上記sourceでは、PPA 2006(「Topics2006年8月16日 Pension Protection Act of 2006 概要(2)」参照)の影響が最も大きかったものの一つとして、DCプランにおける自動加入と自動資産配分を挙げている。図らずも、前回のtopics(「Topics2007年9月8日 アメリカ人も会社依存」参照)をサポートする内容となっている。DCプランの大きな流れが出来上がりつつあるようだ。
- DCプランの運用において、Target-date or lifestyle fundをデフォルトに設定している資産の割合が、今年の11%から、2011年には56%にまで急増する見込みである。2004年には$150Bであった資産残高が、現時点で$370Bとなっている。
- Callan Associates Inc.の調査によれば、調査対象となったプラン運営幹部の85%が、2007年にDCへの自動加入を開始または検討している。
- また、自動加入を検討しているプランの70.6%が、Target-date fundsをデフォルトに設定しようとしている。
久々の年金ネタである。ここを見ていただければおわかりのように、先月は一回も年金ネタに触れていなかった。やはり、アメリカ全体で医療への関心が高まっていることを反映しているのであろう。
かつて、401(k)をはじめとする確定拠出プランは、従業員の自主性を重視する新しいタイプの年金である、との評価が定まっていた。ところが、401(k)の本場であるアメリカで、"automatic features"が注目されているという。
上記sourceでは、Charles Schwabが年金プラン契約を結んでいる顧客企業について、次のような特徴が出てきていることを紹介している。具体例も紹介されているので、上記sourceをご参照いただきたい。
- 20%以上の企業が、401(k)プランへの自動加入制度を導入している。これは2年前の4倍にもあたる。
- 45%の企業が、加入員の年齢に応じて自動的に資産配分を行う制度を選択している。
- 95%近くの企業が、401(k)プランへの従業員拠出割合を一定数値まで自動的に引き上げていく制度を選択している。
これらに関するコメントを、上記特徴ごとにまとめておく。Schwabの顧客企業には、大企業も多いことだろう。そうした企業においてすら、401(k)プランといえども、会社が手取り足取り面倒をみようとしている。企業側にも従業員側にもメリットがあるから、こうした流れができつつあるのだと思う。
- ⇒これは、明らかに、DBプラン凍結、廃止の流れ(「Topics2007年7月14日 企業年金の地殻変動」参照)に呼応したものと思われる。従来のように、まったくの任意加入としておくと、DBプランが約束していた退職給付がすっぽり抜け落ちたままの退職者が出てくる惧れがある。
これは、二つの意味で経営側にとって問題となる。
一つは、従業員の退職後の福利厚生に関して不安が残る。パタナリスティックな側面である。
もう一つは、退職給付がしっかりしていないと、高齢の従業員が退職しなくなってしまう。年齢差別にうるさい社会では、何歳になったから辞めろ、とは言えないし、そんな制度もない。退職後の所得が確保されている、という安心感が不可欠なのである。
- ⇒アメリカ人は金融リテラシーが高いから、生活状況や将来設計に応じて、自主的に分散投資するんだ、とよく言われる。しかし、リテラシーは高いかもしれないが、運用のプロに較べれば、圧倒的に能力が低いのが一般的である。そうしたプロがお膳立てしてくれた分散投資パターンに自動的に乗せることは、結局は従業員の利益になる、ということだろう。ここでもパタナリスティックな面が出ている。
- ⇒アメリカ人の貯蓄性向が低いことへの対応であろう。カフェテリア・プランなどにおける拠出率設定を、消費性向の高い従業員の自主性に任せていれば、退職後所得の蓄積に必要な原資が不足してしまう。それを無理なく高めていくために、当初は低くても、徐々に自動的に拠出率を上げていって、原資を確保しようということだ。財形貯蓄の引き落とし額が、毎年自動的に上がっていくようなものだ。
久々の外国語ネタである(「Topics2002年8月21日 アメリカの第2公用語」、「Topics2002年9月23日(1) ヒスパニックと選挙公約」参照)。
切っ掛けは最低賃金の引き上げである(「Topics2007年7月27日 最低賃金引き上げと減税規模」参照)。最低賃金について、企業は従業員に告知することが義務付けられており、労働省では告知用にこんなポスターまで用意している。
問題は、「英語のポスターだけでよいのか」ということである。最低賃金だけではない。保険プラン、家族休暇、年金プラン等々、様々な告知が求められているが、英語を話さない従業員に英語のポスターで告知することで義務を果たしたことになるのだろうか。英語以外の言葉、例えばメキシコ人が多ければスペイン語によるポスターも掲示した方がよいのではないのか。
上記sourceの答えは、おそらくはその通りだろう、ということである。5年前ならスペイン語でかなりの職場は事足りたと思われるが、現時点では、インド人、中国人も数多くいることだろう。職場によって、実情に合わせながら、対応した方がよいようだ。これが州レベルになると、より明確に求められているケースがあるそうだ。
法律事務所のアドバイスは、わずかなコストで訴訟リスクを軽減できるのなら、常識に従って、多様な対応をしておくべきだろう、というものである。
MA州皆保険法でカフェテリア・プラン(§125プラン)(「Topics2006年10月26日 カフェテリア・プランと医療保険」参照)の提供が義務付けられた(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)のを受けて、州レベルでその提供義務化が広がりつつある。カフェテリア・プランの義務化の内容は様々だが、各州レベルでの皆保険に向けて、徐々に環境整備が行われている。
Rhode Island 従業員及びその家族に対してグループ医療保険を提供する場合、カフェテリア・プランの提供を義務付ける(従業員25人以上)。
企業の拠出義務は課していない。
2007年6月27日法制化、即日施行。2009年7月1日実質強制化。Connecticut 企業が医療保険プランを提供し、かつ従業員の保険料負担を天引きする場合、カフェテリア・プランの提供を義務付ける。
州または連邦所得税の所得控除の対象とする。
2007年7月10日法制化。10月1日施行。Missouri 企業が医療保険プランを提供し、かつ従業員が保険料の一部を負担する場合、保険料拠出目的のみのカフェテリア・プランの提供を義務付ける。
ただし、自家保険プラン(Self-insured plans)の場合には適用しない。
2007年6月1日法制化。2008年1月1日施行。
Big 3とUAWの交渉が大詰めに近づいてきた。現在の労使協定の有効期限が9月14日になっており、それまでに妥結できなければ、ストに突入という可能性も出てくるからだ。
上記sourceで報じられている交渉経過のポイントは次の通り。最後にいつもの株価動向。 ⇒ GM Ford
- VEBA
(「Topics2007年6月21日 VEBA アナリストの見方」参照)
VEBAの設立について合意が得られるかどうか、という問題に加え、仮に設立に合意ができたとしても、Big 3の拠出水準、拠出方法についても課題が残されている。
- 拠出水準
UAWは、当然将来給付に必要となる原資を100%拠出すべきと主張する。Big 3側は、60〜70%レベルまで譲歩を引き出したい意向だ。そうでなければ、財務体質の改善にはつながらないし、再建のための投資に回す資金がなくなってしまう。
- 拠出方法
Big 3は、すべてキャッシュで拠出するのではなく、一定割合を株式で拠出したいと考えている。リストラに成功すれば、株価は将来上昇し、VEBAひいてはUAWにとって大きな利益となる可能性がある。また、拠出も一気に支払うのではなく、将来にわたって一定期間をかけて分割拠出する方法も検討されているようだ。
UAWとしては、VEBA設立に伴い、かなりのリスクを負うことになる可能性がある。また、過去、VEBAを設立しながら途中で資金が枯渇し、失敗した事例もあることから、組合内ではVEBAに反対する空気が広まっている。
仮に、VEBA設立について合意がなされない場合、UAWにとっては厳しい勤務条件改定(報酬、労働時間等)が提示される可能性が高い。逆に、市場では、VEBAが設立されなければBig 3の回復は難しくなるのではないか、との観測が広まっており、一気に株価が低落する可能性が高い。
- 個別交渉
UAWの伝統的な交渉スタイルは、最も好条件を引き出せそうな会社の組合が先導役となり、全体の交渉をリードするというものだが、今回の交渉ではこうしたスタイルをとっていない。3社がそれぞれ個別に労使交渉を進めている。職業別組合が存在しているとしても、企業内組合化しつつあることが、ここからも窺われる。
- ストライキ
UAW内では既にストライキ成立のための投票手続きを終えており、形式的にはスト権を確立できた模様である。しかし、仮にスト突入となると、Big 3の経営に与える影響は甚大と見られている。
MA州皆保険法では、10月1日より、無保険の低所得者の自己負担は、次のようになる予定だそうだ。
※FPL:Federal Poverty Level子供の場合を除いて、低所得かつ無保険者にとって、かなり厳しいペナルティになっているように思われる。
- 免責額
- FPL150%〜200%:$35/M
- FPL200%〜:$35/M〜
- 窓口負担
- FPL150%〜200%:外来 $5/救急外来 $50
- FPL200%〜:外来 $5〜/救急外来 $50〜
- Community health centerにおける子供の診療
免責額・窓口負担なし。処方箋のみ自己負担$3。
- 公的医療保障制度または企業提供保険プランの対象資格のある無保険者を治療した場合には、償還を行わない。
まだまだ前哨戦の段階なので、本当に参考レベルであるが、という調査結果が出ている。
- 政策課題の中で最も重要と考えられるものは、@イラク、A医療
- 医療政策で最も好ましいのはClinton
アメリカでも熟練労働者の退職が企業経営に深刻な影響をもたらすとの懸念が広がっている。そのため、企業では、中高年労働者が働きやすいようにいろいろな就労形態、教育訓練プログラムを用意している。
標題のSnowbirdプログラムも、その一つである。Snowbirdとは、冬の間にアメリカにやってくるカナダ人のことを指しているらしい。ここで紹介されているのは、ドラッグストア・チェーンのCVSが実施しているプログラムである。
80歳の薬剤師であるBill Duclos氏は、MA州でパートタイムで働いているが、10月から冬の間は、Florida州で働くそうである。Floridaでは、冬の間が忙しく、人手が足りなくなるらしい。Duclos氏にとっては、春から秋にかけては子供や孫達と過ごし、冬の間はフロリダでゴルフやゲームを楽しむ。両者にとってwin-winになるので成立するプログラムである。
私事になるが、2〜4月の間は、花粉症に悩まされる。薬を飲んでも飲まなくても、頭がぼうっとしていて、ほとんど仕事にならない。それならば、その期間だけマレーシアで仕事させてもらえないだろうか、と思う。マレーシアは熱帯なので、杉がない。まさに私にとっては天国なのである。それがだめなら沖縄でもいい。「転地療養+サテライト・オフィス」の組み合わせは可能とならないだろうか。