新薬が市場に出回ってからの安全性の確認が問題になっていることは、当websiteでも紹介したところである(「Topics2006年10月10日 FDAへの業務改善勧告」参照)。上記sourceによれば、2007年の連邦議会では、新薬の安全性確保を軸としたFDA改革法案が議論されることになりそうだ、という見通しを示している。
その記事の中で、 FDA医薬品安全性・リスク管理諮問委員会のCurt Furberg委員が、驚くべき発言をしている。"現行制度でも、重大な副作用が発覚した際には、製薬企業は15日以内にFDAに報告する義務を負っている。しかし、重大な副作用の10%、副作用全体の1%しか、FDAに報告されていないのではないか、と推測されている。"これでは、ほとんど機能していないと言っているのと同じである。それだけシリアスな問題を抱えながら放置してきた政権の責任は重い。産業の発展、製薬企業の利益と、人体に及ぼす悪影響を秤にかけるわけにはいかないだろう。
航空会社が年金プラン改革を求めたように、今度はビッグ3が、医療改革を求めるという。ビッグ3の主張は次の通り。上記sourceによれば、来月にも、ビッグ3はBush大統領と面会し、上述のような政策提言を申し入れるものと見られている。航空会社の時のように、Bush政権が応じるかどうかは、11月7日の選挙結果次第のところもある。
- 政府の補助金が出ているアジアの企業に対して競争力を保つためには、医療コスト負担の軽減が有効である。
- 2005年、ビッグ3は、約200万人のアメリカ国民に対して、$13Bの医療ベネフィットを提供した。
- ジェネリックの普及を促進すべきである。
- 企業が提供する医療保険プランについて、カタストロフィックなコストをカバーする連邦再保険制度を創設する。
IFEBPが、最近行ったアンケート調査結果が公表された。調査内容は、Section 125 Frexible Benefit Plan(いわゆるカフェテリア・プラン、以下FBP)の実態である。ポイントは次の通り。
- 92%の企業で、何らかのFBPを提供している。
- FBP提供企業の90%が、FSAsを提供している(「医療貯蓄勘定 比較表」参照)。
- ただし、実際にFSAsを利用している従業員は39%弱、被扶養者に至っては9%弱しかない。
- FBP提供企業の30%が、FSAsに加えて、確定拠出型(CDタイプ)の医療保険プランを提供している。
- FBP提供企業の25%が、FBPの医療保険ベネフィットを選択しなかった従業員に対して、現金等を給付している。
- FSAsの92%が、従業員拠出のみとなっている。
- FSAsのほとんどの加入者は、拠出額全額を使い切っている(繰越不可のため)。
センサス調査によれば、結婚に基づくカップルは、アメリカ社会では遂に少数派に転落してしまったそうだ。上記sourceから拾った主な数字は、次の通り。保守派は、結婚予定のカップルが同棲に入っているだけ、結婚を否定する意識の反映ではない、と結婚の意義の存続をアピールしている。確かに、若い世代でも結婚による家族の絆を求める気持ちは高い。しかし、離婚率の高い社会では、敢えて結婚という形を取るよりも、暫くは同棲して、妊娠でもすれば結婚するという行動パターンの方が好まれるようだ。また、結婚という形式よりも、柔軟な形態のライフスタイルを求める傾向も高まっている。
- 2005年の世帯総数は111.1M。うち55.2M、49.7%の世帯が、結婚に基づくカップルとなっている。2000年には、この割合が52%であった。
- 若い独身世帯と、高齢の未亡人世帯が増加している。
- 5.2Mの世帯が結婚していない男女の世帯、413,000世帯が男性カップル、363,000世帯が女性カップルとなっている。つまり、約10%近くのカップルが結婚していない世帯となる。また、独身世帯は、全体の4分の1以上を占めている。
- 男性カップルの割合が最も高いのはサンフランシスコで、約2%。また、女性カップルの割合が最も高いのは、マサチューセッツ州ハンプシャー郡で、1.7%となっている。
こうした生活スタイルを持つ世代について、雇用形態、賃金体系、社会保障などはどのように変化していけばよいのだろうか。また、いずれは保守派の描くような典型的な家族像に戻っていくことはあるのだろうか。興味の尽きないところである。
昨日コメントした公開草案が公表された(「Topics2006年10月23日 連邦政府にも年金債務認識」参照)。本文はここ。 内容は、紹介した通りだが、今後の検討スケジュールが示されている。当然のことだが、ゆっくりとした検討スケジュールが組まれている。この間には、中間選挙がある。また、公的年金改革の議論があるのかないのかにも、かなり左右されるものと思われる。
- パブリック・コメント:2007年4月18日締め切り
- 公開ヒアリング:2007年5月23日
いよいよ、公的年金についても、企業年金と同様の給付債務認識を求める動きが出てきた。
上記sourceによれば、FASAB(the Federal Accounting Standards Advisory Board)は、23日、受給権が確立する10年以上の加入者に関する公的年金(Social Security)、Medicareの給付債務についてB/S上で認識すべし、との提言を公表するという。
もちろん、世界でも初めてだし、Bush政権も当然のことながら、反対するものとみられる。そんな大きな債務が計上されることになれば、Bush政権が狙っている大規模減税の恒久化など、とてもできなくなるからである。
FASABのメンバーは、全部で10人。そのリストと、出身母体は、次の表の通り。
Mr. David Mosso 元FASB 議長。元財務省。 Mr. Tom L. Allen Weber State University 次期議長。元GASB議長。 Ms. Claire Gorham Cohen Fitch副会長 公的部門債券のアナリスト Mr. Robert Dacey GAOチーフ・アカウンタント CPA Mr. John A. Farrell 元KPMG Mr. Donald B. Marron CBO副部長 元大統領経済諮問委員会委員長 Mr. James M. Patton University of Pittsburgh Mr. Robert N. Reid 財務省 CPA Mr. Alan H. Schumacher 元American National Can GroupのCFO Mr. Danny Werfel OMB
上記sourceによれば、上の10人のうち、赤色を付した3人が提言内容に反対、それ以外が賛成しているという。見事に政権内部にいる3人が反対となっている。アメリカでは、民間企業も、州政府等の自治体も、年金プランと退職者医療プランの給付債務をB/S上で認識することとなった(「Topics2006年10月3日 FAS 158」、「Topics2005年12月13日 時限爆弾-GAS45」参照)。残っているのは公的年金、公的高齢者医療保険だけなのである。
このFASAB提案は、パブリック・コメント、パブリック・ヒアリングを経て、議論が進められていく。FASABが最終提案として認めることになれば、Bush政権は拒否権を発動することもできるが、この拒否権発動もまた、初めてのこととなる。初の提案と初の拒否権、どちらに動いていくのか、注目すべきところである。
ちなみに、日本では、公的年金について、上述のような債務認識は行っていない(「省庁別財務書類の作成について 補論 4.貸借対照表 (2)公的年金等の負債計上」参照)。もし日本も公的年金の給付債務を認識することになれば、ただでさえ膨大な債務を抱えている国の財政にとって、大きな負担となることは間違いない。