3月4日(2) AFL-CIO執行部が突っぱねる Source : Labor Leaders Reject Rival Plan to Shift More Money to Organizing (New York Times)
個別労働組合のAFL-CIOへの拠出金を半減する案(「Topics2005年2月21日 AFL-CIOの行方」参照)について、2日、AFL-CIOの執行部は、15対7で否決した。半減を提案する労働組合は、7月の大会に向けて、賛成の輪を広げる努力を続けるとしている。また、半減提案が受け入れられなければ、離脱も辞さない構えである。他方、主流派の労組幹部は、こうした動きに反発を強めており、全米最大のナショナル・センターは、分裂の危機を迎えつつあるような気もする。

ちなみに、拠出金半減提案に、最終的にはUAWも賛成に回ったようであり、反執行部の主要労組のスタンスは、次のようになった。

労働組合名
拠出金の半減会長の交代
Teamsters
Service Employees International Union
Unite Here
United Food and Commercial Workers
 
Laborers' International Union
 
United Auto Workers



3月4日(1) 401(k)プランの歴史 Source : History of 401(k) Plans (EBRI)

上記sourceは、アメリカ確定拠出型年金プランの典型である401(k)プランの歴史を、コンパクトにまとめたものである。最近のSarbanes-Oxley Act of 2002による制度変更まで盛り込まれており、ざっと振り返るのには大変便利にできている。

公的年金の個人勘定創設、加州政府職員年金の確定拠出型への強制移行など、アメリカ労働者にとっての確定拠出型プランの位置付け、普及度を再確認するためにも、401(k)プランが広まってきた経緯をおさえておくのも悪くないと思う。

3月3日 Bush vs. Governors
 Source : "Governors Prepare to Fight Medicaid Cuts", "How to Save Medicare? Die Sooner" (New York Times)

2月26日から3月1日にかけて、2005 NGA Winter Meeting が開催された。これは、National Governors Association (NGA)が主催するもので、ここに全国の州知事が集まり、政策論議を行ったうえで、大統領、連邦議会と意見交換を行う。

この冬の大会で、政策課題のトップに掲げられたのが医療問題であり、特に、Medicaidは最重点課題として取り上げられた。

NGAがまとめたMedicaid改革提案の骨子は、次の通り。
  1. Medicaidの現代化
    1. 州政府に加入資格変更の権限を与える。また、加入資格を所得要件に一本化することも認める。
    2. 比較的所得の高い層への給付内容を単純化することを認める。
    3. 家庭や地域でのMedicaidサービスの提供を認める。
    4. 市、郡との共同運営を認める。
    5. 連邦政府、州政府の財政状況を反映した運営資金拠出制度を確立する。

  2. 加入者の自己責任
    1. 診療行為に関する加入者の選択と、加入者自己負担の増加を促進する。
    2. 医療機関、診療行為に関する情報の提供をすすめる。
    3. 所得に応じた自己負担、または雇用主が提供する医療保険プランと同様のコスト負担を求めることを認める。
    4. コスト分担の手法を工夫することにより、予防診療を促進する。

  3. 市場メカニズムの活用
    1. SCHIPを参考に、給付内容に民間医療保険プランの要素を盛り込むことを促進する。
    2. 民間医療保険プランが駆使する評価手法を利用して、医療の質を向上させる。
    3. 可能な限り、企業が提供する医療保険プランを活用した制度運用とするよう、補助金を含めてその促進策を講じる。
      • Sanfordサウス・キャロライナ州知事は、「パーソナル医療勘定(personal health account)」の創設を提案している。州政府が一定の金額を拠出し、Medicaid加入者がデビットカードで医療機関への支払いをできるようにする。
      • Bushフロリダ州知事は、Medicaid加入資格者に対する定額拠出を提案している。加入資格者は、Medicaidに加入せず、民間の医療保険プランを購入することも選択できるようにする。
    4. 企業が提供する医療保険プランへの補助を簡素化する。
    5. 無保険者対策として、HSAまたは税額控除を活用する州政府のパイロットプロジェクトを認める。

  4. 長期介護制度
    1. 低所得者で、Medicare、Medicaid両方の加入資格者について、連邦政府が特別の責務を負う。例えば、保険料、窓口負担、免責額などの全額連邦政府負担、など。
    2. 長期介護の費用を負担できる層には、できるだけ負担してもらうよう促す。例えば、長期介護保険の加入者への優遇措置など。
    3. Medicaid加入者に、より多くの選択肢を提供する。
    4. 家庭、地域で介護サービスを受けたいという加入者の要望をなるべく認める。

  5. 制度の持続可能性と経費の抑制
    1. 連邦政府拠出金の算定式を見直し、景気の動向、各州政府の財政状況をより反映させるようにする。
    2. 低所得者で、Medicare、Medicaid両方の加入資格者について、連邦政府が特別の責務を負う(再掲)。

このように、様々な提案が知事側から行われているが、彼らが一致して反対しているのが、Medicaidに対する連邦政府負担の削減である。これは、過日公表された2006年連邦政府予算提案で示されているもので、今後10年間で$60B、Medicaid関連支出全体の約2%に相当する。知事会とBush大統領との会合でも、当然、知事側から、最重要案件として本件を議論したと思われる。

一方、Bush大統領の方も、自らの主導で開始したMedicare改革はまだ道半ばであり、その関連の歳出の増大も見込まれている。財政再建を2期目の重要課題として掲げた以上、Medicaidでの支出削減は至上命題であろう。

なお、米国の医療政策に関する最新事情について、東京三菱銀行ワシントン駐在員事務所(竹中正治所長)がコンパクトなレポートを出している。このレポートでは、上記のような連邦政府側の事情をもとに、2008年の大統領選で、医療政策が重要な争点になるとの見方を示しており、大変参考になる。竹中所長のご許可をいただいて、ここに掲載するので、ご参照いただきたい。
東京三菱銀行ワシントン駐在員事務所
ワシントン情報(2005/No. 022)「米国医療保険制度が抱える問題の大きさ」(2005年3月1日)