10月15日 同性婚の年金ベネフィット 
Source : New York State Retirement System to Treat Canadian Marriages of Same-Sex Couples Like All Other Marriages (Empire State Pride Agenda)

NY州政府職員のための年金プランが、カナダで結婚登録した同性婚の場合でも、通常の結婚者と同様の取り扱いをする、との意思決定を行った。NY州年金基金は、従来から、同性同居者について、通常の結婚者と同様の取り扱いをしてきたが、今回、初めて、同性婚の場合も認めたとのことである。

もっとも、アメリカ国内、例えば、マサチューセッツ州やカリフォルニア州で登録した同性婚については、何も意思決定をしていないそうだ。

上記sourceには、同性婚となった場合に年金ベネフィットはどうなるのか、という質問状と、それに対するNY州年金プランの回答状が掲載されているので、ご参照いただきたい。

企業の場合も、従業員からの同様の問い合わせが増えていることは、以前紹介したところである(「Topics2004年8月25日 DOMAの合憲性」参照)。現行法制上または税法上、同居者に関するベネフィットの基本は次のようになっている。
  1. 1996年にはわずか6%であったのが、今や35%の企業が、同居者に対するベネフィットを提供している(Mellon Financial Institute)。

  2. 同居者に関する権利を公認しているのは、Maine, Massachusetts, Vermont, California, New Jersey の5州だけである。

  3. 同居者のベネフィットの定義
    同居者
    同性異性を問わず、法的な結婚形態をとっていない一組のカップル。

    同居者のベネフィット
    法的強制ではなく、経営者の方針により、結婚形態をとっていない従業員の同居者に提供するベネフィット。

    提供する理由
    公平性と機会の平等。職場をより魅力的なものにする。従業員のモラルを高める。性嗜好に基づく差別との批判を避ける。

    同居者ベネフィットへの反対論
    コスト要因、事務の煩雑化等。

    ベネフィットの対象にすべき者
    各自治体における法による。

    ベネフィットの類型
    医療保険、休暇制度、引越費用負担、企業施設の利用、企業主催のイベントへの参加、等。
  4. 出典:Benefits for Domestic Partners (HR. BLR)

10月14日(2) HPQへの疑問 再び
 Source : The H-P Compaq Merger Two Years Out: Still Waiting for the Upside (Knowledge@Wharton)

Hewlett Packard(HPQ)のCEOである、Carly Fiorina氏が、日本の家電市場に参入するとの意向を表明した(10月14日付 朝日新聞)。 家電といっても、もちろん、HPQのこと、デジタル家電である。アメリカでも、薄型テレビやiPodの共同販売などを手掛けているので、そう違和感があるわけではない。

当websiteでは、HPとCompaqの合併以来、その動向を注目してきている。その理由は、「両社が統合するメリットは何か」である(「Topics2003年8月21日 HPQがやっぱり怪しい」参照)。

上記sourceは、Wharton Schoolの研究者達が、同様の観点からまとめたレポートである。

なぜそのような観点がいつまでも残っているのか。端的に言えば、HPQの株価である。2001年9月3日、つまりHPとCompaqが合併を発表する前日の株価は、$23.21。発表当日の終値は、$18.87。その後、若干上昇した時期もあったが、今日時点で、$18.24。合併直後の株価とほぼ同水準となっている。正式に合併してから約2年半経っているが、目立った業績向上はみせていない。

ということは、合併によって、企業価値全体は向上していない、ということになる。どうしてもPCラインアップが欲しいのなら、Compaqとのジョイント・ベンチャーでよかったのである。

今回、公表された、デジタル家電市場への参入も、合併効果とは関係ない、単なる事業拡大であり、HP単独で行うことが可能な展開である。

10月14日(1) ストック・オプション費用化を半年延期 Source : FASB delays stock options expensing rule (Financial Times)

上記sourceによれば、10月13日のFASB会合で、ストック・オプション費用化の適用時期を、当初提案の今年12月末から来年6月に延期することを決定したそうだ。その理由は、今年末は、SO法(Sarbanes-Oxley Act)に基づく新ルールへの対応(「Topics2004年5月28日 SO法がもたらしたコスト」参照)で、企業、監査法人、SECが多忙であり、さらに新たな会計ルールが導入されるとそれへの対応は不可能になる、というものであった(「SO会計がSO法で延期」)。

非常に実務的な理由ではあるが、投票結果は5対2と大差であったことからすると、納得感のある決定であったと思われる。費用化の内容については、来週のFASB会合で最終決定したのち、年末までには諸手続きを完了しておく予定という。

つまり、内容的には変更がほとんどないものの、実務的な理由から(強制)適用時期を半年延ばすことになったというわけだ。

もともと、適用時期を延期するのではないかといった観測は出ていた。しかし、今年8月にスケジュールを延期することはないとのFASBの考え方が示され、強行突破が既定路線となっていた(「Topics2004年8月9日(1) FASBは強硬姿勢」参照)。しかし、ここに来て、まったくストック・オプションとは関係ない、実務的な理由が浮上してきたのである。

ところで、たった半年ではあるが、この適用時期の延期決定は、政治的には大きな意味合いを持つことになる。上記sourceでも指摘しているが、当websiteで紹介している通り、ストック・オプション費用化については、議会からの反対圧力が強い。下院では既に、費用化の対象範囲を限定したり、適用時期を遅らせる法案(「Topics2004年6月18日(1) 連邦議会 vs FASB」参照)を可決しており、上院でも徐々に賛成する議員が増えつつある(「Topics2004年7月21日 ストック・オプション会計法案 下院で成立」参照)。

このような議会の動きに対して、体を張ってFASBを守り、ストック・オプション費用化を推進しようとしているのが、上院銀行委員長のSen. Richard Shelby (R-Al)である(「Topics2004年6月22日 FASBの援軍」参照)。

他方、今年11月には、大統領選挙、上下院選挙が行われ、次期連邦議会(109th session)では、委員長も異動する可能性があるのだ。もし、Bush大統領が再選されれば、IT産業からの圧力で、銀行委員長が変更されるという可能性はあるし、上院のmajorityが民主党に代わって、銀行委員長が変更になるということも充分考えられる。つまり、政治家のポストにより、議会での法案審議が動くかもしれないという可能性が出てくるのである。

FASB議長にとっては、つらい選択であったかもしれない。

10月13日(2) PBGCによる改革提案
 Source :
 ○Testimony of Bradley D. Belt before the Committee on Commerce, Science, and Transportation, U.S. Senate (2004/10/07)
 ○Remarks of Bradley D. Belt to the U.S. Chamber of Commerce (2004/10/08)

PBGCが反撃を開始した。議会による年金救済法の成立、航空会社の拠出停止など、PBGCの財政悪化に拍車をかけるような話題が続いていることに危機感を持ったPBGCが、みずから支払保証制度全体の見直しを提案している。上記sourceは、シチュエーションの違いから、表現の差異はあるものの、主張している内容は、ほぼ同じである。

そのポイントは次の通り。

  1. 支払保証制度の問題点
    1. 積立基準が低すぎる。
    2. モラル・ハザードがみられる。
    3. 透明性が欠けている。

  2. 必要となる対応策
    1. 積立基準を厳格化する。
    2. 支払保証保険料を、リスクをより反映した形にする。
    3. 積立状況について適切な情報開示を求める。
    4. 加入者の受給権を守るために、適切な権限をPBGCに付与する。例えば、Chapter 11におけるPBGCの権限の強化等。
もちろん、PBGCとして、こうしたチャレンジを行うことは、ごく自然の流れだと思う。放置すれば、あと15年ももたない(「Topics2004年9月15日(3) PBGCはあと15年」参照)、と言われている制度、組織を守るためには、当然のことだろう。

しかし、労働省、PBGC、議会は、PBGCのBelt理事長自身の次の言葉を、よく理解すべきだろう。
"History tells us that wholly unregulated or overly regulated markets whither and die. Prudently regulated markets, on the other hand, will thrive and prosper. That is certainly true of the capitalist system, and the particular subset of it that I want to talk about today?the defined benefit pension system."(上記sourceの米国商工会議所でのスピーチより)
歴史が示す事実は、支払保証制度という、過度な規制により、Defined Benefit Pension Systemが消滅しようとしているのである。

10月13日(1) 公的年金の改革論議 Source : Bush, Kerry split on Social Security (OMAHA WORLD-HERALD)

前回の大統領選で大きな争点になっていながら、今回の大統領選でほとんど注目されていないテーマ。それは、公的年金の改革論議である。 上記sourceにあるように、一応、Bush、Kerryとも考え方を示しているものの、従来からの議論に新味はなく、国民の間の関心も高まっていない。

振り返ってみれば、当websiteも、September 11より後に立ち上げたため、Topicsで取り上げた公的年金に関する記述は、わずかに、次の2件だけである。 前回大統領選での白熱した論戦がうそのようであるし、また、この3年間近く、ほとんど話題にもなっていなかったことがよくわかる。