6月29日 厳しくなる教育支援の要件 Source : Financial Aid Rules for College Change, and Families Pay More (New York Times)

アメリカの大学生に対する教育支援策は、学生や親にとって、厳しくなるようだ。様々な要素があるため、一律の比較は難しいものの、New York Timesが独自に試算(上記source)したところ、収入、資産が同じであれば、2005年の自己負担額は、2000年に較べて$1,749の増加となる。

Bush政権は、年初に、「連邦政府の奨学金制度(Pell Grants)を効率化(more effective and efficient)する」との演説を行った(「Topics2005年1月17日 教育支援の効率化」参照)。そこでは、Pell Grantsの最高限度額引き上げについて言及していたが、支給要件そのものについては、触れていなかった。財政赤字削減が必須となっているBush政権にとっては、当然の方策であろうが、年初の演説のイメージとはかけ離れた政策が現場では取られていることになる。

6月28日(2) 新組織に新加入 Source : Carpenters Union Joins Change To Win Coalition

新組織"Change to Win Coalition"に、大工労組が新たに加わった。これで加入団体は6団体となった。

6月28日(1) 企業年金改革法案 
Source : Pension Protection Act Bill Summary (House Education & Workforce Committee)Summary of the Boehner Pension Reform Bill (American Benefit Council)

6月8日、企業年金改革法案(Pension Protection Act, HR.2830)が提出された。中心となったのは、共和党の2議員、John A. Boehner (Ohio)Sam Johnson (Texas)である(New York Times)。前者のBoehner議員は、下院教育労働委員長を務めており、この世界の実力者でもある。

以下、同法案の概要である。
  1. 積立基準
    1. 積立基準を、現時点での給付債務の100%とする。
    2. 給付債務と資産の差(積立不足額)を、7年超で解消する。
    3. 給付債務の計算は、修正利子率曲線による。

  2. 修正利子率曲線
    1. 年金給付債務の計算は、修正社債利子率曲線を利用する。
    2. 財務省が開発した社債利子率曲線を次の3つの利子率に分けて利用する。
      1. 償還期間5年以下
      2. 償還期間5年超20年以下
      3. 償還期間20年超
    3. 利子率の適用には、移動平均法を用いる(直近年50%、2年目35%、3年目15%)。

  3. 資産に関する数理計算
    資産に関する数理計算を認めるが、現在の時価の110%(現行120%)を上限とする。

  4. 大幅な積立不足の場合の給付債務
    積立比率が60%未満の場合、給付債務の計算は、加入者が最も早い年齢で退職し、最も有利な形で受給することを前提にしなければならない。

  5. Credit Balances
    現行のcredit balancesは保持される。ただし、積立比率が80%未満の場合には利用できない。

  6. 一時金払い
    一時金払いを選択した場合の金額の算定には、給付債務を計算する際に利用する利子率曲線を利用する。

  7. 非課税拠出限度額
    給付債務の150%に引き上げる。

  8. 給付増額の禁止
    積立比率が80%未満の場合、給付額または一時金の制度上の増額をしてはならない。60%未満の場合、加入者個々人の給付額を増やしてはならない(受給額の凍結、つまり、制度の凍結を意味する)。

  9. PBGC保険料
    1. 定額部分
      加入者一人当たり$30(現行$19)に引き上げる。積立比率が80%未満の場合は3年、80%以上の場合は5年をかけて引き上げる。その後は、毎年の賃金上昇率に連動させる。
    2. 可変部分
      加入者一人当たり積立不足額$1,000当たり、$9(現行通り)とする。その後は、毎年の賃金上昇率に連動させる。

  10. Cash Balance (検討中)

  11. 情報開示
    1. Form 5500 (労働省、内国歳入庁、PBGCに提出) の改善
      提出後15日(現行110日)以内に、その概要を加入者等に通知する。
    2. Form 4010 (PBGCに提出) の公表
      積立不足額が$50M以上になった場合に提出する義務があるForm 4010を、公表する。その場合、90日以内に従業員、退職者に次の項目も併せて開示しなければならない。
      1. Form4010を提出したこと
      2. 資産総額、給付債務総額、積立比率
      3. 積立比率が75%未満となっているプラン数
      4. 積立比率が75%未満となっているプランの資産、給付債務、積立比率
    3. 加入者等への通知
      年金プランの年度終了後90日以内に、従業員、退職者等に、次の事項について、通知しなければならない。
      1. 資産、給付債務、積立比率
      2. 積立方針、資産配分



6月23日 GMのレガシーコスト Source : 米国企業のレガシーコスト(ppt file)

GMの業績が悪化しており、経営陣は、大幅な人員削減とベネフィット削減を含んだ労使協定の見直しを進めようとしている。レガシーコストの中で、最も影響が大きいとされているのが、医療費、特に退職者医療費である。

GMの場合、ホワイトカラーと組合員との間で、保険料、窓口負担、免責額などの従業員の負担割合が大きく異なるという歪みが残されている。こういった格差を労組との間の交渉で縮小していかないと、大幅なコスト削減は実現できない。

6月21日(2) アメリカにもあるリストラ部屋 Source : At Pfizer, the Isolation Increases for a Whistle-Blower (New York Times)

上記sourceによれば、Pfizerの従業員が、内部告発を理由に、メールのアカウントへのアクセスを拒否されていたそうだ。もちろん、会社側は、そのようなことはないと否定している。

この従業員は、内部告発をこれまでにもしたことがあるそうで、そうした動きに対して経営の現場が対応したのではないかと憶測できる。アメリカ企業では、こうした内部告発者へのいじめとも取れるような行為は、SO法で包括的に禁止(「Topics2002年7月27日(1) 企業不正防止法案」参照)されている。

それでもこうした行為が止まないということは、かなり根深いものがあると感じる。

6月21日(1) SECの会計基準改善提案 
Source : SEC STAFF REPORT ON OFF-BALANCE SHEET ARRANGEMENTS, SPECIAL PURPOSE ENTITIES AND RELATED ISSUES (SEC)

15日、SECのスタッフ・ペーパーがリリースされた。これは、SO法に基づく報告であり、大統領府、上下両院に提出された。本文は、上記sourceにリンクが張られている。

内容は、会計基準にまつわる課題をまとめたもので、SPE、リース、金融商品の全面時価評価などと並んで、年金会計についても、課題を掲げ、再検討を促している。

年金会計に関する課題として掲げられている項目は、次の通り。

  1. 年金資産、負債のオンバランス化
  2. 遅延認識(コリドールール)の是正
SECのスタッフ・ペーパーということで、すぐに基準が変わるわけではないが、確実にFASBにおける検討の是非は議論されるであろう。ますます確定給付型プランの生き残りが難しくなりつつある。