上記sourceで紹介されている、新しいタイプのベネフィットの例示は、次の通り。もちろん、コストはかかる。しかし、それ以上に、有能な人材を確保する、転職を防ぐ、生産性を高める、といった効用によって、充分にペイすると見られているからだ。
- 住宅補助:購入補助金、低利ローン、家賃補助、住宅購入のアドバイス、情報提供
- 予防診療、検査の無料提供
- フレックス・タイム
- サテライト・オフィス
- 一日の勤務時間を延長して、週3〜4日の勤務とする
- ジョブ・シェアリング(パート・タイム・ジョブ)
- 事業所内診療所
- 昼寝休み(「Topics2002年4月5日 National Workplace Napping Day」参照)
- 事業所内フィットネス・マッサージ
65歳の夫婦が今年引退した場合、今後の医療費を賄うためには、$215,000を保有している必要があるとの試算である。これは、昨年の試算に較べて7.5%の増額となっている。増加要因は、医療技術の進歩、処方薬の高額化、平均余命の長期化などである。
$215,000の内訳は、次の通り。
なお、試算の前提は、次の通り。上記sourceによると、今現在、年収$60,000の夫婦が今年退職してしまうと、平均寿命に至るまでに、公的年金収入の約半分は、医療費に振り向けざるを得なくなるとういことになるそうだ。やはり、公的年金だけに頼る生活は、かなり無理がある。
- 医療費には、診療費、手術費、処方薬などが含まれる。
- 市販薬、歯科、介護サービスは含まれない。
- 平均寿命は、男82歳、女85歳。
- 企業が提供する退職後医療保険プランはない。
このように、公的年金の実質的価値を高めるためにも、医療費抑制は重要な政策課題となるのである。
23日、Service Employees International Union (SEIU)とCenter for American Progress Action Fundが開催したカンファレンスに、7人の民主党大統領選候補者達が集まり、医療政策改革についての意見を表明した。
その7人とは次の通り。上記sourceで報じられているポイントを整理すると、次のようになる。
- Sen. Hillary Rodham Clinton (N.Y.)
- Sen. Christopher Dodd (Conn.)
- Former Sen. John Edwards (N.C.)
- Former Sen. Mike Gravel (Alaska)
- Rep. Dennis Kucinich (Ohio)
- Sen. Barack Obama (Ill.)
- Gov. Bill Richardson (N.M.)
独 自 の 主 張 共 通 の 主 張 Hillary Clinton
- Medicareのような政府補助のシステム
- 予防診療へのインセンティブ
- $200Mの電子医療記録システム
- 2008年の大統領選では、医療政策を最重要課題に
- 財政支出のための増税よりも医療コストの抑制が先決 (「Topics2006年12月20日 クリントン上院議員が皆保険制度に言及」参照)
- 皆保険にする
- 予防、疾病管理に投資する
- リスクシェア、総額抑制のために、連邦政府は保険プールを創設する
- 診療履歴を電子化する
Christopher Dodd
- 看護士の労組結成を容易にするよう法改正する
John Edwards
- Bush大減税を見直して捻出した財源を皆保険制度に投入する
- 企業に、医療保険の提供か一定の拠出かを義務付ける (「Topics2007年2月7日 Edwardsの皆保険提案」参照)
Mike Gravel
- 単一保険者制度を導入する
- アメリカ国民に医療保険購入のためのバウチャーを配布する
Dennis Kucinich
- 単一保険者制度を導入する
Barack Obama
- 皆保険の具体的なプラン提案よりも、政治の意思と喫緊の課題であるとの認識が重要
- 数ヶ月中に、2013年1月から実施する皆保険プランを提案
- 従業員が企業のプランに加入しないという選択ができるよう、連邦・州政府が保険プールを創設する事を支持する (「Topics2007年2月13日 Obama氏の皆保険提案」参照)
Bill Richardson
- 医療保険購入を促進するため、税額控除制度を設ける
- 55〜64歳に、Medicare加入権を賦与する
- イラクから軍隊を撤退させることで財源を確保する
政策論争も、まだ序の口といったところである。
日本から見ると、アメリカ人は401(k)に慣れ親しんでいるものと思い込んでいる。しかし、上記sourceをみる限り、それほど充分に理解しているとは思えない。上記sourceが指摘している、アメリカ人の401(k)に対する誤解は、次の5点。
特に、上記1、3、4あたりは、意外な感じがする。こうやってみると、最後まで鍵をかけ続ける日本の確定拠出年金はかなりいい線に行っているのかもしれない。あとはマッチング拠出と拠出枠の拡大が残された課題ということになるような気がする。
- マッチングの未利用
折角企業側がマッチング拠出をするといっているのに、当座の手許流動性や株式投資に対する嫌悪感から、DCプランに加入しない。
⇒マッチング拠出を含めた投資効率に勝る金融商品は他にない。
- 投資分散の誤り
投資分散は加入しているDCプランの資産の中だけでポートフォリオを検討している。
⇒配偶者が加入しているプラン資産、貯蓄などを総合的にみて、最適なポートフォリオを選択すべき。
- 転職に伴う引き出し
転職するたびにプランから資産を引き出してしまい、余計なペナルティ・タックスを支払ったうえに、退職する際には最後の勤め先分しか勘定に残っていない。
⇒転職の際に、次の職場のプランに資産を移管しておくべき。
- ATMのような引き出し
たびたび401(k)からのローンを行なっている。
⇒これでは機会損失になってしまったり、余計なペナルティ・タックスを支払う可能性が高くなる。
- 現実からの逃避
想定以上に早く退職の時期が来てしまった場合、何も対処しないまま放置してしまう。
⇒企業の人事部に相談する、フィナンシャル・プランナーに相談するなどで対処方法を講じるべき。
Commonwealth Fundという団体が行った試算では、ことにより、医療支出全体で年間$60.7B、うち処方薬支出を$33.9B削減できるという。
- Medicareの対象者を拡大する
- 100人以上の従業員を有する企業は、医療保険プランを提供するか、Medicareに対する拠出を行う
他方、Bush大統領の所得控除拡大提案では、年間$11.7Bの支出削減になるという(「Topics2007年1月24日(1) 市場メカニズム vs 公的プログラム (一般教書演説)」参照)。
オリジナルのレポートは、ここを参照。
20日、IASBで、退職給付会計の財務諸表上の表記について、議論が行なわれた。先月の続きである(「Topics2007年2月25日 IASBも方向性を修正か?」参照)。
今回の決定事項は、次の通り。以前として、Approach 1に賛成するIASBメンバーが多数を占めているそうだが、退職給付プラン関係者にとって現実的なアプローチが検討されていることも確かなようだ。その辺りの実務的なサポートが、新設のWG(「Topics2007年3月19日 IASB Working Group」参照)に求められているのだろう。
- 退職給付プランの収益、損失は、すべて包括利益に含める(←全員一致)。
- 財務諸表上の表記について、Discussion Paper("DP")に次の3案を併記する。
- Approach 1:すべてを純利益に
退職給付債務と資産価値の変動すべてを純利益に含める。
- Approach 2:金融的アプローチ
サービス費用とそれに伴う収益のみを純利益に含める。その他のコストは、報酬の後払いと後払いのための金融コストとして位置づける。具体的には、利子率、割引率の変更に伴う変動、資産再評価に伴う変動は、純利益の外にする。
- Approach 3:再測定アプローチ
割引率、資産収益率など金融関係の仮定の変更に伴う変動のみ、純利益の外にする。
それにしても、日本のように、「年金プラン資産は受給者のもの」という観点に慣れ親しんでいる立場からすると、「給付債務やプラン資産価値の数理的な変動や資産収益が純利益として認識される」という考え方には違和感を覚える。アメリカの年金プラン関係者の目にはどう映っているのだろうか。
20日、MA州Connectorの運営幹部会で、『皆保険』を目指すにあたり、保険プランとして最低限満たすべき水準(Minimum Credible Coverage, "MCC")について、方向性が確定した(議論に付された内容は、オリジナル資料を参照)。
今後の予定は次の通り。
- 処方薬を保険対象とする。
- 免責額は、年$2,000(家族の場合は$4,000)を上限とする。処方薬については、これとは別枠で$250(家族の場合は$500)の免責額を設定することができる。
- ただし、免責額適用前に、3回(家族の場合は6回)までの予防診療は保険でカバーする。
- 自己負担額(保険料個人負担分、免責額を含む)は、年$5,000(家族の場合は$10,000)を上限とする(保険会社の契約医療機関ネットワーク内)。
- 適正な保険プランへの移行、加入の期限は、2009年1月とする。それまでは、厳格な基準適用は行なわない。
- 基準適用の対象外となる保険プランは次の通り(Boston Globe)。
- 勤務先が医療保険プランを提供してない19〜26歳の若者を対象とした特別な保険プラン
- 連邦政府が公認している、HSA付高免責額保険プラン
- Medicare(処方薬が対象となっていなくても可)
- 宗教団体が提供する保険プラン
報道によると、処方薬のカバーについては、企業サイド(Mr. Richard Lord)からかなり抵抗はあったようだが、最終的には全員一致で方向性を確認したようだ。この辺りは、企業側のパフォーマンスと見ておいた方がよさそうで、真剣に処方薬をはずすべきとの論陣を張り続けた訳ではなさそうだ。
- 4月12日:Connectorを通じて提供される低価格プランを購入できないと判断する基準について検討(「Topics2006年8月18日(2) MA皆保険 低所得者の保険料」参照)
- 5月:MA州各地でヒアリング開催
- 6月12日:最終決定
- 7月1日:皆保険法施行
『処方薬をカバーしない保険プランは最低水準を満たしていない』というMA州の判断は、全米の議論に影響を与えそうだ。
やはり、アメリカの訴訟社会は怖い。
細かい話は上記sourceを読んでいただくとして、Wal-Martの広告部門のトップを勤めていたMs. Julie Roehmと、その相棒のMr. Sean Womackは、昨年、Wal-Martから解雇された。
Ms. Roehmは、@解雇の理由が明確でない、A契約上自分に対する支払いが残っているとして、Wal-Martを相手に訴訟を起こした。これに対して、Wal-Martは、最初は追及する気はなかったとしながらも、売られた喧嘩は買ってやるとばかりに、19日、逆提訴を行った。@Wal-Martの利益のために働かなかった、A契約先から多額の供応を受けていた、B二人が不適切な関係にあった、などから、損害賠償を請求している。
加えて、二人の間のメール、契約先が支払った高級レストランでの食事の内容まで細かに公開してしまっている。しかも、二人がメーン・スピーカーとなっているカンファレンスの初日に、である。二人が被ったダメージは、相当のものだろう。マスコミの対応に追われて、スピーチどころではなかったのではないか。
Ms. Julie Roehmは、クライスラー・グループの広告部門を率いていた経験もあり、この世界では有名人だそうだ。おそらく、単純に解雇されっ放しでは面子が立たないという気持ちであったのだろうが、却って大きな傷を負ってしまったようだ。
それにしても、解雇した後でも個人のメールの記録を保存しているアメリカ企業の用心深さには恐れ入る。