7月18日 NY州:州政府労組が譲歩 
Source :Governor Cuomo Announces Five Year Labor Agreement With The Public Employees Federation (Press Release)
7月16日、NY州政府と州政府労組New York State Public Employees Federation(PEF)との間で、5年間の労働協約がまとまった。同労組は、大幅なレイオフと引き換えに、報酬面で大幅な譲歩を余儀なくされた。PEFは、ホワイトカラー職員を代表する労組で、組合員は54,000人、二番目の規模を有する組合である。

州政府最大の労組、Civil Service Employees Association (CSEA)とは、同様の内容で先月合意に至っている。両労働組合とも、これから組合員による承認投票を行う。

NY州政府とPEFとの合意のポイントは次の通り。
  1. 基本賃金を3年間凍結し、その後2年間、2%ずつ引き上げる。

     2011-12

     2012-13

     2013-14

    2014- 15

     2015-16

     0%

     0%

    0% 

     2%

     2%

  2. 医療保険料の従業員負担引き上げ

    Grade 9以下の従業員については2%引き上げ、Grade 10以上の従業員については6%引き上げる。Grade 10の従業員を例にとると、次のようになる。
    • 家族加入の場合:従業員負担割合は、25%→31%。
    • 単身加入の場合:従業員負担割合は、10%→16%。

  3. 医療保険プランからの脱退

    他の保険プランに加入していることを前提に、州政府が提供する医療保険プランからの脱退を認める。その際、脱退奨励金(家族:$3,000、単身:$1,000)を支給する。

  4. 医療保険プランの窓口負担、免責額等を見直す。

  5. 財政赤字削減休暇

    2011年度5日間、2012年度4日間の無給休暇を取得する。

  6. レイオフの停止 2011年度、2012年度については、財政赤字を理由としたレイオフを停止する。行政改革やリストラなどによるレイオフは、この対象としない。
州政府は、「この協約がまとまらなければ、最大で9,800人のレイオフを敢行せざるを得ない」(New York Times)としていたが、取り敢えず、当面のレイオフ通知は撤回した。レイオフか報酬見直しかという選択肢を突き付けられた労組幹部は、今の経済情勢を考慮して、後者を選択したということになる。

※ 参考テーマ「労働組合

7月16日 失業期間の長期化 
Source :Semiannual Monetary Policy Report to the Congress (FRB)
13日、バーナンキFRB議長が議会証言を行なった。半期に一度の金融政策レポートである。

この中で、バーナンキ議長は、労働市場について2回触れている(いずれも下線部)。中でも最も強調しているのが、右の図で、失業者全体の中で、27週間以上失業状態にいる人の割合が半分近くに達している。これは戦後最悪の状況である。直近の2011年6月は44.6%に達し、昨年平均の43.3%を上回っている。今の調子であれば、2011年平均は昨年を上回ることになろう。

この根雪のようになった長期失業者は、COBRAを継続することができなくなり、やがてはMedicaidの加入者として州政府の財政を圧迫する要因となる。

※ 参考テーマ「労働市場」、「無保険者対策/州レベル

7月14日 GASB:新開示ルール案 
Source :GASB Proposes to Significantly Improve Pension Reporting (GASB)
今月8日、GASBは、州政府などの自治体が運営する年金プランに関する新たな開示ルール案を公表した(「Topics2011年6月24日 GASBの新提案」参照)。主なポイントは次の通り(News Release)。
  1. ネットの積立不足額を、自治体のバランス・シートに計上する。

  2. 将来の給付を充分賄うだけの資産を有している場合には、給付債務の現在価値を算出するための割引率を、長期の期待収益率を利用する。そうでない場合には、高格付けの30年物自治体免税債の利率を利用する。

  3. 給付コストを分類し、即時認識するものと、一定期間(現役職員の残存勤務期間)をかけて償却するものとに分ける。

  4. 割引率に関する想定と、1%変化した場合の給付債務全体の影響額についても開示する。
9月30日までパブリック・コメントを募集した後、10月に各地で公開ヒアリングを開催する予定である。新ルールの確定は2012年、適用は2013年とみられている(Fox News)。

現在の州政府・自治体の対応は、何とか年金プランの積立不足を減少させようとするものだが、この新ルールが施行になれば、自治体財政全体へのインパクトも確実に考慮されることになる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

7月13日 NY州企業の対応 
Source :New York Same-Sex Marriages: Reviewing the Potential Effects of State Same-Sex Marriage Laws on Employee Benefit Plans (Morgan, Lewis & Bockius)
NY州の同性婚は、7月24日から施行される(「Topics2011年6月26日 NY州:同性婚認可へ」参照)。これに伴い、NYで事業活動をしている企業は、(当websiteのメインテーマである)従業員ベネフィットの見直しを迫られる。

上記sourceのポイントは、次のような表にまとめてみることができる。
ベネフィットプラン 規定する法律 NY企業の対応 税制上の扱い
Self-Insured Health Plan ERISA 同性婚配偶者に異性婚配偶者と同様のベネフィットを提供することが可能となる。
規定上、同様のベネフィットを提供するのかどうかを明確にする必要がある。
連邦税上はDOMAがある限り異性婚と同様にはならない。

NY州税については不明だが、今のところ、州税当局は連邦税上の扱いと同様にすることを示唆している。
Fully-Insured Health Plan 州保険法 同性婚配偶者に異性婚配偶者と同様のベネフィットを提供しなければならない。
DB/DCプラン ERISA 同性婚配偶者に異性婚配偶者と同様のベネフィットを提供することが可能となる。
規定上、同様のベネフィットを提供するのかどうかを明確にする必要がある。
非ERISAプラン 州 法 同性婚配偶者に異性婚配偶者と同様のベネフィットを提供しなければならない。


※ "Self-Insured"と"Fully-Insured"は、「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」を参照。
こうしてみると、規定する法律によって、ベネフィットの内容が異なってくる可能性があることが分かる。また、税制上の扱いは、NY州税といえども、異性婚と同じにはならない可能性があるようだ。

※ 参考テーマ「同性カップル

7月12日 地方政府年金の見直し課題 
Source :PENSIONS AND RETIREMENT PLAN ENACTMENTS IN 2011 STATE LEGISLATURES (NCSL)
上記sourceは、今年1月〜6月までの間に、各州が法律改正により地方政府年金を見直した実績をまとめたものである。個別の州政府の動きは別にして、最初のサマリーに、見直しのための手法をまとめているので、確認しておきたい。 州の財政状況が厳しい中、かなり思い切った措置が各州で採られているようだが、それでも「労働組合、特に警察官の労働組合は、自分達の給付確保に成功している」という認識が広まっているようだ(GOVERNING)。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合

7月11日 MD州:授業料問題は州民投票へ 
Source :Md. voters to decide immigrant tuition law (The Washington Post)
MD州知事は、さる5月10日、不法移民の子弟でも州民授業料を適用することができるとの法案(SB 167)に署名した。同法は既に成立しているのだが、これに対してMD州民が州民投票にかけるよう請願し、必要な署名が集まっていることが確認された。

Maryland State Board of Elections(MSBE)によれば、州民投票にかけるために必要な署名数は55,736だが、7日の時点で既に63,118に達した。MSBEは7月22日までに確認作業を終えるそうだ。

来年11月の大統領選で、また一つ注目すべき課題が加わったことになる。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者