6月30日 FL州政府の離職手当 
Source :Florida Passes Public Worker Severance Pay Law (PLANSPONSOR)
FL州は、6月17日、州政府職員の離職手当(severance pay)を制限する法案(SB 88)を成立させた。施行は7月1日となる。そのポイントは次の通り。
  1. 離職手当は20週分を超えてはならない。
  2. 職員が不正事由により解雇されたりした場合には、離職手当は支給してはならない。
  3. 離職手当が雇用関係で問題が生じた場合の和解金としての意味合いがある場合には、予め規程に盛り込まれていない離職手当を受け取ることができる。
これも人件費抑制策の一つなのだろうか。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

6月29日 D.C.エリアの給与は高水準 
Source :Arlington has 2nd highest average wages in U.S. (The Washington Post)
昨日のすさまじいばかりの若者達の働き方を紹介した後で、多少気が引けるが、上記sourceによれば、マンハッタン、D.C.エリアの給与水準はかなり高いものがある。特に、マンハッタンでは、275万人の平均年収が$109,028だから、相当な高水準である。

目立つのは、D.C.及びその周辺地域の給与水準が軒並み高ランクに位置づけられている点である。私が暮らしていたBethesdaのあるMontgomery County (MD)も堂々13位である。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

6月28日 都会の若者の稼ぎ方 
Source :Job Jugglers, on the Tightrope (New York Times)
上記sourceでは、都会に暮らす若者のマルチ・タスク振りを紹介している。
Mr. Fierro (26) Ms. McCarty (23) Ms. Gassman (28) Ms. Branco (23)
職 業 ・教科書出版社
・不動産販売
・オンラインストア支援
・エンタメ企画
・Web編集

・ベビーシッター
・女優
・ダンス教師
・ベビーシッター
・ジムのインストラクター
・博物館職員
・演劇教師
・切符売り
・ベビーシッター
住まい Chicago Adams Morgan Manhattan D.C.
卒業大学 University of Chicago American University   American University
収 入 $1,800/M $25,000/Y $1,800〜4,000/M $1,300/M
医療保険 前職の保険プラン 両親の保険プラン 無保険 個人保険プラン
もちろん、経済状況、労働市場が芳しくない中で生活を維持するためには仕方ないという側面もあるが、その働き振りは激しく、それこそいつ生活を楽しんでいるのか、と思ってしまう。しかし、今時の若者は、特定の企業に縛られるのではなく、様々な職業をこなしていくことに魅力を感じているようだ。そうしたことで新しいフロンティアが広がっていく可能性もある。

一方で、デメリットも懸念される。 こうした社会現象の功罪は、長い年月の後にしか検証できない。

※ 参考テーマ「労働市場

6月27日 NJ州の厳しい決断 
Source :New Jersey Lawmakers Approve Benefits Rollback for Work Force (New York Times)
23日、NJ州議会下院は、46対32の大差で、州政府職員、州内自治体職員のベネフィットを大幅に(おそらく州史上最大の削減幅で)縮減する法案(S2937、S2959)を可決した。上記sourceによれば、同上院では、僅かに異なる法案を既に可決しており、本法案を27日に可決する見込みである。州知事もすぐに署名するものといわれている。

同法案のポイントは次の通り。
  1. 年金プランに対する従業員拠出を引き上げる。

  2. 医療保険プランに対する従業員拠出を引き上げる。

  3. 退職者への年金給付の物価スライドを凍結する。

  4. 退職者給付を受け取れる年齢を引き上げる。
NJ州は、年金プランの積立比率は66%(2009年度)と、80%を大きく下回っている。退職者医療保険プランに至ってはまったく積立金を有していない(「Topics2011年4月27日 2009年度の積立不足」参照)。こんな状況では、州財政、自治体は本当に破綻しかねない。

もう一つ、今回の法案成立に含まれた意味合いがある。それは、やはり労組への厳しい姿勢である。

NJ州議会は、上下両院とも、圧倒的多数で民主党が多数党になっている。それでも、州政府・自治体職員のベネフィットを大幅に削減しなければならないと判断したのである。

さらに、教員、警察官、消防士以外の州公務員には、医療保険以外の団体交渉権がない。現行の労働協約はあと一週間しか期限を残しておらず、新規の労働協約が成立する前にこの法案が成立してしまえば、唯一残されていた医療保険に関する団体交渉権も失うことになりかねない。

州政府職員労組は、訴訟に持ち込んででも阻止するとしているが、民主党主導の州議会で決定したことは重い意味を持つ。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合

6月26日 NY州:同性婚認可へ 
Source :Gay Marriage Approved by New York Senate (New York Times)
24日夜、NY州上院が同性婚認可法案について投票を行い、33 vs 29 で可決した。同法案は、既に先週、下院で可決されていた。州知事は、上院可決直後に署名し、同法案は成立した。順調に進めば、30日以内に施行となり、今夏、NY州で同性婚が成立することになる。

NY州議会は、下院が圧倒的に民主党が多い(99 vs 51)。しかし、上院は共和党がわずかに上回っていた(30 vs 32)。ところが、共和党議員4人が賛成に回ったために、同法案は成立した。
共和党民主党合 計
賛 成42933
反 対28129
民主党からも反対が出ており、必ずしも党派別とはならなかったところが特徴的である。それだけ、NY州で同性婚に対する認知度が高いという証拠でもあろう。

これで、NY州は6番目の同性婚認可州となる。しかも、最大の人口を抱える州として。また企業も多く集まっているところであり、今後のベネフィット対策が注目となろう。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
New York○(7月?日)
Washington, D.C.
California○→×(→○)*
Rhode Island
New York
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Washington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Delaware
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
※ 参考テーマ「同性カップル

6月25日 "Top-up" 
Source :Delphi Pension Plan Is Called Unfair to Nonunion Workers (New York Times)
標題の"top-up"は、Longmanでは次のように説明されている。
"An extra payment that brings an amount to the desired level"
Delphiの倒産、年金プランの終了に伴い、この"top-up"が使われた。すなわち、 上記sourceでは、この"top-up"について2つの面から問題提起している。
  1. Delphiのケースでは、結局、連邦政府が労組加入者を優遇したことになる。GMへの資金協力により、"top-up"契約が活き、満額の給付が約束されたからである。労組をあまりにも優遇していることにならないか。

  2. NASAと"United Space Alliance of Houston"との間で、1996年に"top-up"契約が交わされている。この会社は、スペース・シャトルの主な請負業者であり、スペース・シャトル計画の終了によって"top-up"契約が発効する可能性が出てきた。NASAは連邦政府の組織であるため、この契約発効に伴う連邦支出を認めるかどうかの決断が迫られる。
支出を認めれば、政府機関からの請負業者を優遇したことになり、認めなければ契約違反となりかねない。おそらく、判断が司法の場に移れば、契約を履行すべきとの判断が示されるだろう。Obama政権は、苦しい立場に置かれることになる。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「労働組合

6月24日 GASBの新提案 
Source :Standard setter to propose new state pension rules (MarketWatch)
GASBが、地方自治体の職員年金に関する給付債務の開示について、新たな提案を用意しているそうだ。そのポイントは次の通り。
  1. 積立不足の償却期間を、現役職員の残存勤務期間とする。
    現行では24〜25年で償却しているのが平均的な姿だが、この規定に変更となれば、10〜15年ということになり、償却期間が短縮される。つまりは毎年のコストはより重くなる。

  2. 給付債務のうちの積立不足をバランス・シートに計上する。

  3. 施行は1年半から2年後を目途。
目の前の積立不足に苦しんでいる自治体にとっては悪夢のような提案に見えるだろう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月23日 州政府年金:労組の抵抗 
Source :Public Unions Take On Boss to Win Big Pensions (New York Times)
上記sourceに付属していた資料を見ると、州政府職員年金の積立不足の深刻さがわかる。積立不足を解消しようとすると、かなり大幅な増税か、非現実的な高運用益を継続しなければならない。

従って、州政府としては、給付の減額が不可欠ということになるわけだが、これに強く抵抗しているのが、州政府職員の労組である。給付の減額は、彼らにとって過去の実績の否定につながるという意味で、面子がかかっている。年金給付の減額は州議会で可決しなければならないところから、労組は州議会議員への圧力を強めており、まさしく政治マターになっている。

労組としては、団体交渉権でも窮地に立たされており、激しく抵抗しなければならないという事情は理解できるものの、こうした形振り構わぬ運動は、州民からはどのように見られているのだろうか。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合

6月22日 集団訴訟は却下 
Source :Supreme Court blocks massive sex-discrimination suit against Wal-Mart (The Washington Post)
20日、連邦最高裁は、給与や昇進に関して性差別を行ったとしてWal-Martを訴えていた集団訴訟(「Topics2010年12月13日 制度的差別」参照)を却下した。理由は次の2点。
  1. 150万人にも及ぶ女性従業員(過去、現在とも)に影響をもたらす集団訴訟をこれ以上進めることはできない(←判事全員一致)。

  2. 全職場で共通に性差別が行われていたとする証拠が不十分。(← 5 vs 4)
これで、Wal-Martは巨額の損害賠償から免れたことになる。同時に、巨大な集団訴訟は受け入れられない、という先例にもなった。

問題は、性差別があったかどうかの証拠について、判事の間で意見が真っ二つに分かれている点である。しかも、再び党派別の賛否に分かれているのである(「Topics2011年5月28日 不法移民の雇用規制は適切(AZ州)」参照)。

Current Justices of the US Supreme Court (as of May 28, 2011)

Name Born Appt. by First day 今回の判決
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 賛 成
Antonin Scalia 01936-03-11 March 11, 1936 Ronald Reagan 01986-09-26 September 26, 1986 賛 成
Anthony Kennedy 01936-07-23 July 23, 1936 Ronald Reagan 01988-02-18 February 18, 1988 賛 成
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 賛 成
Ruth Bader Ginsburg 01933-03-15 March 15, 1933 Bill Clinton 01993-08-10 August 10, 1993 反 対
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994 反 対
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 賛 成
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 反 対
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010 反 対
こうした連邦最高裁の判事間での意見の対立が今後とも続くことになるとすると、医療保険改革法の保険加入義務や、同性婚(DOMA)を巡る訴訟についても、そうした対立構図を背景に判決が下されることになる可能性が高まっていく。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「司 法

6月21日 AARPが譲歩? 
Source :AARP Is Open to Cuts for Social Security Benefits (New York Times)
高齢者のための利益団体としては最大のAARPが、公的年金に給付抑制について、『将来の受給者』については検討し得る、との立場を表明したそうだ。公的年金制度の持続可能性にも配慮しなければならない、との観点からのようである。

かつて、AARPは、Medicare改革法案に賛成して、会員から大きな反発をくらったことがある(「Topics2003年12月2日 AARPの決断とその余波」参照)。今回も、当然そうした反発は充分に予想されるが、現在の連邦政府の財政状況、年金基金の状況をみれば、当然議論すべき課題であり、そうした課題に真摯に取り組む姿勢が信頼を生むことになる。

※ 参考テーマ「公的年金改革