9月30日 金融安定化法案否決

朝のニュースを見ていてびっくりした。アメリカの金融安定化法案(HR 3997)が連邦議会下院で否決された(「Topics2008年9月29日 報酬制限で合意」参照)。

投票結果を見ると、次のようになっている。
 賛 成反 対無投票
民主党14095-
共和党651331
合 計2052281
両政党の指導者と大統領府の間で合意に至った法案が、議会でこれだけの大差で否決されるのはめずらしい。Bush大統領、Pelosi下院議長の面目は丸つぶれである。

ところで、同法案に盛り込まれていた経営者報酬制限条項だが、概ね次のようなものであった。同条項は、財務省が直接個別金融機関から資産を購入した場合と、オークションにより購入した場合に分かれている。 これでは、不良債権をオークションで売却した金融機関の経営者は、まるまる巨額の離職手当を手にすることができる。国民の怒りは収まらない。選挙を控えた下院議員達が反乱を起こしたのも無理はないか。

今後の注目は、法案修正内容とプロセスである。

9月29日 報酬制限で合意 Source : Compromise at top of bail-out's agenda (Financial Times)

金融安定化法案が10月1日にも成立する見込みと報じられている。間もなく、全容も明らかになるだろう。

当websiteで注目してきた経営者報酬(「Topics2008年9月26日(1) 金融機関経営者の報酬」参照)について、上記sourceでは、次のような合意内容となっていると報じている。 詳細が明らかになるのを待ちたい。

9月27日 働く母親にやさしい企業ベスト100 Source : 100 Best Companies 2008 (Working Mother)

今年も、"Working Mother"が「働く母親にやさしい企業ベスト100」を公表した。

上記sourceを眺めてみての感想をいくつか。
  1. 業種としては、金融、製薬、病院、監査法人といったところが目立つ。

  2. 公的管理下に入ったFannie MaeFreddie Macもランクインしている。

  3. ランクイン最長は、IBM、Johnson & Johnsonの23年。伝統ある企業でもしっかりと入っている。

  4. 特に、IBMはBest 10にも入っている。特徴的なのは、休業期間を最長144週も認めていることである。FMLAによる12週(法定)に加算すると、丸3年間の休業を保障していることになる。

9月26日(1) 金融機関経営者の報酬 Source : $2 billion pay day for failure (BusinessWeek)

San Diego State UniversityのDeBoskey教授が、SEC提出資料をもとに、金融機関の経営者の報酬を算出したとのことである。そのポイントは次の通り。
  1. 各金融機関経営者のトップ5について、最近5年間の報酬を推計した。

  2. AIG、Fannie Mae、Freddie Mac、Lehman、Goldman Sachsの5社については、合計57人が総額$2.1Bの報酬を受け取っている。

  3. その中には、Goldman Sachs会長(2003〜2005年)を務めたPaulson財務長官も含まれる。彼の報酬総額は$82Mと推計されている。

  4. 個別金融機関別(5年間総額)に見ると、次のようになる。
    • Lehman - $743M
    • Goldman Sachs - $726.5M
    • AIG - $336M
    • Fannie Mae - $207.2M
    • Freddie Mac - $90M

  5. この手法を金融機関全体に当てはめてみると、5年間の報酬総額は$27Bにのぼることになる。
現在、不良債権買取制度で用意しようとしている公的資金は$700Bである(「Topics2008年9月24日 離職手当制限の難しさ」参照)。民主党は、この買取制度創設の条件として、経営者報酬の制限を持ち出しており、報道ベースでは、週末にも合意がみられそうである。

確かに、上記5社の一人当たり平均報酬(5年間総額)は$37M、日本円にすれば、39億円にも相当する。日本でも10年前の金融危機の際、銀行経営者の退職金が問題になったが、桁が違う。アメリカ国民、議会が怒るのも無理はない。

9月26日(2) Part B保険料据え置き Source : CMS ANNOUNCES MEDICARE PREMIUMS, DEDUCTIBLES FOR 2009

Medicare Part Bの2009年の保険料、免責額が公表された。

基本保険料、免責額は、2008年と同額となり、2000年以来、初の据え置きとなった。ただし、所得に応じて求められる上乗せ保険料については、昨年よりもさらに傾斜がついた形になっている(「Topics2007年10月2日(2) Medicare保険料」参照)。選挙を意識した対応ということなのだろうか。

9月25日(1) Delphi年金凍結 Source : Delphi wins court nod to freeze pension contributions-WSJ (Reuters)

Delphi救済策(「Topics2008年9月16日 Delphi救済策」参照)のうち、年金プラン(DB)凍結について、破産裁判所の判決が下りた。ポイントは次の通り。
  1. DBプランへの拠出の凍結を認める。

  2. 凍結開始時期は、ホワイトカラーについては9月30日。ブルーカラーについては労組との合意ができた時点。

  3. DBプラン凍結の代替措置として、DCプランを提供する。
DBプランの給付債務$3.4BをGMに移管する件は、引き続き審理中である。

GM、Fordの株価動向は次の通り。 ⇒ GM  Ford

9月25日(2) 急成長するMedical Tourism Source : Medical Tourism Business Projected To Grow Eightfold by 2010, Study Finds (Kaisernetwork)

Medical Tourismは、2010年までに8倍にまで成長するとの見込みである。上記sourceのポイントは次の通り。
  1. 現在、海外の病院で治療を受けるアメリカ国民の数は75万人だが、2010年までに8倍の600万人にまで増えるとの予測が公表された。

  2. そのお蔭で、Medical Tourism産業には、$2.1Bの収入が見込まれている。

  3. 海外における認定病院は250病院(30ヵ国)だが、2012年までに倍増する見込みである。
もちろん、Medical Tourismには、メリットと懸念の両面があることは、当websiteでも紹介済みである(「Topics2008年3月21日 医療の国際標準化」参照)。こうした現象は、処方薬の再輸入問題とよく似ている。アメリカ政府当局や連邦議会がこれからどう反応していくのか、注目していきたい。

9月24日 離職手当制限の難しさ Source : Wall Street Bailout Could Crimp CEO Pay (BusinessWeek)

アメリカの金融市場安定化策は、ついに不良債権買取制度の創設にまで議論が及んだ(財務省Press Release)。

現在、議会において、そのスキームを法制化する議論が行われている。連邦議会の多数を握る民主党は、財務省の執行を監視する機関を創設するとともに、不良債権を買い取ってもらった金融機関の経営者の報酬、離職手当を制限すべき、との主張を行っている。

しかし、実際に制限するとなると、その手法は難しく、法律や企業の報酬規定の変更により強制的に抑制しようとすれば、経営者側からの訴訟ラッシュになる可能性がある。上記sourceによれば、唯一抑えられるとすれば、経営者を背任罪などで刑事訴訟すれば、取引として報酬の一部または全部を、返還、放棄する可能性があるという。

今回の金融不安騒動で、アメリカの契約社会というものが変質するのかどうか、興味のあるところである。

9月21日 GSEの新CEOs Source : No golden parachutes for ex-CEOs at Fannie, Freddie (USA TODAY)

「Topics2008年9月13日 GSEの離職手当」のフォローアップである。

Fannie MaeFreddie Macの監督官庁であるFederal Housing Finance Agency(FHFA)は、二人の元CEOの離職手当を全額差し止めるのか、一部を差し止めるだけなのか、まだ態度を明確にしていない(Washington Post)。

一方、注目の後任のCEOだが、早々に指名されている。
Fannie MaeHerbert Allisonformer CEO at mutual fund company TIAA-CREF
Freddie MacDavid Moffettformer vice chairman of U.S. Bancorp
上記のWashington Postの記事によれば、二人の報酬額は前任者に比べてはるかに少ない、とされている。少額であってもここはお国のために働くことで名誉なことと考えているのだろうか。また、彼ら自身の離職手当はどうなっているのだろうか。もっと知りたいところである。