7月17日 Enron終焉 Source : Enron Gets OK for Bankruptcy Emergence (AP)
ようやくEnronが終焉を迎えた。思えば、同社の問題発生は、当websiteを開設しようと思い立った最大のきっかけの一つであった。同社がChapter 11を申請したのが、2001年12月であったから、既に2年7ヶ月が経っている。
同社のChapter 11を扱ってきたNY破産裁判所は、15日、Enron社の再生計画に署名を行った。その主な内容は、次の通り。
- Enronの社名は変更して、3社に集約。
- 約2万の債権者($63B)は約2割にあたる$12Bを回収。
- 株主への償還はなし。
- 従業員の自社株中心の年金は、別途訴訟中。
やっとアメリカ社会の一つの課題が解決を迎えたような感じがする。
7月15日(2) UALが年金拠出を延期 Source : United Delays Payments to Pensions (The New York Times)
いよいよUALの年金見直しが具体化しそうだ。アメリカのDBプランの場合、四半期ごとに必要となる拠出を行わなければならないが、上記sourceによれば、UALは、必要となる拠出を延期したそうだ。
この拠出延期の目的については、2つの見方ができる。
- 再建期間中は、拠出をしなくても罰則がないので、当面のキャッシュを確保するため。
- 既にDBプランの廃止、凍結または大幅縮小について内部決断したため。
私の見方は2.の方である。当面のキャッシュを確保するといっても、年金債務が減らない限り、負債は減らない。従って、拠出の延期は財務体質の改善につながるとは思えないからだ。実際、今期の拠出必要額は$72.4M、来期は$100Mと見込まれている。これだけの規模で積立不足が累増していけば、それだけで破綻は見えている。
ここは、やはり、内部の意思が固まったと見ておくべきだろう。しかも、縮小でなく廃止であれば、最終的な給付債務はPBGCに引き継がれる訳だから、いまさらPBGCのために拠出を行うようなばかばかしいことはしないだろう。ここでも、支払保証制度があるためにモラルハザードが働いている可能性が高いのだ(「Topics2004年7月5日 企業倒産とPBGC」参照)。
7月15日(1) 上院は否決 Source : Senate Scuttles Amendment Banning Same-Sex Marriage (Washington Post)
結論として、Kerry-Edwardsの読みが当たっていたということだ。14日に行われた審議中止動議に関する投票結果は、賛成48、反対50となり、本会議での投票には至らないこととなった。民主党が一枚岩となったことに加え、共和党からの反対に回った議員が出たためだ。共和党の反対者は、大統領選の動向を握る中道派からの反発を懸念したということらしい。
これに対して、Bushチームは、「負けるが勝ち」との見解を示し、議論は緒についたばかりであり、今後、下院でも議論を行う構えを見せているらしい。実際、上院では、各議員の態度が明確に示されたわけであり、これに対する支持者達がどのような反応を示していくかが、今後の帰趨を決することになる。敵と味方を明確に区別する戦法であり、これが吉と出るか凶と出るか、選挙戦略の大事な分かれ目であることは間違いない。
ちなみに、ある世論調査の結果は、「Topics2004年3月27日 同性婚反対者は3分の2」の通りであり、こうした世論と選挙戦略がうまくマッチするかどうかがポイントとなる。
7月14日 Kerryは欠席で対応 Source : Kerry, Edwards May Not Vote on Marriage (AP)
「Topics2004年7月12日 同性婚の踏絵投票」で述べた通り、14日の水曜日にも、同性婚を禁止するとの憲法改正案の審議を進めるかどうかを、上院で票決する見込みだが、その投票当日、KerryはBoston、Edwardsは遊説ということで、本院を欠席する予定らしい。
やはり、Kerry-Edwardsにとって、本件は鬼門ということらしい。もしくは、議会工作は終了し、続行に必要な60票は集まらないとの読みができているのかもしれない。であれば、わざわざ火中の栗を拾うこともない、との判断はあり得るだろう。
私個人としては、こういう価値観論争は、正面から議論してもらいたいと思っているので、少し残念ではある。
ところで、本件について、朝日新聞(14日付第7面)に掲載されていました。日本の大新聞で、アメリカ社会の深層に迫るような記事が掲載されることは、好ましいことと思います。アメリカ関連というと、経済や軍事、エンターテイメントなど、わかりやすい記事が掲載されがちですが、同性婚のように、アメリカ人の生活に密着した現象を伝えることも不可欠ですよね。
7月12日 同性婚の踏絵投票 Source : Bush Pushes for Ban on Gay Marriage (Washington Post)
今週中にも、連邦議会で、同性婚を禁止する憲法改正案について投票を行う予定とのことである。
州憲法の改正議論も盛んに行われているものの、その結論なり、大勢が決するには相当の時間を要することは、先に述べた通りである(「Topics2004年6月30日 同性婚を巡る州レベルのせめぎあい」参照)。
Kerry-Edwardsのチケットが決まり、民主党候補への期待が高まる中、価値観論争となっている本件について今の時点で連邦議会投票を行うというのは、一気に憲法改正の動きを加速しようというのではなく、各議員の意思を明確にする投票によって、踏絵を踏ませようということである。
本件は、全米でみれば、まだまだ保守的な風潮が強い。そうした中、同性婚および法的地位の提供について態度を明確にすることは、保守/リベラルのレッテル貼りに近いところがあるだろう。同性婚を憲法で禁止することに賛成すれば、保守層、一般庶民のサポートを得られるだろうが、リベラル派からは不支持となる。
こうしてみると、KerryとEdwardsの間に楔を打ち込もうという意図も見えてくる。Kerryは、マサチューセッツ州選出の上院議員であり、マサチューセッツ州といえば、全米で最初に同性婚の合法化を実践した州である。つまりはリベラルの風潮が強いお国柄である。他方、Edwardsは、南部South Carolina州出身、North Carolina州選出の上院議員である。保守の風潮が強いお国柄だ。もちろん、Kerryが南部に弱いということからEdwardsとのチケットになった訳だが、Kerry-Edwardsが、『同性婚禁止の憲法改正に賛成、同性カップルへの法的地位の提供賛成』を公式に表明できるかどうか、それが大統領選にどのような影響を与えるのか、国民は大きな関心を持って注視するはずである。
一般国民の生活に近いところでの価値観論争であるだけに、投票結果がもたらす影響は相当なものがあると予想される。