7月20日 (1)MA州未加入者数 Source : Universal health-care checkup: Outreach program targets 200,000 unenrolled (BostonHerald.com)

MA州の皆保険法が施行され、州民の保険加入義務のデッドラインである7月1日が過ぎた。加入状況の推計は、次のようになっている。 地元での評価は、まずまずのスタートということらしい。

7月20日(2) DowはCBへ移行 Source : Dow Looks to Future with New U.S. Retirement Program (Press Release)

17日、Dow ChemicalがDBプランの閉鎖(新入社員は加入させない)を発表した。2008年1月1日以降に採用される新入社員の退職ベネフィットは、次のようになる。
  1. Personal Pension Account (=Cash Balance Plan)
    給与の5%をDowが拠出する。個人勘定には、拠出金+利子が累積されていく。退職時に一時金として引き出せる。受給権の付与は、採用後3年。

  2. 401(k) plan
    給与の4%を企業拠出する(現行通り)。

  3. Retirement Health Care Assistance Plan
    退職後医療保険の保険料のために、貯蓄口座に本人拠出する。企業は同額をマッチング拠出する。

  4. 現行の退職者医療保険、退職者生命保険には加入できない。
伝統的なDBプランを閉鎖するといっても、充分にgenerousなCBプランだし、退職者医療への支援も残されている。CBプランへの移行は、それほど多くなく、最近ではFedExの例がある(Pension Rights Center)。

7月19日(1) Execsの報酬公開 Source : Washington Post

Washington Postで同じ日に3本もの関連記事を掲載したのは、珍しいことではないだろうか。上記sourceは、16日付け同紙に掲載された3本の記事を、一括してまとめたものである。テーマは、新たなSECルールに基づく、経営者報酬の開示である(「Topics2006年7月27日 経営者報酬の開示強化案決定」参照)。

とにかく盛り沢山なので、一読をお勧めするが、中でも印象に残った箇所だけまとめておく。
  1. ISSの副社長の次の言葉。
    "Shareholders focusing on different aspects of the pay disclosures may feel as though they're touching different parts of the proverbial elephant. The one thing you know is, it's an elephant."
  2. SECの報酬開示強化策の一方で、関連当事者との取引について、開示基準が\60,000から\120,000に引き上げられた。その結果、取締役の子息令嬢の当該企業における報酬が、\115,000に引き上げられたとの指摘があった。この指摘では、取締役の独立性に疑問が生じる、とも言っている。

    管理人としては、そんなこともあったのか、と改めて驚いている。こんな慣習があるようでは、取締役は経営者に対して何にも言えないだろう。少なくとも、日本の大企業では、こんなことは稀ではないだろうか。

7月19日(2) 在宅勤務の普及 Source : Working at home in 2006 (BLS)

上記sourceを見ていただくと、アメリカでの在宅勤務は、かなり普及しているようだ。特に、複数の雇用契約を結んでいる労働者、高学歴の労働者で、在宅勤務の割合が40%近くと高くなっている。また、男女差はそれほどないそうだ。

日本でも、自宅で仕事のメールを読んで返信する程度でもよければ、自宅でやっている人はいるかもしれない。それとも、セキュリティの確保の観点から、そうした外部からのアクセスはできなくなっている企業は多く、在宅勤務ができる業務の範囲は、実は狭くなりつつあるのかもしれない。

アメリカの産業構造が、サービス産業のウェイトを高めているために、在宅勤務が広く普及しつつあるとも言えよう。

7月18日 ERISA vs States (2) Source : The Massachusetts Health Care Reform Act : What must Employers Do? (Utz, Miller & Kuhn, LLC)

つい先日、州レベルでの無保険者対策、皆保険制度改革の議論とERISAの関係について触れた(「Topics2007年7月13日 ERISA vs States」参照)。ちょうど、それ関連した法律事務所のレポートを読んだので、まとめておきたい。

上記sourceは、大まかにいうと、 について述べている。

前者については、かなり実務的なところまで触れてはいるものの、当websiteでもこれまでにまとめてあるので割愛する。参照箇所は次の通り。 後者については、次のような整理をしてみた。
  1. MA皆保険法が企業に義務付けている規定は3つある。

    1. Fair Share Employer Contribution ("Pay or Play")
    2. Cafeteria Plan
    3. 保険プラン加入証明

  2. そのうち、a.とb.については、ERISAに触れる可能性がある。結論から言えば、a.は直接的にERISA関連ベネフィットについて規定しているため、理論的にはERISA優先となる可能性がある。また、b.については、保険料支払いのためのツールとして規定しているだけなので、ERISAに触れない可能性が高い。

  3. MD州の"Wal-Mart法"は、第4控訴裁判所で、ERISAが優先するとの判断を受けた(「Topics2007年4月19日(1) MD Wal-Mart法案完敗」参照)。その際、控訴裁判所が示した考え方は、「ERISAの第一の目的は、従業員ベネフィットプランについて、連邦レベルで統一的な管理を認めることにある」というものであった。

  4. "Pay or Play"

    MD州"Wal-Mart法"
    第4控訴裁判所
    従業員1万人以上の企業は、少なくとも給与の8%以上を医療保険プランに支出しなければならない。それに達しない場合には、同額を州の基金に拠出しなければならない。州法は、企業が一定レベルの医療保険プランを提供するよう、事実上求めている。合理的な企業であれば、医療保険プランを提供せざるをえない。

    また、州への単なる拠出との考え方はできない。なぜなら、対象となる企業はWal-Martだけであり、法の主目的が医療保険プランの提供を求める事に置かれているからである。


    MA州皆保険法
    法律家の見方
    一定水準の医療保険プランを提供するか、州基金に対して一人当たり最大$295(年)を支払う。医療保険プラン提供と、州への拠出の選択肢は、意味あるものとなる可能性がある。州への拠出額が小さく、技術的には医療保険プランの提供を求めているわけではない。
    対象となる企業数が1社に限定されていない(従業員11人以上)。MD州"Wal-Mart法"よりは、一般論として「州への拠出」という主張が通りやすい

結論からいえば、MD州法よりはERISA違反になる度合いは低いといえるが、完全にシロかと問われれば肯定できない、というところであろう。微妙な判断が必要となることは間違いないようだ。

7月17日(1) シュワ知事のお願い Source : Governor Delivers Remarks on Health Care at Bay Area Council (Office of CA Governor)

上記sourceは、7月12日にCA州シュワ知事が行なったスピーチ原稿である。テーマは医療保険改革。医療保険改革の方向性に関するシュワ知事の主張のポイントは次の通り。
  1. 責任は全関係者で分担しよう。
  2. 保険加入は義務化しよう。義務化することでリスクプールは大きくなる。
  3. 保険加入を保証しよう。保険会社が加入申し込みを拒否してはならない。
  4. 企業に不当な負担をさせてはいけない。給与の7.5%は高すぎる。
  5. 民間活力を利用しよう。州政府が運営する単一保険制度ではいけない。
  6. シュワ知事提案(「Topics2007年1月9日 シュワ知事の提案」参照)には拘らない。
最後に述べているように、自分のオリジナル提案には、拘らないと明言している。診療機関の拠出金が不評を買ったこともあり、あっさりと敗北を認めている。自分の提案は引っ込めるかわりに、これだけは守りたい、実現したいという本音を述べたものと思われる。

先に州議会民主党が一本化した医療保険改革法案(「Topics2007年6月26日 加州有力法案一本化」参照)の内容と比較すると、
  1. 保険加入を義務化する
  2. 企業負担(給与の7.5%)は高すぎる
の2点で、議会法案と鋭く対立している。

州議会民主党が攻勢を強める中で、受身ではあるものの、知事として拒否権を発動せずに済むアウトラインを示し、民主党の協力を求めたものと考える。

7月17日(2) 180日では短すぎる Source : "The Supremes" Take Heat over Sex Discrimination Pay-Bias Case (HR Daily Advisor (BLR))

6月上旬、連邦最高裁は、『性差別に基づく賃金格差を訴える場合には、差別が行われてから180日以内に訴えなければ有効ではない』との判決を下したそうだ。180日というのは、余りにも古いことを穿り返して訴えてくることが無いように、歯止めをかける意味で設けられた制限であり、それはそれで意味のあることである。実際、このケースの場合にも、当時の上司が既に死亡しており、どうしてそのような差がつけられたのか、という事実確認ができないままであった。

しかし、180日というのは余りにも短すぎる。そんなに早く気づかなければ訴えられないということになると、同僚の給与と比較する為に、企業は全従業員の給与水準を公開せよ、ということになりかねない。人事部としては、到底受け容れられない。

こんな不毛な議論が現実のものとなる前に、議会で法改正、180日をもう少し緩和する法改正が行われることになるだろうと、上記sourceは述べている。そうした理性的な対応となることを期待している。

7月16日 RI州でも同性カップルに厳しい決定 Source : RI Governor Axes Domestic Partner Benefits Bill (Plansponsor.com)

7月4日、Rhode Island州のCarcieri知事が、州議会が可決した法案(S 619)に拒否権を発動した。

同法案の概要は、次の通り。
  1. 州政府、自治体職員の同居パートナーに、同職員の配偶者と同様の退職べネフィットを提供する。

  2. 適格となる同居パートナーの要件は次の通り。

    1. 特別親しい関係にある。
    2. 少なくとも1年以上、同じ住居に同居している。
    3. 財政的に独立している。それを証明するために提示する文書は次の通り。
      1. 同居人または同居する合意書
      2. 共同の住宅ローン
      3. 共同の銀行口座
      4. 共有の自動車
      5. 遺言による指名

  3. 法案には、「配偶者」または「配偶者の定義」は含まれていない。

こうしてみると、先に紹介した、Michigan州(MI)のKalamazoo市が同性カップルにベネフィットを提供しようとしている要件とそっくりである(「Topics2007年7月11日 MI大学の智恵」参照)。同市の場合は運用で対応しようとしているのに対し、RI州は州法で対応しようとした違いがある。しかし、こうして、州知事が拒否権を発動したとなると、MI州知事の対応や、その他の保守系団体からの提訴も可能性として考えられる。

やはり、同性カップルに対するベネフィットでは逆風が吹きつつあるように思える。

7月15日 年金債務と州債 Source : Governor Rell: Governor Rell Signs Teachers' Retirement Bill Into Law (Press Release)

10日、CT州のRell知事が、教職員年金プランの積立不足を補うために州債を発行するという法案に署名した。

CT州では、ここ20年近く、適切な積立を行なってこなかったために、給付債務$17.1Bに対し、プラン資産は$10.2Bしかなく、残り$6.9Bが積立不足になっている。積立比率は、59.5%である。

この積立不足を補うために、$2Bの州債(償還期間25年)の発行と、25年間にわたる州政府の拠出を定めている。つまり、25年間で積立不足を解消することとし、うち$2Bは州債とし、残りは毎年のキャッシュで埋めていこうということである。

普通に考えると、州政府の債務区分が、年金プランから一部州債に移るだけのような気がするが、実は、実質的なコスト節約になるという。そのトリックは、年金プランの給付債務の利率(8.5%)と州債の利率(5.6%)の差にあるらしい。同じ州政府の債務なのに、利率が異なるというのは変でしょう。おそらく、教職員年金プランの予定利率が高い、つまり州教職員のベネフィットが高めに約束されている、ということなのだろう。

余計な話だが、年金プランでこれだけの積立不足を抱えていては、退職者医療プランの積立不足計上(GAS 45)は耐えられないというのが本音なのだろう(「Topics2007年6月5日 CT州議会 GAS45に反旗」参照)。

7月14日 企業年金の地殻変動 Source : Retirement Incom Adequacy after PPA and FAS 158 : Part One - Plan Sponsors' Reactions (EBRI)

EBRIMercerによる調査結果が公表された。最近2年間と今後2年間における、DBプランの変更に関する動向を調査したもので、PPA成立(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)と、会計基準FAS 158(「Topics2006年10月3日 FAS 158」参照)が確定給付型プラン(DB)に与える影響も調査している。

調査結果のポイントは次の通り。
  1. 過去2年間で、約3分の1の企業が、DBプランを閉鎖または廃止した

    最も多かったのが、新規採用者を加入させない形での閉鎖で、23.9%にのぼる。その次が、全従業員についてプランを凍結するケースで、12.9%となった。

  2. 今後2年間で、残りの企業の約3分の1が、DBプランを閉鎖または廃止しようと検討している

    まだDBプランを変更していない企業のうち、33%以上の企業が何らかの変更を加えようとしている。最も回答が多かったのが、新規採用者を加入させない形での閉鎖で、19.0%であった。次は、全従業員についてプランを凍結する選択肢で、14.2%となった。

  3. DBプランの給付削減を実施する企業の多くは、DCプランへの拠出を増やしている

    過去2年間で新規採用者に対して閉鎖した企業のうち、78%がDCプランへの拠出を増やしている。また、今後2年間で閉鎖しようと考えている企業のうち、80.9%がDCプランへの拠出を増やそうと考えている。

  4. DCプラン強制加入とDBプラン変更の関連性

    過去2年間で新規採用者に対してDBプランを閉鎖した企業のうち、59%の企業がDCプランへの強制加入制度を持っていた。他方、閉鎖していない企業のうちDCプランへの強制加入制度を持っているのは42%にとどまる。

    今後2年間で閉鎖しようと考えている企業のうち、61%の企業がDCプランへの強制加入制度を持っている。他方、閉鎖を考えていない企業のうちDCプランへの強制加入制度を持っているのは、39%にとどまる。

  5. こうしたDBプラン変更の背景には、PPAの成立とFAS158の影響がある

    DBプランの変更をもたらした要因は、次の4つである。
    1. ベネフィット政策全体の見直し
    2. 競争圧力
    3. PPAによるDBへの拠出に関するボラティリティの増大
    4. FAS158(今後の改正も含む)によるB/Sへの影響
こうした傾向は、まだまだ続くものとみられる(「Topics2006年11月28日(3) DBプラン変更企業」参照)。

7月13日 ERISA vs States Source : ERISA Could Hurt States' Efforts To Expand Health Coverage of Uninsured Residents (Kaisernetwork)

当websiteで紹介しているように、州レベルでの無保険者対策、皆保険制度の検討が進んでいる。ところが、上記sourceにある通り、連邦法である"ERISA"が、それら州レベルでの改革努力を阻むことになるのではないか、との指摘がある。

実際、MD州の"Pay or Play"法案は、司法判断により葬り去られ、仕切り直しを迫られている(「Topics2007年4月19日(1) MD Wal-Mart法案完敗」参照)。また、CA州では、皆保険法案が成立した場合に備えて、今から訴訟準備を進めているという。

American Benefits Councilという大企業が加盟する団体は、「(無保険者対策の)最善策は、ERISAに基づく連邦レベルでの施策である」とまで主張している。

連邦制故の悩みではある。ただし、MA州で訴訟が起きていないところをみれば、要は、関係者の納得性の問題なのかもしれない。それとも、実際に事業主拠出が始まると、不満が噴出して訴訟が起きるのかもしれない。仮に、関係者の納得性の問題であるのならば、話し合う当事者が少ないだけ、州レベルでの解決の方が現実的な気がする。

7月12日 PA州知事苦戦 Source : A State Finds No Easy Fixes on Health Care (New York Times)

皆保険制度の導入を目指しているPAのEdward Rendell知事「Topics2007年1月19日(2) PA州知事も皆保険提案」参照)だが、相当の苦戦を強いられているそうだ。

反対している勢力は、医療機関と中小企業である。医療機関は、診療報酬の合理化、包括化に危機感を抱いているようであり、中小企業は、医療保険プランを提供しない場合の拠出義務に抵抗している。

Rendell知事は、保険加入義務付けの前に、コストの抑制を図るべきとの考え方を持っているため、診療報酬や予防、健康指導などを含めた改革に重点を置いている。そうした意味で、実はMA皆保険法よりも現実的なのかもしれないのだが、州内の抵抗を説得できないようだ。知事が民主党というのが、裏目に出ているのかもしれない。

7月11日 MI大学の智恵 Source : Laws against gay marriage threatening benefits for domestic partners (San Francisco Chronicle)

上記sourceは、Michigan州(MI)の南西部にあるKalamazoo市の同性カップルに対するベネフィットの話題である。

MI州では、同性婚は認められていない。2004年の州民投票(Proposal 2 of 2004)で州憲法改正が認められ、州政府が同性婚を認定することは州憲法違反となった。これに対して、2005年、American Civil Liberties Union of Michiganという団体が、Proposal 2の定義の明確化と、同性カップルへのベネフィット提供を禁じないとの判断を示すよう、訴訟を起こした。

その上級審判決が今年2月に示され、州政府等職員の同性カップルに対するベネフィット提供は禁止すべきとの判断を示した(「Topics2007年6月22日(1) 同性カップルのベネフィット」参照)。また、州最高裁は、今年中に意見聴取はするものの、上級審の判断は即刻有効との判断を示している。

Kalamazoo市は、これまで同性カップルにもベネフィットを提供してきたのだが、この判決を受けて、ベネフィット提供を継続するために次のような工夫を行なったそうだ。
  1. 同居パートナー(domestic partner)に代わり、新適格成人(new other qualified adult)プログラムを提供する。
  2. 同プログラムでは、従業員に近い成人に、医療・歯科保険プランを提供する。
  3. 新適格成人の基準としては、
    1. 意思をもって、最低1年以上同居している
    2. 生命保険、遺産相続の第一相続にに指定されている
    3. 住居または車を所有している、もしくは共同銀行口座を持っている
    など、7つの判断基準を設ける。
  4. このプログラムは8月1日に施行する。
何としても、同性カップルに対するベネフィット提供は継続しようというわけだ。そして、このプログラムは、Michigan大学のアイディアによるものだそうだ(「Topics2007年6月22日(1) 同性カップルのベネフィット」参照)。 上記sourceの文中にあるように、市や大学は、同性カップルへのベネフィット提供を止めることで、有能な人材を失うことを恐れている。だから、州憲法違反になろうと、何とか抜け道を作ってベネフィット提供を続けようとする。

アメリカ企業は、今後どういう判断をしていくのだろうか。