1月10日 AARPの優先政策事項
Source :A Letter from AARP
上記sourceは、AARPから管理人宛に送られてきたメールである。当websiteの関心分野でいえば、医療保険改革、介護の充実、企業年金の保護、公的年金の強化、といった優先順位になっている。

AARPは、アメリカ国内で最も有力な圧力団体の一つであり、その発言力は強い。

アメリカの高齢者にとっても、やはり医療が最も関心の高い政策事項であり、公的年金がそれほどでもない、ということがわかる、面白い手紙である。

1月9日 NY州知事の提案
Source :EXPANDING HEALTH CARE COVERAGE AND INSTITUTING PREVENTIVE CARE FOR NEW YORK'S MOST VULNERABLE CITIZENS (NY Governor)
NYのPaterson州知事が、7日、一般演説を行なった。その中で、Paterson州知事は、無保険者対策を拡大するよう州議会に要請した。上記sourceは、その提案内容の概要である。

  1. 公的保険プランの拡充

    1. NY州には、およそ250万人の無保険者がいる。そのうち、半数は公的保険プランの加入資格を有する。
    2. 昨年、SCHIPの拡充を行い、NY州のすべての子供が加入できるようにした。
    3. 今度は、Family Health Plusの対象者をFPL200%にまで拡大することにより、40万人以上の新規加入者を見込む。
    4. 公的保険プラン加入の際に必要とされている資産テスト、指紋採取、面接テストを廃止する。
    5. Medicaidに関して、入院の診療報酬を引き下げ、救急医療の診療報酬を引き上げる。

  2. 保険加入できる被扶養者の年齢引上げ

    1. NY州の無保険者の31%は、19〜29歳である。
    2. NY州の規定では、企業が保険プランを提供する際、被扶養者の加入を義務付けていない。しかし、企業プランが被扶養者の加入を認める場合には、18歳以下の被扶養者(大学生の場合には22歳以下)まで加入させることとなっている。
    3. この年齢制限を引き上げ、学生かどうかにかかわらず、29歳以下の被扶養者の加入を認めるよう、規定を見直す。
    4. この場合、COBRAと同様、費用負担は全額従業員とする。

被扶養者の範囲を拡大するのはいいが、全額従業員負担ではカバレッジが本当に高まるのかどうか。資料でも指摘している通り、COBRAと同じでは、保険加入は進まないのではないだろうか。この点、実質的な保険料負担軽減策を導入したMA州の施策は優れていると思う(「Topics2009年1月6日(2) MA州失業者への保険料補助」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「無保険者対策/MA州」、「SCHIP

1月8日 折れたUAW
Source :Gettelfinger: UAW Will Seek Worker Approval for Contract Changes (Workforce Management)
四面楚歌の状況に陥っていたUAWが遂に折れた(「Topics2009年1月6日(1) UAW vs 債権者」参照)。年初までは、Obama新政権に対して条件の見直しを要求するとの強硬姿勢を保っていた(UAW)が、今週から、Big 3の組合員との間で、労働条件、報酬制度の見直しについて交渉を開始するという。

もちろん、UAWの幹部が方針変更したとしても、実際の労働協約の変更には、組合員の投票による承認が必要である。さらに、VEBAの条件変更には、裁判所の認可も必要だ(「Topics2008年9月3日 FordのVEBAも認可」参照)。

UAWにとって厳しい日々が続く。

両社の株価チャートは次の通り。 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「VEBA/Legacy Cost

1月7日 寛大な401(k)プラン
Source :McDonald's Supersized Retirement Plan (BusinessWeek)
上記sourceで紹介されているのは、マック(McDonald's)の401(k)プランである。マックのマッチング・システムは次の通り。 その結果、従業員が5%拠出すれば、企業拠出は最大11%となる。合計で報酬の16%を退職プラン原資として貯めていくことができるのである。

ここまでgenerousなプラン設計は稀である。マックがここまで寛大なプランを提供している背景には、これまた特異な転職率の高さ(43%)がある。こうした異様に高い転職率を何とか抑制しようという試みなのである。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「ベネフィット

1月6日(1) UAW vs 債権者
Source :US automakers seek concessions (Financial Times)
自動車メーカーとステークホールダーとの交渉が始まる。GMは今週から、Chryslerは既に昨年から、個別に話し合いを開始している。

メーカー側は、大幅な譲歩を引き出したいところだが、最大の難関はUAWである(「Topics2008年12月22日 追い込まれたUAW 」参照)。しかも、UAWは、Obama新政権、新連邦議会に対して、融資条件そのものの変更を求めていく考えである。

これに対し、融資条件を変更することで競争力が確保できないようであれば、一般の債権者達は、政府が支援する形でのChapter 11を選択するであろう、との見方を示している。他の債権者達の意向を無視してまでUAWは自らの主張を押し通すことができるのか。また、Obama新政権もそうした賭けに出られるのか。

結論は、あと一ヶ月余りで出される。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「VEBA/Legacy Cost

1月6日(2) MA州失業者への保険料補助
Source :Enrollment Increases by 73% in Massachusetts Premium-Assistance Program for Laid-Off Workers (Kaisernetwork)
MA州の無保険者激減のもう一つの理由が、これであったようだ(「Topics2008年12月30日 MA州無保険者激減」参照)。

MA州には、Medical Security Programという制度がある(MA州政府の公式サイトよりも、解説サイトの方がわかりやすい)。

この制度の適用を受けた人数は、2007年7,710人から、2008年約13,000人に増加した。特に、COBRAの保険料負担が重いところを補助するために、失業者でも医療保険加入が継続できる、ということと考えられる。

Obama新大統領も、COBRAの企業負担に補助するのではなく、失業者の保険料に補助をする方が、よほど効果的なのではないだろうか(「Topics2009年1月5日 Obama新政権の経済対策」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

1月5日 Obama新政権の経済対策
Source :Obama Considers Major Expansion in Aid to Jobless (New York Times)
上記sourceによれば、Obama新政権で打ち出す経済対策("American Recovery and Reinvestment Plan")に、失業対策関係の事項が盛り込まれるようだ。具体的には次の3点が挙げられている。
  1. パートタイム労働者を失業給付の対象に加える。

  2. COBRAに要する企業負担に対して補助金を出す(「Topics2007年4月8日 COBRAと共に去りぬ」参照)。

  3. 失業して医療保険を失った場合に、Medicaidへの加入を認める。
ところで、新大統領就任日には法案が大統領のデスクに用意されているはずであった、経済対策関連法案の取りまとめが遅れそうである(「Topics2008年12月16日(1) 新政権の経済対策&医療改革」参照)。連邦議会両党のリーダー達が、口を揃えて、取りまとめには時間がかかる、と発言し始めている(Financial Times)。

商務長官指名の辞退といい、経済対策の取りまとめの遅れといい、Obama新政権は出だしから躓きそうである。本当はこういう時に、ベテラン上院議員であるBiden新副大統領が活躍すべきなんでしょうね。

1月3日 医療保険改革の影響 
Source :Federal Study Concludes Health Insurance Reform Could Create Workforce Instability (Workforce Management)
CBOが、医療保険改革がもたらす影響について、調査研究を行った。
  1. まず、医療保険改革のパターンとして、次の3つを想定している。
    1. 税制優遇または補助金により、医療保険料に対する補助を行う。

    2. 個人に保険加入を義務付ける、または企業に医療保険プランの提供を義務付ける。

    3. 個人が自動的に保険加入するようにする。

  2. 上記3つのパターンのほかに、連邦政府による再保険制度を創設する、という選択肢もあるが、今回は研究対象としていない。

  3. 企業に医療保険プラン提供を義務付けた場合、早期退職者が増加する、転職率が高まる、といった影響が生じる。

  4. 加えて、低賃金の従業員を削減しようとする動きが強まるという。労働コストが高まることから、低賃金の従業員の採用はコスト割れになってしまうためである。

企業に医療保険提供義務を課した場合、社会的コスト全体が高まる可能性があることから、現実的には、企業に義務付けることは回避したほうがよさそうである。したがって、 といった方向性が現実的ということになろう。

こうして考えてみると、MA州の皆保険法は、大いに参考になる。ただし、MA州改革では、個人に保険加入義務を課していることがポイントとなっている。連邦レベルで、個人加入義務を課すことができるかどうかが重要な鍵となりそうだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州

1月2日 離職手当の見直し 
Source :Employers Reviewing Severance (Human Resource Executive Online)
経済状況を反映して、離職手当を見直す動きが多くなっているそうだ。

離職を促すために、手当を厚くするところもあるようだが、概ねは削減の方向ということだ。しかも、離職手当が書面で明示されている例は少ないらしく、事業主の裁量で変更できてしまうことが多いようだ。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

1月1日 NY州同性婚の扱い確認 
Source :Circular Letter No. 27 (State of New York)
NY州では、他州で認められた同姓婚を認知している(「Topics2008年9月5日 同性婚特需」参照)。そのNY州で、認知されている同姓婚者については、異性婚者と同様の保険適用をしなければならない旨、確認のレターが公表された。具体的には、雇用主が従業員の配偶者に医療保険プランを提供している場合、他州で婚姻を認められた同姓婚者の配偶者に対しても同等のプランを提供しなければならない、というものである。

NY州では、州政府職員について、既に同様の決定がなされている(「Topics2008年4月4日 NY州同性カップルのベネフィット」参照)。これで、民間企業の場合でも同様であることが確認されたことになる。

同性カップルにとって、東海岸はパラダイス、西海岸は鬼門、ということになっている(「Topics2008年11月6日 選挙結果(2)-Proposition 8」参照)。

※ 参考テーマ「同性カップル