上記sourceから理解できる、NESTEG Act of 2005(「Topics2005年7月27日 NESTEG Act of 2005」参照)の概要は、次の通りである。なお、下院で審議されているPension Protection Actの概要は、「Topics2005年6月28日(1) 企業年金改革法案」参照。
- 新積立基準
- 積立基準は、プラン年度期首における給付(債務)の現在価値。
- 2007年から2年間の猶予期間が設けられる。つまり、2007年に始まる年度は上記積立基準の93%、2008年に始まる年度は上記積立基準の96%、2009年に始まる年度は上記積立基準の100%を積み立てなければならない。
- 加入員100人未満のプランの場合は、5年間の猶予期間を設ける。
- 積立不足は7年間で償却する。年間の必要積立額は、給付債務の増額+積立不足償却額。
- 年間拠出額の増減に制限を設ける。増減の限度額は、必要積立額の30%または給付債務額の2%を超えてはならない。資産額が積立基準を超えない限り、拠出額は、前年の拠出額±限度額の範囲内にしなければならない。
- 危険なプランに関する特別ルール
- 危険度の判定は、プランスポンサーである企業の財政の健全性に基づいて行う。
- 一般的に認知された格付け機関(NRSRO)により、優先権付き無担保債務が投資適格以下と格付けされた場合、プランスポンサーは財政的に脆弱であると判断される。
- 3年連続でプランスポンサーが財政的に脆弱であると判断された場合、年金プランは危険な状況に入ったと認定される。
- 危険な状況にあり、かつ積立比率が100%未満の場合、すべての加入者が最も早い期日に退職するとの前提を置いて、給付債務、拠出額を算定しなければならない。また、給付形態も、債務が最も大きくなる形で支払われるとの想定を置かなければならない。
実際に審議している委員会 | ||
立法権限のある委員会 | ||
上記sourceによれば、27日、上院銀行委員会で、Cox SEC委員長候補に対するヒアリングが開催された。
そこで、Cox候補は、準備したステートメントを読み上げた後、質問に応える形で、「ストック・オプションの費用化について強く支持し、FASBが決定した会計基準(FAS123R)の適用を停止することはしない」と明言した。
ご存知の通り、Cox候補の前職は、ベテラン下院議員(R-Cal)である。下院では、ストック・オプション会計の適用を限定的なものにするための法案(「Topics2004年6月18日(1) 連邦議会 vs FASB」参照)を可決しており、"Cox下院議員"は、同法案に賛成票を投じている(「Topics2004年7月21日 ストック・オプション会計法案 下院で成立」参照)。
一方、ヒアリングを行った上院銀行委員会の委員長は、あのShelby上院議員である(「Topics2004年6月22日 FASBの援軍」参照)。共和党のShelby委員長としては、FASBをサポートするとのCox候補の言質を取って承認を出したい、との意向が働き、質問という形がとられたと思われる。これで、費用化の適用はほぼ確定したとみてよいだろう。
Cox候補としての回答は「支持する」ということで正解であるが、"Cox議員"としては変節したことになる。この辺りの心情は、アメリカ人としてどう整理するのだろうか。
26日、上院金融委員会で、NESTEG Act of 2005が、全員一致で可決された。今年2月に再提案された法案(「Topics2005年2月4日(2) NESTEG法案 再提出」参照)で、昨年5月にも同委員会で満場一致で可決されている。
Enron以来の企業年金改革議論だが、なかなか実現の芽が出てこない。その背景には、ビジネス界のサポートがなかなか得られないことにあるようだ。
企業年金プランの企業側代表団体である、ERIC、ABCは、同法案に対する意見表明を、次のように行っている(ERIC意見書、ABC意見書)。
NESTEG Act of 2005 ERIC ABC PBGC保険料引き上げ × − 利子率の(移動)平均化禁止 × × Yield Curveの利用 × × スポンサー企業の信用格付 × × 超過積立の容認 ○ ○ 一時金払いに必要な額の積立 ○ ○
25日、TeamstersとSEIUが、AFL-CIOからの離脱表明を行った。上記sourceは、AFL-CIOのSweeny会長宛ての離脱表明レターだが、それぞれの会長ステートメントもある(Teamsters、SEIU)。
上院金融委員会(Finance Committee)のChuck Grassley委員長とMax Baucus(Ranking member)は、共同で法案を提出した。法案名は、Tax Technical Corrections Act of 2005 (S. 1447)で、本文はここにある。ただし、法案名からもわかる通り、様々な事項が盛り込まれているため、管理人は、年金部分に関する読み込みをできていない。
上記sourceによれば、下院で審議され、6月末に委員会で可決された企業年金改革法案(「Topics2005年6月28日(1) 企業年金改革法案」参照)よりも、Bush政権寄り、企業寄りと言われている。ただし、
@適用利子率に移動平均を用いることを禁止する(下院案では盛り込まれている)、
A積立基準に加入員の年齢構成を加味する、
などの特徴があり、必ずしも企業寄りとばかりは言えないようである。
7月22日、The United Farm Workers of America (UFW)が、新組織"Change to Win"に参加を表明。これで、新組織への加盟団体は、7団体となった。
さらに、上記sourceによれば、主要4労組が、AFL-CIO結成50周年記念式典をボイコットし、いよいよ離脱を正式表明するのではないか、との観測が出ている。Change to Win の現状をまとめると、次の通り。
業界4位のNorthwest航空が、ホワイトカラー従業員3,300人の確定給付年金プランへの拠出を、8月31日付けで凍結すると発表した。今後、労組対応のプランについても凍結の方向で交渉するとしている。
同社の年金積立不足は、$3.8Bに達しており、もし、労組との交渉がうまくいかなければ、Chapter 11に入らざるを得ないと会社側は見ている。もしそうなれば、UAL、US Airwaysに次ぎ、PBGCへの移管となる。
CEOが交代して4ヶ月近く(「Topics2005年3月30日 HPの新CEO決定」参照)。その新CEOがHPのリストラ策を公表した。そのポイントは次の通り。
- リストラ策によるコスト削減額は、2007年以降、年間$1.9B(2006年は$900M〜$1.05B)。
- 今後1年半で、14,500人の従業員を削減する(正規社員の約10%相当)。人員削減によるコスト削減は、年間$1.6B。
- 長期勤続者については、早期退職プログラムを用意する。
- 確定給付プラン及び退職者医療保険プランについて、2006年1月、凍結する(積立および受給権付与を停止)。これに伴うコスト削減は、年間$300M。
- 従来からある確定拠出プランについて、企業側のマッチングを4%から6%に引き上げる。
前CEOができなかったリストラを本当に実現できるかどうか、現CEOの実力が問われるところである。しかし、思い返してみると、今回は、前CEOのフィオリーナが着想しながら実現できなかった、退職者医療保険プランの凍結が、具体的に組み込まれている(「Topics2002年2月27日 1%の株主達」参照)。