いずこも正式なプレスリリースをwebsiteに掲載していないので、正確には把握できていないが、各種報道を総合すると、UAL年金プランを巡って、UALと労働省の間で攻防が繰り広げられている。主な出来事は、次のようになっているらしい。
- UALが年金プランへの拠出停止を公表(「Topics2004年7月26日 UALの年金拠出停止」参照)する1ヶ月前、年金プランの受託者3名を解任し、UAL自身を受託者として指名した(Chicago Tribune)。
- これを発見した労働省は、UALに対して、著しい利益相反であるとして、説明を求めた。
- UALと労働省との間の交渉の結果、UAL年金プランの受益者の利益を保護するために、独立したTrusteeを指名することで合意した。このTrusteeは、次にの年金拠出期限である9月15日までに、就任する予定(Oakland Tribure)。著しい利益相反が想定される場合には、こうした第三者的なTrusteeを設定することは一般的である。
- 8月19日、UALは破産裁判所に提出した書類で、全ての年金プランを廃止する可能性は高い、との見解を示している(Washington Post)。
処方薬輸入法案は、下院で可決された(「Topics2003年11月12日(2) 処方薬再輸入解禁法案」参照)後、上院でも審議されて夏前までには決着がつくのではないかと見ていた(「Topics2004年5月25日(1) 処方薬再輸入法案は夏前に決着か?」参照)が、上院の審議は進んでおらず、立法は遠のいたようだ。
イリノイ州のRod Blagojevich知事(D)は、これまで、カナダからの処方薬再輸入に関するパイロットプランをFDAと共同実施することを提案してきた(「Topics2004年2月26日(2) RX Summit」参照)が、FDAからの反応はない。こうした膠着状況に業を煮やしてか、Blagojevich知事は、さらに、一歩踏み込んで、州民の諸外国からの処方薬購入を支援するプランを発表した。
このプランを公表するために、イリノイ州は、欧州にも調査団を派遣して、処方薬の安全性、信頼性について調査を行い、その結果を公表している。つまり、本気であることがひしひしと伝わってくるのである。
- 輸入先は、言語のトラブルを回避するため、カナダ、UK、アイルランドとする。3国の処方薬は、アメリカに較べ、25〜50%安い。
- 州民は、州が認定した民間の処方薬取引業者(Pharmacy Benefits Manager、以下PBM)に、処方薬の輸入を依頼する(オンライン可)。
- 輸入可能な処方薬のリスト(約100種類)および価格は、websiteまたは無料電話で確認できる。
- もしこのシステムを、すべてのイリノイ州民がPCから利用したとすれば、初年度は$1.9Bの節約が図れる。
- 初回の注文時には、オリジナルの処方箋をFAXまた郵便で提出する。
- ミネソタ州でも、カナダの医薬品販売会社を紹介するシステムを提供している(「Topics2004年2月13日 ミネソタ州知事の挑戦」参照)が、欧州の国を含めた処方薬購入システムの提供は、イリノイ州が最初になる。
処方薬輸入問題について、州政府はBush政権およびFDA、上院に対して、非常にいらついている。そこを、Kerry候補は、しっかり突いてきており、輸入賛成の立場を明らかにしている。
苦境に陥っているUS Airwaysの最大の株主、アラバマ州職員退職基金(RSA)も、諦め模様のようだ。RSAの理事長であり、US Airwaysの会長でもある、David G. Bronner氏は、次のように発言したそうだ。事実関係を整理しておくと、次のようになる。
- 従業員組合との報酬削減交渉がうまくいかなければ、RSAは$240Mを失うことになる。
- その確率は半々。それも楽観的かもしれない。
- RSAは、US Airwaysに$240Mを出資した。
- これにより、RSAは37%のシェアを握った。
- 2回目のChapter 11が懸念されている中、過去1週間で株価は40%下落。
- RSAの保有株総額は$100M以下に落ち込んでいるとみられる。
- もちろん、Chapter 11となれば、無価値になる。
- RSAの資産総額は$25B以上あり、US Airways株はその1%未満。
- Bronner氏にとっては、31年間の経験の中で最大のロス。
Washington D.C.地域の高給取り100人について、Washington Postが行った調査結果が公表された。概要を見ると、サラリーとボーナスを合わせた現金報酬の中位は、2001年19%減少、2002年約50%減少となった後、2003年は15%増加し、およそ$1.5Mであった。また、ストック・オプション(SO)による報酬は、2001年20%減少、2002年41%減少した後、2003年は33%増の$2.8Mとなった。 2003年に増加となった背景には、もちろん企業収益の改善がある。
以下、具体的な報酬内容である。
Executivesの総報酬(例示) Executives Title, Company Cash (salary+bonus) Stock Optoins Perks 関係者取引 Emanuel J. Friedman
Eric F. BillingsCo-chairman, Friedman, Billings, Ramsey Group Inc. $9.5M - - DirectorであるWallace L. Timmenyが勤める法律事務所Dechert LLPに$772,000支払 Jeffrey J. Steiner Chairman and ceo, Fairchild Corp. $7.8M - - - James R. Tonkel Jr. Executive vice president, Friedman, Billings, Ramsey Group Inc. $5.3M - - Franklin D. Raines Chairman and ceo, Fannie Mae $5.3M - $37,548の税・金融サービス代
$196,852の移動費DirectorであるKenneth M. Dubersteinが勤めるDuberstein Groupに$375,000の支払
DirectorであるH. Patrick Swygert(ハーバード大学学長)の息子を採用H. Lawrence Culp Jr. President and ceo, Danaher Corp. $3.7M $26.5M
$27.3M(restricted stock)50万ドルの無利子融資
$100,378の所得税負担- Albert L. Lord CEO and vice chairman, SLM Corp. $8.6M $33.2M - - Timothy M. Donahue CEO, Nextel Communications Inc. $29.4M - - Thomas J. Fitzpatrick COO, SLM Corp. $27.8M - - Douglas H. McCorkindale Chairman and ceo, Gannett Co. $26.2M $38,000の法律サービス代
$33,239の所得税負担- Maurice B. Tose Chairman and ceo, TeleCommunication Systems Inc. - - - Toseが開発したオフィス・パークの大半をリース Dwight Schar CEO, NVR Inc. - - - 義理の息子の会社と$8Mの取引
DirectorであるWilliam A. Moranが経営するElm Street Development Inc.から$15Mの土地を買収Ken S. Bajaj CEO, DigitalNet Holdings Inc. - - - 親子で所有の企業と$694,000の取引 Laurence Harris Director, MCI - - - 元の職場Patton Boggs LLPに$770,000のロビー活動代 David Blundin Director, MicroStrategy - - - CEOを務めるVestmarkにソフトウェアの使用許可 Paul J. Klaassen CEO, Sunrise Senior Living Inc. - - - 元々所有していた邸宅を会社に譲渡。その後月$1で99年間リース。
会社は維持費として$8,800支払
Enron、WorldComで、経営者と取締役の癒着が問題になり、SO法が成立したというのに、相変わらずの際どい関係を続けているようだ。
16日、US Airwaysが年金拠出の延期をIRSに求めた。
US Airwaysは、2003年、Chapter 11から再建する際、パイロット年金プラン(DB)を廃止したが、客室乗務員プラン(Association of Flight Attendats Plan 《以下AFAプラン》)および整備工プラン(International Association of Machinists 《以下IAMプラン》)は、存続している。
今回の要請は、この2プランへの拠出についての延期要請である。具体的には、9月15日までに支払い期限が来る$67.5Mの拠出を、今後5年間の分割払いにして欲しい、というものである。要するに、キャッシュが不足しているのだ。
同社は、2度目のChapter 11行きになるかどうかの瀬戸際(「Topics2004年8月14日 UALとUS Airways」参照)である。年金拠出だけでなく、報酬見直しについて、整備工組合(IAM)は、強く抵抗しているらしい(Financial Times)。
US Airwaysは、苦境に立たされている。
報道ベースの情報しか入手できていないので、正確な状況が掴めていないが、いろいろな報道をつなぎ合わせると、次のようなことが起きているようだ。
確かに、Enron事件が内部告発に端を発している(「Topics2002年7月25日(2) Whistle-Blowers」参照)ことから、Sarbanes-Oxley Actの"SEC. 1107. RETALIATION AGAINST INFORMANTS"では、内部告発者に対する不正行為への罰則が強化されており、今回の元従業員達が論拠にしたいのは、よくわかる。しかし、いくらアメリカでも、アメリカの国外で起きた争いに関わるのは難しいであろう。おそらく、今後、本件は、脱税問題として注目を集めることになるだろうが、アメリカ労働省の対応にも注意しておきたい。
- Swatch Groupの元社員2人が、6月25日、アメリカ労働省に対して、不当な解雇が行われたとして、SO法違反で訴えた。
- 元社員達は、「Swatch社が移転価格により世界的な脱税を行っており、これを是正するよう会社に求めたところ、解雇された」と訴えている。
- これに対して、アメリカ労働省は、8月4日、「雇用も、職場も、解雇も、すべてアメリカ国外で発生しており、アメリカ労働省は判断の権能を有しない」として、元社員達の訴えを受理しない旨、レターを発出した。同レターには、30日以内に、抗告できる旨も記されている。
- 元社員達の弁護士は、「脱税はアメリカへの納税にも関係しており、Swatch社はアメリカで店頭登録している。当然、SO法の対象となるはずで、抗告する予定である」と述べている。
- この、脱税疑惑及びアメリカ労働省の却下のニュースが、Wall Street JournalおよびFinancial Timesに報道され、スイス市場での同社株価が低落している。これら報道によれば、脱税は、British Virgin IslandsにあるSwatch Group (Asia)を舞台にしており、脱税規模は$180Mと言われている(Wall Street Journal)。
航空業界を巡る動きが慌しくなってきた。航空各社は生き残りをかけて、債権者は自らの債権の可能な限りの確保を目指して、様々な行動を起こしつつある。
まず、上記sourceにある通り、PBGCである。UALは、再建計画が確定するまでDBプランへの拠出を停止することを債権者と約束してしまった(「Topics2004年7月26日 UALの年金拠出停止」参照)。これに対して、PBGCが説明を求めていたが、なかなか回答が得られないため、債権者との契約の無効を求めて提訴したのである。
PBGCは、相次ぐDBプランの廃止、引き取りにより、自らも苦しい経営に陥っている。アメリカにおけるDBプランそのものの存続の危機も感じており、PBGC長官自ら、その危機感を切々と訴えるところまで来ている("Strengthening Retirement Security: The Role of Defined Benefit Plans")。
こうした危機感が嵩じたのだろう、PBGCは、UALのDBプランに関する情報リークまで行っている。個別企業の年金プランの資産内容が公開されることは、基本的にはない。ところが、その公開されるはずのない資産内容が、New York Timesに掲載されている。しかも、通常の年金プラン資産構成と較べると、UALの年金資産は、流動性に欠ける資産の割合が高すぎる、海外企業の株式が多すぎる、という批判的な内容となっているのだ。
次に、US Airwaysである。現在、US Airwaysは、さらなるコスト削減のために、賃金、福利厚生の引き下げと、プロフィット・シェア・プランの導入を、労組に提案している。その際、会社側は、二度目のChapter 11を回避するため、と説明しているのだが、それが早ければ9月にも現実になりそうとのことである(Washington Post)。
9月には、大口の債権者への支払いや、ATSBの検査が予定されており、そこで、大胆なコスト削減ができていなければ、デフォルトに陥る可能性があるということらしい。実際、US Airwaysは、11月には20の路線の就航を停止すると公表しており、必死のコスト削減を行っている。
仮に、同社が二度目のChapter 11に入れば、おそらく営業停止、清算に突き進む可能性が高い。2002年8月11日にChapter 11を申請(「Topics2002年8月24日 ESOPと企業倒産」参照)し、2003年3月31日に復活(「Topics2003年3月29日(1) US Airwaysパイロット年金が決着」参照)した。復活そのものは早かったものの、それからわずか1年半で二度目のデフォルトということになれば、債権者達が同社の存続は危ういと判断してもおかしくないだろう。
さて、別に期待するわけではないが、もしそうなった場合、当websiteとしては、US Airwaysの動向を注視していかざるを得ない。US Airwaysの最大の株主は、アラバマ州職員退職基金(RSA)だからだ(「Topics2003年4月9日(1) US Airwaysの取締役会議長」参照)。
RSAがUS Airwaysの最大株主に収まった経緯は、「Topics2002年9月30日(1) Labor Friendly Investor」に詳しい。非常にユニークな運営をしてきた年金ファンドであり、US Airwaysの経営にもずいぶんと貢献していたようにも見える(「Topics2003年11月20日(1) 年金基金と企業の共生」参照)。
他方、州職員に対する年金給付水準を巡って、アラバマ州政府と対立する(「Topics2003年12月4日(2) アラバマ州年金基金は言い過ぎ」参照)など、行き過ぎのところも目立っていた。
もしUS AirwaysのChapter 11行き、さらには清算ということになれば、RSAが被る痛手は半端なものではすまない。RSAは今後どう動くのか、注視していきたい。
カリフォルニア州サンフランシスコ市長(以下「SF市長」)は、今年2月12日から3月11日にかけて、4,000組以上の同性カップルに結婚証明書を発行した(「Topics2004年2月25日 同性婚に対する現実的な対応」参照)。このSF市長の行為は、同性婚禁止を定めた州法に違反しており、越権行為であるとの訴えが出されていた。
これに対し、12日、カリフォルニア州最高裁判所は、次のような判決を下した。同性婚に理解のある州とはいっても、本件はやりすぎとういことだ。同性婚禁止法が違憲であるかどうかの審判は別途継続されており、本件は、直接この違憲論争とは無関係といってよいだろう。
- SF市長の行為は越権行為である(判事全員一致)。
- 既発行の同性カップルに対する結婚証明書を無効とする(5対2)。
しかし、SF市長の越権行為と、これを否定した州最高裁の判決により生じる混乱は計り知れない。具体例を挙げれば、逆にいえば、同性婚が認められれば、これらのメリットが同性カップルにもたらされる、ということでもある。
- 同性カップルに対して、結婚証明書が無効である旨通知するとともに、登録料の返還をしなければならない。
- 一旦結婚証明書をもとに、医療保険や車両保険で配偶者の地位を確認し、保険料の割引を享受した場合、保険料は再び元の料金に戻されるのか。また、配偶者認定から昨日までの間の保険料割引分を補填する必要があるのか。
- 来年提出する2004年分の所得申告書は、6ヶ月間のJoint Tax Returnと残りのSingle Tax Returnを提出するのか。それともJoint Tax Returnは提出できないのか。
同性婚支持者とはいえ、SF市長の越権行為ははなはだしく、これにより生じた行政の混乱、市民が被るコストは大きい。記者会見で、SF市長から、詫びの一言もなかったそうだが、おそらく辞任しなければ収まりが付かないだろう。
昨年末、Bush政権の強烈なロビーにより成立したMedicare改革、処方薬保険(Part D)(「Topics2003年12月3日 Medicare改革法の企業への影響」参照)だが、同政権が期待していたほどの政治的効果はもたらしていないようだ。
上記sourceのポイントは、次の通り。
- Medicare改革法に対する印象は、好印象より悪印象の方が強い。
- 悪印象を与えている最大の理由として、benefitが充分ではない、との回答が多い。
- その証拠に、6月中旬の調査時点で、処方薬割引カードに加入した割合は、1割にも満たない。
- また、Part Dが本格化する2006年以降も、加入の意思を持っている人は、16%しかいない。
- Medicare改革法が大統領選の投票に影響を持つと考えている人は28%しかおらず、しかも、その中ではKerryへの好感度が高い。つまり、内容への不満がKerry支持に結びついている可能性がある。
- 処方薬政策に関してどちらの候補者が信頼できるかとの問に対しても、Kerryを支持する割合の方が高い。
- 高齢者にとって関心の高い、「カナダからの処方薬の輸入解禁」、「政府による薬価の直接交渉」について、Bushが否定的な姿勢を取っている(=製薬会社の側に立っている)ことが影響しているものと思われる。
Enronの401(k)、ESOP等に関する訴訟に関して、一部和解が成立した(「Topics2004年5月16日 Enron年金の和解」参照)と見ていたが、若干、様相が異なっているようだ。上記sourceから、ポイントを抽出すると、次の通り。
ここでも、NY破産裁判所とTexas州連邦地方裁判所の関係が問題になっている(「Topics2004年8月8日 Enron vs PBGC」参照)。訴訟手続きに関する戦法が発達しているのだろうが、そのコストは相当な額になると思われる。また、先に述べた、PBGCとの係争(「Topics2004年8月8日 Enron vs PBGC」参照)もあり、Enronの再建計画は、NY破産裁判所の承認(「Topics2004年7月17日 Enron終焉」参照)を得た後も、大きな課題を抱え、なかなか実施に移行できないようだ。
- 5月31日、Texas州連邦地方裁判所は、和解案に暫定承認を与えた。
- その後も、関係者からのヒアリングが継続されており、同裁判所による最終承認は、8月19日に予定されている。
- その最終承認に先立ち、7月26日、Enronは、NY破産裁判所に対して、保険金による和解金の支払の停止を求める訴訟を起こした。
- Enronの主張は、「Texas州連邦地方裁判所には、集団訴訟に対する判断を示す権限しか与えられていない。保険金は、財団財産であり、その支払いに関する承認権限は、NY破産裁判所にある」というもの。Enronの無担保債権者委員会もこの主張を支持している。
- 仮に、NY破産裁判所がこの保険金支払いを認めないということになると、訴訟関係者は、再び交渉を再開するか、裁判所の判断を仰がざるを得なくなる。