15日、PBGCが航空2社の破産申請に関して声明を発表した。そのポイントは次の2点。この推計をもとに、次のような表を作成してみた。昨年8月時点の積立不足額は、「Topics2005年9月15日 PBGC絶体絶命」で紹介したもの。また、UALに関する数値は、「Topics2005年4月28日 UAL年金のPBGC行き決定」で紹介したものである。
- 破産申請したとしても、DBプランへの拠出義務はなくならない。
- 航空2社の積立不足ならびにPBGCの財政負担に関する推計
(2004年8月時点) | (2005年9月時点) | (2005年4月最終決着) | |
13日、UNITE HEREが、AFL-CIOからの離脱を決定した。Teamsters、SEIU、UFCWに次いで、3つの離反である。反AFL-CIO勢力の現状は、次の通り。
昨日の観測記事通り、14日、航空2社がChapter 11の申請を行った。両社のプレスリリースは、次の通り。Northwest Deltaそして、注目の年金プランに関する記述をまとめると、次のようになる。NorthwestPBGCに移管しますよ、というメッセージ以外のなにものでもないと思われる。ところで、次の表を見ていただきたい。Delta
- DBプランからDCプランへの移行を継続する。
- 2006〜2008年で、DBプランに総額$3.3Bを拠出する必要がある。
- 年金に関する優遇制度を立法化してもらいたい。
- 近く必要となるDBプランへの拠出を行う予定はない。
- 拠出を行わないということが、年金の支払停止、プランの終結を意味するわけではない。
- 年金に関する優遇制度を立法化してもらいたい。
- たとえ優遇制度が導入されたとしても、DBプランの将来が保証されているわけではない。
昨年8月に当websiteで紹介した、航空各社のDBプランの積立不足額である(「Topics2004年8月6日(1) 航空会社の年金積立不足」参照)。出典は、Fitch Ratingsという格付会社である。
規模 会社名 積立不足額 1位 American Airlines $2.7B 2位 United Airlines $6.2B 3位 Delta Air Lines $5.7B 4位 Continental Airlines $1.1B 5位 Northwest Airlines $3.7B 7位 US Airways -
(パイロット年金廃止)
既に何度も紹介している通り、UALの破綻、年金プランのPBGC移管で、PBGCは大きな財政的損害を被った。ちょうど1年前の数字だが、DeltaとNorthwestの積み立て不足額の合計は、UALの積み立て不足額の1.5倍にのぼる。それから1年たって、その額はさらに大きくなっているものと思われる。
そのような年金プランをPBGCに移管することになれば、PBGCは財政的に破綻し、支払保証制度は終焉を迎えるということも十分考えられる。その場合、PBGCは、この2社の年金プランを引き取り、連邦政府からの財政支援を得て、閉鎖年金に形を変えるのが自然だろう。アメリカ支払保証制度は、いよいよそうしたシナリオが視野に入ってくる段階を迎えたようだ。
なお、参考までに、Delta社の破産申請書類も置いておこう。
上記sourceによれば、NorthwestとDeltaの2航空会社が、今日(14日)にもChapter 11の申請を破産裁判所に申請するとのことである。
両社とも、危機説が出ていたところである(「Topics2005年7月25日(2) Northwest航空も年金凍結」、「Topics2005年8月15日 Deltaもピンチ」参照)が、Chapter 11入りとなる直接の原因は、次の通り。
当websiteの祈りも虚しく、再び年金拠出がChapter 11の引き鉄を引いてしまったようだ。
- ハリケーン「Katrina」による航空機燃料の高騰。Chapter 11の申請を早めたとみられている。
- 労使交渉の頓挫。雇用削減、賃金・福利厚生の抑制交渉が行き詰まった。
- Deltaの場合には、利払いが苦しくなった。
- そして、Northwestの場合には、15日に期限の来る年金拠出$65Mの猶予申請が認められなかった。
ストック・オプションの費用計上は既に始まっている(「Topics2005年4月17日 ストック・オプション費用化 再延期決定」参照)が、SECでは、付与時のストック・オプションの価値を、何とか市場から計測できないかと研究中とのことである。上記sourceは、その試みの素晴らしさをつらつらと述べているのだが、要するに、Ciscoの提案(「Topics2005年5月16日 ストック・オプションの売却」参照)は受け容れられないが、別の手法を検討中、ということだそうだ(New York Times)。
本件に関するチーフ・アカウンタントのコメント、SECスタッフのメモが、上記sourceからリンクされているので、ご参照いただきたい。