3月20日 笛吹けど踊らず:CDHP 
Source : More Companies Offering Consumer-Directed Health Plans (Watson Wyatt/National Business Group on Health)

CDHPとは、Consumer-Directed Health Plansの略である。当websiteでは、これまで4回、CDHPを取り上げている。 これまでの紹介では、『CDHPこそ新しいトレンド』という扱いであった。実際、上記sourceによれば、大企業においてCDHPを提供している割合は、2002年2%から2007年38%と飛躍的に高まっている。

これは、企業側からすると、コスト抑制に効果ありとの判断がされているためである。上記sourceによれば、従業員の10%以上がCDHPに加入している企業では、医療コストの伸び率が平均よりも低く抑えられている。また、CDHPをHSA、HRA(『医療貯蓄勘定 比較表』参照)と併用するケースが多いため、免責額が大きくなっていることも影響しているものと思われる。

ところが、である。上記sourceによれば、CDHPに実際に加入した従業員は、2006年7%、2007年8%と、極めて低位にとどまっている。つまり、いくら企業側がCDHPを推進しようとしても、従業員はCDHPを選択しないようなのだ。これでは、企業側が狙っているコスト抑制効果がかなり薄まってしまう。

いくら選択肢が広がる、あなたのチョイスだ、といっても、医療については保険カバーが広く、医療機関の選択肢が広い方がよい。これは、日本でもアメリカでも同じだと思う。

業を煮やした企業側は、医療保険プランの選択肢をCDHPに限定しようとしているらしいが、従業員の選好に合わないプラン設定は、不満を招き、転職を触発する可能性が高い。HMOでの教訓(「Topics2006年8月24日(1) PPO>HMO」参照)を学ぶという慎重さがあっても良いのではないだろうか。

3月19日 IASB Working Group Source : IASB announces membership of Employee Benefits Working Group (IASB Press Release)

IASBが退職後所得に関するWGを設置する旨を公表した。

当然、現在議論が行なわれているIASB、FASBの退職後給付会計フェーズUに貢献するためである(「Topics2007年2月25日 IASBも方向性を修正か?」「Topics2007年2月24日(1) 年金会計 Phase Two (1)」参照)。注目したいのは、WGのメンバーリストである。国籍は別にして、住友信託銀行MercerAONTowers Perrinなど、プラン設計に深くコミットしている企業をバックグランドにしたメンバーが入っていることは、目新しくもあり、今回のWGの特徴でもあると考える。

フェーズUを進めるためには、かなり現実的な対応が不可欠という判断があるものと推測する。

3月15日(1) 時限爆弾に怯えるTX州 Source : Texans Want to Strike Rule on Projecting Retiree Care

時限爆弾とは、GAS45である(「Topics2005年12月13日 時限爆弾-GAS45」参照)。GAS45の州政府への適用は、2007年財政年度からである。つまり、既に当該年度に突入しており、本当の時限爆弾であれば、既に停止不能のレッド・アラーム状態である。

その時の刻みについに耐えられなくなったのが、テキサス州である。上記sourceで報じられているTX州政府、議会の動向と、それらに対する関係者の反応をまとめると、次のようになる。
TX州政府、議会
関 係 者
State Sen. Robert Duncan(R)TX州ではGAS45を不適用とする法案を提出。同基準は、TX州の制度に適用するのは適切ではない。下院でも同様の法案を審議中。できれば、秋までに基準を見直してもらいたい。Michael Granof, accounting professor at the Univ. of Texas法案提起は狂気の沙汰である。TX州には盲目の狩猟者を認める法律があるが、それ以来の最悪の法案である。
Comptroller Susan CombsGAS45はTX州には不適切であり、別の基準を検討すべきである。他州にも同様の呼びかけを行なっている。Robert Attmore, Chairman of GASB数年のデュー・プロセスを経て2004年に決定済み。問題提起は遅きに失する。
州政府職員は労働組合を結成しておらず、労働協約もない。従って、開示すべき給付債務は存在しない。また、いつでも退職者医療給付は中止できるので、債務の計算もできない。労組との協約がなくても、一定の給付を約束していることには変わらない。これは、給与や年金と同じものであり、後払いされる報酬である。従って、書面になっているかどうかにかかわらず、給付債務は存在する。
Robert Smith, President of Sage Advisory Service州政府職員はそんな理解はしていない。本当にそう考えているのなら、警察官や消防士に面と向かって言ってみろ。
州政府現時点で、給付債務を計算するための数理人を雇っていない。ラフな推計では、$50Bにのぼるとみている。事態の推移を見守っている。しかし、基準を採用しない、適切な資産積立をしないというのであれば、州債を購入しないだけである。
Andy Homer, Director, Texas Public Employees Association州政府が退職者医療給付を打ち切るのではないかと懸念している。既に3年前、州政府は一度プラン内容を縮減したことがある。事態に大きな懸念を抱いている。
かなり認識の違いが大きいことがわかる。しかし、どちらにしても、金融機関や投資家が、「じゃ、TX州債は買わない」と判断してしまえばお終いである。実際、開示を準備しているところはかなりあるとみられ、資金が他州に移るだけの話である。

また、GASの強制力、認知度がどれほどのものなのか、実はあまりよくわかっていなかったのだが、この騒動により、州政府・議会がこれだけの抵抗を見せている点、投資家が認知している点が浮き彫りになり、かなり高い認知を得ているのではないかとの印象を得られた。

ところで、このニュースがNew York Timesに掲載されているところが面白い。今のところ、TX州のメディアでキャリーされた形跡はなさそうだ。Bushの出身州が最後の抵抗を試みているのを、金融の中心地であるNYが冷ややかに見ている、という構図が浮かんでくる。

3月15日(2) ミネソタ州の皆保険法案 Source : Healthy Minnesota Bill Introduced at Capitol (Minnesota Medical Association)

先週8日、ミネソタ州議会に、皆保険法案(S.F. 1689)が提出された。同法案は、別名"Healthy Minnesota Bill"と呼ばれている。それは、同法案の骨子を、"Healthy Minnesota"という合議体が提案したことに由来している。

同法案は、具体的な制度設計というよりは、今後の大方針を定めることを目的としている。特徴は、次の通り。
  1. 2011年までに全州民の保険加入を目指す。

  2. 企業は、保険に加入していない従業員を州財務省に報告し、保険料相当分を給与から源泉徴収する。(Kaisernetwork)

  3. 保険料を負担できない場合には、
    1. 税額控除(還付)
    2. 公的医療保障プログラムへの加入
    3. 補助金
    のいずれかの方策で支援する。
MN州の無保険者率は、7%と全米の中でも特に低い水準にある(「Topics2006年8月23日 各州の医療事情」参照)。皆保険実現に一番近い州である。

ちなみに、MN州議会では、昨年、Wal-Mart法案が議論されたが、不成立で終わっている(「Topics2006年3月16日 皆保険からWal-Mart法案へ」参照)。今回は、皆保険を目指すということで仕切り直しを行なったということであろう。

3月11日 Connectorプラン決定 Source : Connctor Board Endorses Plans from Seven Carriers (Connector Authority)

8日、MA州の個人、小規模ビジネス向けプランの採択が決定した(「Topics2007年3月6日 MA州Connector保険料固まる」参照)。MA州の皆保険制度は、大きく前進した。