9月16日 Delphi救済策 Source : Delphi and General Motors Enter Into Modified Settlement and Restructuring Agreements (Delphi Press Release)

先週末の12日、GMによるDelphi救済策が公表された(「Topics2008年8月19日 Delphiの苦境」参照)。その概要は次の通り。
  1. GMによる救済策は総額$10.6Bに達する。

  2. GMへの年金給付債務の移行額を、従来の合意額$1.5Bから拡充して$3.4Bとする。

  3. Delphiに残された年金プランの積立比率を100%とする。

  4. DBプランを凍結し、CBまたはDCプランその他を提供する。

  5. これらの救済策に関する関係者意見陳述は、9月23日に予定されている。
まずは、PBGCの要求をGMが受け入れた形となった(「Topics2008年9月12日 PBGC vs GM」参照)。一応、PBGCも歓迎しており、協力を約束しているが、しばらくはPBGCとGMの睨み合いが続きそうである(9/17修正)

GM、Fordの株価動向は次の通り。 ⇒ GM  Ford

9月14日 Obamaの企業年金改革案 Source : Senator Obama's pension proposals (JPMorgan Chase&Co.)

上記sourceは、Obama上院議員の選挙公約のうち、企業年金改革案について整理、解説したものである。ポイントは次の通り。
  1. 個人勘定(IRA)の義務化

    1. 退職年金プランを提供していない企業には、従業員のIRA加入を義務化する。

    2. 自営業者には、新たな貯蓄プランを用意し、国税庁からの還付金を直接振り込むことができるようにする(選択性)。

    3. 転職した場合には、自動的に転職先のプランに移管できるようにする。

    4. 事業主の負担を軽減するために、天引き制度が利用できるようにする。また、制度導入にかかるコストについて一時的な税額控除制度を設ける。

    5. 従業員10人未満または創業から2年未満の企業は義務化の対象としない。

    6. 管理コスト、投資成果について、解りやすく明確な言葉での開示を求める。

    7. 連邦職員を対象としたThrift Savings Planと同様のデフォルトの運用プランを用意する。管理コストを抑え、自社株はデフォルトプランには含めない。

  2. 貯蓄インセンティブの拡大

    1. 年間所得$75,000以下の家庭について、現行のSavers Creditを拡充し、貯蓄のうちの最初の$1,000に対して50%のマッチング拠出をする。

    2. このマッチング拠出は、還付付き税額控除とする。

  3. 年金プランの情報開示強化

    1. 年金プランを持つ企業の全ての従業員が、投資成果等に関する詳細な情報を得られるようにする。

  4. 労働債権の強化

    1. 倒産の際の労働債権を強化する。

    2. 倒産の際、経営陣よりも従業員により犠牲を強いるような企業の要求を、破産裁判所が認めないようにする。

    3. 企業が破産申請をした際、従業員、退職者の職やベネフィットを守る。破産申請の間、従業員の年金資産が減価していく中、経営陣へのボーナスの支払いを認めない。

    4. 不払い賃金やベネフィットに関する請求額を増額する。

    5. 退職者ベネフィットの削減が可能となる条件を厳格化する。

2の貯蓄インセンティブの拡大はバラマキとみておけばいいとして、本質的には、1のIRAの義務化と4の労働債権強化は興味深い。特に、労働債権の強化は、当websiteの初期のメインテーマであっただけに、もしObama上院議員が大統領に就任するようであれば、その具体化のための政策動向を追っていきたい(拙稿「アメリカ倒産手続きにおける労働債権の取り扱い〜Enron倒産事件を例証に〜 (2002/9/4)」参照)。

9月13日 GSEの離職手当 Source : Democrats Urge Reduced Packages for Fannie and Freddie Executives (New York Times)

7日(日)、Paulson財務長官がGSE緊急救済策を発表した。その中の一つとして、Fannie MaeFreddie Macの経営者の交代が含まれていた。

これに関連し、連邦上院議会の民主党議員3人が、両社の経営者のGolden Parachutesを大幅に削減するよう求めているという。この3人の中には、大統領選候補のObama上院議員も含まれている。

上記sourceによれば、規定通りの離職手当と就任以来の報酬額は次の通り。
GSECEO離職手当就任以来の報酬額
Fannie MaeDaniel H. Mudd$9.3M$12.4M(〜2004年)
Freddie MacRichard F. Syron$14.1M$17.1M(〜2003年)
二人とも、4〜5年の就任期間に10億円を超える収入を得ており、そのうえにこれだけの離職手当をどうしても欲しいということはないだろう。実際、二人とも規定通りの離職手当を求めるつもりはないらしい。

しかし、この二人は運が悪いといえば運が悪い。そもそもこの2社は国策会社であり、実際、今年春には、住宅ローン債権の積極的な購入を求められていた。それが公的資金注入の対象となったことで首になり、離職手当まで取り上げられるというのは、アメリカ人経営者としては納得がいかないのではないだろうか。Golden Parachutesというのは、こうした経営陣交代の際に支払われるためにあるのではないだろうか。

今後、両社の経営者にどういった人物が就任するのか、注目しておきたい。


9月12日 PBGC vs GM Source : Pension agency to go to court vs Delphi, GM (Reuters)

いよいよ、Delphiの資産を巡り、PBGCGMの闘いの火蓋が切って落とされた(「Topics2008年8月19日 Delphiの苦境」参照)。

上記sourceによれば、PBGCは、DelphiとGMに対して、次のような要求を行った。
  1. 12日(金)に、破産裁判所に対して、$900Mの債権保全請求を行う。

  2. 12日(金)までに、Delphiの年金給付債務のうち$1.5〜3.4BをGMに移管することにGMが合意すれば、上記債権保全請求は取り下げる。
9月30日のdead lineに向けた攻防が始まった。

最後に、GM、Fordの株価動向は次の通り。 ⇒ GM  Ford

9月11日 内部告発者保護に不備 Source : US law 'fails to protect' corporate whistleblowers (The Financial Times)

2002年のSO法により、Whistleblowerに対する保護は強化されたはずであった(「Topics2002年7月25日(2) Whistle-Blowers」参照)。

ところが、子会社の社員が親会社の内部告発を行った場合は必ずしも保護が十分とは言えないらしい。所管している労働省は、子会社と上場企業の経営が一体化しているかどうかがポイントとなるとの見解を示している。これは、他の雇用問題でも同様の判断基準があるそうだ。しかし、その判断は極めて曖昧であり、内部告発者側から証明するのは難しい。