4月9日 上院も年金救済法案を可決 Source : Senate Passes Pension Relief Bill (Washington Post)
4月8日、上院も、78対19の圧倒的賛成多数で年金救済法案を可決した。これにより、あとは大統領が署名するだけ、ということになった。政府内で反対していたPBGCも、中小企業が合同で運用する年金プランに関して、救済策が限定されたことで、不満は残るものの反対は取り下げたようだ。
社債利子率の採用はともかく、時限立法とはいえ、特定業種のみに積立不足を加速させるような法案を通したことは、禍根を残すことになるだろう。こうした付焼刃の救済策は、中長期的には逆効果を生む場合が多い。今回の法案で積立不足解消努力をしなかったために、PBGCの負担が増大する可能性は、充分ある。
4月8日 医療プランの選択肢
Source : Which Consumer-Driven Health Care Option Should You Choose? (The Council for Affordable Health Insurance)
昨年のMedicare改革法で、医療プランのための税制優遇貯蓄口座が改革された。その概要は、既に紹介している(「Topics2004年1月7日(1) 医療貯蓄勘定」参照)が、いよいよ具体的な利用が増えていく中で、これら貯蓄制度を活用した医療保険プランの拡大が見込まれている。これに、事業主の医療費負担を一定限度に抑制できる、従業員の選択性が高まる、などの理由が加わって、確定拠出型(DC)プラン(「Topics2002年10月29日 医療保険の新顔 Consumer-Driven Health Care」参照)の人気が高まっている。
上記sourceは、新しくなった各種貯蓄口座を利用した医療プランの可能性についてまとめたものである。
80年代の医療費高騰への対策がHMOであったのに対し、21世紀に入ってからの医療費高騰対策は、確定拠出型=消費者選択型となりそうな気運である。
4月7日 年金救済法案は最後の山場 Source : Pension Conference Agreement on H.R. 3108 (American Benefit Coucil)
年金救済法案が最後の山場を迎えている。先週4月1日(木)、同法案に関する両院協議会で合意が得られ(The New York Times, 4/2)、これを受けて、続く4月2日(金)、下院は336対69の圧倒的多数で修正法案を可決した(The New York Times, 4/3)。
両院協議会の主な合意内容は、上記sourceの通りだが、その概要は次の通り。
- 2005年12月31日までの2年間に限り、給付債務計算に使用する割引率を、従来の30年国債の利子率に替えて、社債利子率とする。
- 航空業界、鉄鋼業界、運輸組合の年金プランについて、2年間に限り、強制追加拠出(Deficit Reduction Contribution, DRC)を80%軽減する(「Topics2003年11月19日(4) PBGCの悲鳴」参照)。
今後のスケジュールとしては、上院可決→大統領署名というプロセスが必要となる。加えて、第1四半期の拠出期限が4月15日となっているため、企業拠出をできる限り抑制したいと考えるならば、それまでに大統領署名を終えて、施行しておく必要がある。ところが、このプロセスには、2つの課題が残されている。
- Frist上院Majority Leaderは、上記のようなスケジュール感を念頭に、早期の上院可決を目論んでいるそうだ(Reuters, 4/5)。しかし、民主党上院年金問題の大御所E. Kennedy氏は、徹底抗戦の構えを見せている。それは、上記の救済案について、中小企業がまとまってプランを運営している場合(multi-employer plans)には、様々な制約が設けられているため、救済措置の恩恵を被るのは大企業だけとなってしまうからだ。
- DRCの大幅軽減が特定業界に認められることに対する反発も大きい。特に、航空業界でこの救済措置の恩恵を被るのは大手航空会社となるが、低運賃で競争している航空会社はDBプランを持っていない。こうした航空会社から見ると、救済措置は大手への補助金になってしまう。これでは、競争が成り立たないというわけだ。
- Bush政権内にも反対が強い。特にPBGCは、予てから救済法案に反対の立場を表明している(「Topics2003年11月19日(4) PBGCの悲鳴」参照) 。
イースターに伴う春休み中に、どれだけ上院で議論が詰められるのかが課題となる。