10月18日 Doughnut Hole - Part D Source : Medicare's Costly Doughnut Hole (BusinessWeek)

久々にMedicare Part Dの話題である。上記sourceによると、2009年のPart Dの保険料が平均24%上昇し、月額$37となる見込みである。

保険料上昇に加えて、Part Dには構造的な問題があると指摘されている。それが"Doughnut Hole"である。国民の立場からみたPart Dの負担の仕方は複雑だ。処方薬購入額が増えるにしたがって、
免責制による自己負担
 ↓
自己負担+保険給付(第一保障段階)
 ↓
全額自己負担
 ↓
自己負担+保険給付(危機的段階)
と変わっていく。詳細は、「Topics2003年12月3日 Medicare改革法の企業への影響/標準的な保険プラン」参照。

"Doughnut Hole"とは、上記の『全額自己負担』の段階を指している。そこまでは保険給付があり、一部自己負担だけで済む。また、相当な高額(危機的段階)になると、かなり自己負担を抑制した形で保険給付が行われる。ところが、その谷間は、全額自己負担になってしまうのである。

2007年にこの"Doughnut Hole"に達してしまった高齢者は、Part Dプラン加入者の26%、340万人にも達したという。そして、慢性病患者の15%が"Doughnut Hole"に達した段階で、処方薬の摂取をやめてしまっているという。これが毎年繰り返されているのでは、治る病気も治らない。

大統領選、連邦議会選挙で民主党体制となれば、間違いなく制度改正が検討されることになるだろう。

10月16日 自転車通勤手当 Source : Bicycle Commuting Fringe Benefit Added to Code Section 132(f) (EBIA Weekly)

マイナーネタながら、自転車好きにとっては無視できない話題である。

先に成立した金融安定化法(HR1424)により、自転車通勤に対する手当(償還費)が非課税措置(Tax Code §132(f))となった。具体的には次の通り(法律の該当箇所)。
  1. 2009年1月1日より、従業員に支払われる自転車通勤手当を非課税とする。

  2. 非課税枠(年額)は、$20 × 「従業員が通勤のために定期的に自転車を利用した月数」。

  3. $20は、COLAの対象としない。

  4. 他の非課税通勤手当を受け取った月は、上記月数に含めない。

  5. 自転車通勤手当(償還)の対象とできるのは、次のような費用を含む。
    1. 自転車購入費
    2. 改良・修繕費
    3. 部品購入代

  6. なお、償還は当該年内または当該年終了後3ヶ月以内に行わなければならない。
上記sourceによれば、このような税制改正要望は2001年から繰り返されていたようだ。金融安定化法案に反対する議員への懐柔策として盛り込まれたのであろう。

10月15日(1) 9行の経営者報酬 Source : Treasury Announces Executive Compensation Rules Under the Emergency Economic Stabilization Act (Department of Treasury)

銀行大手9行に対する公的資本注入のスキームが公表された(DOT Press Release)。9行とも「自発的に」このプログラムへの参加に同意しているとのこと。

同時に公表されたのが、上記sourceである。経営者報酬の制限条項を公表したものである。既に公表済みのもの(「Topics2008年9月30日 金融安定化法案否決」参照)に加え、新しい情報もあるので、再度ポイントをまとめておく。

  1. 不良債権をオークションにより購入した場合(具体的なスキームは検討中)

    1. オークションによる売却総額が3億ドルを超えた場合、経営幹部との間で、golden parachuteを含む新規の雇用契約を結ぶことを禁止する。

    2. 経営トップ5人それぞれの報酬のうち50万ドルを超える分について、損金算入を認めない。

    3. 経営トップ5人のgolden parachuteの一部について、損金算入を認めない。

    4. 経営トップ5人に支払われたgolden parachuteに対し、20%の超過課税(excise tax)を課す。

  2. 個別金融機関から債権を直接購入した場合

    1. 不必要に高いリスクを取って金融機関の価値を毀損することのないよう、経営トップ5人のインセンティブ報酬を抑制する。

    2. 経営トップ5人に対して既に支払われた業績連動報酬について、不適切な財務報告があった場合、返還を求める。

    3. 経営トップ5人に対するgolden parachuteの支払いを禁止する。

    4. 経営トップ5人それぞれの報酬のうち50万ドルを超える分について、損金算入を認めない。

  3. 金融システムに影響を及ぼす金融機関が破綻した場合

    現在、財務省では、一定の規模の金融機関が破綻した場合に、直接救済するプログラムを検討している。その場合、経営者報酬規制のほとんどは、上記の『個別金融機関から債権を直接購入した場合』と同様になる。ただし、golden parachuteについては、より厳しい規制がかけられる予定である。
以上から、気付いた点を2つ。
  1. 今回の大手9行に対する公的資本注入は、上記の2番目のケースとなる模様。ここでも『自主的に』がポイントになっているのだろう。

  2. 金融安定化法案の審議過程の初期段階では、オークションによる不良債権買取がメインであったが、いまや資産買取=資本注入の方がメインとなっている。しかも、実質的には『強制的に』。そうなってくると、経営者報酬に対する制限は、俄然厳しくなってくる。国民感情としては納得感が高まっているのではないか。

10月15日(2) CT州でも同性婚 Source : Conn. Ban On Gay Marriage Reversed (Washington Post)

10日、CT州最高裁が、同性婚を認めない州法は性差別であり、州憲法に違反しているとの判決を下した。これで、CT州は、MA州、CA州に次ぎ、同性婚を認める3番目の州となった(参考テーマ「同性カップル」)。

判決は4対3の僅差であった。 CT州知事は、判決に対して争わないとしている。CT州では、他州から来た同性カップルの結婚を認めており、これもMA州と同じである。NY州の同性カップルにとっては、挙式場所の選択肢が増えたことになる(「Topics2008年9月5日 同性婚特需」参照)。

10月14日 資産買取の3類型 Source : Interim Assistant Secretary for Financial Stability Neel Kashkari Remarks before the Institute of International Bankers (Department of Treasury)

いよいよ、金融安定化法に基づく、資産買取、公的資本注入に関する具体的な議論が始まった(「Topics2008年10月10日 いよいよ公的資本注入」参照)。

上記の財務省Kashukari Interim Assistant Secretaryの声明によれば、
○資産買取プログラムについて該当箇所
  1. (金融機関の)自主性に基づくものとし、健全な金融機関にとっても魅力的なものとする。
  2. 公的資本とともに、民間による資本増強も促すものとする。
○経営者報酬の制限について該当箇所

経営者報酬の制限方法を、次のような資産買取の類型に従って取り決める。
  1. 不良債権をオークションにより買い取った場合
  2. 政府が直接買い取った場合
  3. 金融システム維持のために政府介入を行った場合
となっている。

奇妙なのは、法律の文言は変わっていないのに、制限する場合の類型が2つから3つに増えている点である(「Topics2008年9月30日 金融安定化法案否決」参照)。つまり、「政府介入」というカテゴリーが追加されているのである。この辺りをどう解釈するのか。本日(14日)の行動計画の公表を注視したい。