得できる。→JetBlue(営業路線が重複している)
- 年金プランの縮小、廃止がしやすくなる。→航空業界全体、特に、Delta
いろいろと変わった視点があるのものである。
9月14日(2) Enron年金はセーフ Source : Enron to Pay $321 Million in Pensions (Reuters)
EnronのDBプランに、決着がついたようだ。EnronのDBプランを巡っては、EnronとPBGCが攻防を繰り広げていた(「Topics2004年8月8日 Enron vs PBGC」参照)が、結局、PBGCが力でもぎとったようだ。Enronのパイプライン売却による収入をDBプランに充てることで、両者の合意が成立し、4つのDBプランはフルファンドとなる。
9月14日(1) 早速年金拠出をストップ? Source : US Airways Asks to Skip Pension Payment (Reuters)
12日にChapter 11を申請したUS Airwaysが、早速、年金プランへの拠出をストップしたいとの意思表明を行った。まずは、15日に期限がやってくる$110Mの年金拠出を停止したいということだ。既に、Chapter 11申請以前から、この拠出を停止したいとの意思表明をしていた(「Topics2004年8月17日(1) US Airwaysも年金拠出を延期」参照)ので、申請後となっては、当然の請求となろう。
振り返ってみれば、Chapter 11での再建中に年金拠出を停止したいと言うのは、UALと同じ状況である(「Topics2004年7月26日 UALの年金拠出停止」参照)。
両航空会社の年金プランは、近い将来、停止、PBGC行き、となるのだろう。PBGCは、かなりの危機的状況に追い込まれることとなろう
9月13日 2度目のChapter 11
9月12日、US Airwaysが、2度目のChapter 11申請を、Alexandria破産裁判所に提出した。労働組合との報酬改訂交渉が行き詰ったところで、あっけない決断であった。
関連ニュースは、次の通り。
US Airways Press Release Washington Post New York Times AP
また、今後のUS Airwaysの再建に関する公式サイトは、次の通り。
http://www.transformingusairways.com
US Airwaysの経営内容については、上記報道を参照するとして、当websiteとしての今後の関心事項を列記しておきたい。
- ○US Airwaysの再建は可能か?
- これまで、航空会社で2度のChapter 11から再建に成功した例は、Continental Airlines(1986、1990)だけである。
- ○企業年金の提供はどうなるのか?
- 再建の過程で、従業員の報酬はどのような水準にまで下げられるのか。また、労働組合はどこまで水準低下に耐えられるのか。そうした中で、企業年金はどうなるのか。
- ○他の航空会社への影響はあるのか?
- US Airwaysとともに、経営危機となっているのが、Delta航空である。仮に、Delta航空もChapter 11ということになれば、United Airlinesと併せて、航空業界の従業員のうち、破産会社の従業員が42%を占めることになる。
参考:株価の推移 United Airlines Delta Airline US Airways
- ○PBGCの負担はどうなるのか?
- US Airwaysは、既にパイロット用の企業年金をPBGCに移管している。その他の従業員向け企業年金も、PBGCに移管されることになるのか。この点は、US Airwaysの再建可能性とも関連してくる。また、他の航空会社の破綻、価格競争の激化などによる企業年金の放棄、ということが連鎖的に発生することになれば、PBGCの負担に大きな影響をもたらす。
- ○アラバマ州職員退職基金(RSA)運営への影響
- US Airwaysの大株主は、RSAである(「Topics2004年8月18日(1) RSAも諦観か」参照)。今回のUS Airwaysの破綻により、RSAは$240Mを完全に失うことになる。同金額は、RSA資産全体の1%に過ぎないが、投資対象がユニークであったために、今後の年金資産運用の論議の的となろう。
これまでのRSAの投資行動については、ここに詳細が掲載されている。その功罪は今後議論されるだろうが、年金の権威、Olivia Mitchell教授の次の言葉は重要な指摘であろう。
"A move like the RSA’s buying the US Air stake seems like an investment [Bronner] can use to generate jobs in Alabama,” she says. “The question is, is that a legitimate goal of a pension plan?”