12月20日 クリントン上院議員が皆保険制度に言及 Source : Sen. Rodham Clinton Says She Supports Universal Health Care (Kaisernetwor.org)

クリントン上院議員が、NPRのインタビュー番組で、皆保険制度の導入について、依然として前向きな考えであることを表明した。上記sourceに番組を聴取できるリンクが置かれている。

同番組で、クリントン上院議員は、民主党主導の連邦議会における優先政策課題として、次のように挙げている。 これまで、クリントン上院議員は、まずは子供の無保険者をなくそう、という主張を繰り返してきていた(「Topics2006年6月16日 Mrs. Clintonの政治信条」「Topics2006年7月31日 連邦レベルの皆保険提案」「Topics2006年8月1日 民主党の政策提言」参照)。10年前にお蔵入りになった皆保険制度の導入について再び力強く言及したことに、このインタビューの意味があるのであろう。

意味があるとすれば、もう一つ。メディアの選択である。NPR (National Public Radio)は、地味な公共放送ラジオであるが、逆に言えば、全米の中低所得者層をターゲットとするならば、格好の媒体である。そうしたメディアの選択にも、クリントン上院議員の配慮が窺える。

いよいよ、2008年大統領選が始まったようだ。

12月19日 Fiduciaryのお願い Source : Tis the Season for All Pension Fiduciaries (PENSION RISK MATTERS)

上記sourceは、従業員ベネフィットプランのfiduciaryが、サンタさんに出したwish listである。確かに、こんなことが保証されれば、fiduciaryは楽な商売となるだろう。その代わり、報酬も下がるだろうが・・・。

そこにもある通り、年金分野でも医療の分野でも、2007年は、大きな変革を迎える年となろう。そんな自戒の念も伺える。

ところで、上記sourceが掲載されているブログ"PENSION RISK MATTERS"は、結構面白い。主に、年金財務リスクの問題を、ガバナンス、受託者責任の観点から取り上げている。参考になるかも。

12月18日(1) Oregon州も皆保険へ Source : Senate panel OKs draft of universal health care plan (The Oregonian)

ついに、オレゴン州も皆保険制度導入に向かって、動き始めた。まだ、州議会上院委員会(The Senate Interim Commission on Health Care Access and Affordability)で、概要が了承されただけだが、経済界や前知事も支援してきただけに、実現の可能性が高まっている。2007年の州議会の重要議題となるのだろう。

州議会上院委員会で了承された、皆保険制度案の概要は次の通り。
  1. 全ての州民に、医療保険カードを付与する。このカードにより、歯科、精神科、眼科を含む完全な医療保険プランを購入できる。しかも、現在、企業や個人が負担するコストよりも安くする。

  2. 皆保険だけではなく、コスト抑制、医療の質の向上も目指す。

  3. "The Oregon Health Care Trust Fund"を創設して、州内の全ての企業、個人が(保険料を)拠出する。自治体職員、Medicaidの対象分も、この基金に集約する。ただし、poverty lebelが250%未満の住民は、拠出義務を免除する。

  4. 個人からの拠出は、可能な限り、payroll tax(給与からの天引き)とする。自社保険プランを有する大企業は、一旦集めた資金を(基金に)再拠出する。

  5. "The Oregon Health Care Trust Fund"の理事は11人。州知事により指名される。

  6. 企業、個人は、保険料率と併せて医療保険プランを選択できる。

  7. 現在、オレゴン州には60万人以上の無保険者が存在する。新制度が創設された後に保険不加入を選択した場合、収税の所得控除を利用できないこととする(この規定がMA皆保険法(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)と同様かどうかは不明)。

  8. 保険会社間、医療機関間で、競争原理を活用する。
これらの提案に対して、医療機関は償還額が少なくなるのではないかと懸念している。また、保険会社・企業は、相当なコストを負わされるのではないか、と懸念している。それでも、皆保険制度の導入に向けて前進すべきとの態度は変えていない。

オレゴン州議会では、上院が17vs11(中間選挙前と同じ)下院が31vs29(中間選挙前は27vs33)と、民主党がmajorityを握っている。また、州知事は、民主党候補であるTed Kulongoski氏が当選し、民主党知事の座を守った。また、連邦議会議員も、上院は1vs1下院は4vs1と民主党が強い土地柄である。

このように、MA州やCA州とは政治基盤が異なることから、OR州では、民主党主導の皆保険制度導入が試みられるものと見られる。

なお、Kulongoski知事は、公式には上記委員会案への支持を明示していない。少なくとも選挙前は、子供の無保険者を減少させようと提案していたし、実際に州知事に就任して、子供の無保険者対策を最優先課題としている(Healthy Kids Plan)。また、同知事は、the Oregon Health Policy Commissionに対し、2007年中に、2009年以降の対策案をまとめるよう指示を出している。この指示が、上記の委員会提案の具体化に結び付くようであれば、皆保険制度導入に向けて、大きく動くことになろう。

12月18日(2) 加州皆保険制度への一提案 Source : A Proposal to Cover the Uninsured in California (Health Affairs)

隣のオレゴン州では、漸く盛り上がり始めた皆保険制度導入論議だが、加州では、既に加熱状態にあるといってもよい。

上記sourceは、これまでの諸提案(「Topics2006年11月6日(1) 加州無保険者対策の選択肢」参照)以上に、制度設計の詳細を提案しているので、抄訳を作成してみた。

シュワ知事は、「無保険者対策のための新たな増税はしない」と宣言している(「Topics2006年12月5日 シュワ知事の決意」参照)が、上記sourceを読めば、増税の難しさがわかる。憲法の制約と財政赤字の狭間で、どのような政治的成果(=妥協)ができるのか。

12月14日(1) DB/DCの概念-IASB 
Source : Agenda Paper 4: IAS 19 - Post-employment Benefits: Cash balance and similar plans - possible approaches (IASB)

以前に紹介した通り(「Topics2006年12月4日 DB/DC定義の議論開始」参照)、DB/DCの定義付けについて、IASBで議論が始まった。12日のIASB会合では、上記sourceがスタッフ・ペーパーとして提出された。

非常に抽象的で、実際の分類や会計基準にどうやって落としていくのかは、まだまだ見えない状況だが、頭の体操として、とても勉強になる。

恥ずかしい話だが、初めてIAS 19(Employee Benefits)の内容を知った。そこでは、DCの定義付けが行われ、その定義に当てはまらないプランは、すべてDBとしているそうだ。かなり乱暴な話である。また、それだからこそ、今回の議論が重要になってくるのだろう。

これは、毎回、議論を追いかけておかないと、理解ができなくなるかもしれない。

12月14日(2) 上院のMajorityは? Source : Democratic Sen. Tim Johnson Falls Ill, Undergoes Surgery (Washington Post)

大変なことになるかもしれない。Tim Johnson (D-S.D.)上院議員が入院し、緊急手術を受けたそうだ。

Johnson議員の任期は2009年までであり、あと2年ある。仮に、手術の結果、任務を続行できないということになると、選挙区である、South Dakotaの州知事が後任を指名することになる。そのMichael Rounds州知事は、今回の中間選挙で圧勝して再選された共和党員である。つまり、万が一の事態が発生した場合には、共和党の上院議員が指名される。その結果、上院は、50-50のevenになってしまうのである。

上院での投票結果が50対50になれば、副大統領の決裁ということになるのだが、問題は、Majorityはどちらなのか、それに伴って委員長人事はどうなるのか、である。共和党と民主党との間で、どのようなルール作りが行われるのか。上記sourceには、過去の事例も紹介されている。

上院は、法案の可否だけでなく、人事権も握っている。思わぬところで、民主党の連邦議会掌握が揺らぐことになる。

12月13日(1) クリスマス・ボーナスの実態 Source : Employers Favor Pay-for-Performance Over Holiday Bonuses (PLANSPONSOR.com)

先に、クリスマス・ボーナスが変質しつつあるということを紹介した(「Topics2006年12月1日(1) クリスマス・ボーナスの変質」参照)が、上記sourceは、その関連でアンケート調査を行った結果の要約である。
  1. 調査対象300社のうち、クリスマス・ボーナスをまったく支給していないのが52%、今年から支給をやめたのが14%。

  2. まったく支給していない主な理由は次の通り。
    1. すべての報酬は業績連動となっている→45%
    2. コストがかかりすぎる→36%
    3. 検討したこともない→30%

  3. 支給を取り止めた主な理由は次の通り。
    1. コストがかかりすぎる→61%
    2. 従業員が喜ばない→35%
    3. 福利厚生全体の見直し→33%
    4. 業績連動型報酬に切り替え→21%

  4. クリスマス・ボーナスの支給形態は次の通り。
    1. 現金→39%
    2. 商品券→37%
    3. 食品(七面鳥、ハム等)→27%

  5. クリスマス・ボーナスの支給を継続している主な理由は次の通り。
    1. 感謝の意を表す→61%
    2. 習慣を継続する→15%
    3. モラルの高揚→15%

  6. クリスマス・ボーナスの支給対象
    1. 全従業員→58%
    2. フルタイム社員のみ→20%

  7. クリスマス・パーティを開催する企業も減少している。昨年の調査では74%であったが、今年の調査では65%であった。
    1. パーティ開催予定費用が$5,000以下→23%
    2. パーティ開催予定費用が$5,000〜$20,000→27%
    3. パーティ開催予定費用が$20,000〜$30,000→11%
Die Hard」に出てくるような、豪華パーティを開催する企業は、やはり少なくなっているのだろうな。

12月13日(2) Bust Buy Goes Clockless Source : Best Buy Ditches Work Time and Place Constraints (PLANSPONSOR.com)

Best Buy Co.といえば、アメリカで最大手の家電量販店である。管理人も、PC関係の買い物をずいぶんした記憶がある。そのBest Buyが、勤務時間、勤務場所、会議を一切なくしたという。まだ一部の部署にしか適用されていないが、今後、広げていく予定だという。

報酬は勤務時間では測らず、すべて業績で決めていく("results-only work environment(ROWE)")。会社側としては、そうした勤務形態、報酬体系をとることで、従業員のストレス、燃え尽き症候群、転職を防ぎ、自らワーク・ライフ・バランスを決定させることで、モラルと生産性を高めようということらしい。 また、副産物として、オフィス・スペースの節約もできるという。

これがニュースになるということは、アメリカでも珍しい試みなのであろう。ちょっとどうかな、とも思うが、同社の従業員が満足ならば、それでよいのだろう。

12月13日(3) FMLAの見直し Source : Request for Information on the Family and Medical Leave Act (DOL)

労働省(Department of Labor, DOL)が、FMLA(Family and Medical Leave Act of 1993)の見直しに着手した。12月1日より来年2月2日までの間、パブリック・コメントを受け付ける。

FMLAとは、従業員50人以上の企業は、従業員の出産、育児、病気、家族の看病などのために、年間12週間の無給休暇を与えなければならない、という法律である。

労働省が同法の見直しに動き出した背景には、企業側の意向がある。例えば、全米商工会議所は、同法の解釈が明確でないために、規定を悪用した怠業などが増え、コスト増、生産性低下をもたらしている、と主張してる。

ところが、新連邦議会におけるキーパーソンの一人、Edward Kennedy (D-MA)議員(「Topics2006年11月28日(1) 新連邦議会のキーパーソン」参照)は、「FMLAは勤労者にとっての大勝利であり、強化こそすれ、後退させてはいけない」と、労働省の動きをけん制している(Washington Post)。

こうした新連邦議会のもと、企業側の論理だけでことが進むのか、権利の拡大と解釈の限定という、政治的な決着を図るのか。Bush政権の一つの課題となりそうだ。

12月12日 XBRLがもたらす影響 Source : The Promise of Interactive Data (SEC)

上記sourceは、XBRL世界大会における、SECのCox議長のスピーチである。当然のことながら、SECはXBRLを全面的に支援しており、2007年半ばまでには、完全導入のための基盤整備を終えたいとしている。

日本でも、XBRLによる財務報告書作成は、EDINETに2008年度から導入されることになっており、XBRLによる財務情報開示は待ったなしの状況にある。(XBRLの簡単な紹介は、日本公認会計士協会XBRL-Japanで。)

では、XBRLによる開示で何が変わるのか。
  1. HTMLまたはPDFで作成していた財務諸表が、XBRLによる作成に変わる。
    プログラム言語が変わるだけで、財務諸表を当局提出用に作成しなおすサービス会社に対する支払いが増えるという、単なるコスト増。中堅、中小の企業では、このレベルでとどまるだろう。

  2. 財務諸表作成用の体系と、内部勘定用の体系をセットで導入することにより、財務情報がより早く本部に集積できるようになる。
    初期コストは相当になるものの、経理部門と事業部門の間の情報のやり取りがスムーズかつ早くなる。効率化にはかなり役立つものと思われる。

  3. 企業間の財務指標の比較が容易になる。
    同業他社だけでなく、異業種間、国際比較も容易になる。XBRLで作成されていれば、日本語の財務諸表から英語やその他の言語に転換するのは、一発でできる。また、同じ財務指標を取り出してきて比較するのも容易である。
もうおわかりの通り、上記3は、コンバージェンスと裏腹の関係にある。同じ名前の付いた項目を拾い出してきたとしても、その名前が意味するところが異なるのでは、比較する意味がない。例えば、退職給付債務といっても、認識すべき年金プランの範囲が異なっていれば、比較にならない。

従って、概念なり定義は、どうしても近づけておく必要があることになる。また、概念が近いことをもってコンバージェンスとするためにも、"principle-base"に歩み寄っていく必要がある(「Topics2006年11月22日(1) Principle-base会計基準へ」参照)。

2009年のアメリカとEUの間では、
  1. 差異調整表がない
  2. XBRLで作成された財務諸表により比較可能性が高まる
という世界が実現する。

こういうことを書いていると、「会計が制度を振り回すのか」とか、「日本独自のいい制度がなくなる」といった批判が行われる。確かに、そういう批判に同情したくなる気持ちもある。しかし、上で示したような世界において、「厚生年金基金」を説明しようとしても不可能であろう。同じような制度を表す言語がないのだから。

そういった概念が異質なもの、または存在しないものを財務諸表に記しても、外国人には理解されない。下手をすれば、日本の投資家でも理解できないかもしれない。情報を受け取ってもらえなければ、財務情報を発信している意味がない。そろそろ日本の国際的企業は、大きな決断をすべき時期かもしれない。