11月9日 MA州皆保険法 企業は評価
Source : After The Mandates: Massachusetts Employers Continue To Support Health Reform As More Firms Offer Coverage (HEALTH AFFAIRS - Web Exclusive)
上記sourceは、MA州皆保険法が施行された後、MA州の企業が同法をどのように評価しているかを調査したものである。その結果の中から、注目点を挙げると次のようになる。
- MA州皆保険法の制定について、52%が賛成、33%が反対を表明している。ただし、企業規模による差はほとんどない。
- 『すべての企業が従業員への医療保険提供に何らかの責任を持つべき』との考え方に賛成する企業が77%に達している。また、『従業員10人以下の企業を免責にすべきではない』との考え方も、賛成する企業が53%に達している。
- 年額$295のFair Share Contribution ("Pay")について、適正と考えている企業が4割以上となっている。また、従業員11人以上の企業で見れば、少なすぎるとの見方が30%を超えている。
- カフェテリアプラン(§125プラン)を提供している企業を見ると、2007年から2008年にかけて確実に増えている。ただし、従業員1000人以上の企業では100%近くに達しているものの、その他の企業では、まだまだ提供していない企業も多い。(「Topics2006年7月3日 MA皆保険法の実施案」参照)
- 2007年から2008年にかけて、医療保険プランを提供している企業の割合は高まった。これは、従業員規模に関わらない。
- 1000人以上規模の企業では、HIRD(HEALTH INSURANCE RESPONSIBILITY DISCLOSURE)の提出のための事務が負担となっていると考えられており、45%が大変負担、29%がかなり負担と答えている。(「Topics2006年7月3日 MA皆保険法の実施案」参照)
これらに関してコメントをいくつか。
- a.について、MA州がいかに経済界の意向を確認しながら法制化を進めてきたかがわかる数字である。こうした関係者の理解を得ながらでなければ、法の制定、施行には至らない。不満が極めて小さい部分であることがわかる。
- Fair Share Contribution ("Pay")については、時期を見ながら段階的に引き上げてもいいかもしれない。低すぎるとの見方があること(c.)に加え、"pay"さえすれば"play"はしなくてもいい、との考え方につながる恐れがあるためだ。
- MA皆保険法では、事業主の責任として、従業員11人以上の企業については、カフェテリアプランの提供が義務付けられている。その履行が確実に行われていないという実態が明らかになった(d.)わけで、今後の課題として位置づけられる。
- 法案審議の過程で懸念されていた『クラウディング・アウト』(=医療保険プランの提供をやめ、Fair Shareを支払うことを選択する企業が増加する)は発生していない(e.)。むしろ、積極的に医療保険プランを提供しようという企業の姿勢が窺われる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」
11月8日 公立大学生への打撃 Source : College Tuition Just Keeps Climbing (BusinessWeek)
アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融危機は、2つのルートで公立大学生に打撃を与えている。
- 企業活動の停滞 ⇒ 州政府の税収減 ⇒ 州政府の財政支出削減 ⇒ 公立大学への支援縮小 ⇒ 授業料引き上げ
- 金融機関からの学生向け教育ローンの提供停止
2番目の方は直接的な影響としてわかりやすい。1番目の方は、州政府が公立大学を積極的に支援してきたこと(「Topics2005年1月18日 大学生に対する公的支援と税制
」参照)の裏返しであり、構造的な課題といえる。
※ 参考テーマ「教育」
11月7日 労組の意気込み Source : Labor Seeks Election Rewards (Washington Post)、Corporate America gears up labour battle (Financial Times)
出口調査等により、労働組合がObama新大統領誕生に大きく貢献したことが明らかになっている。これを背景に、労組は政策要望の実現に向けて積極的な姿勢を見せている。
なかでも、労組の存在意義を左右するとも考えられる、The Employee Free Choice Act (EFCA)(H.R. 800)の成立には全力を挙げてくると見られるし、Obama新大統領も積極的に対応するのではないかと思われる(「Topics2008年10月6日 再びEFCAに焦点」参照)。
アメリカ企業にとってはコスト高につながるというデメリットはあるものの、長期的には良好な労使関係の構築、多重的なコーポレートガバナンスの実現などにより、より優れたエクセレント・カンパニーに脱皮するチャンスでもある。そうした中で、厳しい経営環境も考慮しながら、経営者報酬の抜本的な見直しなども行われていくのではないだろうか。
※ 参考テーマ「労働組合」
11月6日 選挙結果(2)-Proposition 8 Source : Calfornia Result - Proposition 8 (The Los Angeles Times)
開票当初から、賛成票が過半数を占め続け、最終的にも可決となった。日本時間の6日9時30分に上記sourceを確認したところ、開票率99.7%で、賛成52.5%、反対47.5%となっていた。
めずらしく、出口調査ならびに事前の世論調査が当たらなかった(「Topics2008年11月1日 Proposition 8」参照)。世論調査では、沿岸部に反対が多い、とされていた。実際、上記sourceでみれば、沿岸部での反対が多いことはわかるが、沿岸部でも南部の方は賛成が勝っている。肝心のLos Angelesも、僅差(50.4% vs 49.6%)ではあるものの、賛成票が上回った。
今回の歴史的な選挙ムードの中で、投票率が高まり、そのあおりでPropositon 8への賛成票もより多く投じられたのではないかと思われる。こういう面では、アメリカ一般国民の保守的傾向は、まだまだ根強いのかもしれない。大統領選でObama候補が勝った郡と、Proposition 8への反対が勝った郡とを較べると、沿岸部では一致するものの、『Obama支持=Proposition 8反対』とはなっていない郡が多い。この辺りが、世論調査や出口調査とは異なる結果になった理由ではないかと思われる。
これで、3州あった同性婚容認州は、MA州、CT州の2つだけとなり、西海岸の拠点が失われたことになる。
この結果を受け、同性婚容認派は、3つの訴訟を起こしたという。Los Angeles Timesによれば、同性婚容認派の論点は次の通り。
- 同性婚禁止提案(=Proposition 8)は、違法な(州)憲法修正提案である。今回の憲法修正提案は、憲法が保証する「平等な保護」を覆すものである。憲法修正提案には、議会の事前同意が必要である。
- 今回の訴訟の結論が出るまでは、Proposition 8の発効を停止すべきである。
- 訴訟とは別に、既に18,000組が同性婚の証明書を受給したと見られており、その法的有効性を確保することも重要である。
- ただし、連邦裁判所への訴訟は控えるよう呼びかけている。連邦最高裁で同性婚は無効と判決された場合、ダメージが大きい。
当面は、これら3つの訴訟と、CA州政府(=シュワ知事)の動向が注目されるところである。
※ 参考テーマ「同性カップル」
11月5日 選挙結果 Source : Election Result 2008 (New York Times)
結果を記録しておく。
- 大統領選はObama候補(D)の圧勝
- 上院は、58 vs 41 (12月11日時点)で、これも民主党の圧勝。ただし、当websiteが注目していた60議席に届かない。残り1議席の争い(「Topics2008年10月30日 民主党が勝つと・・・」参照)。今の時点では、共和党候補者がリードの模様。(12/11修正)
- 下院も、257 vs 177 (12月11日時点)。残り1議席(12/11修正)で、これも民主党圧勝。
ということで、上院民主党が60議席に届くかどうか。届けば、民主党がフルラインで政策を動員できる。仮に届かなくても、民主党の意向が通りやすくなったことは間違いない。
11月1日 Proposition 8 Source : The Field Poll (Field Research Corporation)
大統領選が11月4日に迫っているが、同日、CA州では州民投票が行われる。そのうち、最も注目されているのが、"Proposition 8"である(「Topics2008年8月16日 CA州民投票」参照)。
上記sourceは、そのProposition 8に関する世論調査の結果である。現在のところ、5%差で、反対派が勝っているようだが、注目したいのは、賛成派、反対派それぞれの属性である。
- 民主党支持者に反対が多い。共和党支持者では賛成が圧倒的多数。
- Obama支持者には反対が、McCain支持者には賛成が圧倒的多数。
- 沿岸部では反対が多く、内陸部では賛成が多い。
- 保守的であれば賛成が多く、リベラルの度合いが強まるにしたがって反対が多い。
- 男性の間では賛否が拮抗しているが、女性の間では反対が強い。
- 65歳以下では反対が過半数となっているが、それよりも年をとると賛成が多い。
- 人種別では、ほぼ反対が多い。ただし、アフリカ系だけは賛成が多い。
- 高学歴ほど反対が多くなる。
- プロテスタントでは賛成が圧倒的だが、カソリックでは反対のほうが多い。
大統領選、連邦議会選で民主党投票が多くなると見られる中で、このProposition 8の投票結果はどうなるのか。上の属性を見る限り、反対多数で否決されそうな感じである。そうなれば、CA州での同性婚の法的実効性は高まることになるだろう。
※ 参考テーマ「同性カップル」