Source : | Obama Signs Equal-Pay Legislation (New York Times) |
29日、Obama政権にとって記念すべき立法第1号の署名式が行なわれた。"The Lilly Ledbetter Fair Pay Act"(S. 181)である。さらに、記念すべき最初のObama大統領署名ペンは同法提案者のBarbara Mikulski (D-MD)上院議員へ、そして同法最後の署名ペンは法案のタイトルの由来となったMs. Lilly Ledbetterのもとにわたった(署名式)。Obama大統領は、「ゆっくり署名する練習をしてきた」そうだ。実は、この立法により、Ms. Lilly Ledbetterが救済されることはない。しかし、彼女は満足を得た。
そして、本当に偶然なのだが、当websiteでは、この法律のきっかけとなった最高裁判決の概要を紹介している(「Topics2007年7月17日(2) 180日では短すぎる」参照)。
今回の法改正のポイントは次の2点と思われる。
- 差別的な報酬の支払いがあった都度、訴訟権が発生する。これにより、例えば、給与の水準が差別的な場合、毎月、訴訟権が発生し、180日間有効となる。従って、勤めている限り、訴訟権は確保されることになる。
- 差別的な報酬により発生した差額については、過去2年間まで遡って賠償される。
Source : | States Take Aim At Medicaid (Wall Street Journal) |
下院の景気対策には、$87B規模のMedicaid支援策が盛り込まれている(「Topics2009年1月19日(1) 下院民主党の景気対策−医療関係」参照)。
上記sourceによると、各州のMedicaidプログラムは、運営の危機に瀕している。既に実施された縮減策で25万人が保険を失い、さらに万人単位で影響を被るとみられている。
- 25州がMedicaidプログラムの縮減を実施または提案している。
- 12州はSCHIPの縮減も検討している。
- 縮減の内容は次の通り。
- 加入制限
- 給付削減
- サービス提供体制の縮小
- 診療報酬の削減
このようにMedicaidの運営が危機に瀕している最大の要因は、景気後退に伴う税収の激減である。今後、あらゆる分野で州政府のサービスに支障が生じてくると思われる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Comparison of Key House and Senate COBRA Provisions (American Benefits Council) |
28日、下院で景気対策のための財政支出法案(HR 1)が可決された。投票結果は、見事に党派別となった。というか、共和党議員はすべて反対に回ったのに加え、民主党からも反対票が11票投じられた。Obama新大統領、Pelosi議長にとっては痛いところである。
上院は、来週水曜日の投票に向けて、同様の法案の審議を行なう予定のようだが、各論になると、上下両院案が異なってくる。先に紹介した通り、COBRA改正案も例外ではなく、上記sourceは、両院案の比較表である(「Topics2009年1月27日(1) COBRA上院案」参照)。
ポイントになりそうなところに黄色のマーカーを塗ってみたが、議論になりそうなのは、下院案(「Topics2009年1月24日 失業者への医療保障」参照)のうち、ということになろう。特に、2点目は、自己負担での継続ということなので、本当に実効性があるのかどうか、という観点からの議論が行なわれるのではないかと思う。
- 「非自発的失業者のCOBRA保険料補助」の期間
- 「中高年のためのCOBRA適用期間の延長」を盛り込むかどうか
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Effect of the Economic Crisis on HR Prgrams (Watson Wyatt Worldwide) |
アメリカを襲う経済危機の波の中で、大企業では人事政策の見直しが盛んになっているという。上記sourceは、117のアメリカ企業を調査した結果である。そのポイントは次の通り。こうしてみると、レイオフの位置付けが随分と軽いのだな、という印象を持つ。雇用調整はかなり深刻な事態という印象がある日本の場合とは、対照的である。
- 2009年に報酬制度を見直すとしている企業は、61%にのぼる。
- 昨年12月の時点で、レイオフを実施した企業は39%に達する。さらに、23%の企業が、今後1年間にレイオフを実施することを検討している。
- 既に実施した見直し例は、次の通り。
- 出張に関する規定の厳格化
- 採用停止
- レイオフ
- 休日レクリエーションの縮小、廃止
- 1割程度の企業が、401(k)プランのマッチング拠出を縮減した。
Source : | Senate Panel to Consider Nine-Month COBRA Subsidy (Workforce Management) |
景気刺激策の柱の一つとなっているCOBRA保険料補助金だが、早くも上院と下院の対立が始まっている。
先に示された下院民主党案では、「保険料補助は最長12ヵ月間」ということであった(「Topics2009年1月24日 失業者への医療保障」参照)。ところが、上記sourceによると、上院の財政委員会(Finance Committee)では、「保険料補助は最長9ヵ月間」という案を検討しているという。
上院Finance Committeeの委員長といえば、有力議員の筆頭、Baucus上院議員である(「Topics2008年11月22日 医療保険改革を推進する有力議員達」参照)。たった3ヵ月の差ではないかと思うが、これがすれ違いの始まりかもしれないのである。そして、いつものことなのである。
Obama新大統領にとって、この景気対策は、最初の試金石でもある。第一に、超党派でアメリカの経済危機に立ち向かえるのか。そして、第二に、議会民主党をまとめられるのか。つまりは、指導力を問われるのである。特に、力を持った議会民主党をまとめられるのかどうかは、これからの4年間を左右することになる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Chrysler eliminates jobs bank for now (AP) |
アメリカ政府からGM、Chryslerへの融資条件として、"Job Bank"の廃止が挙げられていた(「Topics2008年12月20日 Big 3 への緊急融資 」参照)。上記sourceによれば、UAWのChrysler支部から組合員への通知で、26日(月)から、Chryslerの"Job Bank"は廃止されたようだ。
Big 3とUAWの正式交渉は継続中だが、Chrysler労組は、逸早く廃止を仮決定したようだ。これには、ChryslerとFIATとの提携も関係しているのかもしれない。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」
Source : | Providing Health Insurance for Unemployed Workers - Summary of COBRA provisions in the economic recovery package (Committee on Ways and Means) |
上記sourceは、民主党下院の経済対策案に盛り込まれた失業者を対象とした医療保障対策の概要である(「Topics2009年1月19日(1) 下院民主党の景気対策−医療関係」参照)。
なお、ここでいうCOBRAとは、『離職した労働者自身が、保険料の102%を負担すれば、離職前の企業が提供している医療保険プランへの加入を最長18ヵ月継続できる』という規定である。CBOの推計によれば、850万人及びその家族の医療保険を確保することができる。大量解雇の波の中で、850万人という規模は、無保険者全体(4,500万人)に較べればそれほど大きくはないかもしれない。また、新たに発生した失業者を対象としている、という意味では、対処療法にすぎない。
- 非自発的失業者のCOBRA保険料補助
- 非自発的失業者(及びその家族)について、最長12ヵ月間、COBRA保険料の65%を補助する。
- 対象者は、2008年9月1日〜2009年12月31日の間に解雇された者。
- 再就職先で医療保険プランが提供された場合には補助を打ち切る。
- Medicaidの拡充
- 州政府がMedicaid加入対象者に失業者を加えることを認める。
- その場合、連邦政府は、給付に要する費用、運営管理費の50%を負担する。
- 対象者は、失業中で医療保険に加入していない者で、次のいずれかの要件に該当する者とする。なお、いずれの場合も、2008年9月1日〜2009年12月31日の間に解雇され、失業中の者に限る。
- 失業給付を受けている、または失業給付期間が終了した者
- FPL200%未満で、Medicaid加入資格を持たない者
- Food Stampsの受給者で、Medicaid、SCHIP加入資格を持たない者
- 中高年のためのCOBRA適用期間の延長
55歳以上、または勤続10年以上の場合には、65歳でMedicare加入資格を獲得するか、新たな就職先で医療保険プランに加入するまで、自己負担によりCOBRA継続加入を認める。
しかし、COBRA保険料への補助に一歩を踏み出したことは、大きな意義があると思う。2009年末までに経済情勢が好転していなければ、当然、延長ということになるだろう。そこで、MA州で実証済みのように、無保険者対策としての効果が認められれば、恒常措置とすることになるかもしれない(「Topics2009年1月6日(2) MA州失業者への保険料補助」参照)。暫くは、この措置案の動向に注目しておきたい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州」
Source : | Target-Date Fund Adoption (Index Universe) |
当初の見込み通り、DCプランにおけるTarget-Date Fundが急増している(「Topics2007年9月10日 PPAの最大の影響」参照)。後押ししているのが、PPA 2006で認められた自動加入制度(Automatic Enrollment)と、DOLが定めたデフォルト設定に関するガイドラインである(「Topics2007年9月13日(2) DC投資プランのデフォルト」参照)。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」
Source : | Health Insurance Coverage in Maryland through 2007 (Maryland Health Care Commission) |
Maryland州における無保険者の状況(65歳未満)がレポートされた。そのポイントは次の通り。当websiteでも紹介してきた通り、MD州とMA州は、ほぼ同時期から無保険者対策を検討してきた。しかし、MA州が大成功を収めたのに対し、MD州は、かえって、無保険者割合が高まってしまうという結果になった。たかだか3年で、大きな差がついてしまったようだ。
- 2000-01年の無保険者割合は12%であったが、2006-07は15%と増えてしまった。(P.11)
- 年齢別に見ると、19-29歳の無保険者割合が30%と際立って高い。(P.13)
- また、独身男性の無保険者割合も30%と高い。(P.13)
- 人種別に見ると、ヒスパニックの無保険者割合が46%にものぼる。(P.19)
- 勤労者で無保険者となっている人の内訳を見ると、従業員規模500人以上の企業の従業員が20%も占めている。(P.24)
※ 参考テーマ「無保険者対策/MD州」、「無保険者対策/MA州」
Source : | Our Health-Care System Needs a Bypass (BusinessWeek) |
"Instituton"を辞書(ジーニアス英和辞典)で引くと、などが出てくる。
- 設立、創立、開始、制定
- 慣習、慣行、制度、法令
- 機構、組織、学会、協会、施設、公共機関、団体
- 商社、会社
また、ここでの"bypass"は、血管移植手術のことを指している。
"Institutional bypass"とは、『旧来の制度、組織を介さずに課題を解決しよう』という考え方のようである。
上記sourceの著者は、アメリカの医療問題、とりわけ高齢者医療については、旧来の制度が完全に崩壊しており、まったく別の手法で解決できるのではないか、と提案している。そのポイントは次の通り。35,000人程度の小さな郡で実践してみたところ、2030年まで必要となる経費の推計は、次の通りとなったという。
- 高齢者のための24時間体制の地域医療ネットワーク("ElderPower")を、ボランティア・ベースで構築する。
- 病院のベッドや介護施設に頼るのではなく、高齢者や、地域の住民からの住居空間の提供に依存する。
- 高齢者自身もネットワークの支援側に回る。
そして、こうした従来型の制度、組織を使わずに、ネットワークで個人が参加する形でのサービス提供は、まさに、Obama新大統領が大統領選で実践し、成功したところであると指摘している。 これを読んでの感想を4点。
施設建設費 運 営 費 従 来 型 $70M $35M/Y ネットワーク型 $5M $2M/Y
- 確かに、こうしたネットワーク型の高齢者医療サービスの提供は検討に値すると思うが、これは、自治の精神を持ち合わせた独立した個人の集まった社会でのみ成立するのはないだろうか。一見、新しい公共サービス提供の仕組みのように見えるが、その源は、西部開拓時代のコミュニティのようにも見える。
- 同じ様なことかもしれないが、やはり小さなコミュニティでは成立するかもしれないが、悪意のメンバーがどこに存在するかわからないような大きな社会では、やはり無理なのではないだろうか。
- Obama新大統領の選挙キャンペーンは、確かに、"institutional bypass"であった。しかし、キャンペーンの手法はそうであっても、それはObama自身がInstitutionとなるための手法であったのではないだろうか。
- そうはいいながらも、課題解決のために既存の制度や組織が邪魔になることはよくある話で、そういうものと関わらずに白地に絵を描くようにできれば、どんなに楽なことだろうか。