6月20日(1) 新たなベネフィット提案 Source : ERIC Unveils New Benefit Platform for Life Security (ERIC)

ERICという団体が、新たなベネフィット提供の仕組みを提案した。今後、広く討論をしてもらいたい、とのことである。

提案の概要は次の通り。
  1. 独立した"Benefit Administrators"を創設する。

  2. "Benefit Administrators"は、年金プラン、医療保険プラン、退職者医療保険プランを提供する。

  3. "Benefit Administrators"は、ベネフィットの質、IT、プランデザイン、コスト等で競争する。

  4. 企業は、従来方式のプラン提供を行なってもよいし、"Benefit Administrators"からプランを購入してもよい。

  5. 個人は、就業のステータスに拘らず、各種ベネフィットを確保できる。

  6. "Benefit Administrators"がベネフィットを提供することにより、ポータビリティの確保、企業・従業員双方のコミットメント、加入条件の均等化などが図れる。

こうしたスキームが成立するためには、一定レベル以上のベネフィット給付(年金、医療、退職者医療)を義務付けなければならないと思う。つまり、"Pay or Play"を連邦レベルでルール付ける必要がある。

一方、こうしたスキームができ上がると、従来ベネフィットを提供してきた企業、特に大企業は、自らベネフィットを提供するのか、"Benefit Administrators"に管理を任せるのか、という選択肢が確保できることになる。また、中小企業にもそうした拠出を義務付けることにより、結果的に大企業の競争条件を改善することができる。

6月20日(2) T. Thompsonの皆保険提案 Source : Universal coverage called an economic imperative (Star Tribune)

共和党の大統領選候補者である、Tommy Thompsonが、医療皆保険の重要性を訴えたという記事である(「Topics2007年6月7日(1) 共和党候補者の医療政策」参照)。では、その手法はというと、州政府に無保険者を対象とした医療保険プールを設けるよう義務付けるというものである(HEALTHCARE: Common Sense Solutions)。

確かに、州政府が医療政策において実質的な責任を負うというのは、MA、MD、CA各州の動きを見ていても、現実的かもしれない。しかし、この3つの州は、いずれも民主党議会がリードしている。共和党政権が連邦に誕生して、各州にそうした医療保険を設けろといっても、各州がその指示に従うのかどうか、かなり疑問である。

6月20日(3) 民主党候補者の左旋回 Source : Candidates fuel hopes of party liberals (Los Angeles Times)

大統領選の民主党候補となるべく、論戦を広げているうちに、候補者達は左旋回を始めてしまったようだ。特に、Edwards元上院議員は、イラク戦争、皆保険導入(「Topics2007年6月15日 Edwardsの医療費抑制策」参照)などで、力強く左派に支持を訴えている。

上記sourceによれば、Clinton上院議員でさえ、NAFTAなどの自由貿易推進に懸念を表明し、労働組合の支持を得ようとしているそうだ。

民主党は、再び過ちを犯そうとしているのではないだろうか(「Topics2003年10月8日(2) 偉大な世代との契約-Kerry」参照)。こうして左派に訴えることで、プロ民主党支持者の強烈なサポートは得られる。つまり、民主党候補者にはなれる。ところが、アメリカ国民は中道派、Independentsが多数を占めている。この中道派の支持を得られなければ、大統領にはなれない。

6月18日 柔軟な労働市場の重要性 Source : 世界経済の潮流(2007年春)(内閣府)

当websiteにとっては、格好のお題である。

内閣府より、世界経済の潮流(2007年春)が公表されている。ウェブ上は、概要版しかないが、まもなく本文も公表されるものと思う。

以下、上記sourceの概要版にそって、コメントする。 こうして見てみると、日本の政策課題としては、@IT投資の一層の促進、A労働市場の柔軟性のさらなる強化、ということが考えられる。個人的な意見としては、政府部門のIT化、国・地方を通じた電子行政の普及が、社会全体のIT化促進の引き鉄になると思う。

6月17日 MA州は同性婚の支え Source : Massachusetts Gay Marriage to Remain Legal (New York Times)

久しぶりの同性婚の話題である。全米で唯一、同性婚を合法として認めているMA州(「Topics2004年6月30日 同性婚を巡る州レベルのせめぎあい」参照)で、14日、州法改正の議論を巡り投票が行われ、改正案は認められなかった。

それだけではなく、反対派は2012年まで州民投票にかけることもできなくなったそうだ。同性婚支持者にとって、MA州は希望の土地であり続ける事になったようだ。

6月15日 Edwardsの医療費抑制策 Source : Reforming Health Care to Make it Affordable, Accountable, and Universal (John Edwards 08)

既に皆保険制度の提案を行っているEdwards元上院議員「Topics2007年3月27日 民主党候補 皆保険導入で一致」参照)だが、大きな政府を目指しているのではないかとの批判を回避するかのように、14日、医療費抑制に絞った政策提言を行なった。

ほとんどが最初の提案(「Topics2007年2月7日 Edwardsの皆保険提案」参照)に含まれているものの詳細版となっているが、おや、と思ったところが次の2箇所である。
  1. 保険法改正による保険料抑制
    • 保険料収入の85%以上を、加入者の医療コストのカバーに支出するよう義務付ける。
    • 保険業が幅広く独占禁止法の対象外とされているのを是正する。

  2. 医療過誤訴訟の濫訴を防止する。
保険会社を標的にすることで、反Bushを印象付けるとともに、かつての自らの得意分野(「2003年5月7日 藪医者 vs. 救急車追っかけ弁護士」参照)にメスを入れることで、本気で大統領選を目指しているとの評価を狙っている。

6月14日(1) ClintonとGiuliani Source : Sen. Clinton's 'Cautious Approach' to Health Care Reform in Presidential Race (Kaisernetwork)

二人とも、NYを地元としている政治家、大統領選候補者である。

まず、上記sourceでは、なぜClinton上院議員は、医療保険改革に慎重な姿勢で臨んでいるのか、を論じている。Clinton上院議員は、おそらくアメリカの政治の世界で医療保険改革に最も熱心な政治家の一人であることは間違いない。ところが、未だに、Clinton上院議員からは具体的な提案は行われていないのだ(「Topics2007年3月27日 民主党候補 皆保険導入で一致」参照)。

その疑問に対する答えとして、2つの選択肢が用意されている。
  1. Clinton上院議員にとっての辛いあの過去を、国民に思い出してもらいたくない。

  2. 医療保険改革という政策課題について、民主党は共和党に既に勝利を収めた。
これまでも、上記1.はあるかな、と思っていたこともあったが、2.だとしたら、相当な高等戦術である。既にこの分野で勝っているのなら、皆保険の方向性だけを打ち出しておいて、詳細は他の候補者達が競い、国民の支持率を見ながら採用していけばいい。自分からは詳細な提案をわざわざする必要はなく、却って、1.のこともあり、リスクとなりかねない。そんな計算が働いている、ということになる。面白い見方である。

他方、12日、Guiliani前NY市長は、「12の公約」を公表した。ばりばりの保守的公約であり、まるで、Bush政権の正当な後継者は自分である、と主張するために用意されたようなものである。

Rudy's 12 Commitments To America

  • I will keep America on offense in the Terrorists' War on Us.
  • I will end illegal immigration, secure our borders, and identify every non-citizen in our nation.
  • I will restore fiscal discipline and cut wasteful Washington spending.
  • I will cut taxes and reform the tax code.
  • I will impose accountability on Washington.
  • I will lead America towards energy independence.
  • I will give Americans more control over and access to healthcare with affordable and portable free-market solutions.
  • I will increase adoptions, decrease abortions, and protect the quality of life for our children.
  • I will reform the legal system and appoint strict constructionist judges.
  • I will ensure that every community in America is prepared for terrorist attacks and natural disasters.
  • I will provide access to a quality education to every child in America by giving real school choice to parents.
  • I will expand America's involvement in the global economy and strengthen our reputation around the world.
医療保険改革については、夏の詳細版を待つしかなさそうである(「Topics2007年6月10日 Giulianiの医療改革提案」参照)。

6月14日(2) Erie事件ようやく収束か? 
Source : Employers Can Still Coordinate Retiree Medical Plans with Medicare - Even in the Third Circuit (Morgan, Lewis & Bockius LLP)

6月4日、第3控訴裁判所が、全員一致でAARPの主張を斥け、EEOCのルール作りを認めた(「Topics2007年3月1日(2) EEOCルールが丸2年ストップ」参照)。

ようやく、である。この間、法令違反を恐れて、企業側は65歳未満の退職者への医療給付レベルを下げていってしまった。判事達もその事実を認識し、長期的には退職者全員にとって利益があるとして、EEOCのルール作りを認めたようだ。

上記sourceで示されている法律的観点からの注意事項は、次の3点。 アメリカの司法の力は強い。

6月13日 SECは本気 
Source : SEC Speech: Remarks before the Leventhal School of Accounting: SEC and Financial Reporting Institute; Pasadena, CA: May 31, 2007

以前から予告はされていた(「Topics2007年4月26日 アメリカ企業にもIFRS?」参照)が、SECは、アメリカ企業のIFRS採用について、本格的に議論を開始する構えである。

上記sourceは、SECスタッフのJames L. Kroeker氏が行なったスピーチ原稿である。下線部を参照していただければわかるように、近くアメリカ企業によるIFRS採用について、"Concept Release"を公表し、パブリック・コメントを求める予定とのことである。

SECが正式に動き出したと見てよかろう。

6月12日(1) Big3は本気? Source : GM, Ford, Chrysler Discuss Joint Health-Care Fund, People Say (Bloomberg)

やはり、Big3は、本気で退職者医療のための基金設立を考えているらしい(「Topics2007年6月1日 Big3の暑い夏」参照)。当然、内部情報なので、確実性はわからないが、上記sourceで示されている骨格は、次の通り。
  1. Goodyearのモデル(VEBA)を第一候補に検討する(「Topics2007年3月2日(2) Goodyearのベネフィット見直し」参照)。

  2. 退職者医療に関する給付債務は、GM:$64B、Ford:$31B、Chrysler:$19Bで、総額$114Bとなる。各社は、それぞれの給付債務の比率に応じて、基金への拠出を行う。

  3. 退職者医療プランの給付削減は、裁判所の認可が必要となるため、現実的ではない(「Topics2006年4月5日(1) GM退職者医療に結論」参照)。
以前にも示した通り、Goodyearの場合、給付債務総額は$1Bで、一気に現金と株で拠出してしまった(「Topics2007年3月2日(2) Goodyearのベネフィット見直し」参照)。それと同じようなことを、今のBig3にできるのだろうか。

6月12日(2) 業界別ガイドラインの功罪 
Source : Specialiazed industry accounting and reporting. Too much of a good thing? (Robert H. Herz)

Herz氏は、FASBの議長であり、かつてはIASBのメンバーでもあった。アメリカ基準、IFRSの両方に精通したリーダーであり、その発言は将来のFASBの方向性を左右する。 アメリカの会計基準の関係当局は、IFRSによる外国企業の上場を見据えて、長期的にはプリンシプル・ベースへの移行を企図している(「Topics2006年11月22日(1) Principle-base会計基準へ」「Topics2006年12月12日 XBRLがもたらす影響」参照)。

その際、一つの大きな障害となり得るのが、業界別の会計処理ガイドラインである。国際的に見た場合、イギリスはプリンシプル・ベースに徹しており、オーストラリア、ニュージーランドもなるべく業界別のガイドラインは入れないようにしている。また、IFRSでも、金融、農業、保険、石油・ガスなどでは特別扱いを認めているものの、全体として業界別の考え方は取り入れようとはしていない。

特に、IFRSによる外国企業の上場、さらにはアメリカ企業のIFRS採用(「Topics2007年4月26日 アメリカ企業にもIFRS?」参照)ということも見据えた場合、IFRSではほとんど認められていない業界別のガイドラインをどうするのか、大きな問題となる。

また、XBRLによる財務報告書作成にも、大きな障害となりかねない。

Herz氏は、アメリカ会計基準が認めている多数の業界別ガイドラインには、比較可能性や透明性において問題がある、との認識を示している。

こうした認識が先進諸国間で広まると、日本の会計基準も大きな影響を受けるだろう。実際、EDINETの高度化(XBRL化)においては、異業種間の比較可能性の問題が既に指摘されている。(XBRLの簡単な紹介は、日本公認会計士協会XBRL-Japanで。)

また、日本の特殊性として、DBプランの受託機関が、信託銀行と生保に限られていることが挙げられる。Herz議長が指摘する通り、保険事業に伴う特殊性がどこまであるのか、会計基準上はどこまで別扱いを認めるのか、真剣に議論する必要が出てくるだろうし、その際の年金受託事業の扱いも検討課題に上がってくる可能性がある。

もう、コンバージェンスを議論している時期ではなく、IFRSの国内採用を見据えての検討が必要かもしれない。

6月11日 加州議会が先制 Source : Health care for millions advances (The Sacramento Bee)

シュワ知事が、共和党との協議を前提に議論してもらいたいと要請していたにも拘らず、加州民主党は、医療保険改革法案を議決していった。もちろん、共和党は賛成していない。
提 案 者
法 案
進捗状況
参 照
シュワ知事
「Topics2007年1月9日 シュワ知事の提案」
Sen. Don PerataSB48上院可決(6/7)「Topics2006年12月26日(2) シュワ知事の最優先課題」
Assembly Speaker Fabian NúñezAB 8下院可決(6/7)「Topics2006年12月28日 加州議会No.2の提案」
Sen. Sheila KuehlSB840上院可決(6/6)「Topics2007年3月1日(3) 三たびSB 840(CA州皆保険法案)」
また、現時点での3法案の比較表は、ここ

議会が両院とも民主党多数となっているために、シュワ知事が皆保険を実現するためには、今後の議会対応が難しくなりそうだ。さらに、シュワ知事にとって痛いのは、「シュワ知事が提案した医療機関からの拠出金(「Topics2007年1月9日 シュワ知事の提案」参照)は、税にあたる」との判断が示されたことだ(Los Angeles Times)。これにより、シュワ知事の「医療保険改革にあたり増税はしない」との公約が難しくなる。

シュワ知事にとっては、厳しい状況が続きそうだ。