10月30日 民主党が勝つと・・・ Source : Early Voters Breaking Records (Washington Post)

アメリカ大統領選、連邦議会選は、11月4日(火)に予定されている。アメリカでは事前投票がかなり自由にできるようになっており、30州で特別な理由なくても事前投票が認められている。

毎回、事前投票を行う国民が増えており、2000年は6分の1、2004年は5分の1、今回は全体の3分の1が事前投票を行うと見られている。実際、既に1600万人は投票を終えているそうだ。

その事前投票を行った有権者を対象に、いわゆる『出口調査』を行ったところ、Obama 59%、McCain 40%という結果が出たそうだ。事前投票の出口調査は、過去2回、実際の投票結果とほぼ似たものとなっている。

そうなると、Obama新大統領は医療政策で何をするのか。同じくWashington Postによると、MA州が実施している皆保険法に近い政策を進めようとするのではないか、とされている。ただし、個人の保険加入義務ははずして(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)。

また、Pelosi下院議長は、医療情報のIT化を推進する法律を実現したいと考えている(Kaisernetwork)。しかも、医療情報のIT化に協力しない医療機関に対しては、Medicareの償還払いを差し止めるというペナルティまで用意しているという。

サブプライムローン問題に端を発した今回の金融不安、景気後退により、大統領選、連邦議会選とも民主党が有利になっている。仮に大統領、連邦議会上下両院とも民主党が制すことになれば、ねじれ現象は解消し、民主党の政策綱領の実現可能性は格段に高まる。

大統領選の結果が見えてきた今の段階で、当website管理人の関心事項は、次の2点である。
  1. 上院で民主党が60議席を確保できるかどうか
    予算関連、人事、法案審議等をスムーズに決めていくためには、60議席を確保できるかどうかは決定的に重要である。
  2. 選挙結果判明後、Bush現大統領が権限の移管を宣言するかどうか
    こんなことが合衆国憲法上認められているのかどうかは知らないが、規定に従えば、来年1月20日が新大統領就任式である。選挙結果が判明してから2ヵ月以上も空白期間が生じる計算になる。未曾有の金融危機の只中、しかも年末越えの資金繰りが怪しいと見られている状況で、それほどの長期間の政治空白は回避すべきであろう。
    むしろ、積極的に現大統領から新大統領に実質的に権限を移管し、新しい連邦議会とともに、経済対策に注力すべきなのではないだろうか。
※ 参考テーマ「大統領選(2008年)」、「無保険者対策/MA州」、「ICT

10月29日 地方政府の年金積立不足 Source : US public pension funds face big losses (Financial Times)

上記sourceによれば、今年の1月から9月までの9ヵ月間で、州政府の年金プランは、資産の14.8%を喪失したそうだ。あのCalPERSも、1月から10月20日の間に、資産の20%、$40B以上を失った。これだけの未曾有の金融危機にあっては、こうした事態になったとしても致し方ないだろう。

2700ある地方政府の年金プランのうち、約40%は積立不足に陥っているという。以前から地方政府の積立不足は問題になっていた(「Topics2006年1月27日 州政府職員年金の積立比率」参照)が、さらに事態は悪化したということになる。

経済情勢の悪化により、税収が減少することは間違いなく、地方政府の財政にとっては、ダブルパンチということになる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

10月28日 離職手当もカット Source : Now Severance Packages Are on the Chopping Block (BusinessWeek)

アメリカ企業でレイオフが広がりつつある(「Topics2008年10月23日(2) 広がるレイオフ」参照)が、離職手当が支払われないケースが増えているという。理由は様々だが、上記sourceで紹介されているのは、 といったものだ。

後者の事例は、やりきれないものがあると思う。事業主側の事情で『転籍』を繰り返したために、在籍年数が短くなって受給資格がなくなったのだから、従業員にとってみればたまったものではない。

また、前者については、とうとうそこまできたか、という感である。そもそも、離職手当は、企業側からの任意の手当であり、その変更も企業側の自由である。しかし、この離職手当にはそれなりの意義があり、企業側もその意義を認めて支給してきたはずである(拙稿「アメリカ企業の解雇の実態 (2002/10/11)」参照)。 それを、ない袖は振れぬとばかりにカットしてしまうのは、アメリカらしいといえばそれまでだが、マイナスの影響も大きいだろう。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

10月25日 保険会社のパワー Source : The battle of the medical bills (Los Angeles Times)

どうやら、アメリカでは、医者・医療機関や患者よりも、保険会社のパワーの方が圧倒的に強いらしい。 つまり、寡占が進んでいるのだ。そのため、医療機関からの償還請求が拒否されたり、支払いが遅れたりして、医療機関の倒産が起きたりしているそうだ。倒産まで行かないまでも、保険会社との交渉を嫌って、患者による支払いのみとしているところもあるという。その場合は、患者が保険会社に償還請求することとなり、ますます交渉力は弱まる。

加えて、診療行為や手術に関して、保険会社の事前承諾を得るために、医療機関側の事務コストが膨大なものとなっている。上記sourceで紹介されている推計では、事務コストの診療費に対する割合は30%以上となっており、全米では約$630Bにも達する。隣国のカナダの場合、その割合は16.7%であり、約半分である。

"Auto teller"と呼ばれる日本の保険者とは、随分な違いである。

確かに、保険会社が強力な交渉力を持っているのだが、その保険者が医療機関、患者のどちらを向いているかも大事であろう。管理人の印象では、地域の中核をなすような総合病院と保険会社は、一種の連携を取っているのではないかと思われる。これまで、『診療報酬の引き上げ→保険料の引き上げ』という循環を繰り返してきたのだから。

10月24日 PBGCの損失拡大 Source : U.S. Insurer of Pensions Has Lost $2 Billion (New York Times)

PBGCの資産喪失規模は、$2Bを超えるようだ。背景には、PBGCの運用方針の変更があることは間違いない(「Topics2008年10月3日 PBGCの財政危機」参照)。

連邦議会下院は、今日(24日)、再びPBGCからヒアリングを行うようである。9月の議会証言で、PBGCは、『従来の投資ポートフォリオでは、赤字から脱却できる可能性はわずか19%しかなかったが、新ポートフォリオの下では57%にまで高まる』と説明している。

これに対して、Miller下院議員をはじめ、民主党議員達は怒っており、しばらくはPBGCに対して集中砲火を浴びせるのではないかと思われる。

なお、上述の議会証言は、PBGCの活動全般、資料、最近の制度改正などを説明しており、大変参考になる。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

10月23日(1) 経営者報酬に司法介入 Source : A.I.G. to Suspend Millions in Executive Payouts (New York Times)

今回のアメリカ金融危機で、AIGはNY連銀から$120B以上の緊急融資を受けている(Financial Times)。そのAIGの経営者報酬について、司法介入が行われた。

発動したのはNY州司法長官で、そのポイントは次の3点(原文)。
  1. 元CEOに対する報酬支払いを一切凍結する。雇用契約に基づく元CEOの報酬は、$19M以上に達するものとみている。

  2. AIG Financial Products(AIGの子会社)にある役員用報酬支払い基金($600M)を凍結する。

  3. $600M基金のうち、AIG Financial Productsの元CEOは$69M、その他役員5人は$93Mの取り分を持っている。
NY司法長官は、既に支払われた経営者報酬の強制返還も検討しているという。

AIGは、財務省の不良債権買取&公的資本注入プログラム(「Topics2008年10月15日(1) 9行の経営者報酬」参照)の対象とはなっていないため、こうした措置が取られた。やはり、アメリカ社会は、不正な報酬支払いがあったとして司法介入する道を選択したようである(「Topics2008年9月24日 離職手当制限の難しさ」参照)。

10月23日(2) 広がるレイオフ Source : The Coming Pink Slip Epidemic (BusinessWeek)

10月の雇用統計は11月7日に公表の予定だが、厳しくなるとの見通しが一般的である。上記sourceにあるように、雇用調整の動きが全産業的に広がりつつあるからだ。

そうした中、光明が見出せるとすれば、医療とエネルギーとされている。しかし、これらの産業は、いわば生活インフラの部分であり、『雇用増⇒コスト増』という構図が透けて見えている。あまり、国民経済的にプラスというイメージにはなりにくいのではないか。

10月22日 州別失業率 Source : Local Area Unemployment Statistics (Bureau of Labor Statistics, DOL)

9月のアメリカ失業率は6.1%と、かなり高い水準が続いている。9月は、リーマン・ブラザーズ破綻という、まさにカテゴリー5級のハリケーンが到来した月なので、当然の結果であろう。むしろ、今後も悪化は続くものとみられる。

ところで、この9月の失業率を州別に見てみると、結構いろいろなことが見えてくる まずは、都市別分布を見てみると、フロリダ、カリフォルニア、ミシガンの辺りが真っ赤(=全米平均を上回っている)である。州別にみても、ミシガン、カリフォルニアなどは、最悪の部類に入る。

他方、北東部は意外と失業率は低い。ニューヨークなどはもっと上がっていてもいいような気もする。これから上昇してくるのかもしれない。

もう一つ意外なのが、ワシントンDCの失業率の高さである。ハイテクやバイオ産業、官公庁、シンクタンクが集積していることで、活気を保っているのかと思っていたが、そうでもないらしい。

10月21日 MA州ペナルティ若干強化 Source : New Regulation Implementing Fair Share Contribution Requirement (Mintz, Levin, Cohn, Ferris, Glovsky and Popeo P.C.)

MA州のFair Share Contributionの要件改正が固まったようだ。州知事のペナルティ強化提案(「Topics2008年8月15日 MA州ペナルティ強化」参照)からは後退し、『若干の』強化策となった。

ポイントは次の通り。
  1. Fair Share Contributionの2要件
    第1要件:四半期で次の値が25%以上となる。
    (事業主が提供する医療保険プランに加入している正規従業員の勤務時間数)÷(全正規従業員の勤務時間数)×100
    第2要件:年間90日以上勤務した正規従業員について、保険料の33%以上を事業主が負担している。
  2. 正規従業員50人超の企業

    次のどちらかを満たしていれば、Fair Share Contributionは求められない。

    • 上記第1要件、第2要件の両方を満たしている。
    • 四半期ベースで、正規従業員の75%以上が企業が提供する医療保険プランに加入している。


  3. 正規従業員50人以下の企業

    上記第1要件、第2要件のどちらか一方を満たしていれば、Fair Share Contributionは求められない。
これらの措置により、約$30Mの財源が手当できるという。

そこで、コメントを2点。
  1. 50人超の企業にとっては、第1要件と第2要件の両方が求められることになったため、若干の規制強化となる。新たに追加された要件(75%ルール)の方は、おそらくマージナルな部分ではないと思われる。

  2. 50人以下の企業に関する要件は、従来と同じだが、以前は、従業員10人未満は対象となっていなかった。その分、規制強化となる。
このように、少しずつ、規制強化を進めることにより、皆保険に近づけていこうという戦略のように思われる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州