12月19日 同性カップルへの税負担支援 
Source :A Progress Report on Gay Employee Health Benefits (New York Times)
同性カップルの場合、企業側が従業員のパートナーを配偶者としてみなし、医療保険プランへの加入等で異性カップルと同様のベネフィットを提供したとしても、連邦政府が同性婚を認めていない以上、連邦税制上は報酬が供与されたとみなされて、課税が発生する。

企業側は、それは連邦税法上の問題としてそのままにするか、一歩進めてその従業員の税負担分まで企業側がカバーすることにするのか、という選択が発生する。上記sourceでは、後者の企業が増えているとして、業界別にそうした対応を採っているかどうか個別企業ごとに示している。

同性婚の法律上の扱いに関する議論が進む中、企業の対応は、同性カップルを異性婚と同様に扱う方向で着実に進んでいるようだ。

※ 参考テーマ「同性カップル

12月18日 保険料に潰される 
Source :A staggering rise in health insurance costs (EPI)
この10年間で、 と、保険料は圧倒的な高騰ぶりである。

こんな生活にアメリカ国民はよく我慢できていると感心する。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

12月17日 ブッシュ減税延長法案:下院も可決 
Source :Congress Passes Tax Cut and Unemployment Package (New York Times)
16日、下院もブッシュ減税延長法案(H.R.4853)を可決した。下院民主党、特にリベラル派は最後まで抵抗した。遺産税の修正案の提出、投票までの手続きの先送りなどだが、いずれも空しく終わった。Obama大統領は17日にも署名する見通しだ。

(12月18日追記)

17日、Obama大統領は同法案に署名した。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「公的年金改革

12月16日 ブッシュ減税延長法案:上院可決 
Source :Senate approves tax cut deal; House Dems weigh amending estate tax (Washington Post)
15日、ブッシュ減税延長法案(H.R.4853)が上院で可決された。即日、下院に送られ、16日にも投票が行われる予定である。

再びPelosi下院議長は一敗地にまみれたのである。来期は下院民主党院内総務に就任することになっているが、よほどのことがない限り、その政治力・求心力は相当弱体化することになろう。

ところで、下院では、民主党議員が、"payroll tax holiday"の"one-time refund check"への変更を模索している。提案者であるRep. Brad Sherman (D-Calif.)の狙いは次のようなものだ。 仮にこうした修正案が採択されたとしても、再び上院で可決する必要があり、その見通しは厳しい。

一方、"payroll tax holiday"の問題点を冷静にまとめたコラム(Los Angeles Times)があったので、その要点をまとめておく。
  1. "Payroll tax holiday"は、恩恵を受けられない国民がたくさん発生し、公的年金制度も揺らぐ。

  2. 世論調査では、69%がブッシュ減税延長法案全体を支持しているが、57%が"payroll tax holiday"に反対している。

  3. 大きくまとめると、3つの問題がある。

    1. 減税対象が拡散

      1. 今回の"payroll tax holiday"は、Obama政権が導入した現行の"Making Work Pay Tax Credit"に代わるものである。

      2. この税額控除は、給与の6.2%相当になるように計算されていた。夫婦の家計所得が$12,900以上の場合には上限額($800)の税額控除が得られた。そして、夫婦の課税所得が$150,000を超えると税額控除は徐々に減額され、$190,000で税額控除額はゼロとなる。つまり、中間所得層に対象が絞られていた。

      3. ところが、"payroll tax holiday"の場合、労働者一人の負担減は課税対象上限額($106,800)の2%に相当する$2,136(夫婦とも高額所得者なら$4,272)が最大となる。しかも、いくら高額の所得があっても減額にならない。減額対象者が高額所得者にまで広がってしまうのである。

      4. また、夫婦の所得が$40,000未満の場合には、負担増になってしまう。

    2. 570万人の自治体職員が対象外

      一部の自治体職員は公的年金(social security)に加入していない。従って、今回の"payroll tax holiday"の恩恵は受けられない。彼らは、現行の"Making Work Pay Tax Credit"を利用できていた。

    3. 長期的に財政状況悪化のおそれ

      1. "Payroll tax holiday"による収入減は同額の一般財源により補填される一方、受給クレジットは賦与される。

      2. 2011年末になって、共和党議員達が、「"payroll tax holiday"の終了は増税にほかならない」と主張しない保証はあるのだろうか。

      3. そこで、2012年も財政赤字が拡大する可能性はないのだろうか。
公的年金の持続可能性を考えれば、相当危ない橋を渡ろうとしていることは間違いない。Obama大統領も連邦議会も深く考えずに結論を急いでいるようである。さて、ガイトナー財務長官はどのような見解を示すのだろうか。そう思って確認してみたところ、懸念表明はまったくないようだ(DOT)。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「公的年金改革

12月14日(1) 保険加入義務化に違憲判決 
Source :Judge Voids Key Part of Health Care Law (New York Times)
医療保険改革法のうち、個人に医療保険プランへの加入を義務化している規定について、州政府が憲法違反だと争っている(「Topics2010年9月25日 医療保険改革に対する州政府の反発」参照)。

このうち、単独で行動しているVA州の訴訟に対し、連邦地方裁判所は、13日、次のように判決を示した。 この判決の影響は大きい。少なくとも、これがずっと連邦最高裁まで認められていけば、保険加入義務化とほぼ見合いになっている保険会社への応諾義務についても揺らぐことになる。また、加入しない国民へのペナルティも取れなくなり、財源手当も見直す必要が出てくる。

もう一方のFL州がリーダーとなっている訴訟の方は、今週後半にもヒアリングが始まる予定だ(Los Angeles Times)。また、先の中間選挙で新たに当選した共和党知事も、この訴訟に参加することを検討している。

連邦最高裁の判断が出るのは2012年と見られているが、医療保険改革法に対する司法判断が下される日が徐々に近づきつつある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

12月14日(2) 失業給付の負の効果 
Source :Do Jobless Benefits Raise Unemployment? (BusinessWeek)
Obama大統領と連邦議会の共和党幹部は、失業給付の拡充策延長で合意しているが、もともと保守派には、失業給付は失業を助長する、もう少し丁寧に言えば、失業者が就職活動を一所懸命しなくなる負の効果があるとみている。

上記sourceでは、サンフランシスコ連銀のエコノミスト(Rob Valletta & Katherine Kuang)の試算を紹介している。それによれば、失業給付の拡充策により、2009年末時点で0.4%ポイント、2010年11月末時点で0.8%ポイントの失業率押し上げ効果があったという。
実際、10月末時点で340万の求人が満たされないままとなっている。もちろん、個々の労働者の事情によって失業給付の持つ意味は違うだろう。しかし、政策担当者としては、そうした負の効果もあり得るということを念頭に置いておくべきであろう。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

12月13日 制度的差別 
Source :The Re-Emergence of Discrimination Class Actions (Bureau of National Affairs)
職場における差別行為に対する訴訟は、基本的にEEOCが扱うこととなっている。そのEEOCによる訴訟が、従業員個人に対する差別行為に関するものから、職場全体における『制度的』差別行為を訴えるものに重点を移しつつあるという。

例えば、製薬会社Novartisに対して起こした訴訟では、セールス部門の女性職員に対する報酬と昇進に関する性差別があったとして、和解が成立した。同社は、総額$215M以上を支払うことになり、そのうち$152.5Mが5,600人に支払われ、$22.5Mが制度的変更の費用に、$40M超が弁護士費用等となった。なお、同社は、その後、セールス部門の1,400人をレイオフした(EBG Articles)。

また、Wal-Martに対しては、過去10年間に雇用した150万人の女性に対する給与面、処遇面で差別的扱いがあったとして、第9控訴裁判所が訴訟の有効性を認める判決を行った。しかし、これに対して、今月6日、連邦最高裁がWal-Martの訴えを受け入れ、『個別の訴訟が、従業員全体の代表となりうるかどうか』を判断することとなった。Wal-Martは、「採用・昇進は3,400ある事業所の個別のマネージャーが判断しているものであり、特定の従業員の問題提起がすべての従業員を代表しているわけではない」と主張している(Los Angeles Times)。

Obama政権が誕生し、政府における差別禁止に関する意識が従来以上に高まっていることは確かである。その象徴が、"The Lilly Ledbetter Fair Pay Act"であった(「Topics2009年1月31日 Obama政権立法第1号」参照)。

Wal-Martの件は、その規模もさることながら、同様に大量の従業員を抱える大企業にとって、その影響は深刻である。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

12月12日 MD州:同性婚承認を検討 
Source :With Democratic gains in state Senate, Maryland poised to approve same-sex marriage (Washington Post)
先の中間選挙で、地方選挙でも共和党が躍進したが、MD州では民主党がこれまで以上に強さを発揮し、州知事、州議会両院とも民主党が押さえている(比較表)。そうした中、いよいよ同性婚について正式に承認してはどうか、との動きがでているそうだ。

これまでも民主党が強かったのだが、教会勢力からの強い反対を受けていたために、踏み切ってこなかった。しかし、今年、D.C.で同性婚が正式に認められ、実際の運用も開始され、そうした抵抗も弱まっているとの判断があるのだろう(「Topics2010年3月5日(2) DCで同性婚」参照)。

MD州議会・知事が同性婚を認めれば、MD州は同性婚承認6番目の州となるのだが、ことはそう簡単ではない。

同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
California○→×(→○)*
Rhode Island
New York
Maryland
New Jersey
Oregon
Washington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Illinois
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
既に同性婚を承認しているNH州では、今度は共和党が両院を支配することになり、同性婚承認を覆すことを検討しているという。ただし、州知事は民主党である。

選挙のたびに認められたり覆されたりしていては、同性カップルの生活は不安定極まりない。やはり、早く連邦最高裁の判断を示すべきなのではないだろうか。

※ 参考テーマ「同性カップル

12月11日 "Doc Fix"凍結法案可決 
Source :House Passes Bill Averting Cut in Medicare Reimbursements (New York Times)
Medicare診療報酬を1年間凍結するという法案(H.R. 4994)が、9日、下院で可決された(「Topics2010年12月9日(1) "Doc Fix"1年延長へ」参照)上院では、既に8日、全会一致で可決されており、即日、大統領府に送付された。当然、Obama大統領は署名する予定である。

これから1年間、どのような議論が行われるのか、注目していきたい。

※ 参考テーマ「Medicare