8月20日 CA州:保険料規制法案への反発 
Source :California health insurance rate bill faces growing opposition (Sacramento Bee)
CA州議会で、保険料監督権限を強化するための法案(AB 52)が審議されている。医療保険改革法で、保険料引き上げに関する監督を強化するよう求められているが、CA州では、州政府による保険料の監督権限が明確になっていない(「Topics2010年8月16日 州政府の権限強化が必要」参照)。同法案はこれを明確化しようというものである。

既に州議会下院では、6月2日に採決が行われ、45 vs 28で可決されている。その際、共和党議員からの賛成票は入っていない。

現在、州議会上院の歳出委員会で審議が行われているが、ここでBrown州知事の財政スタッフが意見陳述を行い、保険料監督強化に伴う行政コスト増に対する懸念を表明した。大幅な人員増が必要となること、訴訟に関わる費用が膨大になること、などがその理由として挙げられている。

また、CA州"Exchange"運営委員会は、『同法案は医療保険市場に悪影響をもたらす可能性がある』として、やはり反発している。

さらに、CalPERSも、『医療保険プランを運営する上で、コストが嵩み、複雑になる』として、正式に反対している。

CA州の保険料引き上げ問題は、医療保険改革法案の議論の最中に、Obama政権が可決に向けてドライブをかける切っ掛けとなった課題であった。CA州などでこんなにひどい保険料引き上げが行われているのだから、医療保険改革法案は通さなければならない、とキャンペーンを張ったのである(「Topics2010年2月21日(1) HHS長官ヒートアップ」参照)。ところが、実際に医療保険改革法の各論として施行しようとしても、州レベルでなかなか理解が得られず、立ち止まってしまっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/連邦レベル

8月19日(1) 雇用拡大策メニュー 
Source :Obama to issue new proposals on job creation, debt reduction (Washington Post)
Obama大統領の雇用拡大策に関心が集まっている(「Topics2011年8月17日 大統領の雇用対策案」参照)。報道では、Labor Day(今年は9月5日)直後に大統領の関連演説が予定されているという。

報道されているメニューは次の通り(太字は今回追加分) 一方で、Obama大統領は、両院特別委員会に対し、財政赤字削減額を目標である$1.5Tを大幅に上回る提案をするよう求める考えという。『短期で財政支出拡大、中長期で財政赤字大幅削減』というメッセージを発したい模様である。

ところが、財政赤字削減策を強化しようとすればするほど、雇用のエンジンを失いかねないとの懸念も出されている(New York Times)。下の図は、同記事に添付されていたものであるが、今回の景気後退期に雇用市場を下支えしてきたのが医療産業であることは明白である。
大幅な財政赤字削減を行おうとすれば、間違いなくMedicare関連の支出を削減せざるを得ない(「Topics2011年8月4日 やはりMedicareが争点」参照)。また、Medicaidの州政府に対する支援も縮小しなければならなくなる。

そうなれば、医療産業、医療機関は、投資や雇用を抑制せざるを得なくなる。それでなくても、医療関係の経営者の間では、この数年間に拡大路線にのって過剰投資、過剰雇用をしてしまったとの反省から、経営の効率化が課題になっている。

財政赤字削減に力を入れれば入れるほど、雇用のエンジンを失いかねない状況となるのである。

※ 参考テーマ「労働市場

8月19日(2) NY州:州政府労組が承認 
Source :State Employees’ Union Accepts Wage and Benefits Concessions (New York Times)
NY州政府職員の最大労組であるCivil Service Employees Association (CSEA)は、15日、組合員による投票で、州政府との間の労働協約改定を承認した。内容は既に当websiteで紹介済み(「Topics2011年7月18日 NY州:州政府労組が譲歩」参照)だが、要するに、レイオフを停止する代わりに、報酬の凍結・見直しを認めるものである。

もう一つの有力労組であるNew York State Public Employees Federation(PEF)は、来月、承認投票を実施するそうだが、CSEAが承認したことにより、こちらも承認する確率が高まったという。

やはり、公務員労組にとっては厳しい時期が続きそうである。

※ 参考テーマ「労働組合

8月18日 大統領の祈り 
Source :Obama Confident Supreme Court Will Defend Health Care Law (Wall Street Journal)
第11控訴裁判所の判決(「Topics2011年8月16日 PPACA:第11控訴裁判所は違憲判決」参照)を受け、Obama大統領は、『連邦最高裁は必ず支持してくれる』と述べた。その根拠として挙げている理由は、上記sourceによれば、次の2点である。
  1. もし個人に加入義務がなければ、(これまでと同様)無保険者が救急治療室で受けた診療の費用を納税者が負担することになる。

  2. 次期大統領選の共和党候補者のトップを走っているMitt Romney氏は、MA州知事時代、個人の加入義務を支持している。個人の加入義務は、もともと共和党の発案である。
仮に、Obama大統領がこのコメント通りに発言しているとすれば、2つの点でポイントがずれている。
  1. 第11控訴裁判所で争われた論点は、誰が負担することが望ましいか、ではなく、保険業務を監督する州の境を越えて、連邦政府が個人の取引(ここでは保険プラン購入)を義務付けることの是非である。

  2. 2番目の理由は、MA州知事としてのRomney氏の業績であり、連邦議会共和党として支持されたものではない。
Obama大統領が争うとすれば、『連邦憲法に違反する可能性はあるとしても、個人の加入義務はアメリカ社会全体にとって望ましい方向であり、国民もそれを支持している』という点であろう。従って、いつになるかわからないが、もしも連邦最高裁が違憲判決を下したとしても、Obama大統領にとってはそこが最終地点(=政治的敗北)ではなく、憲法を改正してでもこの政策を貫くという意思と、それに対する国民の支持を取り付けることが重要なのであろう。

そうした強い意思が感じられないことが、最大の問題ではなかろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月17日 大統領の雇用対策案 
Source :Democrats urge Obama to be more aggressive on jobs (Los Angeles Times)
雇用情勢がなかなか改善しないことに対し、Obama大統領が経済対策を検討しているという。上記sourceでは、次のような項目が挙げられている。 しかし、民主党はまだまだ物足りないと、経済対策の拡充を求めているという。一方、年末までに財政赤字削減の目処をつけなければならない中で、これだけの財源をどこから捻出してくるのか。強硬な共和党が支配する下院はまず通らない。また、年金財政にとっても悪影響が続く。

大統領にとって厳しい時期が続きそうである。

※ 参考テーマ「労働市場

8月16日 PPACA:第11控訴裁判所は違憲判決 
Source :Health Law Is Dealt Blow by a Court on Mandate (New York Times)
医療保険改革法を巡る訴訟の中で最も注目されている26州による合同訴訟(「Topics2011年1月22日 医療保険加入義務反対訴訟 27州に」参照)について、12日、第11控訴裁判所は、『個人の加入義務』は連邦憲法違反であるとの判決を下した。一方、その他の規定については合憲であるとの判断も示した。

これで、控訴裁判所の判断は1対1となった(「Topics2011年7月2日 PPACA:第6控訴裁判所が合憲判断」参照)。

次は、独自に訴訟を行っているVA州の案件についてである。これに関する第4控訴裁判所の判決は、間もなく下されるとの見通しである。その後は、いよいよ連邦最高裁に舞台が移る。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月13日 両院特別委員会メンバー 
Source :6 Republicans Named to Deficit Reduction Panel (New York Times)
Last Three Democrats Named to Debt Committee (New York Times)
先に成立したBudget Control Act of 2011で、創設が定められていた両院特別委員会のメンバーが固まった。
民 主 党共 和 党
上 院John KerryJon Kyl
Max BaucusRob Portman
Patty MurrayPat Toomey
下 院Xavier BecerraDave Camp
James ClyburnFred Upton
Chris Van HollenJeb Hensarling
◎:共同委員長
両院特別委員会は、10年間で$1.5Tの財政赤字削減策を検討する。期限は今年11月23日。それまでに成案が得られなければ、自動的な歳出削減プログラムが発動してしまう。

また、両院とも両党から3名ずつの委員を選出しているが、多数決が成立すれば、両院特別委員会の案は両院で無修正のまま投票にかけられることになる。超党派の委員会とはいいながら、一人でも向こう側に賛成してしまえば、議会にかけざるを得なくなる。慎重な人選が行なわれたことは想像に難くない。実際、下院民主党は、他よりも一日遅れの決定となっている。

なお、上の表で黄色く塗られた議員達は、昨年のNCFRRのメンバーであり、その最終報告書に対しては全員反対票を投じている(「Topics2010年12月4日(1) 11対7」「Topics2010年12月5日 NCFRR報告書」参照)。

※ 参考テーマ「社会保障全般

8月12日 NY州同性婚の納税申告 
Source :New York Issues More Guidance on Marriage Equality (Deloitte)
さる7月24日、NY州における同性婚認可法が施行された。上記sourceは、7月29日に公表された、同法施行に伴う納税申告に関する新ルールについて説明している。 特に驚くような項目は含まれていないが、これで、少なくとも州所得税上は、異性婚と同等になっていることが確認される。企業側でも特に混乱が生じるようなことはないだろう。

※ 参考テーマ「同性カップル

8月11日 Cadillac Plans Taxが心配 
Source :US employer health plan enrollment up 2% under PPACA's dependent eligibility rule (Mercer)
医療保険改革法に関する企業の意識調査アンケートである。ポイントは次の通り。
  1. 26歳までの子供を被保険者として保険プランに加入させることが義務付けられたことにより、加入者が少し増えている。

  2. "Exchange"が創設されても、保険プランの提供をやめることは考えていない。

  3. "Cadillac Plans Tax"の対象になってしまうのではないか、との懸念が広がっている。

  4. 大企業では、採用者の自動加入義務により、コストが高まってしまうとの懸念が強い。

  5. 流通業者では、週30時間以上の勤務を行っている従業員に医療保険プランを提供する義務が発生するため、週30時間以内の就労形態を増やすよう検討している。
企業にとってのコスト抑制と、政策としての無保険者対策は、いろいろな面でぶつかるところがある。アメリカの無保険者対策は、これから暫く生みの苦しみをを経験することになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル